知識ゼロでもわかる【経済用語】 「長期金利マイナス」の影響が丸わかり!

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【図】“長期マイナス金利”に関連する3つの経済用語を簡単解説!

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡めて3つ解説する。

 今回も前回に引き続いて“長期金利のマイナス”を取り上げる。このニュースを伝えた日本経済新聞の紙面には、「世界不安 惑うマネー」、「安全に殺到 市場の警鐘」、「日銀に誤算」などの見出しが躍っていたが、これは何を意味しているのか?

 前回(http://life.oricon.co.jp/rank_certificate/news/2067247/)は、この出来事を理解するために、お金を「労働者」、投資を「就職」、そこから得られる利益を「給料」に例えて解説。その上で、数ある就職先の中で、公務員のように安全な国債に就職を希望するお金が急増した結果、「安い給料でも働かせてほしい…」と、給料に相当する流通利回りが低下し、ついにはマイナスになったことを説明した。

 今回は、大量のお金が国債に殺到した要因について、「リスク・オフ」と「質への逃避」などから探ると同時に、金利が下がると上昇する「国債価格」の仕組みについても解説して行く。
 
■不安に駆られたお金たち
 国債に巨額の資金が流入した要因の一つが、投資家たちのリスク・オフの行動だ。リスク・オフとは、株式市場などのハイリスク・ハイリターンの投資先からお金を引き上げることで、今回はドイツ銀行をはじめとした欧州の銀行に経営不安が広がったことが原因だった。危機感を強めた投資家たちは、「このままだと、仕事場で大けがをする恐れがある…」と、保有していた株式を大量に売却して、お金を「退職」させてしまったのだ。

 リスク・オフによって「失業者」となったお金たちが、再就職しようとしたのが国債だった。市場が不安定になるなか、重要なのは安定性と安全性であり、利益という給料は少なくてもかまわない。こうした投資姿勢は質への逃避と呼ばれていて、国債のほかに金などの貴金属、また「相対的に安全な通貨」とされている日本円もその対象となっている。

 海外からの質への逃避で急激な円高が発生、これを嫌って日本の投資家もリスク・オフの動きを強めたことから日本の株価も急落する。「世界不安 惑うマネー」、「安全に殺到 市場の警鐘」という日経新聞の見出しは、国内外でのリスク・オフと質への逃避を受けて、日本の国債に就職希望者が押し寄せたことを示すものであった。

■日銀を追い出されたお金たち
 国債にお金が殺到したもう一つの理由が、日銀のマイナス金利政策だ。民間銀行が日銀の保有している日銀当座預金には、量的・質的金融緩和政策に伴って、大量のお金が振り込まれ続けている。日銀はこれが引き出されて、融資などに向うことを期待しているのだが、その大半は日銀当座預金に留まったまま。民間銀行にお金という労働者を派遣したものの、融資という就職先を見つけようとせず、ゴロゴロしているだけだったのだ。

 業を煮やした日銀は、日銀当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を課す政策を打ち出す。「働かないなら生活費を払え!」と迫られたことで、仕方なく就職先を探し始めたお金たちが選んだのも国債だった。2月9日の取引終了時点での長期国債の流通利回りはマイナス0.025%だったが、これでも日銀に0.1%のマイナス金利を払うよりは安上がりだ。マイナス金利政策で日銀当座預金を追い出されたお金たちは、引き続き融資先などで働こうとはせず、より負担の少ない国債に逃げ込んでしまった。これが日経新聞の見出しにあった「日銀の誤算」だったのである。

■国債価格が上昇したワケ
 リスク・オフと質への逃避に日銀のマイナス金利政策が加わったことで、大量のお金が就職しようと国債へ押し寄せたのだが、仕事を得るのは容易ではない。

 国債には発行額という「定員」があり、その全てに保有者がいるため空きは全くない。したがって、国債で働くためには、すでに働いているお金に、「仕事を譲ってもらえませんか?」と交渉する必要があるのだ。ところが、国債人気の上昇で給料である流通利回りが0.025%のマイナスになっているにもかかわらず、現在働いているお金には、表面利率の0.3%という固定給が支払われ続けている。こんなに有利な仕事をそのまま手放すことはあり得ない。

 そこで国債価格による調整が行われる。この日、額面100円だった国債は103円21銭で売買された。表面利率と流通利回りの差である0.325%を国債価格に上乗せすることで、仕事を譲ってもらうことができたのだ。流通利回りがさらに低下すれば、固定給の国債の価値は高まって、国債価格は105円、110円…と上昇する。一方で、国債の人気に陰りが出て流通利回りが0.5%、1%と上昇れば、0.3%の表面利率の国債の魅力は薄れてしまい国債価格は下落する。これが国債の金利が下がると、国債価格が上昇する仕組みなのだ。

 流通利回りが急低下してマイナスになるなか、すでに国債を保有してお金を就職させていた投資家は、より高い給料を受け取り続けることも、売却して利益を出すこともできるという有利な立場に置かれている。だが、売却してしまうと、新たなお金の就職先を探さなくてはならないのも事実なのだ。

 一方で、損失を覚悟で国債に就職したものの、その後に流通利回りが上昇すれば、相対的に安い給料で働き続けることになるだけに、ためらいを見せる投資家も少なくない。国債の就職現場でもお金たちの思惑が交錯しているのである。

 リスク・オフで株式市場から逃げ出したり、日銀当座預金から追い出されたりしたお金たちは、このまま国債に避難を続けるのか? お金たちは、なぜ企業向けの融資など、日本経済の発展のために働こうとしないのか? 長期金利のマイナスは、リスク・オフと日銀のマイナス金利政策で就職事情が悪化し、質への逃避に走ったお金たちの窮状を示しているのである。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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