先天性疾患はペット保険で補償される?補償対象外のケースなどを解説

先天性疾患はペット保険で補償される?補償対象外のケースなどを解説

先天性疾患とは、生まれつき持っている病気や体の不具合のことです。ペットに先天性疾患があると、ペット保険に入れなかったり条件付きでの加入になったりする場合があるほか、医療費がかさんでしまう可能性もあります。

この記事では、先天性疾患がペット保険の補償対象になるのかどうか、ケース別に解説します。ペット保険の加入を考えている人は参考にしてください。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
安田賢

監修者 まさの森・動物病院 院長 安田賢

プロフィールを見る

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会

■所属先

まさの森・動物病院

https://masanomori.com/

mokuji目次

  1. ペットの先天性疾患とは?
    1. 骨格系の先天性疾患
    2. 内臓系の先天性疾患
    3. 先天性疾患と遺伝性疾患の違い
  2. 先天性疾患はペット保険の補償対象になる?
  3. ペット保険加入後に先天性疾患が発見された場合の補償内容
    1. ペット保険の補償開始後に見つかった先天性疾患のみ対象
    2. ペット保険の該当契約期間中のみ補償
    3. 先天性疾患のある犬・猫におすすめのペット保険の選び方
  4. ペットショップで購入したペット、先天性疾患があった場合の補償内容は?
  5. ペット保険加入の際は、先天性疾患の補償について確認しておこう

ペットの先天性疾患とは?

ペットの先天性疾患とは?

先天性疾患とは、生まれつき体の構造や機能に異常が生じている病気や不具合のことです。

原因はさまざまで、遺伝子や染色体の異常によって起こるものもあれば、胎児期の発育過程で生じるものもあります

なかでも遺伝子が原因で発症するものは、「先天性遺伝子疾患」や「遺伝子疾患」と呼ばれることもあります。体の設計図である遺伝子そのものが関係しているため、現時点では遺伝子レベルでの根本的な治療は難しいのが実情です。

ただし、遺伝性疾患でも、外科手術や適切な内科治療により症状をなくしたり、大幅に改善したりできるケースは数多くあります。病気の種類や程度によっては、健康な子とほとんど変わらない生活を送れるようになることも珍しくありません。
先天性疾患には、骨格系の病気から内臓系の病気までさまざまな種類があります。ペットの犬種・猫種によってかかりやすい遺伝性疾患は異なるため、あらかじめ先天性疾患の種類やリスクを知っておくことが大切です。

まずは、骨格系の先天性疾患と、内臓系の先天性疾患について詳しくご紹介します。
先天性疾患の種類とそれぞれの主な疾患

種類

主な疾患

骨格系

・股関節形成不全
・膝蓋骨脱臼
・肩関節不全脱臼

内臓系

・大動脈狭窄症
・肺動脈狭窄症
・動脈管開存症
・心室中隔欠損症
・多発性嚢胞腎

神経系

・水頭症
・キアリ様奇形
・変性性脊髄症

骨格系の先天性疾患

骨格系の先天性疾患は、骨や関節の形、体の動きなどに異常が生じる病気です。ペットの歩き方に違和感が出たり、痛みが生じたりすることがあります。

手術などで治療できる場合もありますが、病気の種類や症状などによっては、ペットの生涯わたって付き合っていかなければならない可能性があります。
・股関節形成不全
股関節形成不全は、股関節がうまく噛み合わずに、不安定な状態になる病気です。歩くときに腰を振るような動きが見られたり、走る、階段を上るといった動作を嫌がったりすることがあります。大型犬に多く見られる疾患ですが、猫でも発症することがあります。

・膝蓋骨脱臼
膝蓋骨脱臼は、ひざの皿にあたる膝蓋骨が本来の位置から外れてしまう病気です。「パテラ」とも呼ばれています。小型犬に多く、片足を上げて歩く、スキップするように歩くなどの様子が見られることがあります。転倒や衝突などの後天的な要因で起こることもあります。

内臓系の先天性疾患

内臓系の先天性疾患は、臓器や血管、腎臓など、体の内側の臓器に関わる病気です。

ペットの元気がなかったりぐったりしていたりといった症状が出ることがあります。外見からは気づきにくいため、体の様子や行動に異変がないかを日頃からよく観察しておくことが大切です。

内臓系の先天性疾患には多種多様な種類があり、一例としては、下記のような病気が挙げられます。
・大動脈狭窄症
大動脈狭窄症は、大動脈の入り口が狭くなり、血液がうまく循環しにくくなる心臓の病気です。血液の流れが妨げられて心臓に負担がかかり、疲れやすいといった症状が出るほか、突然死を招くこともあります。

・肺動脈狭窄症
肺動脈狭窄症は、肺動脈の一部が狭くなり、心臓から肺への血液の循環がうまくできなくなる病気です。軽度であれば普通の生活ができますが、重症になると心不全につながることもあります。

・動脈管開存症
動脈管開存症は、通常は生後まもなく閉じる動脈管が開いたままになってしまう病気です。肺動脈から大動脈に本来流れるべきではない血液が流れることで、臓器に負担がかかります。咳や呼吸困難など、肺や心臓に関連する症状を引き起こします。

・心室中隔欠損症
心室中隔欠損症は、心臓の一部に穴が開いている病気です。心臓に負担がかかり、呼吸が速くなる、呼吸困難になるなどの症状が出ます。
そのほかの先天性疾患としては、腎不全や水頭症、臓器の形成不全などがあります。気になる症状がある場合は自己判断せず、早めに動物病院で相談しましょう。

先天性疾患と遺伝性疾患の違い

先天性疾患と混同されやすいものに、遺伝性疾患があります。どちらも生まれつきの病気として扱われることがありますが、厳密には意味が異なります。

先天性疾患は、生まれた時点ですでに体の構造や機能に異常があるものを指します。原因は遺伝に限らず、胎児期の発育過程で生じた異常なども含まれます。

一方、遺伝性疾患は、遺伝子や染色体の異常が原因で起こる疾患を指し、生まれつき症状が現れるものだけでなく、成長してから発症するものも含まれます。
この2つは完全に分かれるものではなく、重なり合う部分もあります。

たとえば、股関節形成不全や膝蓋骨脱臼は生まれつきの構造異常として「先天性疾患」に分類されますが、遺伝的な要因が強く関わっているため「遺伝性疾患」としての側面も持っています。

また、進行性網膜萎縮や変性性脊髄症のように、遺伝子の異常が原因でありながら成長後に発症する病気は、「遺伝性疾患」ではあるものの、生まれた時点では症状がないため「先天性疾患」とは呼ばないこともあります。
ペット保険では、先天性疾患と遺伝性疾患の扱いが異なる場合があります。なかには、遺伝性疾患を補償対象外と定めている保険もあるため、加入前に補償内容を確認しておきましょう。

先天性疾患はペット保険の補償対象になる?

先天性疾患はペット保険の補償対象になる?

ペット保険は、ペットの治療にかかった費用の一部または全額を補償する保険ですが、すべての治療費が対象になるわけではありません。保険会社が定める免責事由に該当するケガや病気の治療費などは、支払いの対象外とされています。

免責事由に該当するのは、主に下記のようなケースです。
<ペット保険の免責事由に該当する主なケース>
・先天性疾患
・既往症
・ワクチンで予防できる病気
・治療以外の費用
・災害による病気やケガ
・重大な過失によるケガ
加入前にすでに判明している先天性疾患については、原則として補償を受けることができません。ただし、加入時点では発症・発見されていなかった先天性疾患については、補償を受けられる場合があります。

なお、ペット保険加入の際は、ペットの年齢や健康状態などに関する自己申告が必要で、申込み時点で判明している先天性疾患を隠したまま加入することはできません。

万が一、虚偽の申告をしてペット保険に加入した場合は告知義務違反に該当します。
告知義務違反が判明すると、保険金が支払われなかったり、契約を解除されたりする可能性があるため、健康状態は正確に申告しましょう。

ペット保険加入後に先天性疾患が発見された場合の補償内容

ペット保険加入後に先天性疾患が発見された場合の補償内容

ペットに先天性疾患があることを知らないまま加入し、補償開始後に初めて疾患が見つかった場合は、保険会社や契約内容によって補償を受けられる可能性があります。

ここでは、ペット保険加入後に先天性疾患が発見された際の補償内容について、詳しく見ていきましょう。

ペット保険の補償開始後に見つかった先天性疾患のみ対象

ペット保険加入後に先天性疾患が発見された場合、補償の対象になる可能性があるのは、補償開始後に初めて見つかった先天性疾患です。加入前から症状があった場合や、加入前に診断を受けていた場合は対象外となります。

なお、ペット保険では一定の免責期間(待機期間)を設けている場合があり、補償開始は「免責期間終了後」になります。

たとえば、免責期間が30日だった場合、契約から30日が経過するまでのあいだに先天性疾患が見つかると、その治療費は補償対象外になります。免責期間中に始まった治療が期間終了後も継続している場合も、同様に対象外です。
一方、免責期間が経過した後で先天性疾患が見つかったのであれば、補償が受けられるペット保険は多くあります。

なお、免責期間がないペット保険なら、補償が手厚くなるため保険料が高くなりがちですが、ペット保険加入後すぐに補償を受けることができる安心感があります。

免責期間がある保険とない保険のどちらがよいかは、ペット保険に加入する目的や治療費と保険料に関する考え方などによって変わります。
免責期間の有無だけで判断せず、補償範囲や保険料、通院・入院・手術の補償内容などを比較して選ぶことが大切です。

ペット保険の該当契約期間中のみ補償

免責期間終了後にペットの先天性疾患が見つかり、補償の対象になったとしても、その後も継続して補償されるとは限りません。該当の契約期間が終了すると、翌年度からは補償対象外になることがある点に注意が必要です。

多くのペット保険は、1年ごとに契約を更新します。先天性疾患はペットの生涯を通して付き合っていかなければならないことも多いですが、ペット保険では先天性疾患がわかった初年度のみが対象期間となり、その後は補償の対象外となることが多いようです。
ただし、先天性疾患に対する具体的な対応は、保険会社によって異なります。加入する前に詳しい資料を取り寄せて、先天性疾患に対してどのような補償を受けることができるのか確認しておきましょう。

先天性疾患のある犬・猫におすすめのペット保険の選び方

先天性疾患のある犬・猫のペット保険を選ぶ際は、保険料だけで判断せず、補償内容を慎重に比較検討することが大切です。

先天性疾患のある犬・猫に向いているペット保険は、以下のような特徴があります。
<先天性疾患のある犬・猫に向いているペット保険>
■補償対象となる疾患の範囲が広い
■年齢制限がなく、生涯にわたって継続加入できる
■契約時・更新時条件がわかりやすく明示されている
■更新後も先天性疾患補償が継続されるか確認できる
保険会社によって先天性疾患の補償範囲は大きく異なります。たとえば小型犬に多い膝蓋骨脱臼でも、補償対象とする会社と対象外とする会社の両方があります。

加入前に各社の約款や重要事項説明書を確認し、不明点は直接問い合わせるようにしましょう。
なお、先天性疾患が加入前に判明している場合でも、「特定疾病不担保(特定傷病除外特約)」という条件付きで加入できる保険があります。これは、「判明している先天性疾患」と「それを原因とする病気の補償」を対象外としたうえで加入できる仕組みです。

条件がついても保険料は変わらないのが一般的で、先天性疾患以外のケガや病気については通常どおり補償を受けることができます。
先天性疾患があることを理由に保険加入を諦める前に、こうした選択肢も検討してみましょう。

ペットショップで購入したペット、先天性疾患があった場合の補償内容は?

ペットショップで購入したペットに先天性疾患があった場合の補償内容

生体を商品として取り扱うペットショップには、「健康で先天性疾患にかかっていないペットを引き渡す」という義務があります。

ただし、先天性疾患の中には、子犬・子猫の時点ではどれだけ丁寧に検査をしても発見が難しく、成長に伴って初めて症状が現れるもの(心臓の病気や骨格の異常など)も少なくありません。
そのため、購入時に見つからなかったからといって、必ずしもペットショップ側に落ち度があるとは限らない点は理解しておく必要があります。

一方で、ペットは法律上「商品」として扱われるため、購入後に先天性疾患が判明した場合には、民法上の契約不適合責任に基づき、治療費負担などの対応を求められる可能性があります。

ただし、補償内容はペットショップや契約内容によって異なります。例えば、ペットに先天性疾患があった場合に「治療費の50%を負担する」といった契約を締結していると、治療費の全額を請求することはできません。

また、「交換対応を行う」という契約の場合、治療費の支払いではなく、別のペットとの交換が補償内容となります。交換を希望せず、一度迎えたペットと暮らし続けたいのであれば、治療費は自己負担になります。
ペットを購入する際は、万一のことがあった場合にどのような対応をとってもらえるのか、事前に契約内容をしっかり確認しておきましょう。
なお、先天性疾患以外の理由であっても、ケガや病気でペットの治療費がかさむ可能性は十分あります。ペット保険で万一に備えつつ、補償を十分に受けられない可能性が高い先天性疾患への対応方法についても考えておくことが大切です。

ペット保険加入の際は、先天性疾患の補償について確認しておこう

ペットに先天性疾患があると、ペット保険に加入できなかったり十分な補償を受けられなかったりする可能性がありますが、補償開始後に先天性疾患がわかった場合などは補償を受けることができるものもあります。ペット保険で備えられる範囲、補償されない可能性がある範囲を事前に確認しておくことが大切です。

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