公開日：2024-06-24

猫が血尿をしたらどうする？原因と対処法を解説

　猫の血尿は、さまざまな原因で起こります。その多くは泌尿器系の病気が原因のため、放置しておいても良くなることはほとんどなく、動物病院の受診が必要です。

　この記事では、猫の血尿の原因となる病気や、性別で異なる症状、対処の仕方について解説します。

監修者ガイア動物病院院長松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

【監修者プロフィール】

猫の血尿の原因
血尿を伴う猫の病気
猫の性別で異なる血尿の原因
1. オスに多い尿道閉塞
2. メス特有の子宮蓄膿症
猫の血尿の対処法
猫が血尿をしたら早急に動物病院を受診し、適切な対処を

猫の血尿の原因

　飼っている猫の尿に血が混じっている…。飼い主としてはかなり驚くでしょうが、落ち着いて対処することが肝心です。

　尿が赤く見えると誰でも血尿だと思いますが、実際には血尿のほかにも「血色素尿」というものがあります。これは、体内のどこかで破壊された赤血球が、尿とともに排出されている状態です。一般的な血尿とは原因が異なる上、見た目だけでは判断ができません。

　また、筋肉中の赤い色素が尿に混じる場合や、食べ物に含まれる赤い色素が尿といっしょに排出されることもあります。これらの現象と血尿を見分けるのは簡単ではありませんから、「血尿だ！」と思ったら、まず動物病院を受診するのが第一です。

　なお、犬の場合はメスが発情期に陰部から出血する「発情出血」があり、これを血尿と見間違えることがあるのですが、猫には発情出血がありませんので覚えておくといいでしょう。

血尿を伴う猫の病気

　猫の血尿の多くは、腎臓から尿道に至るまでの尿路のどこかで、出血を伴う異常が起こることが原因です。

　血尿を伴う泌尿器系の猫の病気はいくつかあり、猫といっしょに暮らすうえで、これらの病気について知っておくことは大切です。猫の病気の知識があれば、自宅での療養に役立ちますし、それ以前に病気の兆候に早く気づくことができます。

　ここでは、具体的な病名とその特徴について、詳しく見ていきましょう。

膀胱炎

　血尿を伴う病気として特に多く見られるのが、膀胱炎です。文字どおり、膀胱が炎症を起こす病気なのですが、原因はいくつかあります。

　尿道から細菌が入り込み、膀胱で繁殖することで起こる「感染性膀胱炎」は、尿のにおいが普段よりきつくなります。ほかに尿路にできた結石が膀胱にたどり着き、内側から粘膜を傷つけることで出血する「結石性膀胱炎」や、特に原因がはっきりしないのに炎症が起こる「突発性膀胱炎」があります。

尿路結石

　尿の中に含まれるミネラル物質と有機物質が結晶のように固まってできるのが、尿路結石です。尿路を詰まらせたり、粘膜を傷つけて出血させたりします。

　尿路結石で尿路が詰まると、頻繁に尿意を催してトイレには行くものの、尿が少ししか出ないということを繰り返します。また、先程ご紹介した膀胱炎の原因になることも多く、注意が必要です。

　尿路結石は結石の大きさや種類によっては、療法食を導入することで溶かして流すことができますが、いずれにしても動物病院での診察を受け、獣医師の指示に従うことが第一です。

腎不全

　細菌やウイルスへの感染、外傷、尿路の閉塞などによって、腎臓の組織が壊れ、機能不全に陥るのが腎不全です。これが慢性化した慢性腎不全は高齢での発症が多く、死亡率の高い病気です。

　腎臓の組織は一度破壊されてしまうと、再生することはありません。ですから、腎不全になったら、血中に老廃物を貯め込まないようにすることで、病気の進行を遅らせることが治療の目的になります。

腫瘍

　腎臓や膀胱に腫瘍ができ、ここから出血することで血尿が起こることがあります。腫瘍は高齢の猫に多いと思われがちですが、ウイルスが原因で腫瘍ができることもありますので、若い猫でも油断はできません。

　悪性腫瘍は周辺の臓器だけでなく、血液にのって遠くまで転移する厄介な性質を持ちますが、まず動物病院でしっかり検査してもらうのが第一です。

猫の性別で異なる血尿の原因

　猫の血尿の原因は、性別によって傾向が異なります。それぞれオスならでは、メスならではの、かかりやすい病気や症状があるのです。いずれにしても猫の異常を感じたら、すみやかに獣医師に相談するようにしてください。　

オスに多い尿道閉塞

　膀胱炎や尿路結石は、性別に関係なく発生します。しかし、オスはメスよりも尿道が細くて長く湾曲しており、しかも先端部はさらに細くなっているため、結石や炎症によって尿道がふさがる「尿道閉塞」を発症しやすいのです。

　特に飲水量が少なくなる冬場には、オスの尿道閉塞が起こりやすいので注意が必要です。

メス特有の子宮蓄膿症

　ホルモンの影響で猫の子宮に変化が起こり、そこに細菌感染が重なると炎症が起き、膿が溜まって子宮蓄膿症になってしまいます。

　猫の子宮蓄膿症の症状には、食欲不振や体重の減少、多飲多尿などがありますが、初期は無症状なので気付きにくいかもしれません。外陰部からのおりものや膿などの症状もありますが、猫はすぐになめ取るので、やはり気付きにくいです。

　子宮蓄膿症は緊急性の高い疾患で、早期に治療を行わないと命にかかわることもあります。そのため、避妊手術をしていない猫の場合は、定期的な健康診断を受けるほか、何らかの不調があればすぐに動物病院で相談してください。

　子宮蓄膿症は避妊手術を受けて入ればかからない疾患のため、若い時期の避妊手術も検討しましょう。

猫の血尿の対処法

　猫の血尿は多くが何らかの病気の兆候のため、飼い主が早く気付いて適切に対処することが重要です。

　ここでは、飼い主ができる猫の血尿への対処法をご紹介します。

すぐに獣医師に相談する

　「様子がおかしい」と感じたら、すぐに動物病院を受診するのが一番です。さして心配いらない状態であれば安心ですし、もしも危険な状態ならば、すぐに適切な治療を受けられます。

　猫の血尿は泌尿器系の重大な病気であることもありますから、すみやかに受診するようにしてください。

水分補給と食事管理の重要性

　泌尿器系のトラブルに対しては、十分な量の水分補給と食事管理が重要です。あまり水を飲まない猫ならば、ドライフードから水分を多く含むウェットフードに変更するといいかもしれません。

　肥満や運動不足は尿路結石のリスクを高めるので、食事は適量を与え、おやつはあげすぎないようにしてください。同時に、猫が安心して動き回れる環境を整えておき、運動不足にならないように注意しましょう。

ストレス軽減とトイレ環境の整備

　猫は環境の変化に敏感なため、できるだけストレスを与えず、リラックスできるよう、環境に配慮してください。

　また、猫はトイレ環境に対して神経質で、気に入らないと排尿を我慢してしまうことがあります。トイレの形や設置場所、トイレ砂の種類、洗浄する際の洗剤のにおい、掃除の頻度など、あらゆることに気を配りましょう。

猫が血尿をしたら早急に動物病院を受診し、適切な対処を

　猫の病気や体調不良を見つけるには、日頃の観察が欠かせません。食欲はどうか、行動におかしな点はないか、常に目配りを欠かさないようにしましょう。気になるところがあれば後回しにせず、動物病院を受診してください。

　もし、大きな病気が発覚した場合、入院や手術が必要になることもあります。経済的な負担を軽減し、より安心して愛猫と暮らすためには、ペット保険へ加入するのもおすすめです。多くのペット保険では、病気の診断を受けた後の加入を制限しているため、できるだけ猫が若いうちに検討するといいでしょう。

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監修者ガイア動物病院院長松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院（東京都杉並区）開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
　●ガイア動物病院　（外部リンク）

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。