新NISAの投資枠は1,800万円!最速で使いきるほうがいい?

新NISAの投資枠は1,800万円!最速で使いきるほうがいい?

2024年より始まった新NISA(※)は、運用益が無期限で非課税となる制度です。新NISAで生涯にわたって非課税で投資できる枠は、1人あたり1,800万円に設定されています。

新NISAで運用を始める場合、非課税投資枠1,800万円をできる限り早く使いきったほうがいいのか、迷っていた人もいるのではないでしょうか。
今回は、新NISAの投資枠を最速で使いきるメリット・デメリットや、投資枠を使いきった後の資産運用はどうすればいいのかをわかりやすく解説します。新NISAの運用ポイントとあわせて見ていきましょう。
※本記事では2024年よりスタートしたNISAを「新NISA」と表記しています。
AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

mokuji目次

  1. 新NISAの投資枠1,800万円は最速5年で使いきれる
  2. 新NISAの投資枠1,800万円を最速で使いきるメリット
    1. 運用する元本を最大化でき、複利効果が高まる
    2. 価額上昇が期待できる場合、大きなリターンを得られる可能性がある
  3. 新NISAの投資枠1,800万円を最速で使いきるデメリット
    1. 年間360万円の資金が必要
    2. 売買のタイミングによっては損失が大きくなりやすい
  4. 新NISAは無理に最速で1,800万円を使いきる必要はない
  5. 新NISAの投資枠1,800万円を使いきった後はどうする?
    1. 基本的にそのまま運用する
    2. 必要に応じて売却し、再投資する
    3. 課税口座で追加投資をする
  6. 新NISAを運用する際のポイント
    1. 投資の目的を明確にする
    2. 余剰資金で行う
    3. 長期・分散で投資する
    4. ネット証券を活用する
    5. 悩んだら専門家に相談する
  7. 新NISAの投資枠は最速で使いきることにこだわる必要はない

新NISAの投資枠1,800万円は最速5年で使いきれる

新NISAの非課税投資枠1,800万円は、最速5年で使いきることができます。まず、新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類の枠があり、それぞれ1年間に非課税で投資できる上限(年間投資枠)が定められています。年間投資枠は、つみたて投資枠120万円・成長投資枠240万円のため、年間の最大投資額は360万円です。そのため、非課税投資枠1,800万円を使いきるには、360万円×5年間の期間が必要となるのです。

なお、1,800万円の非課税投資枠のうち、成長投資枠は1,200万円までと決められています。よって、成長投資枠だけで非課税投資枠を使いきることはできません。

新NISAの投資枠1,800万円を最速で使いきるメリット

新NISAの非課税投資枠1,800万円を最速の5年で使いきった場合、どのようなメリットが期待できるのでしょうか。ここでは、主な2つのメリットについてご紹介します。

運用する元本を最大化でき、複利効果が高まる

新NISAの非課税投資枠1,800万円を最速の5年間で使いきるメリットのひとつは、運用する元本を最大化できることです。多くの元本をより長期間運用することにより、複利効果が高まります。

複利効果とは、投資によって得た利益をさらに投資に回すことを指します。元本が大きいほど得られる利益も多くなることが想定されるため、結果としてより高い複利効果を得られるという仕組みです。

価額上昇が期待できる場合、大きなリターンを得られる可能性がある

購入した金融商品の価額上昇が期待できる場合、非課税投資枠を最速で使いきっておくことで大きなリターンを得られる可能性が高まります。投資で大きなリターンを得るには、その分、多くの元本が必要です。非課税投資枠1,800万円をできるだけ早く使いきっておくことで、短期間で、より大きなリターンが期待できるケースが多いでしょう。

新NISAの投資枠1,800万円を最速で使いきるデメリット

新NISAの非課税投資枠1,800万円を最速で使いきることには、デメリットもあります。メリット面だけにとらわれず、デメリット面も理解した上で運用方法を検討することが大切です。

年間360万円の資金が必要

新NISAの非課税投資枠1,800万円を最速の5年で使いきるには、年間360万円というまとまった資金を用意しなくてはなりません。無理なく投資に回せる資金を用意できることが、非課税投資枠1,800万円を最速で使いきるための前提となります。非課税投資枠を最速で使いきろうとして、必要な生活資金まで取り崩してしまうといったことは避けなければなりません。

売買のタイミングによっては損失が大きくなりやすい

新NISAの非課税投資枠1,800万円を最速で使いきる場合、運用する金額が大きくなります。運用する金額が大きくなるほど、その分、大きな利益を期待できる一方で損失が大きくなりやすいのもデメリットです。場合によっては保有資産の価額が元本よりも小さくなってしまう可能性もあります。

新NISAでは投資する金融商品を自分で選ぶ必要があることから、特にまとまった資金を運用することになる成長投資枠では商品選びのための知識が欠かせません。投資初心者や投資経験が浅い人の場合は、選ぶべき商品を見誤るリスクがあることを十分に理解しておく必要があるでしょう

新NISAは無理に最速で1,800万円を使いきる必要はない

新NISAは無理に最速で1,800万円を使いきる必要はない

ここまで見てきたとおり、新NISAの非課税投資枠を最速5年で使いきることは可能ではあるものの、こうした投資の仕方にはメリット・デメリットの両面があります。したがって、非課税投資枠1,800万円を必ずしも最速で使いきる必要はありません。

資金に余裕があり、リスクも取れるのであれば、短期での投資によって大きなリターンを狙うのもひとつの考え方ではあるでしょう。一方で、投資初心者やリスクをできるだけ抑えたい人は堅実に積み立てていくほうが賢明です。月間・年間投資額ごとに見ると、1,800万円の非課税投資枠を使いきるまでに積み立てる年数は下表のとおりとなります。

投資額別・新NISAの非課税投資枠1,800万円に達するまでの年数

月間投資額

年間投資額

1,800万円に達するまでの年数

3万円

36万円

50年

5万円

60万円

30年

10万円

120万円(つみたて投資枠の上限)

15年

15万円

180万円

10年

20万円

240万円

7.5年

30万円

360万円(年間投資枠の上限)

5年(最速)

このように、年数をかけてコツコツと運用を続けることで、非課税投資枠1,800万円を使いきることは可能です。資金や運用目的にあわせて、負担のないよう検討してください。

なお、つみたて投資枠は少額積立を基本とした制度のため、1ヵ月に投資できる額は月10万円までとなっています。10万円を超える投資を行いたい場合は、成長投資枠と併用しましょう。

新NISAの投資枠1,800万円を使いきった後はどうする?

新NISAの非課税投資枠1,800万円を使いきった後は、どうすればいいのでしょうか。非課税投資枠1,800万円を使いきった新NISA口座を効果的に活用する主な方法は、下記の3点です。

基本的にそのまま運用する

非課税投資枠を使いきった後の新NISA口座を活用する方法のひとつは、「何もしないこと」です。元本1,800万円分の金融資産をそのまま運用していくことにより、複利効果を活かした運用が可能になります。運用益は自動的に新たな投資に回されるため、特に何もしなくても資産運用を継続可能です。

購入した金融資産を短期間で売却すると、値動きによるリスクが高まります。売却する時期によっては、元本を下回る価額しか手元に残らない可能性も否定できません。長期にわたって運用を続けることにより、こうしたリスクを軽減でき点が大きなメリットです。

必要に応じて売却し、再投資する

新NISA の非課税投資枠1,800万円を使いきった後、保有している金融資産を必要に応じて売却し、再投資して活用することも可能です。新NISAでは資産を売却した場合、その分の投資枠が復活する仕組みになっています。例えば、1,800万円の投資枠のうち500万円分の金融商品を売却すると、翌年以降には500万円分の投資枠を再び利用できるようになります。

ライフイベントなどに伴って資金が必要になった場合や、別の商品に投資したい場合などには、保有商品の一部を売却して再投資するといいでしょう。
なお、売却する際には全商品を一度に売却せず、一部のみ取り崩すことをおすすめします。売却せずに保有し続ける金融商品を残しておくことで、一時的な値下がりのリスクを回避しやすくなるだけでなく、複利効果をより多く得られる可能性が高まるからです。

課税口座で追加投資をする

非課税投資枠1,800万円を使いきった新NISA口座とは別に、特定口座や一般口座を開設して追加投資をする方法もあります。ただし、特定口座や一般口座は、新NISA口座と異なり課税口座となるため、運用益に20.315%の税金が課される点には注意が必要です。なお、特定口座と一般口座には、それぞれ下記のような特徴があります。
特定口座と一般口座の特徴
特定口座:上場株式や投資信託への投資が可能な口座。証券会社が年間取引報告書を作成する。源泉徴収あり・なしから選べる。

一般口座:株式未公開株の購入が可能な口座。年間取引報告書は自分で作成する必要がある。

新NISAを運用する際のポイント

新NISAを運用する際のポイント

非課税投資枠1,800万円を最速で使いきるかどうかを問わず、新NISAを効果的に活用して投資をするにはいくつか押さえておきたいポイントがあります。新NISAのメリットを最大限に活かすためにも、下記の5点を実践していくことが大切です。

投資の目的を明確にする

新NISAを始めるにあたって、投資の目的を明確にしておくことは重要なポイントです。新NISAは手軽に活用できるため、特に投資初心者の場合は運用計画が曖昧なまま始めてしまう可能性がある制度といえます。手軽に始めやすいとはいえ、新NISAを活用して購入するのは投資信託や株式といった金融商品であることに変わりはありません。必ず投資目的や目標金額、投資期間を決めてから始めるようにしましょう。

投資目的が曖昧な状態で始めてしまうと、一時的な値動きに一喜一憂しやすくなったり、保有商品を短期間で売却して結果的に損をしてしまったりするおそれがあります
長期にわたって運用を続けることで複利効果も得られるため、「何のために」「いつまでに」「いくらの」資産を形成したいのか、始める前に検討しておくことをおすすめします。

余剰資金で行う

投資は余剰資金で行うのが基本です。余剰資金とは、当面必要な生活費や近い将来必要となるお金を手元の資金から差し引いた残りを指します。必要な生活費などの資金まで投資に回してしまうことのないよう、注意が必要です

余剰資金の範囲を超えて投資をした場合、すぐに必要な資金が不足してしまうことが懸念されます。結果的に、短期間で保有資産を売却せざるをえなくなる可能性も否定できません。

一般的に、投資は短期間で売買するほど値動きの影響を受けやすくなります。特に投資初心者の場合、売却するタイミングを見誤ってしまい、購入時よりも低い価額で金融資産を売却する可能性もあるでしょう。リスクを避けるためにも、生活費など当面必要なお金を明確にした上で、余剰資金の範囲内で投資をするように心掛ける必要があります

長期・分散で投資する

投資の基本は「長期・分散・積立」といわれています。長期にわたって資産運用を続けることにより、複利効果をより得やすくなるからです。
また、特定の金融商品に集中的に投資するのではなく、分散投資を意識することにより、一時的な値下がりのリスクを回避しやすくなります。

非課税保有期間が無期限の新NISAは、長期的な資産運用に適しています。新NISAでは購入する金融商品を自分で選べることから、幅広い商品に分散投資をすることも可能です。つみたて投資枠と成長投資枠を使い分けながら長期・分散投資を実践していくことにより、新NISAのメリット面を活かした投資が可能になります。
反対に、短期間で多くの利益を得ようとすると、ハイリスク・ハイリターンの商品を選ばざるをえないものです。時間と投資対象を分散させることにより、できるだけリスクを回避するための投資行動を意識しましょう。

ネット証券を活用する

新NISAを効果的に活用するには、金融機関の選び方も大切なポイントとなります。金融機関によって新NISAで利用できる金融商品のラインナップが異なるほか、手数料にも差があるからです。

金融機関選びが適切になされていないと、投資したい商品を新NISAで購入できなかったり、想定外に手数料がかかってしまい、手元に残る資産が減ってしまったりするおそれがあります。
新NISA口座は1人1口座しか開設できないため、口座開設を申し込む金融機関は慎重に選ばなければなりません。

金融機関の中でも、ネット証券は取り扱っている金融商品の種類が多く、手数料は低い傾向があります。新NISAを始める上で金融機関選びに迷った際には、まずネット証券を比較検討してみてはいかがでしょうか。ネット証券であれば来店する必要がなく、自宅にいながら新NISA口座を開設できる点も大きなメリットです。

悩んだら専門家に相談する

悩んだら専門家に相談する

特に初めて投資に挑戦する人の場合、新NISAをどう活用していくべきか、運用計画はどのように立てればよいのか、悩むケースも少なくないと考えられます。

悩んだら専門家に相談し、知識や情報を取り入れた上で新NISAを始めるようにしてください。
投資は早く始めるのがよいとはいわれますが、焦って新NISAを始めた結果、知識不足が原因で損をしたり、新NISAのメリットを活かせなかったりするのは避けなければなりません。

専門家に相談する方法としては、新NISAに関するマネーセミナーを受講したり、金融機関が開催している相談会などを活用したりすることなどが挙げられます。すでに新NISA口座を保有している人は、口座を開設した証券会社が実施しているセミナー等を活用するといいでしょう。専門家の知見を得ておくことにより、新NISAの活用方法を大きく誤ったり、投資によって損をしてしまったりするリスクを避けやすくなります。

新NISAの投資枠は最速で使いきることにこだわる必要はない

新NISAの非課税投資枠1,800万円は、必ずしも最速の5年間で使いきる必要はありません。短期間で多くの資金を投資に回すことでより大きなリターンが期待できる面はあるものの、コツコツと長期・分散投資を心掛けることで得られるメリットも決して少なくないからです。
投資枠を最速で使いきることに固執するのではなく、投資の目的や目標とする金額、想定する投資期間を検討した上で、資産運用の計画を立てるようにしてください。

なお、新NISAを始める際には、金融機関選びも重要なポイントになります。ネット証券であれば取扱商品数が多く、手数料を抑えやすいためおすすめです。新NISA口座は1人1口座しか開設できないため、複数のネット証券を比較検討して選ぶようにしましょう。

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AFP/2級FP技能士 吉田祐基

監修者 AFP/2級FP技能士 吉田祐基

ライター・編集者。編集プロダクションで、Web・紙媒体問わず主に金融系コンテンツの制作を担当後、HRテック企業に制作ディレクターとして入社。お客様向けの会報誌や、記事、Webサイト、PDF資料といった各種コンテンツ制作のディレクション業務ほか、Webメディアの運営を担当。

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