ペットの熱中症とは?犬猫の初期症状や応急処置・予防対策を解説

ペットの熱中症とは?犬猫の初期症状や応急処置・予防対策を解説

夏場は、ペットの犬や猫の熱中症が心配になる飼い主も多いのではないでしょうか。

熱中症は重症化すると命に関わることもあります。また、炎天下の屋外だけでなく、室温や湿度が上昇した室内でも起こる可能性があり、注意が必要です。

本記事では、犬・猫が熱中症になりやすい理由初期症状応急処置予防対策などを解説していきます。暑い季節にペットの健康を守りたい飼い主は、ぜひ参考にしてください。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。りすくがたか
安田賢

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢

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日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会

■所属先

まさの森・動物病院

https://masanomori.com/

mokuji目次

  1. ペットの熱中症とは?犬・猫が発症しやすい理由
    1. 犬・猫は体温調節が苦手で熱がこもりやすい
    2. 熱中症を引き起こしやすい環境
  2. 犬の熱中症の症状を段階別に見分ける
    1. 軽度・初期症状のサイン
    2. 命に関わる重度の症状
  3. 猫の熱中症の症状を見分ける
    1. 猫に見られる熱中症のサイン
    2. 猫は症状に気づきにくい理由
  4. 犬・猫が熱中症になったときの応急処置
    1. すぐに涼しい場所へ移動し体を冷やす
    2. 動物病院を受診する目安
  5. 犬・猫の熱中症を防ぐための対策
    1. 室内でできる熱中症対策
    2. 外出・散歩時の熱中症対策
  6. ペットの熱中症は日頃の対策と早めの対応が大切

ペットの熱中症とは?犬・猫が発症しやすい理由

ペットの熱中症とは?犬・猫が発症しやすい理由

ペットの熱中症とは、高温多湿な環境や激しい運動などによって体温調節が追いつかなくなり、体内に熱がこもることで起こる病気です。

高体温状態が続くと、全身の組織や臓器に影響が及び、命に関わることもあります。

犬や猫は、人間のように全身から汗をかいて体温を下げることができません。そのため、気温だけでなく、湿度や風通し、直射日光、地面や壁からの照り返しなどにも注意が必要です。

犬・猫は体温調節が苦手で熱がこもりやすい

犬や猫にも汗腺はありますが、体温調節に使われる汗をかく場所は主に肉球周辺に限られます。人間のように全身から汗をかき、その水分が蒸発するときの気化熱によって、効率よく体温を下げることはできません

は、暑さを感じると、口を開けて浅く速い呼吸を繰り返します。この呼吸は「パンティング」と呼ばれ、舌や気道の水分を蒸発させて熱を外へ逃がす仕組みです。
しかし、気温や湿度が高い環境では水分が蒸発しにくくなり、パンティングだけでは十分に放熱できない場合があります。

一方、は犬のようなパンティングは通常あまり見られません。強い暑さや極度の興奮、呼吸機能の悪化などによって口を開けて呼吸する場合があるため、開口呼吸が見られたときは注意が必要です。

熱中症を引き起こしやすい環境

犬や猫の熱中症は、炎天下だけでなく、エアコンを使用していない室内や風通しの悪い部屋でも起こる可能性があります。特に注意したいのは、次のような環境です。
<犬や猫の熱中症で注意したい環境>
●高温多湿で風通しの悪い室内
●直射日光が差し込む窓際や、熱がこもりやすいケージ
●暑い時間帯の散歩や運動
●熱くなったアスファルトの上
●エアコンを止めた車内
●高温環境での長時間の移動
車内は、日陰に駐車していても安全な温度を維持できるとは限りません

JAFが2025年9月、最高気温34℃の環境で行った「夏の車内温度」テストでは、日なたに駐車した車は、エアコンを停止してからわずか5分で運転席の車内温度が38℃に達し、90分後には53℃まで上昇しました。日陰に駐車した車でも、90分後には33℃に達しています。

また、人体の熱収支などをもとに算出する「暑さ指数」は、日なたでは「危険」レベルを大きく上回り、日陰でも「警戒」レベルを示しました。
「暑さ指数」はペットを対象とした指標ではありませんが、日陰であっても車内が安全とはいえません。JAFも、高齢者や子ども、ペットなどを車内に残すことは危険だとしています。

わずかな時間であっても、犬や猫だけを車内に残さないようにしましょう。
※参考:一般社団法人 日本自動車連盟 (JAF)|「夏の車内温度と水分喪失量(JAFユーザーテスト)

犬の熱中症の症状を段階別に見分ける

犬の熱中症の症状を段階別に見分ける

犬の熱中症では、初期には呼吸や行動の変化が現れ、進行すると嘔吐や下痢意識の低下などが見られることがあります。ただし、症状の現れ方や進行速度には個体差があり、見た目だけで重症度を正確に判断することはできません。

犬の熱中症については、以下の記事でも詳しく解説しています。

軽度・初期症状のサイン

犬の熱中症が疑われる初期症状には、次のようなものがあります。
<犬の熱中症が疑われる初期症状>
●普段よりも激しいパンティング
●呼吸や心拍が速い
●よだれが増える
●体を触ると熱い
●口の中や舌が赤くなる
●動きたがらない
犬は運動後や興奮したときにもパンティングをするため、呼吸が速いだけで熱中症とは断定できません。ただし、涼しい場所へ移動しても激しい呼吸が続く場合や、よだれ、ふらつき、元気の低下などを伴う場合は注意が必要です。

犬の平熱は体格や個体による差がありますが、40℃を超える場合は高体温状態と考えられます。検温によって応急処置や動物病院への連絡が遅れないようにし、安全に測れない場合は無理に測らないでください。

犬の平熱や体温の測り方については、以下の記事でも詳しく解説しています。

命に関わる重度の症状

熱中症が進行すると、高体温や脱水、循環状態の悪化などで全身の組織や臓器が傷つく可能性があります。

次のような症状が見られる場合は、命に関わる緊急状態が疑われます。
<犬の熱中症で命に関わる重度の症状>
●嘔吐や下痢
●呼吸が苦しそう
●ぐったりして立てない、歩けない
●呼びかけへの反応が鈍い
●意識がもうろうとしている
●けいれんや意識消失
●舌や歯茎が青紫色になる
●口や鼻、肛門などから出血する
高体温の状態が続くと、脳や腎臓などの臓器や、血液を固める機能に障害が生じることがあります。

重症化すると、ショックや多臓器不全につながる可能性もあります。また、初期には体温が上がっていても、ショック状態へ進むと体温が下がる場合があります。

上記の症状が見られた場合は自宅で様子を見ず、動物病院へ連絡し、体を冷やしながら搬送してください。

猫の熱中症の症状を見分ける

猫の熱中症の症状を見分ける

猫の熱中症でも、元気の低下やよだれ、ふらつき、嘔吐など、犬と共通する症状が見られます。一方、猫は犬ほど頻繁にパンティングをしないため、口を開けた呼吸は重要な異変のサインです。

ただし、猫の開口呼吸は、熱中症以外に極度の興奮や呼吸状態の悪化などでも起こる可能性があります。

原因を自己判断せず、呼吸の状態や意識、行動の変化を確認することが大切です。

猫に見られる熱中症のサイン

猫の熱中症では、初めに「何となく元気がない」、「いつもより動かない」といった分かりにくい変化が現れることがあります。

状態が進むと、次のような症状が見られます。
<猫の熱中症、状態が進んだ場合の症状>
●口を開けてハアハアと呼吸する
●呼吸が速い、苦しそうにしている
●よだれが増える
●落ち着きがなくなる
●ぐったりして動かない
●足元がふらつく
●嘔吐や下痢
●舌や歯茎が赤い、または青紫色になる
●けいれんや意識の低下
猫には、犬のようなパンティングは通常あまり見られません。猫に開口呼吸が見られた場合は、熱中症や呼吸状態の悪化などが疑われるため、速やかに動物病院へ連絡してください。

一般的な成猫の平熱は、直腸温で38〜39℃です。39℃前後は正常範囲に含まれる場合があり、一般的には39.5℃を超えると、発熱または高体温の可能性があります。

猫は症状に気づきにくい理由

猫は体調の変化を表に出しにくい傾向があり、初期には「寝ている時間が長い」、「活動量が減った」など、普段との小さな違いしか現れない場合があります。

軽度の熱中症では、単に暑くて休んでいるように見えることもあるため、変化を見逃さないことが重要です。普段から、食欲、活動量、呼吸の様子、よく過ごす場所などを観察しておくと、異変に気づきやすくなります。

また、室内で暮らしている猫でも熱中症になる可能性があります。

エアコンを使用していない部屋風通しの悪い場所直射日光が長時間差し込む窓際熱がこもるケージなどには注意が必要です。

猫が自分で日差しを避け、涼しい場所へ移動できる環境を整えましょう。

犬・猫が熱中症になったときの応急処置

犬・猫が熱中症になったときの応急処置

熱中症が疑われる場合は、できるだけ早く涼しい場所へ移動させ、動物病院へ連絡します。また、搬送までの間も、常温の水や送風を利用して安全に体を冷やすことが重要です。

すぐに涼しい場所へ移動し体を冷やす

熱中症が疑われる場合は、次の手順で応急処置を行いましょう。
1. 涼しい場所へ移動させる
屋外では直射日光を避け、日陰や風通しのよい場所へ移動します。
可能であれば、エアコンの効いた室内へ運びましょう。ぐったりしている場合は無理に歩かせず、安全に運びます。

2. 常温の水で体を濡らして風を当てる
常温の水道水を体にかけ、扇風機やうちわで風を送ります。被毛の厚い犬や猫では、表面だけでなく皮膚まで水が届くように濡らしてください。

3. 首・脇・内股などを冷やす
タオルで包んだ保冷剤などを、首周り、脇の下、内股など太い血管が通る部分に当てます。保冷剤や氷を皮膚へ直接当てることは避けてください。
氷水を全身にかけたり、冷水に浸したりすると、皮膚の血管が収縮し、体内の熱を逃がしにくくなる可能性があります。急激な冷却や冷やしすぎは避けてください
★監修・安田先生
体温を下げ続けると、逆に低体温症やショックを引き起こす危険があります。5〜10分おきに体温を測定できる状況であれば、体温(直腸温)が39.0℃程度まで下がった時点で冷却ストップするとなおよいと思います。

動物病院を受診する目安

熱中症が疑われた時点で動物病院へ連絡し、現在の症状や置かれていた環境を伝えて、獣医師の指示を受けてください。

特に、次のような症状が見られる場合は緊急性が高いと考えられます。
<緊急性の高い症状>
●涼しい場所へ移動しても激しい呼吸が続く
●呼吸が苦しそう
●ぐったりしている、立てない
●嘔吐や下痢がある
●ふらつきやけいれんがある
●呼びかけへの反応が鈍い
●舌や歯茎が青紫色になっている
●意識を失っている
応急処置によって呼吸や体温が落ち着いたように見えても、脱水や臓器への影響が残っている可能性があります。自宅での冷却だけで対応を終わらせず、動物病院を受診する必要があります。

受診前に電話を入れ、熱中症が疑われることや、症状が現れた時間、現在の呼吸・意識の状態、行った応急処置を分かる範囲で伝え、獣医師の指示に従ってください。
★監修・安田先生
特に命に関わる危険なサインとしては以下の症状を意識しています。
@舌・粘膜のチアノーゼや充血(レンガ色):酸素不足や循環不全(ショック)の兆候です。
A血便・吐血・黒色便:消化管粘膜の壊死や、播種性血管内凝固症候群(DIC)を起こしている可能性があり極めて危険です。(積極的な治療を行っても予後不良で、手遅れとなることが多いです)
B意識混濁・発作・著しく衰弱して立てない:脳浮腫や神経障害が進行しています。一刻を争う救急処置が必要です。(これも非常に危険です)

熱中症リスクが高い犬種・猫種
@短頭種(鼻が短い品種)
・犬:フレンチ・ブルドッグ、パグ、ボストン・テリア、ブルドッグ、シーズー、ペキニーズなど
・猫:エキゾチックショートヘア、ペルシャ、ヒマラヤンなど
★理由:解剖学的な構造上、気道が狭くパンティング(浅速呼吸)による熱放散が非常に苦手です。
A北方原産・厚いダブルコートの品種
シベリアン・ハスキー、サモエド、秋田犬、メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャットなど
★理由:極寒の環境に適応した被毛構造のため、体内に熱がこもりやすいです(このような犬種にはサマーカットが推奨されます)。
Bその他
短足種(ダックスフンドやコーギーなど、アスファルトの照り返しを受けやすい犬種)肥満傾向の個体
C注意すべき基礎疾患・身体的特徴
・呼吸器疾患:気管虚脱、喉頭麻痺、猫喘息など
・心疾患・腎疾患:心不全、慢性腎臓病(循環調整や水分保持機能が低下しているため)
・高齢個体・幼齢個体:体温調節中枢の機能が未発達、または衰えているため急激に悪化します

犬・猫の熱中症を防ぐための対策

犬・猫の熱中症を防ぐための対策

犬や猫の熱中症は、生活環境や外出時間を見直すことで発症リスクを下げられます。気温だけで判断せず、湿度や風通し、日当たり、床や地面の温度まで確認することが大切です。

暑さへの耐性は、犬種・猫種、年齢、体格、被毛、肥満の有無、持病などによって異なります。それぞれのペットの様子を観察しながら環境を調整してください。

室内でできる熱中症対策

室内ではエアコンを使用し、温度と湿度が高くなりすぎないように管理します。暑い日や室温の上昇が予想される日は、留守番中もエアコンを使用し、犬や猫が過ごす場所の環境を保つことが大切です。

扇風機やサーキュレーターは、室内の空気を循環させるために役立ちますが、室温そのものを下げる機能ではないため、気温が高い日はエアコンと併用してください。
適切な室温は、犬種・猫種、年齢、体格、被毛、健康状態、部屋の日当たりなどによって異なります。エアコンの設定温度だけで判断せず、温湿度計を使って実際の環境を確認しましょう。

ほかにも、次のような対策があります。
<室内でできるその他熱中症対策>
新鮮な水複数の場所に用意する
●カーテンやすだれで直射日光を遮る
冷感マット涼しい床を利用できるようにする
●犬や猫が自分から涼しい場所へ移動できるようにする
●ケージやキャリーケース内に熱がこもらないようにする
猫は日当たりのよい窓際を好むことがありますが、長時間直射日光が当たる場所では体温が上がる可能性があります。暑い時間帯はカーテンを閉めるなど、日差しを避けられる場所を用意してください。

外出・散歩時の熱中症対策

犬の散歩は日中の暑い時間帯を避け、気温が低い早朝や日没後に行いましょう。
ただし、日没後もアスファルトに熱が残っている場合があります。出発前に地面を手で触り、熱すぎないことを確認してください。
散歩中は水を携帯し、こまめに休憩を取りましょう。

普段より呼吸が激しくなったり、歩く速度が落ちたりした場合は、散歩を中止して涼しい場所へ移動させ、体を冷やしてください。

涼しい場所へ移しても激しい呼吸が続く場合や、よだれ、ぐったりする、ふらつくなどの症状が見られる場合は、動物病院へ連絡し、体を冷やしながら獣医師の指示に従って搬送します。
外出時に車を利用する際は、短時間であっても犬や猫だけを車内に残さないことが大切です。

JAFの実験では、日なたに駐車した場合、エアコン停止からわずか5分で運転席の車内温度は38℃を記録、90分後には53℃まで上昇しています。
※参考:一般社団法人日本自動車連盟(JAF)|夏の車内温度と水分喪失量(JAFユーザーテスト)

長時間の放置は法的措置も

高温の車内など、健康や安全を保てない環境に犬や猫を置いて衰弱させた場合は、状況によって動物愛護管理法上の虐待に該当する可能性があります。

また、車内に残されたペットに衰弱などの異変が見られる場合は、発見者から自治体の動物愛護管理担当部署や警察へ相談・通報が行われることもあります。

ペットの熱中症は日頃の対策と早めの対応が大切

ペットの熱中症は、室内の温度や湿度を管理し、暑い時間帯の外出を避けることで発症リスクを下げられます。直射日光や地面の熱、車内温度にも注意し、犬や猫がいつでも新鮮な水を飲める環境を整えましょう。

激しい呼吸、よだれ、ふらつき、ぐったりするなどの異変が見られた場合は、涼しい場所へ移動させて体を冷やし、早めに動物病院へ連絡してください。症状が落ち着いたように見えても、自己判断で様子を見続けないことが大切です。

熱中症を含む病気やけがの治療費に備えてペット保険を検討する場合は、補償内容や保険料、支払限度額、補償対象外となる条件などを比較する必要があります。保険選びの参考として、実際の利用者による評価を掲載した「ペット保険 オリコン顧客満足度ランキング」もぜひご覧ください。
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