“株主優待の達人”桐谷さんが明かす「知っておくべき投資節約術」

 株主優待生活で話題の“桐谷さん”こと桐谷広人氏が、投資初心者向けて株取引のイロハを指南する連載『教えて桐谷さん「投資のイロハ」』。第6回目は、投資をする際に実践したい簡単節約術を紹介。売却益や配当で利益が出ても、手数料や税金でマイナスになるなんてもったいない! 投資スタイルやライフスタイルに合った節約術を身に付けて、賢い投資家を目指しましょう。
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 株主優待だけで食事や衣服に趣味の映画、さらに健康維持のためのスポーツクラブまで楽しんでいる桐谷氏。現金ゼロ円生活を実践するために、移動はなるべく自転車をフル活用するなど、私生活では徹底した節約ぶり。そこで、400以上の優待付き銘柄を含む、600銘柄を保有する同氏が実践している「1円でも得する優待サービスの使い方」を徹底解析してみました。

◆これぞ究極の節約術!? 金券ショップを活用する
  • <桐谷さん画像>400以上の優待付き銘柄を保有する桐谷氏が実践している注目の節約術を紹介!

「日々、優待をよりお得に使える方法を考えています。時には“そのまま優待券を使う”か“金券ショップで現金化してから使う”という2択で検討することもあります。例えば、以前ビックカメラは1000円優待券を使って買い物をした場合でも、ポイント貸与がありましたが廃止になったため、現在は優待券を金券ショップで現金化して、現金で買い物をした方が得です。金券ショップでの買取価格は額面より少し下がりますが、現金で買い物をするとポイントが付くので、トータルで考えると得をしているということがあります」
◆口座開設からNISAに優待まで! 4つの投資“節約”テク

(1)ネット証券の口座は3つ! 取引手数料などを比較して使いわけを
 「基本的にネット証券口座を最低3つは持つことをオススメします。なぜかというと、口座開設は無料ですし、スクリーニング機能という検索システムや取扱い銘柄が各社によって違います。また、手数料体系も違うので、1回あたりの売買金額や投資頻度など、自分の必要に応じて使い分けるといいですよ。
 例えば一日5万円の銘柄を売買するなら、10万円以下の取引手数料が無料の『松井証券』を使うなど工夫をすることで、手数料が節約できます」

●実際に利用している桐谷さんが診断! 証券会社の特徴比較

証券会社

良い点

気になる点

SBI証券

・株価の割安度を10段階で表示してくれる機能が便利
・保有銘柄の時価と買値、利益金額、売買利回りが一覧表示されて見やすい
・1年目にNISA口座で売買すると株式手数料が無料

・取引ツールや分析ツールは使いやすいが、手数料はそんなに割安ではない印象

松井証券

・一日10万円まで手数料無料で少額投資向き
・NISA口座なら5年間売買手数料が無料

・当日株価が前日と比べてプラスかマイナスかが表示されず、売り時を逃しやすい

GMOクリック証券

・『理論株価』の情報が出ており、購入時の参考になる

・保有銘柄の売買価格を全部知りたいが、最後に取引した銘柄の買値しか表示されない

岩井コスモ証券

・私が口座開設している証券会社の中では、全体的に手数料体系が最安という印象

・ネット証券ではないので、深夜1時過ぎると画面が止まるのが難点

ライブスター証券

・口座開設しているネット証券の中では取引手数料が最安

・保有銘柄一覧で時価は表示されるが、買値が出てこないため、利益が出ているのかどうかが分からない

(2)とにかく安値で買って、数千円づつでもコツコツと利益を生み出そう
 「私は買いたい銘柄を見つけた場合、安くなるまで待ってから買います。たとえば『ディー・エヌ・エー(東1・2432)』という銘柄で悪材料が出て大きく下落した日があり、1303円で1単元(100株)購入しました。もし購入後もさらに値を下げた場合、損失を抑えるために損切りをする人もいるかもしれませんが、マイナスにしかなりませんよね。でも、株価が回復するまで待ち、例えば1328円まで戻ったときに売れば、取引手数料を引いても2000円以上の利益になります。大きな利益を期待しがちですが、こうやってコツコツ利益を積み上げることが大切です」
※桐谷氏はSBI証券の現物アクティブプランを利用して購入、売買手数料206円×2回=412円で計算

(3)キャッシュバックも狙える! 「NISA(ニーサ)」で節税対策
 「今年から始まった少額投資非課税制度で、100万までの投資が非課税になるというものです。売却益や配当もすべて非課税になり、これだけでもお得なのですが、証券会社によっては“NISA口座で売買すると取引手数料無料”という場合もあります。口座開設をすると現金キャッシュバックなどを実施していることもあるので、キャンペーンも上手に使いこなせるといいですね」

(4)持ってるだけじゃダメ! 株主優待は“使うこと”が大前提
 「まずは優待を使うことが大前提です。そのうえで優待をお得にフル活用する方法として、アウトレット店でも使える優待券で買い物することをオススメします。私は『ビックカメラ』や『アルペン』のアウトレット店を良く利用していて、同じ製品でも通常店舗より格安で購入できるのでお得度アップです」

◆投資上級者向け! 信用取引と貸株制度の活用法

【信用取引】
 一般的に株式取引をするには、売買価格が50万円なら取引口座に現金50万円が必要ですが、決められた“保証金”を入れるだけで、現金がなくとも取引ができる仕組みです。毎日株価の値動きを見て随時取引ができれば、信用取引で取り入れてもいいと思います。
 ただ暴落が起きて一定の価格以下になると、追証(おいしょう)という追加の保証金を払わないといけないですし、証券会社によっては、あまりに急落すると、勝手に売られて損益が確定して大損することもあるので、慎重に利用しましょう。

【貸株制度】
 保有している株式を証券会社に貸し出すことで“貸株金利”を受け取れる制度です。自分の株を有効活用でき、金利も株主優待も獲得できて便利なのですが、中には優待を受け取るために『優待権利月以外でも株主名簿に名前が載っていなければならない』という場合もありますので、優待狙いの人はくれぐれも注意してください。

 株を売却して年間20万円以上の利益が出ると税金がかかります。このとき“確定申告”が必要なのですが、「面倒くさい…」という印象を持っている人も多いのでは。ところが、自分の投資スタイルに合った運用口座を選択することで、確定申告が不要になったり、反対に確定申告で得をすることもあります。ここで、桐谷氏の失敗談も含めて、株式取引の税金基礎知識をご紹介します!

◆確定申告の手間は「運用口座」で違ってくる!

 株式投資は、自分に合った使いやすいネット証券を選ぶことはもちろん、その際に作る運用口座も自分の運用スタイルに合わせて、賢く選択することが大切。

【タイプ1:1つの証券会社で取引している】
 『特定口座(源泉徴収あり)』を利用すれば、証券会社が確定申告を代行するので手間がないが、損失の繰越控除は各自で行うなど、例外もある。

【タイプ2:複数の証券会社で取引をしている】
 ひとつの口座が年間で儲かっていても、ほかの口座で損失が出ている場合は、「損益通算」をすることで税金が戻ってくる場合もあり、『特定口座(源泉徴収なし)』の利用が便利。

【タイプ3:自分でしっかり取引を管理できる】
 桐谷氏のように、自分で売買数字を管理(※写真)しており、ゼロから申告書を書ける人は『一般口座』でもOK。

日々の取引内容をすべて記録している『株式売買帳』。手書きの細かな文字でびっしりと埋めつくされている。
1)特定口座 源泉徴収あり

メリット

デメリット

向いている人

・証券会社が年間収支の計算から、税務手続きまで代行してくれる
・扶養控除が常に適用される

・取引で利益が出ると税金が差し引かれるので、投資効率が下がる
・複数口座で取引をすると損益通算が複雑

・時間がなく忙しい人
・確定申告をするのが面倒な人
・運用口座が1つの人
・扶養者控除適用者

2)特定口座 源泉徴収なし

メリット

デメリット

向いている人

・確定申告時に、証券会社が作成してくれる年間収支表を利用できる
・取引で利益が出た場合でも税金は差し引かれず、すべて次の投資に活用できる

・他の口座での取引がなかったとしても、20万円以上利益があれば確定申告をしなければいけない
・扶養者控除から除外される場合がある

・取引内容によって証券口座を分けており、複数の口座で常に売買をしている人
・少額取引がメインの人
・年間利益が20万円以下の人

3)一般口座

メリット

デメリット

向いている人

・自分の売買について、証券会社に関与されない
・取引で利益が出た場合でも税金は差し引かれず、すべて次の投資に活用できる

・確定申告時に堤出するために、取引の売買価格や損得をすべて帳簿につけるなどして管理しなければならない

・長年売買をしており、自分で売買管理ができる人
・証券会社に売買について関与されたくない人

◆税務署から呼出し!? 確定申告“失敗談”に学ぶ

 ベテラン投資家でも、苦手とされる「確定申告」。一般口座を利用して株取引をしている桐谷氏は、昨年の夏には税務署から「配当を書く欄がここ4年分くらい間違っているので、一度税務署へと連絡がありました」と、苦笑いを浮かべる。
 どうやら桐谷氏の場合は税金を払い過ぎており、“戻るべき税金が戻ってきていない”という状態。このようなことがないように、自分の投資スタイルとライフスタイルを考慮した口座選びが、重要といえるだろう。

◆あなたにピッタリのネット証券を探してみよう!
 今や優待生活の達人として人気の桐谷氏ですが、株主優待を極めたきっかけは『株式投資での大失敗』から。「過去最大の大損失体験ベスト3」を紹介しつつ、知っておくべき株式投資の禁じ手やルールを学びましょう。
桐谷さんが経験した“大損失体験”ベスト3
第1位:ライブドアショック&リーマンショック
「バブル崩壊も打撃を受けましたが、一進一退を繰り返してなんとか乗り越えていました。転機は2006年に起きた“ライブドアショック”。同年1月23日にホリエモンが逮捕される1週間前からライブドアの株価が急激に下がり始め、それ以降、マザーズ平均株価が2年間かけて1/10にまで下がりました。信用取引で1日1000万円ずつ買いを入れて勝負していたのですが、追い打ちをかけるようにサブプライムローン問題、リーマンショックが襲ってきました。結局、優待銘柄以外の保有株を売って、億単位の損失を支払うことに…」
【教訓】 予期せぬ事態が突然起こるのが“株の世界”。



第2位:買いのチャンス…でも資金がない! 『信用取引』の落とし穴
「信用取引は利益を何倍にもできる反面、何倍もの損失を被ることもあります。第1位に挙げたライブドア&リーマンショックのころは追証で借金だらけ、取引画面には連日“マイナス5000万円”などと表示され、恐怖でした…。株価は暴落しているので『買いのチャンス』と分かっていても、皮肉なもので、信用取引をしているから資金がないわけです。どんなに買いたい銘柄があっても買えず、保有株を投げ売りするしかないんです」
【教訓】 『取ろう取ろうは取られの元』。儲けよう儲けようと前のめりだと、足をすくわれてしまう。



第3位:保有銘柄の株価大暴落、倒産
「短期間で株価がグングン上がるような絶好調な時期は、誰でも買っておきたくなるものです。ただし、反動で購入額の10分の1になるような事態も珍しくなく、『NTTドコモ』など日本を代表する企業でも起こっています。さらに最悪な事態は倒産。“株券が紙切れになる”を『日本航空』や『山一証券』、『北の家族』などで経験しました。損失額は日航で1000万円以上、山一で800万円、北の家族で600万円でした…」
【教訓】 『ブームのときには手を出さない』が鉄則。知名度がある有名企業でも“絶対安心”はない。
“今月の桐谷さん”
 桐谷氏の“イチオシ”株主優待付き銘柄を毎回ご紹介します! 今月末に権利確定を迎える中から桐谷氏が選んだのはこの銘柄!

【アドバンスクリエイト】
桐谷氏コメント:10万円ちょっとで手軽に購入できるのに、配当利回りだけで3%以上ある高配当銘柄です。そのうえ、100株でカタログギフトから2500円相当の商品を選べます。優待利回りだけでも2%近くあり、合計利回りは5%以上にもなるのでおすすめです。
■銘柄データ
必要最低投資金額:約14万円/上場市場:東証JQS/コード:8798/売買単位:100株/株価:1330円(9月3日時点)/配当利回り:3.02%(2014年9月3日時点の年間配当予想にもとづく)
※株価は該当日終値
注意点:株主優待付き銘柄を買って、優待をもらうためには「権利確定日」に株主名簿に載っていることが大前提。名簿に記載されるまで、中2営業日かかるので、売買は3営業日前の「最終売買日」に済ませておきましょう。


【プロフィール】
桐谷広人(きりたにひろと)
1949年生まれ。広島県出身。元プロ棋士七段で、2007年に引退。その後は、所有する優待銘柄をやりくりして生活費をまかなうという“異色のライフスタイル”と、明るい人柄がテレビなどで取り上げられ話題に。著書に『桐谷さんの株主優待生活』(KADOKAWA角川書店)、『桐谷さんが教える はじめての株主優待』(総合法令出版)などがある。4月下旬よりガチャガチャアイテム『桐谷さんの株主優待生活 クリーナーストラップ』(タカラトミーアーツ)が販売されている。


※今回の特集内で紹介している株価データや企業情報は2014年9月現在のものです。変更されている場合もありますので、ご注意ください。

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