外貨預金に関わる税金の仕組み!確定申告や為替差益について解説

外貨預金の税金の仕組み

資産運用で大切なことは、知らないものには投資をしないということ。外貨預金をはじめてみたものの、そこで得た利益にかかる税金の仕組みや税率を理解することは大切です。
また場合によっては、確定申告が必要になることもあります。今回は外貨預金の税金について、初心者にも分かりやすく解説をしていこうと思います。
執筆・監修者:CFP(R)/投資教育家 市川雄一郎
日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。【執筆・監修者プロフィール】

外貨預金の仕組み

外貨預金の仕組み

ここでは、外貨預金の簡単な仕組みと、外貨預金における税金の仕組みについて解説をします。外貨預金の仕組みの詳細やメリット・デメリットについては、「外貨預金のメリット・デメリット」に掲載しているので、併せてご覧いただくと理解が深まるはずです。

さて外貨預金とは、日本円を外貨に交換して預金する銀行の金融商品の一つ。たとえば、日本円を米ドルと交換して預金する仕組みで、円預金と同様に、基本的には普通預金定期預金があります。外貨預金は利息も外貨で受け取れます。銀行預金の一つなので、比較的身近に初心者でも始めやすい金融商品だと言えるでしょう。

まずは外貨普通預金です。預入期間に定めはなく、いつでも自由に預金を出し入れすることが可能なので、たとえば海外旅行に行った際に余ったお金をそのまま預けることが可能です。利息は変動金利商品となっているのが特徴になります。

次に外貨定期預金ですが、預入期間を1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年などのように決めておき、期間に応じた金利で利息を受け取ることができる金融商品です。外貨普通預金と違って利息は固定金利となります。原則として満期が来るまで解約することができないので注意が必要です。

外貨預金の相場変動について

外貨預金は、日本円を外貨に交換して預ける預金であると説明をしましたが、日本円を含めて他国の通貨に交換することを外国為替と呼びます。
この外国為替は世界中で取引されているため、通貨同士のレートは変動しています。そしてその取引がされている市場を外国為替市場といいます。

外国為替市場は各国に市場があるわけではありません。外国為替の取引は、売り手と買い手が1対1で電話やコンピューターを通して価格や数量などの取引条件を決定しているためです。
特に取引が集中する三大都市というものがあります。イギリスのロンドン外国為替市場、アメリカのニューヨーク外国為替市場、そして日本の東京外国為替市場です。

しかし、常に世界中で取引されている外貨ですので、為替レートは常に動いています。そのため、外貨預金に円から外貨に預け入れする際、どのタイミングで為替レートを変換するか迷わないようにするために、銀行は営業日の10時頃(頃というのはピッタリ10時ではなく、少し10時を過ぎる場合もある)にその日の取引する為替レートを決定しています。

その日の交換レートが決定する際、まずは中値と言って、その日の取引の基準となる為替レートがあり、その中値を挟んで為替手数料を決定する仕組みになっています。
そして、中値を挟んで銀行側が日本円を外貨に交換して外貨預金に預け入れる際の為替レートをTTS(対顧客電信売相場)といい、外貨預金から外貨から日本円に交換する際の為替レートをTTB(対顧客電信買相場)といいます。
それぞれその日の中値を基準に1通貨当たり何円と決められていて、中値と交換レートの差が銀行の利益となります。

この為替手数料が銀行の収益となりますが、窓口で為替を交換する場合と今はインターネットを通じて交換する場合があり、窓口で交換する方が、為替手数料が高くなりますので覚えておくとよいでしょう。

外貨預金の外国為替の交換レートがその日に決まっているからといってそれで終わりではありません。外貨預金の基本的なゴールは、再び日本円に戻すことが基本的な前提になっているためです。

例えば、為替の相場変動で預け入れした時と比べて円安になれば、為替差益を得られる可能性があります。これを為替差益と呼びます。逆に預入した時よりも円高になり、外貨を日本円に戻すと為替差損が発生し、元本割れとなる可能性があります。銀行で取扱う商品だから安心とはならないので、為替の相場変動には気をつけたいところです。

外貨預金の金利について

外貨預金の金利は、概して日本円の預金と比べて高いケースが多いです。

日本円の預金金利は、大手都市銀行の普通預金の場合0.001%、定期預金の場合、期間や金額に関係なく一律で0.002%が多いです。
大手都市銀行の米ドルの外貨普通預金の場合は0.010%が多く、日本円の普通預金の10倍、外貨定期預金も普通預金と同じく0.010%なので、日本円の定期預金の5倍になります。

ただし、これはあくまでも大手都市銀行の場合で、ネット系銀行の場合は、もっと高い金利が提示されている場合も見られますので、各自比較してみると良いでしょう。
※ 金利は2023年9月28日現在調べ

また、銀行によって、外貨預金で取り扱う種類もまちまちです。ちなみに、金利は先進国よりも新興国の通貨の方が高いのが特徴です。
中にはキャンペーンによって1ヶ月や3ヶ月といった期間限定にはなりますが、高い金利を設定しているケースも見られますので、為替手数料や交換レートなどを加味した上で検討してみることをおすすめします。

金利のイメージのために、ここで簡単な例を紹介します。
手元資金30万円を米ドル建て外貨定期預金の1年ものに預けることにした時、その時の日本円から米ドルに交換する為替レート(TTS)が1ドル130円だった。
1年後に満期を迎え、米ドルから日本円に交換する為替レート(TTB)が140円だった場合、日本円でいくらになるか?利息は年利0.010%とし、税金はここでは加味しないものとする。
税金については後ほど解説
外貨定期預金の場合、金利は固定金利なので、100万円÷130円=76,92.31ドルが米ドル建ての元本となり、ここに0.010%の利息がつくと、76,93.08ドルと計算できます。よって、76,93.08ドル−7692.31ドル=0.77ドルが利息分です。日本円に換算すると0.77ドル×140円(定期満期時の為替レート)=108円になります。

そして、今度は日本円に戻すので、76,93.08ドル×140円=32万3081円となりますが、外貨預金によって得られた利息を含む為替差益となります。

また、手計算をしなくても、外貨預金を取り扱っている銀行には、「外貨預金シミュレーション」のサイトを設置している場合が多く見られます。
ぜひ利用したい銀行でそれを活用してみるとより理解が深まると思いますので、一度は活用してみることをお勧めします。

外貨預金にかかる税金について

外貨預金の税金

@ 外貨預金の利息にかかる税金
A 外貨預金の為替差益にかかる税金

外貨預金には、実は2つの税金が存在します。
一つは利息に対する税金ともう一つは為替差益が発生した場合の差益に対する税金です。1つ1つ解説をします。ちなみに今回は、預金対象者を、法人を除く個人に限定して解説をします。

外貨預金の利息にかかる税金

外貨預金の利息は、「利子所得」に該当し、日本円の預金同様に、原則として所得税15.315%(復興税含む)と住民税5%の計20.315%を源泉分離課税として徴収されます。
よって、利息は日本円の預金と同様にそのまま受け取って終わりです。

外貨預金の為替差益にかかる税金

外貨預金によって為替差益が発生した所得は、「雑所得」に該当します。
雑所得の場合、他の所得と合算して計算をするため、原則として確定申告が必要です。ではどのようなケースで確定申告が必要となり、逆に不要なのかについて、次に解説をします。

外貨預金の為替差益とは?

外貨預金の為替差益とは?

外貨預金は預け入れした時と、払い戻しをした時の為替レートの変動に応じて、為替による利益や損失が発生します。

利益が出る場合は為替差益といい、簡単に言えば、外貨から円に戻したのきの儲けのことを指します。

ちなみに、逆に為替で損失が発生する場合は、為替差損というので、合わせて覚えておくと良いでしょう。

為替差益が生じる時は?

外貨預金を行う際、通貨を円から外貨に交換して預け入れを行うことになります。

その後、今度は外貨を円に払い戻すときに、預け入れ当時よりも円安なった場合、為替差益が生じます。

例えば預金する際に1ドルの為替レートが100円だった場合、1万円分をドルに交換すると、100ドルになります。
その後に為替レートが円安になり、1ドルの為替レートが110円になった場合、100ドルを円に払い戻すと、100ドル×110円で11000円です。
交換前と交換後では1000円の差がありますが、この1000円が為替変動よって得られた利益となり、為替差益と呼びます。

ちなみに、為替差益は、外貨から円に差し戻してはじめて発生するものであり、円に戻していない状態での利益のことは含み益と呼びます。

為替差益が生じた時の対策

為替差益が発生した場合に、対応方法がいくつかあるのでご紹介します。

為替差益により所得は雑所得に分類されることは説明した通りですが、公的年金等以外は原則として、年末調整を受けた給与所得以外の所得が20万円以下である場合、確定申告は不要です。
ただし、給与所得者ではなく、個人事業主(フリーランスを含む)に該当する場合は、雑所得が20万円以下であっても、確定申告を行う必要があるので注意が必要です。
その他、医療費控除を受ける場合も、確定申告を行うことになりますが、この場合も20万円以下の雑所得であっても、雑所得の確定申告を行う必要があります。

上記以外の対策としては、外貨から円に払い戻しせずに、外貨をそのまま持っているという方法です。
仮に計算上出ている為替差益は、円通貨に差し戻ししていない以上、利益が確定していないので、前述の通り。単に含み益に過ぎません。これは、株を買ってから上昇しても売らない限り、その含み益に課税されないのと一緒です。
よって、外貨を円に戻さずに外貨のまま使うのであれば、そこに課税されることがないので、海外旅行に行くときなどに使えば、課税されずに使用することができます。

そしてもう一つ、気になるのが住民税の申告だと思いますので、ここで説明を加えておきます。
住民税の申告が原則不要なケースの1つ目は、前年の所得が給与所得しかなく、給与支払報告書の提出が勤務先からあった場合です。
そして2つ目は、前年の雑所得が公的年金等の場合。
そして最後のケースでは、前年の雑所得が、住民税の非課税となる所得しかない場合です。
住民税が非課税となる所得基準は、区町村により異なるため、自治体へ問い合わせて確認することをおすすめします。

外貨預金の為替差益の計算方法について

以下に外貨預金による為替差益の計算方法について、例を取り上げてご紹介します。
※ただし、その際の為替状況は、交換するときの手数料は考慮しないものとします。

銀行に米ドル建ての定期預金(以下、ドル定期)に1万ドルを1ドル=100円の時に預け、1年後、1ドル=110円になったとします。
金利1%で運用し、その後、円に交換した場合の為替差益はどのくらいになるかを計算してみましょう。

元本は1万ドルだったので、1万ドル÷100円=100万円となります。
利息は1%なので、1万ドルの1%で100ドルになり、そのうち、20.315%は課税されるので、手元に残るのは79.69ドルです。
よって、1年後のドル定期は10079.69ドルです。
これを円に交換するには、現在の為替レートで計算すると、利息分は79.69ドル×110円で8766円となります。
そして元本は1万ドル×110円で110万円となり、ドルから円に交換した元利合計は110万8766円とります。

すでに利息分は課税済みなので、預け入れした100万円と払い戻した110万円の為替差益は10万円となります。
これが為替差益分の利益です。

一方で、1ドル=90円になった場合は、上記の110円のところに90円と入れて計算をすると、投資よりも円高になっているので為替差損が発生しますので、合わせて理解をしておくと良いでしょう。

外貨預金の確定申告について

外貨預金の確定申告

ここでは、確定申告の必要性があなたにあるのか、それともないのか、そして確定申告が不要であっても、実は見落としがちな別な申告について説明をします。

自分には関係ないのでは?と思う人もいるかと思いますが、新型コロナ感染症が蔓延して以降、外国為替の値動きが大きく、日本円は円安になっているケースが多く、既に利用している人の中には、確定申告をしなければならない人が実は意外と多いです。
外貨預金で預けていた外貨を日本円に交換することで生じる儲けである為替差益となる雑所得は、原則として確定申告を行わなければなりません。

外貨預金で確定申告が必要なケース

外貨預金の外貨を日本円に交換して、為替を「確定」したときに為替差益が生じるが、確定していない状態を「含み益」と呼び、この段階ではまだ確定申告は不要ですが、日本円に交換をして為替差益が確定したときに確定申告が必要になります。

外貨預金に長らく預けていて、含み益が今の為替レートで換算して、30万円になるとします。いよいよ日本円に交換すると30万円の為替差益が発生するので、この場合は確定申告が原則として必要になります。

例えば現在、米ドル建て外貨預金に預入していた資産を、ユーロやオーストラリアドルなどの日本円以外の別な外貨に交換した場合はどうなるのでしょうか。実はこの場合も確定申告が必要になります。
考え方としては、米ドルを一旦日本円に交換して、別な外貨に交換して預金したと考えるためです。この場合は、一旦日本円に交換した時に発生する為替差益が雑所得となります。

外貨預金で確定申告が不要なケース

年収が2,000万円以下の給与所得者であり、給与所得および退職所得以外で為替差益を含めた所得が年間で20万円以下の場合は申告不要です。
ただし、給与を2カ所以上の会社から得ている場合は、そもそも確定申告をしなければなりません。なお、為替差益ではなく為替差損が生じた場合は、確定申告によって黒字の雑所得から控除することが可能です。

また、確定申告が不要であったとしても、地方税にあたる住民税の申告が必要な場合があります。次にそれを説明します。

外貨預金で住民税の申告が必要なケース

住民税の申告を行う必要があるのは、次のような人です。
1. 給与所得以外の所得がある人
2. 公的年金以外の所得がある人
3. 確定申告をする前の年の1月1日時点での住所登録されている場所と同じ親族の扶養家族になっていない人

これらのどれかに該当する場合は、住所を管轄する役所で住民税の申告手続きが必要となりますので、自身を管轄の自治体に問い合わせをしましょう。

外貨預金の税金に関するよくある質問

外貨預金の税金に関するQ&A

さてここからは、外貨預金を利用するにあたってよくある疑問を解決するため、質問形式で回答したいと思います。
これまでの解説の質問に記載があるものもありますが、復習を兼ねてぜひ最後までご覧いただきたいです。

外貨預金の金利はどこも同じ?

Q1.外貨預金の金利は、どこの銀行でも同じですか?

A1.銀行によって異なります。大手都市銀行と比べて店舗を持たないネット銀行などの方が、金利が高いケースが多いです。

公的年金が主な収入源で為替差損が出た場合は確定申告が必要?

Q2.外貨預金の為替差益が出た場合は、確定申告が原則必要だというのは理解できたが、為替差損が出た場合は、確定申告をした方がいいですか?主な収入は公的年金です。

A2.為替差損が出た場合は、他の黒字化した雑所得と通算することができます。例えば、年金収入で240万円で、為替差損が20万円あった場合、年金収入240万円から20万円分を差し引いて所得税と住民税が計算されます。

専業主婦で為替差益が出た場合は確定申告が必要?

Q3.専業主婦で外貨預金をしています。30万円の為替差益が出ましたが、確定申告が必要ですよね?

A3.専業主婦の方や無職の方、また個人事業主の方などは、所得税の基礎控除である48万円を超えたら確定申告が必要ですが、本ケースでは30万円ですので、確定申告は不要になります。

まとめ

外貨預金の税金のまとめ

今回は、外貨預金の税金について解説をしてきました。コロナ禍以降、急速に日本円が外貨と比べて、円安傾向になっています。身近な話題になる対米ドル円では、23年9月28日現在、1ドルは149円32銭まで円安ドル高が進んでいます。円安とは、つまり円の価値が米ドルに対して低いということ。これからの時代は日本円のみならず、外貨資産も保有することは当たり前と言っても過言ではないでしょう。

冒頭でお伝えしましたが、知らないものには投資をするべきではなく、外貨預金にはメリットもデメリットもあり、また税金部分が少し複雑なところもあります。ただし、一度理解してしまえばさほど難しいことはないことは、本文からも理解できたかと思います。

最後に、どこの外貨預金を選んだらいいのかわからないという方のために、オリコンがすでに外貨預金を活用している人の声から満足度ランキングをまとめた「オリコン顧客満足度ランキング『外貨預金』」というページがあります。こちらも参考にしてみてください。

このランキングは顧客満足度の順に見やすく並べられており、利用者の口コミ・評判のほか、オリコンCS調査部がそれらの声を元にコメントを載せている点です。非常に参考になりますので、ぜひ一度ご覧いただきたいです。

もちろん、ランキングが高い銀行がこの記事を読んでいる読者一人ひとりにあった銀行とは限りません。大事なことは、比較した上で自分にあった外貨預金口座のある銀行を選択するということです。

自分の資産は自分で守り、そして増やす時代です。本文を参考にした上で、シミュレーションをしたり、オリコンサイトで比較をしたりしながら、自分にあった外貨預金口座を見つけていただきたいと思います。

この記事の執筆・監修者:市川雄一郎

  • 市川雄一郎

投資教育家。Global Financial School校長。CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。
またラジオNIKKEI『投資のベースキャンプ』のパーソナリティー、TBSドラマ『トリリオンゲーム』の投資監修などメディアでも活躍。主な著書に『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)、最新監修書籍『0からわかる!株超入門』(ソシム)がある。

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