猫が糖尿病になったら?症状や原因、治療法を解説
血液中の糖は、インスリンによって細胞内に取り込まれ、エネルギーとして使われます。インスリンの不足や作用不全があれば、細胞に糖が取り込まれずに猫の体はエネルギー不足になってしまいます。さらに血液中の糖が多い状態が続くと、血管にダメージを与えたり、合併症を引き起こしたりして、最悪の場合は死に至ります。
猫の糖尿病は、予防に努めるとともに初期に治療を開始し、管理していくことが重要です。今回は、猫の糖尿病の原因や症状のほか、糖尿病になってしまった場合の治療法などについて解説します。
監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
猫の糖尿病の原因
人間の場合、インスリンの分泌が不足する「I型糖尿病」と、体がインスリンを使えなくなったり、細胞がインスリンに反応しなくなったりして発症する「II型糖尿病」がありますが、猫ではII型糖尿病に似たタイプの発症が多いとされています。
II型糖尿病の発症には遺伝的な体質や老化による機能低下も関係しますが、ほかにもさまざまな原因があります。
不適切な食事
炭水化物を摂取すると食後の血糖値が上がりますが、元々、猫は完全肉食動物のため、血糖値のコントロールがあまり得意ではありません。そのため、猫が炭水化物の多い食事を続けると、血糖値が高い状態が続きやすく、ほかの雑食や草食の動物より糖尿病のリスクが高まります。
肥満
特に、避妊手術を受けたオス猫は肥満になりやすいとされるため、糖尿病にも注意が必要です。
慢性膵炎
猫は慢性膵炎になりやすいとされており、感染症や外傷などの関連性が疑われていますが、多くは原因不明です。食欲不振や元気の消失、脱水、下痢といった症状がありますが、猫の場合は無症状なことも多いようです。
慢性膵炎になるとインスリンの分泌が不足しがちになって、糖尿病が引き起こされます。気になることがあれば、すぐに動物病院を受診してください。
ストレス
前述のように、猫は血糖値のコントロールがあまり得意ではないため、一度血糖値が上がるとなかなか下がりにくい特徴があり、高ストレスの状態が続くと糖尿病になりやすくなってしまうのです。
トイレが汚れていたり、落ち着ける場所がなかったりなど、小さなことで猫はストレスを感じる場合があるので、普段から注意しましょう。
このほか、ホルモン疾患を持つ猫や、口内炎や皮膚炎でステロイドを長期間使用している猫なども、糖尿病のリスクが高まるとされています。
なお、ステロイドは治療のために長期的に使わざるをえないこともあるため、使用中は定期的な検査が必須です。獣医師の指導に従い、飼い主の判断で使用を中止したり容量を変更したりしないようにしてください。
猫の糖尿病の症状
多飲多尿
飼い猫が薄い色のおしっこを大量にするようになった、普段より大量に水を飲むなどの様子が見られたら要注意です。
食欲の増加と体重の減少
栄養不良のため元気がなくなったり、毛艶が悪くなったりすることもあり、糖尿病が進行していくと食欲も低下していきます。
特有の歩き方
普段、猫は肉球で歩きますが、踵様跛行では後ろ足のかかとを地面にペタペタとつけて歩くため、腰が下がって足腰が弱ったように見えます。高い場所へのジャンプができなくなったり、進行すれば前肢も動かしにくくなったりすることもあります。
こういった症状は、血糖値が安定すると消えることも多いです。ただし、糖尿病が進行して栄養分が行き渡らない状態が続くと、元気が消失して足元がふらつくようになることがあります。
さまざまな合併症
糖尿病になった猫の体は、糖の代わりに脂肪を分解してエネルギーを得ようとします。脂肪を分解する際に「ケトン体」という物質が生成されますが、血液中にケトン体が過剰に蓄積し体が酸性に傾くことで陥るのが、糖尿病性ケトアシドーシスです。
糖尿病性ケトアシドーシスになれば、嘔吐や下痢、脱水などの症状があるほか、進行すると神経障害や呼吸困難などを起こし、命に関わります。
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猫が糖尿病になった場合の治療法
猫の糖尿病は、重篤な場合は入院治療が必要になりますが、基本的には家で飼い主が対処することが多いです。症状に応じてさまざまな治療が行われ、大きく分けると下記の2つがあります。
食事管理
肥満の場合は適正体重になるまで食餌療法で減量を行い、その後は獣医師の指導のもとで糖尿病用のフードを与え、血糖値を管理します。
インスリン投与
基本的に糖尿病になれば一生涯インスリン投与が必要になりますが、猫の場合、回復してインスリンの投与が不要になるケースもあるようです。
猫の糖尿病は、飼い主の管理が重要
気をつけていても猫が糖尿病になってしまうことはありますが、肥満の予防やストレスの低減などは、飼い主がしてあげられることです。猫が健康で快適な暮らしができるよう、気を配ってください。
どのような検査や治療が必要かは、実際に動物病院に行ってみないとわかりません。診療費が不安な場合は、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。
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監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯
埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
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