犬の去勢は必要?メリット・デメリットと費用を解説
犬の去勢手術にはメリットもデメリットもあり、さまざまな意見がありますが、それを踏まえて最終的な選択は飼い主が行なわなければなりません。今回は、犬の去勢手術のメリット・デメリットや行うタイミング、費用について解説します。

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
犬の去勢手術とは?
全身麻酔が必要ですが、短ければ10〜30分程で終了し、傷口も1〜3cm程度で済むことがほとんどです。持病や先天的な異常などがなければ、手術当日のうちに帰れる場合が多いでしょう。
比較的安全な手術とはいえ、去勢手術は健康な犬の体にメスを入れることであり、さまざまな意見があります。手術後に後悔しても取り返しがつかないため、メリットとデメリットを踏まえて慎重に検討しなければなりません。
犬の去勢手術を行うメリット
生殖器の病気を防げる
また、男性ホルモンの影響を受けなくなるため、前立腺炎や前立腺がん、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫などの病気にかかるリスクも下げられるとされています。
これらの病気は高齢の犬で発症しやすく、命に関わる病気でもあるため、去勢手術を受けた犬のほうが長生きしやすい傾向があります。
欲求不満のストレス抑制
メス犬を追いかけ回したり、メス犬を巡ってオス同士でケンカしたりといったトラブルを招くことがあるうえ、突発的にメス犬を追いかけたことで、事故に遭ったという例もあります。
飼い主がしっかり抑制しなければなりませんが、抑制されたことによって、犬は欲求不満でストレスを抱えることもあるでしょう。
犬が性成熟を迎える前に去勢手術を行うことで、性的欲求を抑えることができ、それにまつわるストレスを軽減できます。
マウンティングやマーキング行為の減少
マウンティングは、ほかの犬や飼い主、物などにのしかかって腰を振る行為、マーキングはあちこちに少量のおしっこをかける行為です。犬の本能的な行為ですが、飼い主にとっては困った行動でもあります。
なお、成犬になってから去勢手術をした場合、こういった行為が残ることはありますが、頻度は減少できるとされています。
性格が穏やかになる
性格の変化に関しては諸説ありますが、実際に飼い犬の去勢手術を行った飼い主からは、「おとなしくなった」「甘えん坊になった」という声がよく聞かれます。
望まない繁殖を防ぐ
特に多頭飼いの場合、生まれた命を飼育しきれずに手放すなどということのないよう、犬の繁殖をコントロールするのは飼い主の責任です。繁殖を望まないのであれば、去勢手術はメリットとなるでしょう。
犬の去勢手術を行うデメリット
繁殖が望めない
迎えたばかりで子犬のうちは、繁殖のことは考えられないかもしれません。
しかし、暮らしていくうちに「うちの子の子孫を残したい」と考えるようになる可能性はあるでしょう。将来的なことまで考えて検討してください。
麻酔のリスクがある
動物病院では事前に検査を行い、細心の注意を払って去勢手術を行いますが、副作用やアレルギーを起こす可能性はゼロではありません。
また、パグやフレンチブルドッグといった短頭種の場合、術後に気道閉塞や呼吸困難を起こす可能性があるため、特に注意しなければならないとされています。
短頭種の場合、かかりつけの動物病院でよく相談した上で去勢手術を決めましょう。
太りやすくなる
去勢手術前と同じように食事を与えていると、栄養過多になる可能性があるため注意しなければなりません。
被毛の変化
まれな例ではありますが、毛づやが悪くなったり、子犬のような細い毛が生えてきたりすることがあるようです。
臆病になる
穏やかな甘えん坊になることもありますが、元々おとなしい性格の犬の場合、さらに臆病になったり怖がりになったりすることもあるようです。
また、オス犬らしいやんちゃで元気な犬が、おとなしく内気になることもあり、その変化を寂しく思う飼い主もいるでしょう。
犬の去勢手術の費用目安
公益社団法人日本獣医師会の「家庭医飼育動物の診療料金実態調査」によると、犬の去勢手術の費用の中央値は1万7,500円でした(体重10kgの犬とする)。
実際の去勢手術では、ほかに麻酔や診察、術前術後の検査、投薬などに関する費用がかかるため、この金額よりも高くなります。
また、多くの動物病院は、犬の体重やサイズで去勢手術の費用を変えています。
これは、犬の体重によって使用する麻酔や薬剤の量が変わることが理由です。そのため、小型犬に比べて大型犬は高くなる傾向があり、1万円程度は上がると考えていいでしょう。それを踏まえて、実際に支払う費用は2万〜6万円程度のことが多いです。
通常の去勢手術は日帰りできることが多いですが、術後の状態や犬の性格、病院の方針によっては入院が必要になるかもしれません。そのため、停留精巣(停留睾丸)などの先天性異常の有無や犬の年齢、健康状態でも費用が変わる場合があります。
※公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」
犬の去勢手術にペット保険は利用できる?
ただし、生殖器関連の疾患やホルモン関連の疾患の治療として去勢手術を行う場合は、ペット保険の対象です。
犬の去勢手術の助成金
例えば、名古屋市では、飼い主が市内在住で、狂犬病予防法にもとづく登録が済んでいる犬の去勢手術において、市から1,600円、公益社団法人名古屋市獣医師会から3,200円の補助が受けられます。
犬に去勢手術を受けさせる場合、居住地の自治体や獣医師会で助成金制度を用意していないか、調べてみるといいでしょう。
犬の去勢手術のタイミング
この年齢になると犬の体が手術に耐えられるくらいに成長し、なおかつ完全な性成熟の前です。性成熟を完全に終える前に去勢手術を行うことで、問題行動が出にくくなったり、特有の病気を予防できるなどのメリットがあります。
去勢手術に年齢制限はないため、何歳でも手術は可能ですが、一度習慣化したマウンティングやマーキングなどの行為は完全にはなくならない可能性も。また、高齢になると麻酔のリスクや手術の負担も大きくなるため、成犬期(5歳くらいまで)のうちに検討することをおすすめします。
小型犬は成長が早く、大型犬はゆっくりの傾向があるため、実際の去勢手術のタイミングは獣医師と相談の上で決めてください。
犬の去勢手術は、メリット・デメリットを知って検討を
ペット保険では残念ながら去勢手術の費用は対象外となりますが、地域の自治体や獣医師会で助成金を受け取れる場合もあります。犬の去勢手術を決めた場合は、助成金制度があるかどうかも確認してみてください。
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監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
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※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。