犬の手術費用はどのくらいかかる?手術の理由や費用について解説

犬の手術費用はどのくらいかかる?手術の理由や費用について解説

犬を飼っていると、突然のケガや病気で治療や手術が必要になることがあります。できる限り最善の治療を受けさせたいですが、そんなときに気になるのが治療や手術にかかる費用ではないでしょうか。

動物病院は自由診療のため病院によって治療費は異なりますが、手術が必要になると、多くの場合は高額な手術費用がかかります。

この記事では、一般的な犬の治療費や手術費用について紹介するとともに、高額負担に備えるためのペット保険についても解説します。犬を飼い始めたばかりの人やペット保険の加入を考えている人は参考にしてください。

犬の平均寿命は年々延びている

アニコム ホールディングス株式会社「家庭どうぶつ白書2023」によると、犬の平均寿命は2021年時点で平均14.2歳です。犬の寿命は年々延びており、その背景には飼育環境の向上、動物医療技術の進歩、ドッグフードの品質向上など、さまざまな理由が考えられます。

愛犬が元気に長生きしてくれるのは非常に喜ばしいことですが、寿命が延びたことで、高齢ならではのケガや病気をしたり、介護が必要になったりするケースも増えています。また、入院や手術が必要になると高額な治療費がかかる場合があるため、注意が必要です。

犬の治療費は動物病院ごとに異なる

動物病院は自由診療で病院ごとに治療費が異なるため、相場がありません。また、犬の治療費はケガや病気の内容によっても大きく異なるほか、入院・手術を伴う場合は治療費が高額になりやすい傾向があります。

なお、手術費用のほかに、初診料や再診料、入院費、薬代などもかかり、費用がかさむこともあります。

医療技術の向上により、さらなる医療費の高額化も

近年、獣医師の技術向上や最新の診療機器の導入により、以前ではできなかった治療や手術を行うことが可能です。しかし、高度な医療技術や設備はコストがかかるため、その分医療費も高額になる傾向があります。

特に、CT(コンピューター断層撮影装置)MRI(磁気共鳴画像装置)などの高度な医療機器が導入されている動物病院では医療費も高くなります。

犬の手術理由のトップは「歯周病/歯肉炎」

犬の手術理由のトップは「歯周病/歯肉炎」

犬のケガや病気による手術理由はさまざまです。「家庭どうぶつ白書2023」で公表している犬の手術理由トップ10は下記のとおりです。
<犬の手術理由トップ10>
1位 歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む)
2位 そのほかの皮膚の腫瘍
3位 消化管内異物/誤飲
4位 膝蓋骨(亜)脱臼
5位 外傷(挫傷/擦過傷/打撲)
6位 乳腺腫瘍/乳腺腫瘤
7位 病理学的未定の皮膚腫瘍
8位 全身性の腫瘍
9位 子宮蓄膿症
10位 歯根膿瘍/根尖膿瘍
手術理由の疾患と手術費(1回あたりの診療費)について、「家庭どうぶつ白書2023」のデータを参考に詳しく見ていきましょう。

歯周病/歯肉炎

歯周病は、歯肉やその周囲の炎症の総称で、歯周病の初期の段階が歯肉炎です。犬は歯周病や歯肉炎になりやすく、特に3歳以上の犬では約8割が歯周病といわれています。

これは、犬の歯に付着した歯垢が歯石に変化するスピードが非常に速いほか、歯石には歯垢がつきやすいことが理由です。そのため、口臭が気になったり歯に歯石が付着していたり、歯茎が赤く腫れていたりする場合は、動物病院の受診をおすすめします。

なお、歯周病/歯肉炎の手術は麻酔を用いて行うことが多く、1回あたりの診療費は中央値で5万9,673円平均値で7万2,701円です。

そのほかの皮膚の腫瘍

犬の皮膚の腫瘍には、良性と悪性のものがあります。良性の腫瘍は進行速度が比較的ゆるやかで、転移などを起こさず全身に悪影響を与えることはありません。一方、悪性の腫瘍は一般的にがんと呼ばれ、進行速度が速く、周りの組織を破壊しながら増殖していく傾向があります。

また、悪性の腫瘍は皮膚にできるしこりやイボ、皮膚炎などの症状として現れることがあるため注意が必要です。

悪性の腫瘍であれば、外科手術や化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療などを行います。腫瘍は外から見ただけでは良性か悪性かわからない場合が多いため、犬の皮膚に異常を見つけたときは、早めに受診することが大切です。

なお、そのほかの皮膚の腫瘍の1回あたりの診療費中央値で7万7,330円平均値で9万2,011円です。

消化管内異物/誤飲

犬は口の感覚が優れており、なめたり噛んだりすることで、それがどのようなものなのかを確かめる習性があります。しかし、口の中に入れているうちに誤って飲み込んでしまうこともあるため、注意が必要です。特に子犬の頃は好奇心が旺盛のため誤飲事故が起こりやすくなります。

犬が誤飲したものによっては窒息や中毒症状などの原因となるため、すぐに吐かせるようにしましょう。また、誤飲した当日は無症状でも、数日経ってから中毒症状が起こる場合もあるため、下記のものを誤飲した場合は必ず動物病院を受診するようにしてください。
<誤飲すると危険なもの>
・犬や子供のおもちゃ
・骨や竹串、つまようじ
・乾燥剤
・保冷剤
・ボタン電池
・洗剤
・殺虫剤
・人間の薬
・たばこ
・中毒性のある食べ物(玉ねぎ、チョコレート、キシリトール)
誤飲をした場合は、動物病院ではX線や超音波、内視鏡、CTなどによる検査を行って異物の位置や大きさを確認した後、吐き出させるか内視鏡手術や開腹手術によって異物を取り出します。

なお、消化管内異物/誤飲の1回あたりの診療費は中央値で11万418円、平均値で14万1,687円です。

膝蓋骨(亜)脱臼

犬の膝蓋骨(亜)脱臼は「パテラ」とも呼ばれ、ひざの皿である膝蓋骨が正常な位置から外れてしまう状態を指します。

特に小型犬では子犬の頃から発症する可能性が高く、徐々に進行して歩行に異常をきたすことがあるため注意が必要です。
膝蓋骨(亜)脱臼の原因は遺伝によるものといわれますが、転倒したり高い場所から落ちたりした際にも起こることがあります。歩行中に足を伸ばしたりスキップしたりするといった異変がある場合は動物病院の受診が必要です。

なお、膝蓋骨(亜)脱臼の治療方法は、薬物治療(鎮痛剤や消炎剤)が一般的ですが、根本的な治療を望む場合は外科手術を行うこともあります。1回あたりの診療費は中央値で23万8,786円平均値で26万1,170円です。

外傷(挫傷/擦過傷/打撲)

日常生活や遊びの中で、犬が外傷を負うことは珍しくありません。重傷であれば手術が必要となるケースもあるほか、皮膚が深く切れている場合や大きな裂傷がある場合は、手術による縫合が必要となることがあります。

ほかに、骨が折れたり事故などにより内臓に損傷が生じたり、眼球が損傷していたりする場合は緊急手術が必要となることがあります。なお、1回あたりの診療費は中央値で15万1,074円平均値で21万7,494円です。

乳腺腫瘍/乳腺腫瘤

乳腺腫瘍乳腺腫瘤は乳腺にできる腫瘍のことで、いわゆる乳がんのことを指します。犬の乳腺腫瘍の原因は、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンとの関係が示唆されており、避妊手術を受けていないメスの犬に多く見られます。治療方法は、その腫瘍の種類や進行度合いによりますが、手術による腫瘍の切除を行うことが一般的です。

なお、乳腺腫瘍/乳腺腫瘤の1回あたりの診療費は中央値で11万5,390円平均値で13万5,885円です。

病理学的未定の皮膚腫瘍

病理学的未定の皮膚腫瘍とは、病理学的な検査や評価(細胞や組織のサンプルを調べることで、腫瘍が良性か悪性かを判断するプロセス)がまだ行われておらず、その腫瘍の性質が確定していない皮膚腫瘍のことです。

犬の皮膚腫瘍には良性と悪性のものがあり、その判断は一般的に見た目だけでは難しいとされています。良性腫瘍は、脂肪腫や腺腫など悪性腫瘍は肥満細胞腫や扁平上皮がんなどです。特に、扁平上皮がんは爪の根本や口腔内、鼻の先端、耳介にできることが多いといわれています。病理学的未定の皮膚腫瘍の治療方法は、腫瘍の種類や進行度により異なりますが、良性または初期の悪性腫瘍に対しては、手術による腫瘍の摘出が一般的です。手術が困難な場合や腫瘍が進行している場合は、放射線治療や抗がん剤治療が用いられます。

なお、病理学的未定の皮膚腫瘍の1回あたりの診療費は中央値で7万6,010円平均値で8万7,585円です。

全身性の腫瘍

全身性の腫瘍は、体内の複数の部位に腫瘍が発生する状態で、一部の腫瘍がほかの部位に転移することで起こります。全身性の腫瘍の治療法は、腫瘍の種類や進行度合いによって異なりますが、可能な限り外科手術で腫瘍を取り除き、化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療を行うことが一般的です。

なお、1回あたりの診療費は中央値で10万8,146円平均値で13万7,029円です。

子宮蓄膿症

子宮蓄膿症は、子宮内膜が細菌感染を起こし、子宮内に膿が溜まる病気です。特に避妊手術を受けていないメスの犬に多く見られ、フン便中の大腸菌などが膣口から入り込んで感染し、子宮内で増殖することが原因です。

また、子宮蓄膿症は、発情周期に関連して子宮蓄膿症が起こりやすい時期があることや、性ホルモンの投与などでも発症することがわかっています。そのため、根本的な原因はエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの影響によって、感染への抵抗性が弱くなるためと考えられています。なお、陰部から膿や血が出ていたり、腫れていたりする場合は動物病院を受診してください。

子宮蓄膿症は、基本的に外科手術で膿が溜まった子宮を摘出し、場合によっては卵巣を摘出します。1回あたりの診療費は中央値で14万8,400円平均値で16万6,927円です。

歯根膿瘍/根尖膿瘍

歯根膿瘍根尖膿瘍は、歯の根元部分(歯根部)に炎症が生じ、膿が溜まってしまう、高齢の犬に起こりやすい病気です。外傷や歯肉炎などの歯周病の進行が原因となり、硬いものを噛んだときの摩擦によって歯髄が露出し、細菌が入り込んでしまうことで化膿を起こして膿瘍を形成することもあります。

症状としては「硬いものを食べなくなる」「片方の顎を使って噛む」「食欲がなくなる」「顔が腫れる」などです。

また、重症化すると骨が溶け、溜まった膿が皮膚を破って眼下や鼻などに穴を開けて、膿が出てくることもあります。一般的な治療法は、該当する歯を抜歯し、感染部位の洗浄と抗生物質や内服の消炎剤の投与などを行います。なお、1回あたりの診療費は中央値で6万5,130円平均値で8万313円です。

犬のケガや病気による手術費用に備えてペット保険の加入がおすすめ

犬のケガや病気による手術費用に備えてペット保険の加入がおすすめ

万が一、ペットの犬がケガや病気に見舞われたとき、入院や手術費用の面で大きな助けとなるのがペット保険です。ペット保険は、飼っている犬がケガや病気で治療を受けた場合にかかった費用を補償し、通院・入院・手術の3つが主な補償対象です。

なお、健康診断予防接種といった病気の予防に関わる行為や、避妊・去勢手術は補償対象外になりますが、幅広いケガや病気の治療費を補償してくれます。補償割合は通常、50%か70%のいずれかに設定されており、この割合が高くなるほど保険料も高額になります。

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犬の治療費は入院や手術が必要になった場合は、高額になることがあるため、突然のケガや病気に備えて、あらかじめペット保険に加入しておくのがおすすめです。なお、ペット保険は保険会社や商品によって、補償内容や保険料が大きく変わるため、比較検討するといいでしょう。

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