猫のワクチンは毎年必要?完全室内飼いでも接種すべき理由
しかし、注射による猫の心理的・身体的負担や副作用の心配、接種費用の負担などから、「毎年ワクチンを打つ必要はないのでは?」と考える飼い主もいるでしょう。「猫のワクチンは3年に1回で十分」という説を聞くこともあり、接種の頻度で悩んでいる飼い主もいるかもしれません。
そこで今回は、猫のワクチンが毎年必要とされる理由や、3年に1回でいいとされる理由などを解説します。猫のワクチン接種で悩んでいる飼い主は、参考にしてみてください。

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
猫の健康を守るワクチン
ワクチンを接種することで、死亡率の高い重篤な疾患のリスクを減らし、ほかの猫にも疾患をうつさないようにすることができます。一度接種したらOKというものではなく、継続的な接種が猫の健康を守ることにつながります。
しかし、毎年ワクチンを打つことで、猫の負担や費用などを心配する飼い主もいるでしょう。まれではありますが、副作用やアレルギーが出る場合もありますし、完全室内飼いで外の猫と接触することがないのに、毎年ワクチン接種を受けさせる必要があるのか疑問に思う飼い主もいることと思います。
猫の場合、犬の狂犬病ワクチンのように、接種が義務となっているワクチンはありません。しかし、猫の健康を守るためには、定期的にワクチンを接種する「ワクチネーションプログラム」が重要です。
猫のワクチネーションプログラム
一般的に猫は、生後8〜9週で1回目のワクチン接種を行い、その3〜4週後に2回目の接種を行い、1歳までに3〜4回のワクチンを接種することが推奨されています。このような計画的なワクチン接種を、ワクチネーションプログラムといいます。
重要なのは、3〜4回目のワクチンを生後16週以降に接種することです。
子猫は母猫から抗体を受け取りますが、それは90日以内に弱くなってしまうとされています。そのため、世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインでは、抗体が弱くなる生後16週以降でのワクチン接種が重要としています。
日本でも、動物病院の方針や獣医師の考えによって、3年に1回とする動物病院もあります。
※世界小動物獣医師会(WASVA)「犬と猫のワクチネーションガイドライン」
ワクチンで予防できる猫の病気
・猫ウイルス性鼻気管炎
・猫カリシウイルス感染症
・猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)
・猫クラミジア感染症
・猫白血病ウイルス感染症
・猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)
また、体調が良くても、ワクチン接種後にある程度副反応が出ることはあります。
接種後は猫の様子をよく観察し、異常があればすぐに動物病院を受診できるようにしておきましょう。特に症状がなくても、接種後2〜3日は安静に過ごさせてください。
ワクチンの種類による接種の頻度
ワクチンの種類には、大きく分けて「コアワクチン」と「ノンコアワクチン」の2種類があり、この2つのワクチンの性質によって、猫のワクチン接種の推奨される頻度は変わります。ここでは、コアワクチンとノンコアワクチンの違いについて解説します。
コアワクチン
生活環境に関わらず全ての猫に接種するべきワクチンとされ、世界中どこでも感染の可能性がある感染症を防ぎます。猫ウイルス性鼻気管炎、猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)、猫カリシウイルス感染症などがコアワクチンで防げる病気で、一般的には「3種ワクチン」に含まれます。
3年に1回の接種でも効果があるとされますが、猫によって効果のある期間は違い、年に1回の接種を推奨する動物病院も多いです。外飼いなどリスクの高い環境の場合は、特に接種を検討しておいたほうが良いワクチンです。
ノンコアワクチン
猫白血病ウイルス感染症、猫クラミジア感染症、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)などがノンコアワクチンで防げる病気です。
これらの病気は、完全室内飼いで、屋外で暮らす猫との接触がなければ感染リスクは低いですが、もしも感染すれば治療は難しいものです。
完全室内飼いの猫でも脱走してしまい、野良猫などと接触して感染するリスクはあります。飼い主がウイルスを外から持ち込んだり、開けた窓や玄関から入り込んだりすることもゼロではありません。そのため、年に1回の接種が望ましいとされています。
結局飼い主は猫のワクチンをどうすべき?
ただし、猫がアレルギーを持っていたり、ワクチン接種後に体調を崩したことがあったりする場合は、その限りではありません。
コアワクチンの場合、完全室内飼いの場合などは、3年に1回の頻度でワクチン接種を行えば十分という考え方もあります。
ワクチンを接種することで避けられるリスクと、接種するリスクがあり、どちらを取るかは飼い主の判断です。また、かかりつけの動物病院が推奨しているワクチン接種の頻度にもよるでしょう。
どれだけ免疫を獲得できているかは抗体検査で調べることも可能です。ただし、抗体検査にも費用はかかりますし、検査結果によってはワクチン接種が必要になる場合もあります。
猫のワクチンは獣医師に相談しつつ受けさせよう
「完全室内飼いだから毎年のワクチンは必要ない」と考える人もいますが、脱走して屋外で暮らす猫と接触したり、飼い主がウイルスを持ち込んだりするリスクはゼロではありません。獣医師に相談しつつ、猫の体調を踏まえて頻度を検討してください。
なお、猫のワクチン接種の費用は、基本的にペット保険では補償されません。ただし、接種することで病気にかかりにくくなるため、健康継続割引などを受けられる場合もあります。
また、ワクチン接種を行わないと加入できないペット保険や、ワクチン接種の未接種を原因とする病気が補償対象外となるペット保険もあるため、接種は行っておくことをおすすめします。
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監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
●ガイア動物病院
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。