「ペット保険」満足度ランキング! 飼い主が重視するポイントは?

※記事は2017年5月1日にダイヤモンド・オンライン(外部リンク)に掲載されたものです。

ペットフード協会の調査によると、ペットの平均寿命は犬が14.36歳、猫が15.04歳。愛犬や愛猫と長く暮らせること自体は喜ばしいが、ペットは公的保険がないだけに、医療費が高額になってしまうところは悩ましい

犬や猫の寿命は 近年大幅に延びている

 世の中は空前の「猫ブーム」に沸いている。多くの善良な飼い主にとって、犬や猫はかけがえのない「家族の一員」のような存在だが、その平均寿命が、1990年代と比べ大幅に延びたことをご存じだろうか。

 種類によっても異なるが、平均寿命は犬が14.36歳、猫が15.04歳(一般社団法人ペットフード協会、2016年調べ)。ここ四半世紀で1.5〜2倍以上に長寿命化している。栄養バランスを考慮した専用フードが普及し、感染症予防ワクチンも一般化したことが主な要因だ。

 愛犬や愛猫と長く暮らせること自体は喜ばしいが、加齢に伴うケガや病気による出費は悩ましい。ペットは公的保険がないだけに、原則3割負担の人間と異なり、下痢や皮膚炎などで通院治療した場合には1回3000円〜1万円、緑内障や椎間板ヘルニアなどを患えば、手術費だけで10万〜40万円と、医療費が高額になりやすい。

 そんな通院・入院リスクに備えたいという飼い主のニーズを背景に、ここ数年、ペット保険の市場規模は毎年10%以上のハイペースで拡大している。今回の「オリコン日本顧客満足度ランキング」では、いざという時の飼い主の負担をカバーするペット保険について調査結果を紹介したい。

アンケート対象者は、飼っている犬・猫が過去5年以内に病気やケガで手術を受け、ペット保険を利用した20歳以上の飼い主と、加入する保険選びに関与した人の計4998人(有効回答者3671人)。調査対象の保険会社は14社(ランキング対象13社)で、大きく「加入手続き」「保険プラン」「付帯サービス」「保険金・給付金」の4つの大項目に関して満足度を調査した。

ペット保険満足度の分岐点 割安な保険料か利便性の高い補償か?

 今回、同ランキングのトップとなったのは業界最大手のアニコム損害保険(以下:アニコム)。2007年に日本で初めて免許を取得したペット専門損保で、昨年の16年10月発表の顧客満足度ランキングに続くV2を達成した。

 アニコムは、7歳11ヵ月までの犬と猫が加入できる「どうぶつ健保ふぁみりぃ」(自己負担50%、70%の2コース)を提供。獣医療法で定める国内すべての動物病院(5982件、2017年4月18日現在)と提携している点が強みだ。さらに「どうぶつ健保」対応の病院なら、窓口での精算時に自己負担分のみ支払えばよいという利便性の高さも大きな特長といえる。

 アンケートでは、「わざわざ保険金請求をしなくても、動物病院の窓口で差し引いた金額を払えばいいので、とても楽」(30代女性)、「かかりつけ病院ではなく、出先で初めてかかった病院でもアニコムは使用できたので助かった」(40代女性)といった声が集まった。

 評価項目ごとに見ると、オンライン加入のほか、口座振替ができる取扱金融機関も多いため、特に「加入手続き」の項目で評価が高かった。また、1日の支払限度額や年間の支払限度日数、1回の支払限度額があるものの、年間の支払限度額は設定されていないことから「保険プラン」の項目でも高評価を得た。

 ただ「保険料・給付金」の項目に限ると、ペットメディカルサポート(PS保険)がアニコムを抑えて1位となった。PS保険はネット通販専門のため、保険料が割安であることが最大の特長で、「保険料が他社に比して、リーズナブルな価格だった」(20代女性)と、リーズナブルな価格帯を支持する声が多い。過去2012〜14年の同調査では3年連続でランキングトップを獲得しており、今回の16年版も首位アニコムとのポイント差は0.02とごくわずかだ。

 保険に加入するのは「万が一」に備えるためだが、その万が一に遭遇したことがあるかないか、多いか少ないかによって、ユーザーが重視するポイントも変わってくる。その点で、保険料が割安なPS保険は飼い主が加入する際のハードルが低いのに対し、使い勝手のいいアニコムは、実際に動物病院のお世話になった、またはその回数が多かった飼い主が高く評価しているとも言えるだろう。

ペット医療の高度・高額化で 飼い主の保険はどうなるか?

 「ペットブーム」と言われて久しいが、実のところ、近年の飼育頭数は横ばいまたは減少傾向をたどっている。ペットフード協会が毎年行っている「全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の推計飼育頭数は2012年の1153万頭から16年の988万頭と約14%減少した。一方、猫は975万頭から985万頭、1%増だった。

 それにもかかわらず、ペット保険の市場規模は拡大を続けている。2009年度は133億円だったが、17年度には500億円の大台を伺う勢い。先述したようにペットの長寿命化が進んでいることや、「ペットは家族」と捉える飼い主の認識が広がってきたためだ。

 それでも、加入率自体はまだ5%前後と低いだけに、今後さらに加入者が増え続ける可能性は高い。実際、伸び盛りの市場を自社ユーザーの囲い込みに活用しようと、携帯電話の大手キャリア3社(NTTドコモ、au、ソフトバンク)は相次いでペット保険の取り扱いを始めた。提携先の保険会社に加入すれば、保険料の割引が適用されるといった仕組みだ。

 さらに、ペット医療の高度化も進んでいる。民間医療機関として初めて2015年3月にマザーズ上場を果たした日本動物高度医療センター(Japan Animal Referral Medical Center;JARMeC)は、磁気共鳴画像装置(MRI)や放射線治療装置などを使った医療サービスを川崎市と名古屋市で提供しており、大阪府への展開拡大を目指す。再生医療を行う動物病院も増えており、富士フイルムなどは培養した免疫細胞を使うガン治療法の開発に乗り出した。

 愛犬や愛猫を「わが子」のように思い、ハイレベルな医療までカバーするペット保険を選ぶか、家計のバランスを考え、支払う保険料の安さを重視して選ぶかなど、飼い主によって考えは異なるだろう。ペット保険各社による加入者の獲得合戦が盛り上がる中、自分にとってのニーズを熟慮した上で加入先を選びたいものだ。

(四つ葉経済記者会 ジャーナリスト 金川俊以)

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