2018年05月28日 09時20分
ネット証券の株を相続するには? 気を付けたい4つのポイント
ネット証券で持つ株の相続はどうすべきか 注意点を紹介する(写真はイメージ)
ネット証券で保有している株の相続をする場合、どのような手続きが必要になるだろうか。店舗型の証券会社と違い、ネット証券では書類が残らない。そのため遺族がネット証券口座の存在自体を知らず、大事な資産が宙に浮いてしまうケースも少なくない。今回は、ネット証券の株を相続する場合の注意点をお伝えしよう。
■株式相続時に注意したい4つのポイント
まずは、ネット証券か店舗型証券を問わず、株式を相続するときに注意しなくてはいけない基本的なポイントについて確認しよう。
【1】株式の評価額は4通り
相続財産の評価は、原則では相続した時点の「時価」で評価される。しかし、株価は日々変動し高騰・暴落することがあるため、評価に幅を持たせる必要がある。そこで、次の4つの価額のうち、最も低い価額を評価額としている。
(1)相続開始日の終値
(2)相続開始月の終値の平均額
(3)相続開始月の前月の終値の平均額
(4)相続開始月の先々月の終値の平均額
証券会社から上記4つの価格が記された詳細明細書をもらえる場合も多いが、そうでない場合は自分で調べる必要がある。
【2】株式の名義変更が必要
株式の売買には保有者本人による指示が必要だ。そのため株式を相続する場合には必ず名義変更をしなければならない。名義変更しなければ売却指示もできないので注意しよう。
【3】被相続人と同じ証券会社に口座を持たなければいけない
被相続人が保有する株式は相続人の口座へ移管しなければならない。もし口座がない場合、相続人は被相続人と同じ証券会社に口座を開設する必要がある。意外と知らなかったという人も多いので覚えておこう。
【4】名義変更に必要な書類は?
相続に伴う名義変更については、各金融機関で案内書が用意されていることが多く、それに従って準備を進めるといいだろう。基本的には、「預託物件返却申請書」に、被相続人に関する情報(住所や死亡日など)、相続人の署名や実印の捺印、相続財産の返却(振替)先などを記入し、必要な書類を用意することになる。一般的な必要書類は以下の通りだ。
・遺産分割協議書による分割の場合
遺産分割協議書/被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本/法定相続人全員分の戸籍謄本/法定相続人全員分の印鑑証明書
・遺言書に基づく分割の割合(遺言執行者なし)
遺言書の写し/検認調書の写し(公正証書遺言以外の場合)/被相続人の死亡が確認できる戸籍(除籍)謄本または死亡証明書/資産を引き継ぐ相続人の印鑑証明
・調停、審判に基づく分割の場合
家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本および確定証明書の写し/審判等で指定された、資産を引き継ぐ相続人の印鑑証明書
■ネット証券は書類が残らない点に注意
ネット証券の株式で最も注意しなければいけないのは、通帳や証券など有形の書類が残らない点。そのため、契約者本人が病気や事故などで急死してしまった場合など、遺族が財産として相続できず放置状態になることも考えられる。
そのような事態を防ぐため、まずは契約者本人が「遺言で遺産分割の方法を指定する」「エンディングノートなどに財産状況を記入する」など、万一の場合に備えておくことが重要だ。故人が遺言やエンディングノートなどを残していなかったとしても、故人のキャッシュカードやネット証券からの郵便物などがあれば、それを手がかりに金融機関に連絡を取ることができる。相続人が金融機関に連絡し、確認が取れ次第口座を凍結してもらうことで店舗型の証券と同様の相続手続きが可能だ。
ネット証券は店舗型の証券会社と違い、契約者の顔を見る機会がない。そのため、より相続手続きが厳重になる場合が多いことも覚えておこう。
(文/経済ジャーナリスト 酒井富士子)
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