犬の涙やけの原因は？自宅でできるケアと動物病院での治し方
この記事では、犬の涙やけついて、原因から自宅でのケア、すぐに動物病院に行くべき症状、病院での治療法まで詳しく解説。涙やけの原因を正しく理解し、日常のケアで症状を軽減する方法や受診が必要なサインなど、愛犬の健康を守りたい飼い主さんに役立つ実践的な知識をご紹介します。
監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
まずは知っておきたい、犬の涙やけの正体
この茶色い汚れの正体は「涙やけ」と呼ばれ、涙に含まれる成分が酸化して変色したものです。涙やけ自体は病気ではありませんが、放置すると皮膚炎などのトラブルにつながる可能性があります。
特に毛色が白い犬種では目立ちやすく、見た目が気になることから多くの飼い主さんが悩まれています。ここでは、涙やけがどのようにして起こるのか、また普通の目やにとは何が違うのかについて、わかりやすく解説していきます。
涙やけとは？涙が茶色く変色する仕組み
「涙やけ」と「ただの目やに」との違い
涙やけは液状の涙が毛に付着して変色した状態で、目の下の毛が茶色や赤茶色に染まっているのが特徴です。一方、目やには老廃物と粘液が混ざってできた塊で、目頭や目の周りに付着します。
しかし、涙やけは毛自体が染まってしまっているため、簡単には取れません。
ただし、涙の分泌が多い状態では、涙やけと目やにが同時に発生することもあるため、両方の症状が見られる場合もあります。
あなたの愛犬は大丈夫？涙やけになりやすい犬種の特徴
たとえば、毛色が薄い犬種では、たとえ涙やけの程度が軽くても変色が目立ちやすくなります。また、生まれつき鼻涙管が狭い犬種や、顔の構造上涙があふれやすい犬種では、涙やけが起こりやすい傾向にあります。
ここでは、涙やけになりやすい犬種の特徴を3つのタイプに分けて紹介します。それぞれの特徴を理解し、愛犬が涙やけになりやすいタイプかどうかを知っておくことで、早めのケアや予防につなげることができるでしょう。
毛が白く、汚れが目立ちやすい犬種
●トイプードル(ホワイト)
●ビションフリーゼ
●スピッツ
など、毛色が白や薄い色の犬種は、涙やけが特に目立ちやすい傾向にあります。
マルチーズやトイプードルは、生まれつき鼻涙管が細いなどの理由から流涙症になりやすい犬種とされており、その結果として涙やけが発生しやすいことも知られています。
その他の犬種でも同じように涙やけは発生しますが、白い毛に茶色い変色が現れるとコントラストによって目立つため、特に飼い主さんが気づきやすい傾向があります。
一方で、茶色や黒などの濃い毛色の犬では、涙やけがあっても変色が目立ちにくく、見過ごされがちになります。つまり、白い毛の犬種は涙やけの発見が早い分、適切なケアを始めやすいともいえるでしょう。
短頭種など、顔の構造に特徴がある犬種
●パグ
●フレンチブルドッグ
●ペキニーズ
などの短頭種は、涙やけが起こりやすい犬種として知られています。
これらの犬種は鼻が短く、顔の構造が平らなため、涙を鼻へ流す通り道である鼻涙管が圧迫されたり、曲がったりしていることが多いのです。その結果、涙がスムーズに鼻へ流れず、目からあふれ出てしまいます。
また、短頭種は生まれつき鼻涙管が狭い、あるいは閉塞している個体も珍しくありません。こうした構造上の特徴により、涙が常に目の周りに溜まりやすく、涙やけが発生しやすい状態になっています。
目が大きく、刺激を受けやすい犬種
●シーズー
などの目が大きい犬種は、目の表面が外部の刺激を受けやすく、涙の分泌量が増えやすい傾向にあります。
目が大きく突出している犬種では、ホコリや花粉、目の周りの毛などの異物が入りやすくなります。こうした物理的な刺激が加わると、目を守るために涙の分泌が増え、結果として涙があふれ出やすくなってしまうのです。
また、目が大きい犬種は、まばたきだけでは十分に涙を処理しきれないこともあり、目の下が常に濡れた状態になりがちです。こうした理由から、目が大きい犬種では涙やけが起こりやすくなっています。
なぜ？犬の涙やけを引き起こす5つの主な原因
獣医学的には、主に以下の3つの観点で原因が分類され、診断・治療が進められます。
（アレルギーや刺激による反応など）
2. 涙液の排泄経路が詰まる
（鼻涙管の狭窄や閉塞など）
3. 眼球表面での涙液保持機能の低下
（目の形やまばたき機能などの構造的要因）
ここでは、涙やけを引き起こす主な原因を5つのカテゴリーに分けて解説します。
愛犬の状態と照らし合わせながら読み進めることで、「うちの子はこれが原因かもしれない」という気づきが得られことでしょう。
【原因1】目の周りの毛やゴミによる物理的な刺激
特に目の周りの毛が長い犬種では、毛が目に触れることで常に刺激を受け、涙が止まらない状態になることがあります。また、逆さまつげ(睫毛乱生や睫毛重生)がある場合、まつげが角膜に当たり続けることで涙の量が増加します。
【原因2】涙の通り道「鼻涙管」のトラブル
通常、涙は目頭にある涙点から鼻涙管を通って鼻へ排出されますが、この管が生まれつき狭かったり詰まったりしていると、涙が鼻に流れず目からあふれてしまいます。
【原因3】病気のサインとしての涙やけ
また、外耳炎などの耳の病気が影響して、涙の量が増えることもあります。
【原因4】アレルギーや食事内容の偏り
穀物や人工添加物、特定のタンパク質源などが原因と考えられることもありますが、現時点ではこうした食事と涙やけとの関連を裏付ける明確な科学的根拠は十分に確立されていません。
そのため、食事内容の見直しは涙やけ対策の1つとして試みられることがありますが、効果には個体差があり、医学的に断定できるものではないことを理解しておくことが大切です。
【原因5】ストレスによる自律神経の乱れ
人間では強いストレスによって自律神経のバランスが乱れ、涙の分泌量が増えるケースがありますが、犬においてストレスと涙やけの関連を示す明確な科学的根拠は現在のところ確認されていません。
そのため、ストレスを涙やけの主な原因と捉えるのではなく、あくまで補助的な要因の1つとして理解しておくとよいでしょう。
自宅でできる！涙やけの正しい取り方と予防ケア
ここでは、涙やけ専用のケア用品を使ったお手入れ方法から、用品選びのポイント、さらに涙やけを悪化させないための予防習慣まで、具体的にご紹介していきます。
涙やけ専用ローション・シートを使ったお手入れ
1. まず、柔らかいコットンやガーゼをぬるま湯で軽く湿らせるか、犬専用の涙やけローションを染み込ませます。
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2. 次に、涙やけが気になる部分に優しく押さえるようにして当て、汚れをふやかしてから拭き取ります。このとき、目頭から外側に向かって拭くと、汚れが取れやすくなります。
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3. 汚れを拭き取った後は、乾いたコットンで目の周りの水分を軽く拭き取ってあげましょう。
一度涙やけによって茶色く変色した毛は、お手入れだけで元の白さに戻すことはできません。変色した毛を元に戻したい場合は、毛が自然に生え変わるのを待つか、トリミングでカットする方法が一般的です。
選ぶ際は、無香料・無着色で、アルコールや防腐剤が含まれていない低刺激性ものを選ぶと、目の周りのデリケートな皮膚にも安心して使えるでしょう。
涙やけを悪化させないための3つの予防習慣
以下では、涙やけの予防の基本と、日常に取り入れられる習慣をご紹介します。
1.適切な診断を受ける
まずは動物病院で診察を受け、鼻涙管の状態や目の疾患の有無などをチェックし、原因を明確にすることが予防・改善の第一歩です。
2.原因の除去・対処を行う
3.生活習慣を整える
犬の様子を日々観察し、定期的にトリミングを行うなど、目の周りを清潔に保つようにしましょう。
●食事内容の見直し：
涙やけへの影響は科学的に明確ではありませんが、体質に合ったフードに切り替えて改善が見られるケースもあります。
●快適な生活環境づくり：
ストレスと涙やけの因果関係は証明されていませんが、健康維持の観点から整えておくとよいでしょう。
こんな症状は要注意！動物病院へ行くべきサイン
放置すると症状が悪化し、失明などの深刻な事態につながる可能性もあるため、異常を感じたら、自己判断せずに早めに獣医師に相談することが大切になります。
ここでは、動物病院を受診すべき具体的な症状と、実際に病院でおこなわれる検査や治療法についてご紹介します。愛犬の健康を守るために、これらの情報をしっかりと把握しておきましょう。
病院の受診を強く推奨する症状リスト
・涙の量が急に増えた、または白濁している
・目をしょぼしょぼさせる、前足でこするなど痛がる素振り
・目の充血や腫れが見られる
・目やにの色が黄色や緑色をしている
・涙やけ部分から異臭がする
・皮膚がただれて赤くなっている
また、愛犬が目をしょぼしょぼさせたり、前足で目をこすったりするなど痛がる素振りを見せる場合も、目に何らかの異常が起きているサインです。
目の充血や腫れが見られる場合や、目やにの色が黄色や緑色をしている場合は、細菌感染や炎症が起きている可能性があります。さらに、涙やけ部分から異臭がする、皮膚がただれて赤くなっているといった症状がある場合は、皮膚炎が進行していると考えられます。
これらの症状を放置すると治療が複雑になったり、深刻な視力障害につながったりすることもあるため、早期の受診をおすすめします。
動物病院で行われる主な検査と治療法
触診
治療法
炎症がある場合は抗炎症剤を使用し、アレルギーが原因の場合は食事療法がおこなわれることもあるでしょう。
鼻涙管の詰まりがひどい場合や、まぶたに異常がある場合は、外科手術によって鼻涙管を拡張したり、まぶたを矯正したりする治療が必要になることもあります。
治療費
涙やけの先にある、万が一の病気と費用に備える
特に、目の充血や異常な目やに、痛がる素振りなどが見られる場合は、結膜炎や角膜炎、緑内障といった重大な病気が隠れている可能性があるため、早期の受診が欠かせません。治療には検査費用や薬代、場合によっては手術費用として数万円以上かかることもあるでしょう。
万が一の病気や高額な治療費に備えるために、ペット保険への加入を検討することも大切です。「ペット保険 オリコン顧客満足度ランキング」では、補償内容や保険料を比較できるため、愛犬に合った保険選びの参考になるでしょう。日々のケアと適切な備えで、愛犬の健康を守っていきましょう。
監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会（鳥類臨床研究会認定医）
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
