猫の膀胱炎とは?主な症状や原因・治し方についてわかりやすく解説
この記事では、猫の膀胱炎の基本的な知識から、主な症状、原因、治療法、予防法まで、愛猫の健康を守るために必要な情報を詳しく解説します。
膀胱炎の症状は、頻尿や血尿など多岐にわたります。また、細菌感染やストレス、結石など、さまざまな原因によって引き起こされるのも特徴です。
膀胱炎は早期発見と適切な対処が重要なため、飼い主さんが正しい知識を持つことは愛猫の健康管理に欠かせません。猫を飼っている方はもちろん、これから猫を迎えようと考えている方にも、ぜひ参考にしていただきたい内容です。

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
猫の膀胱炎とは
膀胱は腎臓でつくられた尿を一時的に溜め、適切なタイミングで体外へ排出する重要な役割を担う臓器です。通常、膀胱は尿の量に応じて伸縮できますが、炎症が起きると十分に伸びることができなくなってしまいます。
猫の膀胱炎の代表的な症状としては、血尿や頻尿が挙げられます。トイレで痛そうに鳴いたり、トイレ以外で排尿したりすることもあります。
この病気は猫がかかりやすい病気の一つで、再発しやすいという特徴もあります。症状を放置すると尿道閉塞という命に関わる状態を引き起こす可能性もあるため、早期発見と適切な治療が重要です。
猫の膀胱炎の症状
●少量ずつ何度も排尿する(頻尿)
●トイレの時間が長い
●排尿時に痛がって鳴く
●トイレ以外での排尿が見られる
●尿に血が混じる(血尿)
●尿の色が濁っている、異常なにおいがする
●食欲が低下して元気がなくなる
しかし、重症化すると排尿が困難になったり、完全に排尿できなくなったりすることもあります。特にオス猫は尿道が細いため、結石などで尿道が詰まり、命に関わる尿道閉塞を起こすリスクが高くなります。
猫が膀胱炎になる原因
それぞれの原因について紹介していきます。
細菌感染
通常、猫の体には外部から侵入する細菌を防ぐ防御機能が備わっていますが、疲労やストレスによってこの機能が低下すると、細菌が侵入しやすくなるのです。
特にメス猫は、肛門と尿道口が近いという解剖学的特徴から、下痢などの際に腸内細菌が尿道に侵入しやすい傾向があります。
ただし、猫の膀胱炎の中で細菌感染が原因となるケースは、他の動物と比べると比較的少ないとされています。
ストレスや肥満
猫は繊細な動物で、環境の変化やストレスに敏感です。ストレスを感じると免疫機能が低下し、膀胱の保護層が損なわれることで、尿に含まれる刺激物質から膀胱を守る機能が低下してしまいます。
また、肥満は物理的に尿道を圧迫するだけでなく、運動不足による代謝の低下や、トイレに行くことが億劫になって排尿を我慢してしまうなど、さまざまな形で膀胱炎のリスクを高める要因となります。
結石・結晶
代表的なものは「ストルバイト」と呼ばれる結晶状の結石で、これが膀胱の粘膜を傷つけることで炎症を引き起こします。結石の形成には、体質や遺伝的要因のほか、食事内容も大きく関係します。
特に問題となるのは、結石が膀胱の出口や尿道で詰まることです。これにより尿の通り道が塞がれ、排尿が困難になったり、最悪の場合は完全な尿道閉塞を引き起こしたりする可能性があります。
猫の膀胱炎は放置すると命に関わることも
腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿として排出する重要な臓器です。膀胱炎による排尿障害が続くと、この腎臓の機能にも障害が起きて、腎不全に陥ることがあります。
腎不全は進行性の病気で、一度ダメージを受けた腎臓の組織は元に戻ることが難しいという特徴があります。さらに、腎不全が進行すると尿毒症を引き起こす可能性があります。尿毒症になると、体内に毒素が蓄積して、猫は食欲を失い、嘔吐を伴うこともあります。
この状態は極めて危険で、適切な治療を受けないと最悪の場合、死に至ることもあります。
愛猫の様子がいつもと違う、特に排尿に関する異常を感じたら、すぐに動物病院を受診することが重要です。
猫の膀胱炎の診断方法
獣医師は症状の経過や普段の生活環境について確認した後、以下のような検査を行います。
・尿検査
・超音波検査
・レントゲン検査
・細菌検査
・尿路造影検査
また、超音波検査やレントゲン検査では、膀胱内の結石の有無や膀胱の形状に異常がないかを確認します。さらに、膀胱炎を繰り返す場合には、より詳細な細菌検査や尿路造影検査が必要になることもあります。
これらの検査結果を総合的に判断し、最適な治療方法を決定していきます。
猫の膀胱炎の治し方
細菌感染による場合は抗生物質による治療、結石が原因の場合は結石の除去や食事療法、またストレスが関係している場合は生活環境の改善など、それぞれの原因に合わせた適切な治療法を選択します。
症状や猫の状態によっては、複数の治療法を組み合わせることもあります。
細菌感染による膀胱炎の治療
お薬の投与方法は、通常は飲み薬が選択されますが、猫がストレスを感じる場合は注射での投与に切り替えることもあります。
ストレスや肥満による膀胱炎の治療
獣医師と相談しながら、適切な食事量の設定や運動量の調整を行います。必要に応じてストレス軽減のためのサプリメントが処方されることもあります。また、痛みを和らげるために鎮痛剤が使用されることもあるでしょう。
結石・結晶による膀胱炎の治療
小さな結石や結晶の場合は、特別に調整された療法食で溶かしていく治療が行われます。この療法食は、結石が作られにくい環境を整えるだけでなく、再発を防ぐ効果も期待できます。
重症の場合や大きな結石がある場合は、手術による除去が必要になることもあります。また、結石を洗い流すため、点滴や皮下補液で尿量を増やす治療も行われます。
治療後は定期的な検査で経過を観察し、再発防止のために適切な食事管理を続けることが重要です。
猫の膀胱炎は何日で治る?
軽度の場合、治療をしなくても数日から数週間で症状が改善することもありますが、膀胱炎であることには変わりないため、猫は強い不快感や痛みに苦しむことになります。ですので、たとえ軽度でも、なるべく動物病院を受診し適切な処置を受けることをおすすめします。
細菌感染による膀胱炎の場合は、適切な抗生物質による治療を行うことで、2〜3週間度で改善が見られます。一方、結石が原因の場合は、手術や食事療法など、より長期的な治療が必要になります。
なお、膀胱炎が慢性化している場合は、約半数が1年以内に再発するという報告もあり、継続的な管理と予防が重要です。
猫の膀胱炎を予防するには
以下の予防法を実践することで、発症のリスクを下げることができるでしょう。
●定期的な健康診断を受ける
尿検査や血液検査を含む定期的な健康診断で、早期に異常を発見することが重要です。
特に、結晶の有無をチェックする尿検査は、半年に1回程度の実施が推奨されます。異常が見つかった場合は、すぐに適切な対処を行いましょう。
●水分摂取量を増やす工夫をする
飲水量が減ると膀胱炎のリスクが高まるため、いつでも十分な水を摂取できるよう、複数の給水ポイントを設置したり、流水式の給水器を使用したりしましょう。
また、ドライフードだけでなくウェットフードを取り入れることで、自然と水分摂取量を増やすことができます。
●快適なトイレ環境を整える
清潔で使いやすいトイレ環境の整備は、膀胱炎予防の基本です。
「猫の頭数プラス1個以上」のトイレを設置し、毎日清掃を行います。また、トイレは静かで落ち着ける場所に設置し、猫がストレスなく排泄できる環境を整えましょう。
猫の膀胱炎は早期発見と適切な治療、日頃の予防が重要
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監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。