猫の皮膚病とは?原因や治療法について解説

猫の皮膚病とは?原因や治療法について解説

 猫の皮膚や被毛は、グルーミング(毛づくろい)によって、いつもはきれいな状態に保たれているのですが、何らかの原因で皮膚にトラブルが起きることがあります。

 猫の皮膚は被毛に覆われているため、湿疹や赤みなどがあっても、すぐに気づくのは難しいかもしれません。しかし、皮膚病はかゆみや痛みなどを伴うことが多く、できるだけ早く解決してあげることが大切です。

 今回は、猫の皮膚病の原因や症状治療法や予防法などについて解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 皮膚の異常全般を指す猫の皮膚病
  2. 猫の皮膚病の主な原因
    1. 寄生虫の感染
    2. 細菌や真菌の感染
    3. アレルギー
    4. ストレス
    5. その他
  3. 猫の皮膚病の治療法
    1. シャンプー療法
    2. 薬物療法
    3. 食餌療法
  4. 飼い主ができる猫の皮膚病の予防法
    1. スキンケア
    2. 環境の適切な管理
    3. ストレス予防
  5. 猫の皮膚病は飼い主のケアで予防と改善を

皮膚の異常全般を指す猫の皮膚病

 皮膚病とは、特定の病名を指すものではなく、猫の皮膚に何らかの異常があることを指しています。そのため、皮膚病といっても、かゆみや湿疹、脱毛、べたつき、におい、フケ、炎症、腫瘍など、症状はさまざま。原因も多岐にわたり、中には人間に感染する皮膚病もあるため注意が必要です。

 異常があれば、猫は自分自身でなめたり噛んだりして皮膚を傷付け、病状を悪化させてしまうことがあります。それでなくとも、かゆみや痛みがあれば猫にとって不快な状態ですから、できるだけ早くに気づいて治療を受けることが重要です。

猫の皮膚病の主な原因

猫の皮膚病の主な原因

 猫の皮膚病は、皮膚に異常が起きていることの総称であるため、原因は多岐にわたります。猫自身の過剰な毛づくろいが原因で炎症を起こしたり、長毛種なら湿度や温度によって湿疹が出たりすることもあります。

 ここでは、猫の皮膚病の原因として考えられることをご紹介します。

寄生虫の感染

 ノミやダニといった生虫の感染は、猫の皮膚病の原因としてよく見られるものです。刺された箇所が傷となって皮膚炎を起こすほか、強いかゆみのためにかき壊して皮膚炎になることもあります。完全室内飼いでも、飼い主の衣服や持ち物などから運び込まれることがあり、注意が必要です。

 ノミの場合は、唾液によってアレルギー性の皮膚炎を起こしたり、ノミが媒介するほかの寄生虫や細菌などに感染して皮膚炎を起こしたりすることもあります。ミミヒゼンダニの寄生による「耳疥癬」、ツメダニの寄生による「ツメダニ症」なども、猫でよく見られる皮膚病です。

細菌や真菌の感染

 皮膚や被毛に細菌や真菌が感染することで、皮膚病を起こすこともあります。常在菌であるマラセチア感染による「マラセチア性皮膚炎」や「マラセチア性外耳炎」などは、猫でよく見られる皮膚病です。

 また、皮膚糸状菌に感染して起こる「皮膚糸状菌症(白癬)」などは、人間にも感染して円形脱毛症や赤み、かゆみを引き起こすこともあります。

 これらの細菌や真菌は普段は問題ありませんが、何らかの原因で異常増殖し感染してしまうことがあります、子猫や高齢の猫、体力が低下している猫などは、特に注意が必要です。長毛種の場合、夏場などで湿度が高いときに被毛の中に湿気がこもり、菌が異常増殖してしまうこともあります。

アレルギー

 何らかの物質のアレルギー反応として、皮膚病を起こすことがあります。猫のアレルゲンは大きく「食物」「環境(ノミ、ハウスダスト、花粉など)」に分けられ、いずれにせよかゆみや発疹、脱毛などの症状が見られます。食物アレルギーの場合は、下痢などの消化器症状を起こすこともあるでしょう。

 また、原因は不明なことが多いものの、アレルギーに関連してアトピー性皮膚炎」を持っている猫も多いです。強いかゆみが続くため、患部をかき壊したり、なめすぎたりして皮膚病を悪化させることがあり、喘息や気管支炎などを併発することもあります。遺伝性・先天性のアレルギーが関係しているため、親猫にアトピー性皮膚炎がある場合は注意してください

ストレス

 ストレスを感じると猫は毛づくろいをするため、過剰な毛づくろいで皮膚に傷がつき、皮膚病を引き起こすことがあります。特に、猫がなめやすい腹部や手足などはストレスによる皮膚病が表れやすい部分です。

 また、ストレスによって免疫力が下がり、普段は問題ない常在菌が異常増殖したり、感染しやすくなったりして、皮膚病になってしまうこともあります。

その他

 「天疱瘡」などの免疫性疾患や、「クッシング症候群」などのホルモン性疾患でも、皮膚病の症状が見られることがあります。こういった疾患による皮膚病の場合、原因となる疾患の治療やコントロールをしなければ、改善は困難です。原因となる疾患の治療を行いつつ、皮膚病についても対処してあげましょう。

猫の皮膚病の治療法

 猫の皮膚病は、動物病院で原因を特定し、適切な治療を受けることが重要です。

 皮膚病の原因はさまざまのため、皮膚や被毛のチェックのほか、寄生虫の有無や血液検査、アレルギー検査といった検査も数多く必要になり、特定にはある程度時間がかかるでしょう。すぐに改善する皮膚病もありますが、長期にわたって治療したり、何度もぶり返したりする皮膚病もあり、治療には根気が必要です

 治療法は主に下記のようなものがありますが、原因によって違う方法がとられることも、複数を組み合わせることもあります。

シャンプー療法

 シャンプーで皮膚や被毛を清潔にすることで、改善する皮膚病もあります。水に濡れることを極端に嫌がる猫には使えない場合もありますが、シャンプーは副作用のリスクが少なく、自宅でも行える皮膚病の治療法のひとつです。

 実際には、かゆみの抑制や殺菌、保湿、皮脂の除去などに効果がある薬用シャンプーを使用し、家で飼い主が対応することになります。

 ただし、中にはシャンプーにアレルギーを起こす猫もおり、シャンプー後さらに皮膚病を悪化させることもあります。薬用シャンプーは市販されていますが、皮膚病がある場合は獣医師の指示があったものを使い、異常があればすぐ動物病院に相談しましょう。

薬物療法

 薬物療法では、ノミやダニが原因の場合は駆虫薬、真菌なら抗真菌薬、アレルギーなら抗アレルギー薬など、症状や原因から皮膚病の箇所に合った薬を使います

 外用薬や内服薬、注射での投与もありますが、猫の性格によって使い分けることも可能なため、獣医師に相談してみてください。

食餌療法

 食物アレルギー性皮膚炎の場合は、除去食療法食が有効です。それ以外にも、アレルギーや皮膚炎を抑えたり、皮膚や被毛を強化したりする栄養分が入った療法食が用いられることがあります。

 なお、猫は食の好みにうるさい場合があるので、獣医師と相談しながら治療を進めましょう。

飼い主ができる猫の皮膚病の予防法

飼い主ができる猫の皮膚病の予防法

 猫の皮膚病の原因はさまざまですが、飼い主のケアで予防できるものもあります。猫がつらい思いをしないよう、日々のお世話で気を配ってください。

スキンケア

 日々のスキンケアは、皮膚病を予防するとともに、異常があったらすぐに気づいて対処できる点がメリットです。ブラッシングやマッサージはコミュニケーションにもなり、猫のストレス軽減にも役立つため、習慣にしておくといいでしょう。

 短毛種なら3ヵ月〜半年に1回程度、長毛種なら2〜3ヵ月に1回程度のシャンプーは、皮脂やフケ、余分な抜け毛などを取り除いて皮膚病を予防することに有効です。基本的に猫は濡れることを嫌がるため、極端に嫌がる場合はドライシャンプーなども検討してみてください。

環境の適切な管理

 特に長毛種の場合、被毛の中に熱や湿気がこもって皮膚病の原因になることがあります。猫が快適に過ごせるような温度や湿度に気を配ってください

 また、室内を清潔に整えることで、ノミやダニ、ハウスダストといったアレルゲンを低減できます。猫が生活する部屋をこまめに掃除するとともに、おもちゃやベッドはできるだけ洗える布製を選ぶことがおすすめです。

 なお、ノミやダニは定期的に予防薬を利用することで感染を防げるため、獣医師に相談するといいでしょう。

ストレス予防

 猫のストレスは、ストレス性の皮膚炎などを引き起こすリスクがあるとともに、ほかの疾患の原因になることもあります。できるだけ猫がストレスを感じないよう、生活環境を整えてください。トイレは常にきれいに保ち、猫が隠れられる場所や部屋を見渡せる場所などを作ってあげましょう。

 飼い主と思い切り遊んだり、スキンシップしたりすることも、猫のストレス予防や解消に有効です。

猫の皮膚病は飼い主のケアで予防と改善を

 猫の皮膚病の症状や原因はさまざまで、飼い主が特定するのは簡単ではありません。しかし、かゆみや痛みといった皮膚病の症状は猫にとって不快なものですから、なるべく早めに改善してあげたいものです。少しでも気になることがあれば、動物病院を受診して対処できるようにしましょう。

 どのような検査や治療が必要かは、実際に動物病院に行ってみないとわかりません。診療費が不安な場合は、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
 ●ガイア動物病院

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