犬の腎臓病の原因は?症状と治療法、注意すべき点を解説

犬の腎臓病の原因は?症状と治療法、注意すべき点を解説

 犬の腎臓病は、腎臓の機能が低下することで起きる病気です。高齢の犬は腎臓病になる可能性が高く、もし治療を行う場合には、高額の治療費がかかります。腎臓病にならないよう、日々の食事に注意を払い、健康診断も定期的に受けさせておきたいところです。

 この記事では、犬の腎臓病の症状と原因のほか、治療法注意すべき点について解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の腎臓病は、腎機能の低下で老廃物がうまく排出できない病気
  2. 犬の慢性腎臓病のステージ
  3. 犬が腎臓病になる原因とは?
    1. 急性腎臓病の原因
    2. 慢性腎臓病の原因
  4. 犬の腎臓病の症状
    1. 多飲と多尿
    2. 食欲と体重の低下
    3. 嘔吐や下痢
    4. 元気がない
    5. 毛艶が悪くなる
  5. 犬の腎臓病の治療法
    1. 点滴
    2. 投薬
    3. 食事療法
    4. 透析
  6. 犬の腎臓病の注意点
    1. 老犬ほどかかりやすい
    2. 初期症状がわかりにくい
    3. 定期的な健康診断で予防できる
  7. 犬の高額な医療費に備えて、ペット保険の加入がおすすめ

犬の腎臓病は、腎機能の低下で老廃物がうまく排出できない病気

 犬の腎臓病は「腎不全」ともいい、腎臓の機能が低下することで、体内に老廃物が適切に排出されずに蓄積される病気です。

 そもそも腎臓は血液を濾過し、体に不要なものを尿として体外に出すいわばフィルターとしての役割を果たしています。腎臓の機能が低下すると、血液中の毒素が体内にとどまったり、血圧を調整するホルモンを作れなくなったりして、健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

 犬の腎臓病には「急性腎臓病」と「慢性腎臓病(CKD)」の2種類があり、原因と対処法はそれぞれ異なります。初期症状がわかりにくいこともあるため、定期的な健康診断が重要といえるでしょう。犬の腎臓病に備えるには、早期発見と早期治療、そして高額な治療費に対する備えがカギとなります。

犬の慢性腎臓病のステージ

 犬の慢性腎臓病のステージは、下記の4つに分類されます。国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が設けた各ステージに応じて、適切な治療が必要です。なお、このステージングは3、4年ごとに更新されています。

■犬の腎臓病における進行と症状の4ステージ

■犬の腎臓病における進行と症状の4ステージ

犬が腎臓病になる原因とは?

 犬の急性腎臓病慢性腎臓病の原因は、それぞれ異なるものです。ここでは、2種類の腎臓病の原因について解説します。

急性腎臓病の原因

 犬の急性腎臓病は、数時間〜数日という比較的短期間で腎機能が急激に低下する病気です。急性腎臓病には、次のような原因が考えられます。
腎毒性のあるものの誤食・誤飲
犬が腎毒性のある物質を誤って誤食・誤飲すると、急性腎臓病を引き起こすことがあります。例えばレーズンやぶどうのほか、ユリの葉や根、車の不凍液に含まれるエチレングリコール、農薬・除草剤などの薬品は、少量でも腎臓に深刻なダメージを与えます。

脱水
激しい嘔吐や下痢、熱中症などにより脱水状態が続くと、腎臓に負担がかかり、急性腎臓病を引き起こす可能性があります。脱水が血液の流れを減少させ、血液による腎臓への酸素供給を妨げることが原因です。

尿路結石による尿路閉塞
急性腎臓病は、腎臓から尿道までの尿路に結石ができ尿の流れが妨げられることでも起きる可能性があります。尿路結石によって尿が排出されず腎臓に溜まり、腎臓の機能が急激に低下するので注意が必要です。

慢性腎臓病の原因

 慢性腎臓病は、長期間にわたって徐々に腎機能が低下する病気です。

 原因は多岐にわたり、加齢や遺伝的要因、感染症などが挙げられます。ただし、病気は徐々に進行するため、明確な原因を特定するのが難しい場合もあるのが特徴です。過去に急性腎臓病を患ったことがある場合も、慢性腎臓病の原因となります。

 初期症状は非常に軽微で、飼い主が気づかないことが多い傾向があります。多飲や多尿、体重減少などが見られることがあるものの、これらの症状はほかの病気とも重なるため注意が必要です。

犬の腎臓病の症状

 犬の腎臓病は、特に慢性腎臓病の場合、初期症状がわかりにくいことが大きな特徴です。ただし、次のような症状に注意することで、早期発見が可能となります。ここでは、犬の腎臓病の症状について解説します。

多飲と多尿

 腎臓病の代表的な初期症状として、多飲多尿が挙げられます。腎機能が低下すると、尿の濃縮能力が落ちるため、犬はより多くの水を飲むようになり、結果として尿の量が増えます。注意深く観察していれば、飼い主は愛犬が以前よりも頻繁に水を飲み、排尿することに気づくことができるでしょう。

食欲と体重の低下

 腎臓病が進行すると犬の食欲が低下し、体重が減少することがあります。これは、腎臓の機能低下により、体内の老廃物が適切に排出されなくなるからです。老廃物が蓄積した状態が続くと、犬は食欲を失い、体重が減少していきます。

嘔吐や下痢

 腎臓病の進行に伴って、犬は嘔吐下痢といった消化器系の問題を抱えることが多くなります。腎臓が老廃物を十分に排出できないことが原因で、体内に毒素が蓄積し、消化器系に悪影響を及ぼすのです。

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元気がない

 犬の腎臓病の進行によって、全体的に元気がなくなることがあります。通常時ほど物事に興味を示さなくなり、活動量が減少します。これは、腎臓の機能低下による全身のだるさや倦怠感が原因です。

毛艶が悪くなる

 腎臓病の影響は犬の毛艶にも現れます。犬の毛は、艶を失ってパサつくことがあります。これは腎臓が体内の栄養バランスを適切に保てなくなることによるものです。

 なお、腎臓病が悪化すると、最終的に尿毒症になる可能性があります。尿毒症は、腎臓が老廃物を排出できなくなり、全身に毒素が回る状態です。けいれんや意識障害を起こすなど、犬の命に関わる深刻な状態といえます。

犬の腎臓病の治療法

犬の腎臓病の治療法

 犬が腎臓病にかかっていることがわかったら、早期発見適切な治療が重要です。ここでは、犬の腎臓病に対する治療法として代表的なものについて解説します。

点滴

 犬の腎臓病治療において、点滴は主な治療法のひとつです。点滴の輸液は体内の水分バランスを整え、脱水状態の改善や毒素の排出をサポートする役割を果たします。

 特に急性腎臓病の場合は、迅速に点滴によって症状の悪化を防ぐことが可能です。

投薬

 犬の慢性腎臓病の治療には、症状に応じた投薬が行われます

 例として、血圧を下げる降圧剤や腎臓の炎症を抑える薬などが用いられます。適切な薬の使用により、腎機能低下の進行を遅らせることが可能です。ただし、薬は継続的な投与が必要となるので注意してください。

食事療法

 特別な栄養バランスで構成された療法食による食事療法も、犬の腎臓病の重要な治療法です。

 腎臓に負担をかけないためには、低たんぱく質・低リンの食事が推奨されます。動物病院で獣医師の指導のもと、療法食を調製してもらい、与えるようにしてください。療法食によって腎臓の負担を軽減し、病状の進行を遅らせることが可能です。

透析

 透析は、腎臓の機能が著しく低下した場合に行われる治療法です。動物病院で血液透析や腹膜透析を行い、血液中の体内の老廃物を浄化して、体内に戻します。
 
 なお、犬の透析治療に対応できる病院は非常に限られています。

犬の腎臓病の注意点

 犬の腎臓病は、早期発見と適切な治療が重要です。ここでは、犬の腎臓病に関する注意点について解説します。

老犬ほどかかりやすい

 慢性腎臓病は、老犬に多く見られる病気といえます。年齢とともに腎臓の機能が徐々に低下するため、高齢の犬ほど腎臓病にかかりやすくなります。初期症状がわかりにくいため、早期発見のためには動物病院での定期的な検診が必要です。

初期症状がわかりにくい

 腎臓病の初期症状は非常に軽く、飼い主が見逃しがちです。例えば、多飲や多尿、体重減少のほか、食欲不振などの症状が見られることがありますが、特に高齢の犬の場合、ほかの病気と重なることが多いため、注意深く観察することが大切です。

 疑わしい点があれば、念のため動物病院でチェックしてもらうようにしましょう。

定期的な健康診断で予防できる

 犬の腎臓病の予防には、定期的な健康診断が有効です。定期的に獣医師による健康診断(血液検査や尿検査など)を受けることで、早期発見と早期治療をすることが可能になるでしょう。  

 一般的には、6ヵ月ごとの受診がおすすめです。また日頃の運動も、腎臓病予防には効果があります。

犬の高額な医療費に備えて、ペット保険の加入がおすすめ

 犬の腎臓病には急性腎臓病慢性腎臓病の2種類があり、後者は初期症状がわかりにくいのが難点ですが、少しでも疑わしい症状が出たら、すぐに動物病院へ行きましょう。万が一、腎臓病の投薬や透析による治療が必要となると経済的な負担が増すため、高額な医療費に対する準備が必要といえます。

 犬の高額な医療費負担に備えておすすめしたいのがペット保険です。ペット保険は、通院・入院・手術の3つが主な補償対象となり、健康診断や予防接種などの病気の予防に関わる行為や避妊・去勢手術は補償対象外になりますが、ケガや病気の治療費について幅広く補償してくれます。

 なお、ペット保険は保険会社やプランによって補償内容や保険料が大きく変わるため、複数の保険会社でそれぞれのプランを比較検討して、ご自身とペットに合った保険を選びたいところです。

 オリコンでは、日本最大級の規模で調査を行い、毎年「ペット保険 オリコン顧客満足度ランキング」を発表しています。保険料はもちろん、ペットの種類別や精算方法別など、さまざまな視点でのランキングをご確認いただけますので、ぜひ保険会社選びの参考にしてください。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
 ●ガイア動物病院

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

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