「貯める」だけがベストじゃない!?  脱・貯蓄主義に向けた日本政府の取り組み

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貯蓄好きな傾向にある日本人と、それに対する政府の取り組みを解説(写真はイメージ)

 日本人は「貯蓄好き」だとよく言われるが、過去20年間の家計金融資産の伸びを米英と比較すると、日本は米英のおよそ2倍という大きな差が出ているといわれている。今、日本が抱える「貯蓄主義」の問題と、それに対する政府の取り組みを解説する。

■“貯蓄”だけでは新たな富を生まない

 日本人の「貯蓄好き」を象徴するデータに、日米の家計金融資産の構成内訳がある。日本銀行調査統計局『資金循環の日米欧比較(2017年8月18日)』によると、日本では家計の金融資産全体における現金・預金の保有割合は51.5%にのぼるのに対し、米国では債権や株式、投資信託といったいわゆる「投資」の割合が半分以上を占めている。日本人がいかに資産を現預金に眠らせているのかがよくわかるデータだ(図表1)。

 しかし、こうした日本人の「貯蓄主義」が大きな弊害をもたらしている。金融庁『平成 27 事務年度 金融レポート』(図表2)をみると、1995年〜2015年の日米英の家計金融資産の推移を1995年の数字を基準に比較すると、米国民では3.11倍、英国民では2.83倍に増えているのに対し、日本国民の家計金融資産は1.47倍の増加にとどまっている。米英の国民が株式や投信の運用益で金融資産を増やしてきたのに対し、安定志向が強い日本国民はほとんど利息を生まない預貯金を積み上げてきた結果が差となって現れたのだと言える。

■米英の政策的な取り組み

 実は、1980年代前半までは、米国でも株式や投資信託の保有率は、現在の日本同様に低い水準であった(図表3)。アメリカ政府は1980年代に入り、401k(日本でいう企業型確定拠出年金)や、IRA(=個人退職勘定、日本でいう個人型確定拠出年金)といった制度の整備を進めてきた。その結果、米国民の株式・投信の保有比率が上昇していったという背景がある。また、英国でも、日本のNISAのモデルとなったISA(個人貯蓄口座)が1999年に導入され、若年層や低所得者層にも活用されたことから現在では恒久化され、国民に広く普及している制度となっている。

 近年、日本ではNISAやジュニアNISA、iDeCo(個人型確定拠出年金)、2018年にスタートする新制度『つみたてNISA』といった非課税投資制度が立て続けに創設されているが、これは、政府が米国や英国の成功にならい、日本人の金融資産の過半を占める現預金を少しでも投資に振り分けてもらおうとしているからに他ならない。

■日本の制度上の問題と改善への取り組み

 しかし、日本の制度にはまだまだ課題が多い。例えば、日本のiDeCoでは60歳以降は拠出ができなくなるのに対し、米国のIRA(Individual Retirement Account/個人退職口座)は70.5歳まで加入が可能なことや、日本のNISAでは投資対象が株式や投資信託などに限定されているが、英国のISA(Individual Savings Account/個人貯蓄口座)では預金型と株式型、主に2つの受け皿があり、預金型では預金やMMF等、株式型では株式と投信、債券、保険等まで幅広く商品を購入できることなどが挙げられる。各国の制度と比較して、日本の制度は利便性の悪さが指摘されている。

 そのような問題を受け、日本政府は各種制度の整備を進めている。NISAが開始した当初、年間の投資上限額は100万円だったが、制度スタートから2年後の2016年には、12の倍数である年間120万円に引き上げ、毎月の積立がしやすいようにしたのもその一貫だ。また、iDeCoにおいては2017年1月から今まで加入対象とされていなかった企業年金のある会社員、公務員、専業主婦にも対象が拡大された。2018年からは掛金限度枠の使い残しを減らすため、拠出限度額の年単位化が予定されるなど、使い勝手が向上する改正が行われている。

 新制度『つみたてNISA』は、投資可能期間が2037年までの時限措置であるが、英国のISAがそうであったように、国民に広く定着すれば恒久化の道も見えてくるはずだ。つみたてNISAでは、信託期間が短い商品や手数料が高い商品などが除外され、長期的に資産形成をしやすい制度設計がなされている。日本政府は国民に投資習慣を身につけてもらうために有効な手段を模索している最中だ。私たち消費者も、真剣に「貯蓄から投資」へと意識改革をしなくてはならない時を迎えている。

(フリーライター・永井志樹子)

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