猫の甲状腺機能亢進症とは?症状や原因、治療法を解説

猫の甲状腺機能亢進症とは?症状や原因、治療法を解説

甲状腺機能亢進症とは、高齢の猫で発症しやすいホルモンの病気です。発症すると、甲状腺ホルモンが過剰になり、全身の臓器に負担をかけてしまいます。

進行すると食欲の低下や体力の低下のほか、嘔吐や下痢などを繰り返すようになりますが、初期はむしろ猫が元気になったように見えるため、病気に気づきにくいことも多いようです。

10歳以上の猫の約10%が甲状腺機能亢進症だといわれることもあり、飼い主は知っておきたい病気でしょう。

ここでは、猫の甲状腺機能亢進症の症状や原因、治療法などについて解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 高齢の猫に多い甲状腺機能亢進症
  2. 猫の甲状腺機能亢進症の症状
  3. 猫の甲状腺機能亢進症の原因
  4. 猫の甲状腺機能亢進症の治療法
    1. 投薬
    2. 食餌療法
    3. 手術
  5. 猫の甲状腺機能亢進症を治療する上での注意点
  6. 猫の甲状腺機能亢進症を予防するには?
  7. 猫が高齢になったら甲状腺機能亢進症に注意を

高齢の猫に多い甲状腺機能亢進症

甲状腺は体の代謝を調整する甲状腺ホルモンを分泌する臓器です。喉部分にあって、蝶が羽を広げたような形で左右一対になっているごく小さい臓器ですが、甲状腺ホルモンは猫の体のエネルギー消費を一定に保ち、脈拍数や体温、自律神経の働きを調節するといった作用があります。

甲状腺機能亢進症では、何らかの原因で甲状腺の片方、または両方が肥大して甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が過剰になってさまざまな症状を引き起こします。

猫種や性別に関係なく、10歳以上の高齢の猫で発症が多い病気です。

なお、甲状腺の機能障害としては、甲状腺ホルモンの分泌が低下する「甲状腺機能低下症」もありますが、猫ではあまり見られません

猫の甲状腺機能亢進症の症状

猫の甲状腺機能亢進症の症状

甲状腺機能亢進症になると全身の代謝が高まるため、食欲は増加するのに体重は減少していくことが特徴です。

活発になって大きな声で鳴いたり、甘えるようになったりする場合もありますが、攻撃性の増加や目の異様な輝きなどが見られる場合もあります。初期はどちらかというと猫がポジティブに変化するため、病気の症状と捉えるのは難しいかもしれません。

甲状腺機能亢進症が進行すると、多飲多尿や脱毛、毛づやが悪くなる、脈が早くなるといった症状が見られるようになります。食欲が落ちて嘔吐下痢を繰り返すようになり、体力が低下して元気もなくなっていくでしょう。

さらに、心筋症や高血圧症、慢性腎臓病、網膜剥離などの深刻な合併症を起こすこともあります。

猫の嘔吐、下痢については、下記の記事をご覧ください。
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猫の甲状腺機能亢進症の原因

猫の甲状腺機能亢進症の原因は、加齢や遺伝、食事内容、飼育環境との関連が疑われており、こういった要素によって甲状腺が過形成(正常な細胞が増殖して甲状腺が大きくなる)し、甲状腺ホルモンの過剰分泌が起きるとされています。

そのほかに、甲状腺腫瘍や下垂体(全身のホルモンを調整する器官)の異常甲状腺ホルモン薬の過剰投与なども、甲状腺機能亢進症の原因として考えられます。

猫の甲状腺機能亢進症の治療法

猫の甲状腺機能亢進症は、触診や超音波検査で甲状腺の状態を確認し、血液検査で血中の甲状腺ホルモンの量を測定して診断します。

また、合併症がないか確認するためにさまざまな検査が行われるため、診療費が高額になる可能性もあります。甲状腺機能亢進症と確定したら、主に投薬食餌療法手術による甲状腺摘出などの治療を行います。

投薬

投薬では、甲状腺ホルモンの合成を抑える抗甲状腺薬が使われます。

抗甲状腺薬の正しい用量を確認するためには、投与して家庭で様子を見ながら、動物病院で検査という流れを繰り返さなければなりません。その後も副作用がないか、甲状腺の数値は安定しているかを確認するため定期的に検査が必要です。

また、抗甲状腺薬は、肥大した甲状腺を小さくするものではなく、あくまで甲状腺ホルモンの分泌を抑えるものであるため、一度投薬を始めたら生涯服用を続けることになります。

食餌療法

甲状腺機能亢進症の食餌療法では、甲状腺ホルモンのもととなる、ヨウ素を制限したフードを与えます。軽度の場合は、投薬なしで食餌療法のみで症状を抑えることもできるようです。

しかし、猫は食事の好みが激しい場合があり、ヨウ素を制限したフードを食べない場合があります。また、食餌療法を始めた場合、そのフード以外はおやつも含めて与えられないという点にも注意が必要です。

手術

投薬や食餌療法で効果が見られない場合や、甲状腺機能亢進症の原因が悪性の腫瘍である場合は、手術で甲状腺を切除することもあります。しかし、猫の体力や麻酔のリスク、ほかの疾患との関係などで判断されるため、どの猫でも手術ができるとは限りません

また、手術で肥大した甲状腺を切除することで、その後の投薬や食餌療法などが必要なくなる場合があります。ただし、切除した甲状腺が片方のみなら問題ありませんが、両方の場合は甲状腺ホルモンを分泌できなくなるため、その後は生涯、甲状腺ホルモン薬の投与を行わなければなりません。

猫の甲状腺機能亢進症を治療する上での注意点

前述のように、猫の甲状腺機能亢進症の初期症として、猫が元気になったように見えることがあります

本来、猫も高齢になれば、食欲が低下したり活動量が落ちたりしますが、甲状腺機能亢進症のせいで若い頃の活発さを取り戻したように見えてしまうのです。また高齢の猫では腎臓病がよく見られますが、甲状腺機能亢進症で血流が良くなったことで、一時的に腎臓の機能が回復したように見えることもあります。

この初期症状を放置すれば、嘔吐や下痢、深刻な合併症を招くことがあるため、早期に治療を開始することが望ましいです。

なお、難しいのは、治療を開始したことで猫の元気がなくなったように見えることです。一般的な高齢の猫の姿、本来の腎臓の機能に戻っただけですが、元気な様子を見た後では、「治療によって体調が悪くなった」ように見えるかもしれません。

しかし、ここで治療をやめてしまうと、甲状腺機能亢進症はどんどん進行します。猫の様子に気になるところがあれば獣医師に相談しつつ、飼い主の判断で治療を中断してしまうことがないように注意してください。

猫の腎臓病については、下記の記事をご覧ください。
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猫の甲状腺機能亢進症を予防するには?

猫の甲状腺機能亢進症を予防するには?

甲状腺機能亢進症は原因が特定されておらず、予防は難しいとされています。そのため、早期発見・早期治療が重要になります。

甲状腺機能亢進症の初期症状は、よく食べる、よく鳴くなど、元気な状態と勘違いしてしまうものが多いため、症状を知っておくことが重要です。猫の様子が普段と違うと感じたら、早めに動物病院で相談しましょう

猫が高齢期になったら、定期的な健康診断の際に甲状腺ホルモンの数値を確認しておくことも大切です。

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猫が高齢になったら甲状腺機能亢進症に注意を

甲状腺機能亢進症は高齢の猫に多い病気で、初期症状はポジティブにも見られる変化のため、気づきにくいこともあるようです。

しかし、進行すれば食欲や体力の低下、下痢、嘔吐などの症状が出るようになり、深刻な合併症の心配もあります。猫が元気に見えても、高齢になったら甲状腺機能亢進症の心配があることを知っておき、普段から健康チェックを欠かさないようにしてください。

なお、甲状腺機能亢進症でどのような検査や治療が必要かは、実際に動物病院に行ってみないとわかりません。診療費が不安な場合は、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
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