犬の避妊手術の費用は?目安やメリット・デメリットを解説

犬の避妊手術の費用は?目安やメリット・デメリットを解説

犬の避妊手術は、メスと暮らす飼い主が必ず検討すべきことです。

避妊手術は望まない妊娠を防ぎ、生殖器に関する病気を防げるメリットがありますが、麻酔や後遺症のリスクなどで不安になる飼い主も多いでしょう。

今回は、犬の避妊手術のメリット・デメリットのほか、費用の目安や手術の方法などについて解説します。

犬の避妊手術について理解し、犬のために最適な選択をしてください。
まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 外科的に避妊を行う犬の避妊手術
    1. 犬の避妊手術の種類
  2. 犬の避妊手術のメリット
    1. 望まない繁殖を防げる
    2. 発情期のトラブルを防げる
    3. 生殖器関連の病気の予防
    4. 災害時のトラブル防止
  3. 犬の避妊手術のデメリット
    1. 麻酔や手術による体の負担
    2. 肥満になりやすい
    3. 繁殖が望めない
  4. 犬の避妊手術の費用目安
  5. 犬の避妊手術はペット保険で補償される?
    1. 犬の避妊手術に助成金は出る?
  6. 犬の避妊手術当日の流れと術後のホームケア
    1. 前日の絶食からお迎えまでのタイムスケジュール
    2. 退院後に自宅で気をつけるべきポイント
  7. 犬の避妊手術に関するよくある質問
    1. 手術を受けると性格が変わるって本当?
    2. 高齢犬でも避妊手術は受けられる?
  8. 犬の避妊手術はよく検討して良い選択を

外科的に避妊を行う犬の避妊手術

外科的に避妊を行う犬の避妊手術

犬の避妊手術は、全身麻酔の上で外科的にメス犬の卵巣、または卵巣と子宮の摘出を行うもので、手術方法には「開腹手術」や「腹腔鏡手術」があり、どの方法を採用しているかは動物病院によって異なります。

避妊手術を受けると、発情期がなくなり、永久的に避妊ができます。

メスの犬は生後6〜10ヵ月頃に性成熟を迎え、その後は基本的に年に1〜2回発情期を迎えます。個体差はありますが、発情期には発情出血があり、周囲を汚さないようにマナーパンツやオムツなどを履かせる必要があります。

ホルモンバランスの変化で食欲がなくなったり、落ちつきがなくなったりと、行動に変化のある犬もいます。

また、フェロモンで未去勢のオスを刺激してしまい、追いかけられるなどのトラブルになる可能性がありますので、この時期の外出には注意が必要です。
なお、犬特有の現象として、発情期が終わって妊娠していなくても、犬の体が2〜3ヵ月程度妊娠したような状態になることがあります。

この期間は発情後期偽妊娠とも呼ばれ、ホルモンの関係で生殖器系のトラブルが多くなるほか、つわりのような症状や腹部の膨らみ、乳腺の発達などが見られる犬もいるようです。
発情後期が終われば、次の発情までは通常どおりに過ごせることが一般的です。ただし、避妊手術を行わなければこのような変化が周期的に繰り返されます

犬の避妊手術の種類

犬の避妊手術は、大きく分けて、卵巣のみを摘出する「卵巣摘出術」と、卵巣も子宮も摘出する「子宮卵巣摘出術」の2種類があります。

卵巣は、多少組織が残っていれば再生する可能性がある臓器です。万が一取り残した組織が再生すれば、子宮蓄膿症などのおそろしい病気のリスクも残るため、日本では子宮卵巣摘出術が推奨されています

しかし、確実に卵巣を摘出できれば、卵巣摘出術でも子宮卵巣摘出術と病気のリスクはあまり変わりません。

卵巣のみの摘出のほうが、傷が小さくて出血が少なくなり、手術時間も短くて済むといったメリットもあるため、卵巣摘出術を推奨する動物病院もあります
実際にどの手術方法が選ばれるかは、犬の健康状態や体質などによっても変わるでしょう。

犬の避妊手術を検討する場合は、費用だけでなくかかりつけの病院の方針なども確認し、不明点は獣医師に相談するようにしてください。

犬の避妊手術のメリット

犬の避妊手術のメリット

「犬に手術を受けさせるのはかわいそう」と考えて手術をためらう飼い主は多いかもしれません。しかし、犬の避妊手術にはさまざまなメリットがあります。

具体的なメリットは、下記のとおりです。
<犬の避妊手術のメリット>
■望まない繁殖を防げる
■発情期のトラブルを防げる
■生殖器関連の病気の予防
■災害時のトラブル防止

望まない繁殖を防げる

望まない繁殖を防げることが、犬の避妊手術の最も大きなメリットでしょう。

意図せず犬が妊娠してしまい、生まれた子犬を飼えない…ということになれば、飼い主も犬も不幸です。

また、犬種によってなりやすい遺伝病があり、無症状でも原因遺伝子を持っていれば、子が遺伝病を発症する可能性があります。

遺伝病には命に関わるものも多く、防ぐためには遺伝子検査を行って原因遺伝子を持たない犬のみ繁殖させるなどの計画が必要です。

一般的な飼い主がこのような検査や計画を行うのは難しいため、安易な繁殖には注意しなければなりません。

発情期のトラブルを防げる

前述したように、発情期は犬が不安定になったり食欲がなくなったりするほか、発情出血で周囲を汚してしまう可能性があります。

また、メスのフェロモンが未去勢のオスを刺激して、散歩中やドッグランなどで追いかけ回されたり、オス同士がメスをめぐってケンカしたりするなどのトラブルに巻き込まれる可能性もあるでしょう。
避妊手術によって、こうした発情期のトラブルを防ぐことができます

生殖器関連の病気の予防

避妊手術を受けさせることで、子宮蓄膿症子宮がん卵巣がん乳腺炎乳腺腫瘍などのメスの犬特有の病気の予防につながります

老犬で発症の多い糖尿病などの病気も、避妊手術を受けていない犬で起きやすいとされており、若いうちに手術を受けることで発症しにくくなるといわれています。

これらの病気には治療が難しかったり、命を落としたりするものも多いです。
健康な犬に手術を受けさせるのはかわいそうと考える飼い主は多いですが、避妊手術は病気の予防につながり結果として健康寿命を延ばせる可能性があります。

災害時のトラブル防止

環境省が公開している「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」では、災害時の犬の健康管理の観点から、避妊手術を推奨しています。

大きな災害が起きたとき、避難の際に飼い主と犬がばらばらになってしまったり、避難所や仮設住宅などで多くの人や動物と一緒に暮らしたりすることがあるかもしれません。
そのような災害時に、望まない繁殖や発情に関わるトラブルを避けるために、避妊手術が推奨されているのです。

犬の避妊手術のデメリット

犬の避妊手術のデメリット

避妊手術を受けさせれば、元に戻すことはできません。手術を検討する際は、デメリットを理解したうえで検討するようにしてください。

ここからは、犬の避妊手術で考えられるデメリットを紹介します。
<犬の避妊手術のデメリット>
■麻酔や手術による体の負担
■肥満になりやすい
■繁殖が望めない

麻酔や手術による体の負担

犬の避妊手術は、全身麻酔をした上で行われます。事前に検査を行って獣医師が手術可能と判断した場合のみ実施されますが、リスクはゼロとはいえません

特に、パグやフレンチブルドッグといった短頭種の場合、麻酔後に気道閉塞を起こす場合があり、注意が必要です。
術後は痛みが生じるほか、傷口を保護するためにエリザベスカラーや術後服などを使う必要もあり、犬にとって負担になる可能性があります。

肥満になりやすい

避妊手術後は、ホルモンバランスの変化で食欲が増しやすくなる一方で、基礎代謝は20〜30%ほど低下するといわれており、そのため、手術前と同じ量のフードを与え続けると、肥満につながるおそれがあります。

避妊去勢した犬用のフードダイエットフードに替える、適度な運動をさせるなどし、肥満にならないよう配慮してあげましょう。
肥満はさまざまな病気の原因となります。避妊手術後はこれまで以上に食事量や体重の管理が大切です。

繁殖が望めない

子犬のときには考えられなくても、いっしょに暮らすうちに、愛犬の子孫を残したいと考えるようになるかもしれません。

避妊手術を受けた後は繁殖ができなくなるため、慎重に検討してください

ただし、犬の妊娠・出産には、遺伝病のリスクや体への負担も伴います。繁殖を検討する際には、それらについての考慮も必要です。

犬の避妊手術の費用目安

犬の避妊手術の費用目安

(公社)日本獣医師会発表の「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」によると、体重10kgの犬に対する避妊手術料金は、卵巣摘出術と子宮卵巣摘出術いずれも中央値は2万7,500円でした。

ただし、実際にかかる費用は手術そのものだけではありません。

動物病院は自由診療のため病院ごとに費用設定が異なりますので、術前検査や麻酔の管理費用として1万5,000〜2万円程度が追加でかかることがあります。

さらに、術後の内服薬入院エリザベスカラーや術後服などの費用が加算される場合もあるため、小型犬でも総額5万円前後になるケースが一般的と言われています。
また、犬の体重が増えるほど麻酔薬や薬剤の量が増えやすく、費用が高くなる傾向があります。
犬の避妊手術の費用目安

項目

目安

日本獣医師会調査の中央値

2万7,500円(体重10kgの犬、卵巣摘出術・子宮卵巣摘出術とも)

小型犬〜中型犬の総額目安

3万〜5万円程度

大型犬の総額目安

4万〜8万円程度

このように、犬の避妊手術費用は「中央値だけ」で見ると比較的シンプルに見えますが、実際には犬の大きさや手術方法、入院の有無によって差が出ます。

見積もりを確認する際は、手術代だけでなく、術前検査・麻酔・術後の薬・再診料まで含まれているかをあわせて確認しておくと安心です。

※参考:公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査

犬の避妊手術はペット保険で補償される?

犬の避妊手術はペット保険で補償される?

ペット保険は、病気やケガの診療費を補償するものです。

一方、避妊手術は、健康な犬に対して予防目的で行うため、事前・事後の検査費用などを含めて、保険金給付の対象外とされています。そのため、飼い主が全額自己負担で支払うことになります。

ただし、すべてのケースで一律に対象外になるとは限りません。

例えば、乳腺腫瘍などの症状があり、治療の一環として卵巣や子宮の摘出が必要と判断された場合は、補償対象になることがあります。
実際の取り扱いは保険会社や契約内容によって異なるため、請求前に約款や重要事項説明書を確認しておくと安心です。

気軽に支払える金額ではないかもしれませんが、将来的に生殖器やホルモンに関連した病気にかかった場合の治療費や、命の危険があることを考えれば、加入を検討してもよいのではないでしょうか。

犬の避妊手術に助成金は出る?

犬を対象とした助成制度はかなり限られているものの、一部の自治体や地域の獣医師会では、犬の避妊手術費用助成金制度を設けていることがあります。

金額としては3,000〜4,000円程度ですが、避妊手術にはある程度まとまった費用がかかるため、制度があれば利用したいものです。

犬の避妊手術を検討したら、地域の自治体や獣医師会で助成金制度があるか一度確認してみるのがおすすめです。

また、利用条件も、その自治体に住民登録していることや犬を自治体に登録していること、1年以内に狂犬病注射を受けていることなど、自治体ごとに異なります。こちらも事前に確認しておきましょう。

犬の避妊手術当日の流れと術後のホームケア

犬の避妊手術当日の流れと術後のホームケア

犬の避妊手術は、全身麻酔を伴うため、当日の流れや術後のケアを事前に理解しておくことが大切です。適切な準備とアフターケアを行うことで、麻酔や手術のリスクを抑え、愛犬の負担を軽減できます。

また、発情期(ヒート)と手術のタイミングが重なる場合は、出血リスクを避けるために手術を延期するケースもあります。

安全に避妊手術を受けるためにも、事前に獣医師とスケジュールを確認しておきましょう。

前日の絶食からお迎えまでのタイムスケジュール

避妊手術では全身麻酔を使用するため、前日夜や当日の指定時刻から食事や水を控えるよう指示されます。

これは、麻酔中に嘔吐した際、吐いたものが気管に入ってしまうのを防ぐためです。意識がない状態で誤って吸い込んでしまうと、誤嚥性肺炎や窒息につながるおそれがあります。
また、手術当日の流れは、以下のようになることが一般的です。
<手術当日の流れ>
1. 事前に身体検査や血液検査を行い、麻酔が可能か確認する

2. 指定時間に来院し、犬を預ける

3. 麻酔をかけ、手術部位の毛刈り・消毒を実施する

4. 卵巣、または卵巣と子宮を摘出する(手術時間は1時間〜1時間半程度)

5. 麻酔からの覚醒後、状態を観察する

6. 日帰りまたは1泊入院後にお迎えする
なお、発情中は子宮や血管が充血して出血しやすくなるため、通常は延期するケースが多いとされています。

退院後に自宅で気をつけるべきポイント

退院後は、傷口の保護と安静が重要です。犬が傷を舐めてしまうと、傷口が開いたり感染したりするおそれがあるため、エリザベスカラーや術後服を着用させます。

また、術後は次のような点にも注意しましょう。
<避妊手術後の注意点>
●処方された痛み止めや抗生剤は指示どおりに服用させる
●激しい運動やジャンプは避け、安静に過ごさせる
●抜糸まではエリザベスカラーは外さない
通常は1〜2週間後に再診・抜糸を行います。

それまではこうした点に注意し、安全に過ごせるよう看病してあげましょう。傷口が開いてしまったり、気になる点があれば、迷わず獣医師に相談してください

犬の避妊手術に関するよくある質問

犬の避妊手術に関するよくある質問

犬の避妊手術については、「性格は変わるのか」、「高齢でも受けられるのか」など、不安や疑問を感じる飼い主も多いでしょう。

ここでは、よくある質問とその考え方を紹介します。

手術を受けると性格が変わるって本当?

避妊・去勢手術によって、犬の性格そのものが大きく変わることはないと考えられています

ただし、性ホルモンの分泌が減ることで、発情期に見られていた興奮しやすさや落ち着きのなさが和らぎ、結果として「穏やかになった」と感じられることはあります。これはあくまで性ホルモンに関連した行動の変化であり、犬の根本的な性格が変わるわけではありません。
なお、こうした変化には個体差が大きく、手術前後で特に変化が見られない犬も少なくありません。

また、手術や入院の影響で一時的に怖がりになることもありますが、多くは時間の経過とともに落ち着きます。

高齢犬でも避妊手術は受けられる?

避妊手術に明確な年齢制限はありませんが、高齢になるほど心臓や腎臓などの機能低下により、麻酔のリスクは高まる傾向があります。
シニア犬の場合は、より詳細な術前検査を行い、手術のメリットがリスクを上回るかどうか、慎重に判断することが重要です。

一方で、子宮蓄膿症などの病気では緊急手術が必要になるケースもあるため、年齢だけで判断せず、獣医師と相談しながら最適な選択を検討するようにしましょう。

犬の避妊手術はよく検討して良い選択を

犬の避妊手術は、望まない繁殖を防ぐだけでなく、発情期に関連したトラブルやメス特有の病気、ホルモンに関係する病気などを予防できるメリットがあります。

一方で、手術には費用がかかり、リスクがないわけではありませんから、飼い主は慎重に検討して良い選択をしてください。

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まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
 ●まさの森・動物病院

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

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