猫の結膜炎の原因は?どれくらいで治る?症状や治療法についても紹介
この記事では、結膜炎の症状や原因やどれくらいで治るか、治療方法や費用について詳しく解説。さらに、予防法や注意点、症状が似ている病気との違いも紹介します。
愛猫の健康を守るために、結膜炎について正しい知識を身につけましょう。

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
結膜炎とは?猫はなりやすい?
猫の目の病気の中でも最も一般的な病気の1つとして知られており、早期発見と適切な治療が重要となります。
放置すると重症化する可能性があり、最悪の場合は失明につながる恐れもある深刻な病気です。特に生後間もない子猫が発症した場合、まぶたが癒着したり、目の正常な発達が妨げられたりするリスクも存在します。
結膜炎になりやすい猫は?
また、品種的な特徴として、ペルシャ猫は眼瞼内反(まぶたの縁が内側に入り込む状態)を起こしやすく、それに伴って結膜炎を発症するケースが報告されています。
再発しやすい結膜炎
猫の結膜炎の症状
目やにや涙の量が増える
目の周りが常に濡れている状態が続く、1日に何度も目やにを拭き取る必要があるなどの症状は正常とは言えません。また、目やにの性状も変化し、通常の乳白色〜赤茶色から黄緑色でネバネバした状態へと変わることもあります。
目をよくこする
前足で目を掻いたり、床や壁、家具などに目を擦り付けたりする行動が目立つようになります。このような行為は症状を悪化させる可能性があるため、エリザベスカラーを装着して目を保護しましょう。
目が充血している
目が赤くなっている場合は、結膜に炎症が起きている可能性が高いため、獣医師による診察が必要です。
目のまわりが腫れている
さらに、症状が重篤化すると、目の周囲全体が腫れ上がってしまうケースも見られます。このような状態は、早急な治療が必要なサインといえます。早めに獣医師の診断を受けましょう。
猫が結膜炎になる原因
? ウイルスや細菌による感染
? 目に入った異物の刺激
? 免疫力の低下
以降では、それぞれの原因について解説します。
ウイルスや細菌による感染
主な原因として猫ヘルペスウイルス、猫カリシウイルス、クラミジア、マイコプラズマなどが挙げられます。これらは感染力も強く、猫同士で簡単に伝播してしまうため、多頭飼育の環境では特に注意が必要です。感染が確認された場合は、速やかに感染猫を隔離する必要があります。
特に注意が必要なのが猫クラミジアで、この細菌は人間にも感染する可能性があります。感染した猫に触れた後は、必ず手洗いと消毒を徹底することが大切です。
目に入った異物の刺激
異物による刺激が一時的なものであれば自然に改善することもありますが、数日にわたって症状が続く場合は、獣医師による適切な治療が必要です。
免疫力の低下
猫の結膜炎はどれくらいで治る?
わずかな炎症であれば1〜2日程度で自然に症状が落ち着くケースもありますが、自己判断は危険を伴う可能性があります。
軽度の結膜炎で適切な早期治療を受けた場合は、短期間での回復が期待できます。通院例では、2週間程度の治療期間で改善に向かうことも珍しくありません。
一方で、重症化すると結膜同士が癒着して目が開かなくなってしまうこともあり、その場合は外科的な処置が必要となります。
また、ウイルス性の結膜炎は、一度症状が改善しても、ストレスがきっかけとなって再発する可能性があるため、継続的な経過観察が重要です。
免疫異常が原因の場合は、長期的な治療が必要となることもあります。そのため、結膜炎の症状に気付いたら、獣医師による適切な診断を受け、原因に応じた治療法を選択することが大切です。
猫が結膜炎になった場合の検査や治療
ここでは、一般的な検査方法から治療法や予想される診療費までを解説します。
結膜炎の検査方法
<視診>
目の外観や症状を直接観察し、充血の程度や目やにの状態を確認する基本的な検査
<フルオレセイン染色(角膜染色検査)>
角膜に特殊な染色液を滴下し、傷の有無や状態を確認する検査
<スリットランプ検査(細隙灯検査)>
細い光を目に当て、特殊なレンズを使って角膜や眼球の中を詳しく観察する検査
<シルマーティア試験>
専用の試験紙をまぶたと眼球の間に挟み、涙の分泌量を数値化して測定する検査
<めやにや結膜の細胞診
目やにや結膜から採取した細胞を顕微鏡で観察し、炎症の原因となっている病原体を特定する検査
<細菌培養・感受性検査>
感染が疑われる場合に、どのような細菌が存在するか、また効果的な抗生物質を特定するための検査
<眼底検査>
暗い場所で光を当て、特殊なレンズを通して眼球の底部の状態を詳しく観察する検査
結膜炎の治療方法
重症例では、まぶた側の結膜と眼球側の結膜が癒着してしまうケースがあります。このような場合は、癒着をはがすための外科的処置が必要となります。ただし、癒着は再発する可能性があるため、複数回の手術が必要となることもあります。
結膜炎の診療費
ただし、症状が重度な場合や、手術が必要となる場合は、より高額な治療費が必要となる可能性があります。
なお、これらの費用は動物病院によって異なり、症状の程度や必要な検査・治療によっても変動します。治療費の心配がある場合は、ペット保険への加入を検討するのもよいでしょう。
猫の結膜炎の予防法
? ワクチンを接種する
? 室内飼育を心がける
? 飼育環境を整える
それぞれの予防法について見ていきましょう。
ワクチンを接種する
また、猫クラミジアに対するワクチンも存在します。これらのワクチンは、完全に感染を防ぐことはできませんが、万が一感染しても症状を軽減させる効果が期待できます。
室内飼育の猫であっても、飼い主の手や衣服、来訪者を通じて感染する可能性があるため、ワクチン接種は重要な予防策となります。具体的なワクチンの種類や接種スケジュールについては、かかりつけの動物病院に相談することをおすすめします。
室内飼育を心がける
完全室内飼育はこうした危険から愛猫を守る有効な予防策となります。
飼育環境を整える
これは結膜炎を含むさまざまな病気の予防につながります。特に適切な室温と湿度を保つことは、目の表面を保護する涙の機能を正常に保つために重要です。
多頭飼育の場合は猫同士のケンカによる目の怪我で結膜炎を発症するケースもあります。それぞれが一人になれる空間を確保するなど、落ち着いて過ごせる環境作りを心がけましょう。個々の猫が安心して過ごせる環境は、結膜炎の予防に効果的です。
猫が結膜炎になった際の注意点
? 放置しない
? 強くこすらない
? 繰り返すことを防ぐため定期的に検査をする
以降では、それぞれの注意点について解説していきます。
放置しない
しかし、徐々に充血が強くなったり、涙が増えて目が開きづらくなったりした場合は、すぐに動物病院を受診する必要があります。特に、目に触れようとすると痛がったり避けたりする様子が見られる場合は、強い痛みが生じていることも考えられます。
市販の点眼薬での自己治療は避けましょう。薬剤によっては目を刺激し症状を悪化させる可能性があります。
必ず獣医師の診察を受け、処方された適切な薬剤を使用することが重要です。
強くこすらない
このような行為は目を刺激し、症状を悪化させる原因となります。特に目が開いている状態で強くこすると、角膜に傷がつく危険性もあります。
目の周りを拭く場合は、水で湿らせたコットンやガーゼを使い、まぶたを閉じた状態で、上から下に向かって優しく拭き取るようにしましょう。ただし、基本的には獣医師に確認し、指示に従った処置を行うようにしましょう。
繰り返すことを防ぐため定期的に検査をする
そのため、一度結膜炎を発症した猫は、定期的な検診で目の状態をチェックすることが大切です。
また、普段から目の状態を注意深く観察し、早期発見・早期治療につなげることで、重症化を防ぐことができます。
結膜炎の症状に似たその他の病気
? 角膜炎
? 角膜潰瘍
? 網膜剥離
それぞれの症状や特徴について解説します。
角膜炎
目に異物が入ったり、傷がついたりすることで発症することがあります。その場合、痛みや違和感により、まぶしそうに目を細めたり、涙を流したりする症状が現れます。特に角膜には多くの神経が分布しているため、強い痛みを伴います。
角膜潰瘍
原因には、細菌やウイルスの感染や外傷などがあります。症状としては、目を強く細める、目やにの増加、過度の流涙が見られ、進行すると角膜が白く濁ることがあります。
早期発見・治療が重要で、放置すると失明のリスクもあります。
緑内障
猫の病気としてはあまり一般的ではなく、単独で発症することは珍しいですが、多くの場合はブドウ膜炎や眼内腫瘍、外傷などが原因となって起こります。目の充血や腫れといった結膜炎に似た症状が現れますが、早期発見・早期治療が重要な疾患です。
麦粒腫(ものもらい)
まぶたが腫れ上がり、痛みを伴うことが特徴です。治療には抗生物質や点眼薬が使用され、適切な治療を行えば改善が期待できます。
ただし、症状によっては完治までに時間がかかることもあります。
猫の結膜炎は重症化する前に適した処置を!
目やにの増加や充血、目を頻繁にこする仕草など、気になる症状が見られた場合は、早めに動物病院を受診することが大切です。市販の目薬による自己治療は症状を悪化させる可能性もあるため、獣医師による適切な診断と治療を受けましょう。
また、結膜炎は再発しやすい特徴があるため、定期的な検査による予防と、ワクチン接種や室内飼育などの予防措置も重要です。愛猫の健康を守るため、日頃から目の状態をよく観察し、変化に気付いたら迅速に対応することを心がけましょう。
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※本記事では一般的な例をもとに情報をまとめています。各社の商品やプランによっては当てはまらないケースもあります。また、情報は公開日現在のものです。各種状況や法令情報等につきましては、公的機関等で最新情報をご確認ください。

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院(外部リンク)
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。