犬の去勢は必要?メリット・デメリットと費用を解説

犬の去勢は必要?メリット・デメリットと費用を解説

オス犬を家族に迎えた場合、「去勢手術をすべきかどうか」で悩む飼い主は多いです。病気やケガをしているわけではない健康な犬に手術を施すことに、抵抗を感じることもあるでしょう。

犬の去勢手術にはメリットもデメリットもあり、さまざまな意見がありますが、それを踏まえて最終的な選択は飼い主が行なわなければなりません。今回は、犬の去勢手術のメリット・デメリットや行うタイミング、費用について解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の去勢手術とは?
  2. 犬の去勢手術を行うメリット
    1. 生殖器の病気を防げる
    2. 欲求不満のストレス抑制
    3. マウンティングやマーキング行為の減少
    4. 性格が穏やかになる
    5. 望まない繁殖を防ぐ
  3. 犬の去勢手術を行うデメリット
    1. 繁殖が望めない
    2. 麻酔のリスクがある
    3. 太りやすくなる
    4. 被毛の変化
    5. 臆病になる
  4. 犬の去勢手術の費用目安
  5. 犬の去勢手術にペット保険は利用できる?
    1. 犬の去勢手術の助成金
  6. 犬の去勢手術のタイミング
  7. 犬の去勢手術は、メリット・デメリットを知って検討を

犬の去勢手術とは?

犬の去勢手術とは、オス犬の精巣を外科的に取り出す手術を指します。

全身麻酔が必要ですが、短ければ10〜30分程で終了し、傷口も1〜3cm程度で済むことがほとんどです。持病や先天的な異常などがなければ、手術当日のうちに帰れる場合が多いでしょう。

比較的安全な手術とはいえ、去勢手術は健康な犬の体にメスを入れることであり、さまざまな意見があります。手術後に後悔しても取り返しがつかないため、メリットとデメリットを踏まえて慎重に検討しなければなりません

犬の去勢手術を行うメリット

犬の去勢手術を行うメリット

犬の去勢手術は、犬の身体面にも精神面にもメリットがあります。具体的なメリットは下記のとおりです。

生殖器の病気を防げる

去勢手術で精巣を摘出するため、精巣腫瘍や精巣炎といったオス犬特有の病気の予防が可能です。

また、男性ホルモンの影響を受けなくなるため、前立腺炎や前立腺がん、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫などの病気にかかるリスクも下げられるとされています。

これらの病気は高齢の犬で発症しやすく、命に関わる病気でもあるため、去勢手術を受けた犬のほうが長生きしやすい傾向があります

欲求不満のストレス抑制

オス犬は特定の発情期がなく、メスのフェロモンを嗅ぐといつでも発情し、過剰に興奮してしまいます

メス犬を追いかけ回したり、メス犬を巡ってオス同士でケンカしたりといったトラブルを招くことがあるうえ、突発的にメス犬を追いかけたことで、事故に遭ったという例もあります。

飼い主がしっかり抑制しなければなりませんが、抑制されたことによって、犬は欲求不満でストレスを抱えることもあるでしょう。

犬が性成熟を迎える前に去勢手術を行うことで、性的欲求を抑えることができ、それにまつわるストレスを軽減できます

マウンティングやマーキング行為の減少

去勢手術によって男性ホルモンの分泌が抑えられると、マウンティング行為やマーキング行為を減少させられます

マウンティングは、ほかの犬や飼い主、物などにのしかかって腰を振る行為、マーキングはあちこちに少量のおしっこをかける行為です。犬の本能的な行為ですが、飼い主にとっては困った行動でもあります。

なお、成犬になってから去勢手術をした場合、こういった行為が残ることはありますが、頻度は減少できるとされています。

性格が穏やかになる

去勢手術で男性ホルモンの量が減少することで、オス犬特有の縄張り意識や攻撃性を抑えられるといわれています

性格の変化に関しては諸説ありますが、実際に飼い犬の去勢手術を行った飼い主からは、「おとなしくなった」「甘えん坊になった」という声がよく聞かれます。

望まない繁殖を防ぐ

妊娠・出産は犬の体にとって負担になることでもありますから、慎重に検討する必要があります。

特に多頭飼いの場合、生まれた命を飼育しきれずに手放すなどということのないよう、犬の繁殖をコントロールするのは飼い主の責任です。繁殖を望まないのであれば、去勢手術はメリットとなるでしょう。

犬の去勢手術を行うデメリット

犬の去勢手術を行うデメリット

犬の去勢手術にはメリットがありますが、注意したいこともあります。デメリットも理解した上で、去勢手術を受けさせるかどうかを判断してください。

繁殖が望めない

去勢手術をしたら繁殖が望めなくなることは、事前にしっかり理解しておく必要があります

迎えたばかりで子犬のうちは、繁殖のことは考えられないかもしれません。

しかし、暮らしていくうちに「うちの子の子孫を残したい」と考えるようになる可能性はあるでしょう。将来的なことまで考えて検討してください。

麻酔のリスクがある

犬の去勢手術では全身麻酔が使用されます。

動物病院では事前に検査を行い、細心の注意を払って去勢手術を行いますが、副作用やアレルギーを起こす可能性はゼロではありません

また、パグやフレンチブルドッグといった短頭種の場合、術後に気道閉塞や呼吸困難を起こす可能性があるため、特に注意しなければならないとされています。

短頭種の場合、かかりつけの動物病院でよく相談した上で去勢手術を決めましょう。

太りやすくなる

去勢手術でホルモンバランスが変化することで、犬が太りやすくなる傾向があります。男性ホルモンが減少することで食欲が増進し、さらに基礎代謝が下がることで太りやすくなるのです。

去勢手術前と同じように食事を与えていると、栄養過多になる可能性があるため注意しなければなりません。

被毛の変化

去勢手術後、ホルモンバランスの変化で犬の被毛の毛質が変わることがあります

まれな例ではありますが、毛づやが悪くなったり、子犬のような細い毛が生えてきたりすることがあるようです。

臆病になる

去勢手術を行うと、男性ホルモンが減少することによって、犬の性格が変わる可能性があります

穏やかな甘えん坊になることもありますが、元々おとなしい性格の犬の場合、さらに臆病になったり怖がりになったりすることもあるようです。

また、オス犬らしいやんちゃで元気な犬が、おとなしく内気になることもあり、その変化を寂しく思う飼い主もいるでしょう。

犬の去勢手術の費用目安

動物病院は自由診療のため、犬の去勢手術費用は病院によって異なります。

公益社団法人日本獣医師会の「家庭医飼育動物の診療料金実態調査」によると、犬の去勢手術の費用の中央値は1万7,500円でした(体重10kgの犬とする)。

実際の去勢手術では、ほかに麻酔や診察、術前術後の検査、投薬などに関する費用がかかるため、この金額よりも高くなります。

また、多くの動物病院は、犬の体重やサイズで去勢手術の費用を変えています。

これは、犬の体重によって使用する麻酔や薬剤の量が変わることが理由です。そのため、小型犬に比べて大型犬は高くなる傾向があり、1万円程度は上がると考えていいでしょう。それを踏まえて、実際に支払う費用は2万〜6万円程度のことが多いです。

通常の去勢手術は日帰りできることが多いですが、術後の状態や犬の性格、病院の方針によっては入院が必要になるかもしれません。そのため、停留精巣(停留睾丸)などの先天性異常の有無や犬の年齢、健康状態でも費用が変わる場合があります。

※公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査

犬の去勢手術にペット保険は利用できる?

ペット保険は、ペットの病気やケガに対する診療費を補償するものであり、健康なペットの処置にかかる費用は対象外です。そのため、去勢手術はペット保険の保険給付が受けられず、全額飼い主が自己負担しなければなりません。

ただし、生殖器関連の疾患やホルモン関連の疾患の治療として去勢手術を行う場合は、ペット保険の対象です。

犬の去勢手術の助成金

犬の去勢手術は飼い主の自己負担ですが、地域の自治体や獣医師会が去勢手術の費用について助成金制度を設けていることがあります。

例えば、名古屋市では、飼い主が市内在住で、狂犬病予防法にもとづく登録が済んでいる犬の去勢手術において、市から1,600円、公益社団法人名古屋市獣医師会から3,200円の補助が受けられます。

犬に去勢手術を受けさせる場合、居住地の自治体や獣医師会で助成金制度を用意していないか、調べてみるといいでしょう

犬の去勢手術のタイミング

犬の去勢手術のタイミング

犬の去勢手術は、生後6ヵ月〜1歳程度で行うと良いとされています。

この年齢になると犬の体が手術に耐えられるくらいに成長し、なおかつ完全な性成熟の前です。性成熟を完全に終える前に去勢手術を行うことで、問題行動が出にくくなったり、特有の病気を予防できるなどのメリットがあります。

去勢手術に年齢制限はないため、何歳でも手術は可能ですが、一度習慣化したマウンティングやマーキングなどの行為は完全にはなくならない可能性も。また、高齢になると麻酔のリスクや手術の負担も大きくなるため、成犬期(5歳くらいまで)のうちに検討することをおすすめします

小型犬は成長が早く、大型犬はゆっくりの傾向があるため、実際の去勢手術のタイミングは獣医師と相談の上で決めてください。

犬の去勢手術は、メリット・デメリットを知って検討を

犬の去勢手術は、基本的に健康な犬に施す手術ですから、受けさせるべきか悩む飼い主が多いです。メリットは多いですが、デメリットもあるため、獣医師と相談の上で検討しましょう。

ペット保険では残念ながら去勢手術の費用は対象外となりますが、地域の自治体や獣医師会で助成金を受け取れる場合もあります。犬の去勢手術を決めた場合は、助成金制度があるかどうかも確認してみてください。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
 ●ガイア動物病院(外部リンク)

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