2016年01月26日 09時00分
知識ゼロでもわかる【経済用語】 「倒産」「チャイナリスク」を“船”に例えて解説!
「倒産」「負債総額」「チャイナリスク」の3語を船の航海に例えて解説!
日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡めて3つ解説する。
今回は「倒産」、「負債総額」、「チャイナリスク」を、船の航海と絡めて紹介する。
民間調査会社の東京商工リサーチが、2015年の全国企業倒産件数を発表した。倒産件数は前年比9%減の8812件と1990年以来25年ぶりの低水準で、大手輸出企業を中心とした収益拡大が続き、幅広い産業で倒産が減ったためだという。
一方、負債総額は13%増の2兆1123億円となった。前年を上回るのは3年ぶりで、第一中央汽船など上場企業の倒産が3件あったためだが、全体では負債総額1億円未満の企業が7割あまりを占めており、小規模な倒産が大半を占めているとしている。
こうした中、中国景気の減速を背景にした「チャイナリスク」関連の倒産件数は前の年に比べ6割増の76件となった。これに対して、円安を原因とした倒産は151件と5割近く減少し、原油安など資源価格の下落を受けて円安によるコスト押し上げ要因が相殺されたことなどから運輸業が86%減となっている。
景気の状況を知る上で、重要な情報の一つが倒産だ。倒産は法律用語ではなく、企業経営が行き詰まり、借金の返済などができなくなった状態を示している。企業は経営者という「船長」の下で、従業員という「乗組員」が動かしている船と考えると、倒産は船が動けなくなる「遭難」と考えられる。
遭難の原因は様々で、円高という荒波が襲ってきたり、リーマンショックという台風に巻き込まれたりして、大量の船が一度に遭難することも珍しくない。だが、2015年は海面が極めて穏やかで、多くの船が快調に航行、遭難する船の数は大きく減少したというわけだ。
倒産件数と並んで重要なのが負債総額だ。これは倒産した企業が残した借金額であり、遭難した船の大きさを示している。2015年は第一中央汽船(1196億700万円)やスカイマーク(710億8800万円)など、負債総額の大きな倒産があったため、倒産件数の減少にもかかわらず、負債総額が増えることとなった。それでも、全体では負債総額1億円未満の企業が7割を占めており、遭難した船のほとんどが小型船だったというわけだ。
こうした中で、急速に荒れ始めているのが中国の周辺海域だ。中国景気の減速を背景にした「チャイナリスク」関連の倒産件数は、前年比6割増の76件となった。中国政府は経済成長率が7%程度とおおむね順調だと強調しているが、この数字には「水増し疑惑」が取りざたされている。
もし、中国政府の発表が正しいならチャイナリスクは小さく、中国付近の海域は穏やかで、遭難が増えるはずはない。倒産件数から見る限り、中国周辺の海域はチャイナリスクで大荒れになっていて、さらに多くに企業が遭難する可能性があるのである。
株式投資は企業という船に乗ることにほかならない。乗った途端に船が遭難するようなことになっては大変だ。どのような業種に倒産が多いのか、その原因は何なのか…。日本経済を取り巻く海の状況をしっかりチェックし、遭難しそうな船に乗ったり、大荒れの海域に入り込んだりしないように注意したいものだ。
記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。
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