猫の腎臓病を予防するために飼い主ができること

猫の腎臓病を予防するために飼い主ができること

 猫は腎臓病になりやすく、諸説ありますが、高齢の猫の約70%が腎臓病になるともいわれています。また猫の腎臓病は死亡率の高い病気でもあり、早期発見と早期の治療開始、猫が若い時期から予防に努めることが重要です。

 今回は、猫の腎臓病症状や原因のほか、飼い主ができる予防法などについて解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 発症することが多い猫の腎臓病
  2. 猫の腎臓病で考えられる原因とは?
    1. 急性腎臓病の原因
    2. 慢性腎臓病の原因
  3. 猫の腎臓病の予防法
    1. 水を飲ませる
    2. フードに注意する
    3. ストレスを与えない
    4. 定期的に健康診断を受けさせる
  4. 猫の腎臓病は予防と早期発見に努めよう

発症することが多い猫の腎臓病

 猫の腎臓には、血液中の老廃物をろ過して尿を作る浄化機能、血液中の水分やミネラルのバランスを保つ調整機能、赤血球を作ったり血圧を調整したりする機能などがあります。そういった腎臓の機能が何らかの原因で低下してしまうのが腎臓病です。

 数時間〜数日で急激に悪化する「急性腎臓病と、長い期間をかけてゆっくり進行する「慢性腎臓病の2つがあり、いずれも猫の発症は多く見られます

 また、猫の死因として腎臓病はトップクラスに入ります。腎臓は一度機能が低下すると、元に戻ることはありません。そのため、予防することと、もし腎臓病になってしまったら早期に治療を開始し、できるだけ進行を遅らせることが重要です。

猫の腎臓病で考えられる原因とは?

 猫の腎臓病は、描種にかかわらず発症が多い病気です。特に高齢の猫がなりやすい慢性腎臓病の場合、猫は水を飲む量が少ないために腎臓に負担がかかり、高齢になって腎臓病を発症しやすいのではないかと考えられています。わかっていないことが多いものの、原因を知っておけば日常生活である程度予防することができるしょう。

 ここでは、猫の腎臓病で考えられる原因を、急性腎臓病と慢性腎臓病に分けてご紹介します。

急性腎臓病の原因

 猫の急性腎臓病は、短期間で急激に腎機能が低下する病気で、尿が出ない、食欲不振、下痢・嘔吐・脱水、痙攣(けいれん)、体温低下などの症状があります。数時間〜数日で進行することもあり、命に関わるためすぐに動物病院の受診が必要です。

 原因としては、尿道結石や膀胱炎、前立腺肥大などで尿が出なくなることが多いですが、その他に脱水や循環器疾患、出血などで腎臓への血液量が低下することなどでも発症します。

 また、感染症による腎炎や、中毒などによる腎障害でも急性腎臓病を起こすことがあり、特に植物のユリによる中毒は危険とされています。ユリは花や葉を食べなくても、飾ってある花瓶の水を飲んだり、花粉を口に入れたりするだけでも急性腎臓病を発症する可能性があるため、猫を飼っている家では厳禁です。

 なお、急性腎臓病によって腎機能が低下することで、慢性腎臓病に移行することもあります。急性腎臓病は早期に治療開始するとともに、快復後も様子を見ていくことが必要です。

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慢性腎臓病の原因

 猫の慢性腎臓病は、少しずつ腎機能が低下していく病気で、腎機能が低下、または異常がある状態が3ヵ月以上続くと、慢性腎臓病と診断されます。一度の検査ではわからず、診断までに数ヵ月かかることもあります。

 加齢で腎機能が低下していくケースのほか、急性腎臓病によるダメージで発症する場合もあり、腎臓腫瘍多発性嚢胞腎なども慢性腎臓病に含まれます。そのため、はっきりした原因はわかっていないことも多いようです。

 慢性腎臓病には、多飲多尿尿の色が薄くなる食欲の低下体重減少嘔吐痙攣などの症状がありますが、初期にはあまり見られず、飼い主が気づいたときには進行していることも多々あります

 特に高齢の猫では慢性腎臓病が多いため、普段と違う様子がないか確認してください。

 なお、猫の慢性腎臓病にはステージがあります。動物病院での血液検査や尿検査によって、下図のようにステージを分け、それぞれに合った治療を行います。

■猫の腎臓病における進行と症状の4ステージ

■猫の腎臓病における進行と症状の4ステージ

猫の腎臓病の予防法

猫の腎臓病の予防法

 猫の腎臓病は原因がわかっていないことも多く、完全に予防することは難しいです。しかし、いくつかの原因は回避できますし、腎臓病になりにくい環境を整えることも可能です。

 ここでは、飼い主ができる猫の腎臓病の予防法をご紹介しましょう。

水を飲ませる

 水をあまり飲まないことが猫の腎臓病の原因のひとつとされているため、猫ができるだけ水を飲むように工夫しましょう。

 常温がいい、結露をなめるのが好き、流水なら飲むなど、水の飲み方に好みがある猫も多くいます。よく観察して猫の好きな水の飲み方を探り、できるだけ水を飲めるようにしてください。

 なお、水はミネラルウォーターではなく水道水が無難です。特に硬水のミネラルウォーターは猫にとってミネラル分が多すぎて、尿路結石の原因となるとされることがあります。

 さらに、塩素殺菌されている水道水と違って、ミネラルウォーターは加熱殺菌しかされていない場合が多く、常温放置することで雑菌が発生するおそれもあるため、避けたほうがいいでしょう。

フードに注意する

 腎臓に負担をかけない食事も、腎臓病予防に大切です。リンやナトリウム、必要以上のたんぱく質などは腎臓に負担をかけるリスクがあるため、特に高齢になった猫は控えることをおすすめします。

 市販のキャットフードは猫の年齢に合わせた栄養素が配合されているため、手作りのフードよりも管理がしやすいです。

 また、EPAやDHAといったオメガ3脂肪酸は腎機能の低下を抑える働きがあるとされていますし、ウェットフードに慣らしておくと、どうしても水を飲まない猫に水分をとらせることができます。中毒を防ぐためにも、人間の食事を与えるのは避けてください。

 腎臓病になってしまった場合は、腎臓病に適したフードが販売されているため、獣医師に相談の上、療法食を与えましょう。

ストレスを与えない

 ストレスは免疫力を低下させ、さまざまな感染症にかかりやすくなります。また、猫がストレスを感じると尿を我慢して細菌性の感染を起こしやすくなるため、猫にストレスを感じさせない工夫が重要です。

 トイレをいつもきれいに保つ、隠れられる場所や部屋を見渡せる場所を作ってあげる、同居人や同居動物との相性によって生活エリアを分けるなど、猫がストレスを感じない暮らしを心掛けてください

 猫とのコミュニケーションの時間を取り、スキンシップしたり、おもちゃで遊んで運動させたりすることも大切です。普段からしっかり猫と関わって、不調があればすぐ気づけるようにしましょう。

定期的に健康診断を受けさせる

 特に慢性腎臓病の場合、初期はあまり症状がなく、飼い主が気づいたときには進行していた…ということも少なくありません。定期的に健康診断を受けさせ、腎臓の今の状態を確認しておくことが重要です。

 また、健康診断を受けることで、腎臓病になってしまった場合でもできるだけ早期発見して、治療を開始することができます

 特に、急性腎臓病を経験した猫は、ダメージによって慢性腎臓病に移行することもあるため、動物病院での経過観察が大切です。

猫の腎臓病は予防と早期発見に努めよう

 猫は腎臓病になりやすく、特に高齢の猫は注意が必要です。原因がわかっていないことも多いですが、普段のお世話でリスクを下げることは可能です。

 ただし、飼い主がどんなに注意していても、猫が腎臓病になってしまうことはありますから、早期に発見し、進行を遅らせることも重要でしょう。普段から猫の様子をよく観察し、不調を見逃さないようにしてください。

 どのような検査や治療が必要かは、実際に動物病院に行ってみないとわかりません。診療費が不安な場合は、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
 ●ガイア動物病院

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