犬の脱水症状の見分け方や原因は?対処法や予防法についても解説
この記事では、犬の脱水症状の特徴や見分け方、脱水の原因とその対処法、さらに脱水を防ぐための予防策について詳しく解説します。愛犬の健康を守るため、飼い主として知っておきたいポイントをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
犬の脱水症状とは
体重の約60〜70%を占める水分が10%以上失われると脱水症状を引き起こし、さらに水分が失われると臓器に重大な影響を及ぼす可能性があります。
脱水症状は、単に水分が不足するだけでなく、体内の電解質バランスも崩れることで、さまざまな不調を引き起こします。犬は人間と異なり、喉の渇きを感じにくい特徴があるため、飼い主が積極的に水分補給に気を配る必要があります。
特に冬季は、暖房の効いた室内で過ごすことが多く、犬自身が水分を十分に摂取しないため、気付かないうちに脱水が進行していることがあります。また、春から初夏にかけては、急激な気温上昇に体が慣れていないため、脱水を起こしやすい傾向にあります。
加齢とともに喉の渇きを感じる感覚が鈍くなり、自発的な水分摂取量が低下しやすくなります。また、体調不良や疾患によって食欲が落ちている場合も、水分摂取量が減少する原因となります。
脱水によって死亡するケースもある
先述したとおり、体内の水分が10%程度失われた時点で脱水症状が顕著になり始めることです。この段階を超えて更に水分が減少すると、全身の臓器に重大な影響が及び、最悪の場合、ショック状態となって命を落とすリスクが高まるのです。
脱水が進行すると、体内の水分だけでなく細胞の働きに必要不可欠な電解質のバランスも崩れていきます。これにより、心臓や腎臓、肝臓など重要な臓器の機能が低下し始め、さらに深刻な状態になると、臓器に大きなダメージが残ることもあります。
このような事態を防ぐために、早期発見と適切な処置が重要になります。
脱水の初期症状に気づいたら、自己判断で様子を見るのではなく、速やかに獣医師の診察を受けるようにしましょう。特に高齢犬や持病のある犬の場合は、より慎重な対応が必要です。
犬の脱水症状の見分け方
●皮膚に弾力がない
●飲む水の量が増加する
●おしっこの色が濃い
●体重が急に減少する
それぞれの症状を、以下で説明していきます。
皮膚に弾力がない
この皮膚の状態変化は「ツルゴール(皮膚の張り)テスト」と呼ばれる方法で確認できます。
背中や腰の皮膚をやさしくつまんで離し、元の状態に戻るまでの時間を計測します。健康な状態であれば2秒以内に元の状態に戻りますが、それ以上時間がかかる場合は重度の脱水が疑われます。
飲む水の量が増加する
その結果、普段より多くの水を飲むようになります。給水器の水が通常より早くなくなっていたり、水を飲む頻度が増えていたりする場合は、体内の水分バランスが崩れている可能性があります。
おしっこの色が濃い
その結果、尿が濃縮されて色が濃くなります。ペットシーツを使用している場合、通常よりも染みの色が濃く、大きさが小さくなっていることで確認できます。
体重が急激に減少する
このような急激な体重減少が見られた場合は、すぐに獣医師の診察を受けるようにしましょう。
犬が脱水を起こす原因
以下は、代表的な脱水の原因になります。
【嘔吐や下痢による水分喪失】
嘔吐や下痢が続くと体内の水分が過度に失われ、脱水状態に陥ることがあります。
これらの症状は、消化器系に負担をかける疾患が原因である場合が多く、特にパルボウイルス感染症や膵炎などが挙げられます。脱水状態は体に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、嘔吐や下痢が見られた場合は速やかに獣医師に相談しましょう。
腎臓病や糖尿病などの慢性疾患は、体内の水分バランスを崩す原因となります。
腎臓病では腎機能の低下により必要以上の水分が尿として排出され、糖尿病では尿中の糖分によって水分が引き寄せられて排出されます。こうした病気による脱水は、継続的な管理と治療が必要です。
暑い季節の熱中症や、暖房の効いた室内での長時間滞在により、体温調節のために体内の水分が失われます。
特に冬場は暖房使用により室内が乾燥し、犬が喉の渇きを感じにくくなることで、水分摂取量が低下しやすくなります。また、シニア犬は特に渇きに鈍感になりがちで、自発的な水分摂取が減少する傾向にあります。
犬に脱水症状が見られた場合の対処法
症状や状態によって対処方法が異なるため、状況を正確に判断する必要があります。特に、下痢や嘔吐を伴う場合は、通常とは異なる対応が必要となります。
以下では、状況別の具体的な対処方法について説明していきます。
水分を取らせて病院へ連れていく
愛犬が自力で飲めるようであれば、通常の給水器から飲ませることができます。ただし、これはあくまでも応急措置であり、症状が改善されても必ず獣医師の診察を受けることが推奨されます。
飲む水の種類は、通常の水に加え、スポーツドリンクを与えることも可能です。
ただし、人用のスポーツドリンクには塩分や糖分が多く含まれているため、そのまま与えるのではなく、水で薄めて使用する必要があります。できれば犬用の経口補水液を用意しておくと安心です。
水分を自力で摂取できない場合は、スポイトで少しずつ与えることも効果的です。
この際、一度に大量の水分を与えてびっくりさせないよう、ゆっくりと時間をかけて与えることが大切です。
下痢や嘔吐のある場合には無理に水分を取らせない
このような状況で無理に水分を摂取させようとすると、症状が更に悪化する可能性があります。特にぐったりとした状態が見られる場合は、かなり重篤な脱水が進行していることが考えられます。
自宅での水分補給にこだわるのではなく、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。獣医師による適切な処置を受けることで、安全かつ効果的に水分と電解質のバランスを整えることができます。
犬の脱水症状を予防するポイント
以下では、愛犬の脱水を予防するための具体的な方法について説明します。
【新鮮な水を常に用意する】
水の鮮度は愛犬の飲水意欲に大きく影響します。汚れた水は犬が飲みたがらない原因となるため、水は頻繁に取り換えましょう。
また、給水器の材質や設置場所によっても飲水量が変わることがあるため、愛犬が最も飲みやすい環境を見つけることが大切です。
【ウェットフードの活用】
ドライフードだけでは水分摂取量が不足しがちです。
特に寒い季節や高齢犬の場合は、水分を多く含むウェットフードに切り替えることで、食事からの水分補給が可能になります。もしくは、ドライフードを水でふやかして与えることで、水分量を確保することもできます。
【外出時の水分対策】
散歩や外出時にも水分補給できるよう、携帯用給水器を持参しましょう。
特に暑い季節は、こまめな水分補給が熱中症予防にもつながります。また、運動量や気温に応じて給水回数を増やすなど、状況に応じた対応が必要です。
【毎日の飲水量をチェック】
計量カップなどを使い1日の飲水量を把握すると、普段との違いに気付きやすくなります。
体重に応じた適切な水分量は、体重1kgあたり50−60mlを目安にします。飲水量が急激に変化した場合は、体調の変化を示している可能性があります。
犬の脱水症状は、日頃から注意深く観察することが重要
体重の急激な減少、皮膚の弾力低下、尿の色の変化などの兆候を日頃から注意深く観察しましょう。特に室内で過ごすことが多い時期や高齢犬の場合は、水分摂取量の管理に気を配る必要があります。
脱水症状に気づいたら、自己判断で様子を見ることは避け、速やかに獣医師の診察を受けましょう。特に下痢や嘔吐を伴う場合は、状態が急速に悪化する可能性があるため、緊急性が高いと考えられます。
また、このような予期せぬ健康トラブルに備え、ペット保険への加入をご検討いただくことをおすすめします。突然の病気や怪我の際の経済的な負担を軽減し、愛犬に最適な治療を提供することができます。
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監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院(外部リンク)
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