犬の避妊手術の費用は?目安やメリット・デメリットを解説
避妊手術は望まない妊娠を防ぎ、生殖器に関する病気を防げるメリットがありますが、麻酔や後遺症のリスクなどで不安になる飼い主も多いでしょう。
今回は、犬の避妊手術のメリット・デメリットのほか、費用の目安や手術の方法などについて解説します。
犬の避妊手術について理解し、犬のために最適な選択をしてください。

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
外科的に避妊を行う犬の避妊手術
メス犬は生後6〜10ヵ月頃に性成熟を迎え、その後は基本的に年に1〜2回発情期を迎えます。
個体差はありますが、発情期には発情出血があり、周囲を汚さないようにマナーパンツやオムツなどを履かせましょうる必要があるでしょう。
また、フェロモンで未去勢のオス犬を刺激してしまい、追いかけられるなどのトラブルになる可能性がありますので、この時期の外出には注意が必要です。
この期間は発情後期や偽妊娠とも呼ばれ、ホルモンの関係で生殖器系のトラブルが多くなるほか、つわりのような症状や腹部の膨らみ、乳腺の発達などが見られる犬もいるようです。
発情後期が終われば、次の発情までは通常どおりに過ごせますが、避妊手術を行わなければこのような変化が周期的に繰り返されます。
犬の避妊手術の種類
卵巣は、多少組織が残っていれば再生する可能性がある臓器です。万が一取り残しがあって再生すれば、子宮蓄膿症などのおそろしい病気のリスクも残るため、日本では子宮卵巣摘出術が推奨されています。
しかし、確実に卵巣を摘出できれば、卵巣摘出術でも子宮卵巣摘出術と病気のリスクはあまり変わりません。
卵巣のみの摘出のほうが、傷が小さくて出血が少なくなり、手術時間も短くて済むといったメリットもあるため、卵巣摘出術を推奨する動物病院もあります。犬の健康状態や体質などによっても、選ばれる手術は変わるでしょう。
犬の避妊手術を検討する場合、費用だけでなくかかりつけの病院の方針なども確認し、不明点は獣医師に相談するようにしてください。
犬の避妊手術のメリット
望まない繁殖を防げる
意図せず犬が妊娠してしまい、子犬を飼えない…ということになれば、飼い主も犬も不幸です。
また、犬種によってなりやすい遺伝病があり、無症状でも原因遺伝子を持っていれば、子が遺伝病を発症する可能性があります。
遺伝病には命に関わるものも多く、防ぐためには遺伝子検査を行って原因遺伝子を持たない犬のみ繁殖させるなどの計画が必要です。一般的な飼い主がこのような検査や計画を行うのは難しいため、安易な繁殖には注意しなければなりません。
発情期のトラブルを防げる
メス犬のフェロモンが未去勢のオス犬を刺激して、散歩中やドッグランなどで追い掛け回されたり、オス犬同士がメス犬をめぐってケンカしたりするなどのトラブルに巻き込まれる可能性もあるでしょう。
避妊手術によって、こういったトラブルを防ぐことができます。
生殖器関連の病気の予防
老犬で発症の多い糖尿病などの病気も、避妊手術を受けていない犬で起きやすいとされており、若いうちに手術を受けることで発症しにくくなるといわれています。
これらの病気には治療が難しかったり、命を落としたりするものも多いです。
健康な犬に手術を受けさせるのはかわいそうと考える飼い主は多いですが、避妊手術を受けることで犬の病気予防になり、健康寿命を延ばせる可能性があります。
災害時のトラブル防止
大きな災害が起きたとき、避難の際に飼い主と犬がばらばらになってしまったり、避難所や仮設住宅などの集団の中で暮らしたりすることがあるかもしれません。
そういったときに望まない繁殖や、発情に関わるトラブルを避けるために、避妊手術が推奨されているのです。
犬の避妊手術のデメリット
ここからは、犬の避妊手術で考えられるデメリットを紹介します。
麻酔や手術による体の負担
特に、パグやフレンチブルドッグといった短頭種の場合、麻酔後に気道閉塞を起こす場合があり、注意が必要です。
術後は痛みがありますし、傷口を保護するためにエリザベスカラーや術後服などを使う必要もあり、犬が負担に感じる可能性があります。
肥満になりやすい
肥満はさまざまな病気の原因となるため、避妊手術後は特に、犬の食事や体重の管理が欠かせません。
繁殖が望めない
ただし、犬の妊娠・出産には、遺伝病のリスクや体への負担もありますから、検討する際にはそれらについての考慮も必要です。
犬の避妊手術の費用目安
動物病院は自由診療のため、病院ごとに費用は変わります。また、実際の避妊手術では、手術そのものの費用のほかに、事前・事後の検査や痛み止め、入院などの費用もかかります。
さらに、上記の費用は体重10kgの犬の場合であり、体重によって使用する麻酔や薬剤の量が変わるため、多くの動物病院では体重別で手術料金を変えています。また犬のサイズによっても金額にばらつきがあります。
実際に支払う費用としては、小型犬や中型犬で3万〜5万円、大型犬で4万〜8万円程度となることが多いようです。
※公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」
犬の避妊手術はペット保険で補償される?
気軽に支払える金額ではないかもしれませんが、将来的に生殖器やホルモンに関連した病気にかかった場合の治療費や、命の危険があることを考えれば、そう高いとはいえないでしょう。
病気やケガの治療の一環として避妊手術が必要な場合は、ペット保険から保険金が給付される場合もあります。
犬の避妊手術に助成金を出す自治体もある
犬の避妊手術を検討したら、地域の自治体や獣医師会で助成金制度があるか確認してみてください。
その自治体に住民登録していることや、犬を自治体に登録の上、1年以内に狂犬病注射を受けているといった条件がありますから、事前に確認しましょう。
犬の避妊手術はよく検討して良い選択を
手術には費用がかかり、リスクがないわけではありませんから、飼い主は慎重に検討し、愛犬のために良い選択をしてください。
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監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
●ガイア動物病院(外部リンク)
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。