2015年12月29日 10時00分

知識ゼロでもわかる【経済用語】 “旅客機”に例えて「GDP」を解説!

経済用語「GDP」を1億2000万人が乗る“巨大な旅客機”に例えて解説! [拡大する]

経済用語「GDP」を1億2000万人が乗る“巨大な旅客機”に例えて解説!

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡めて3つ解説する。

 今回は最も重要な経済指標であるGDP(国内総生産)を取り上げる。

 内閣府は先月16日、2015年7〜9月期の国内総生産(GDP)速報値が、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%減、年率換算では0.8%減だったと発表した。4〜6月期(年率換算で0.7%減)から2四半期連続のマイナス成長で、設備投資と在庫投資が足を引っ張った。中国など新興国減速の影響で企業部門の慎重姿勢が強まったとみられ、消費や輸出は持ち直したが力不足だったとした。

 日本経済を1億2000万人が乗る“巨大な旅客機”と考えると、「高度が下がり続けている」というのが、今回のGDPの結果だ。経済活動によってもたらされた付加価値の合計であるGDPは「高度」に相当する。

 7〜9月期のGDPは528.7兆円で、4〜6月期の529.8兆円から0.2%減少した。旅客機の高度が下がってしまったわけで、年率換算は7〜9月期の状態が1年間続いたと仮定した場合の数字で、およそ4倍の-0.8%となる。実数では変化を読み取りにくいことから、通常はGDPの変化を「経済成長率」と呼んで、「プラス成長達成」とか「マイナス成長に沈んだ」などと伝えられているわけだ。

 旅客機の高度が下がるのは、エンジンの出力が低下したためだ。日本経済という旅客機を飛ばしているのは、(1)消費(2)設備投資(3)輸出入(4)政府支出という4つのメインエンジンと、第2エンジンに付随する民間住宅投資と在庫投資の2つのサブエンジンだ。

 GDPが0.2%減少した原因を探るのが「寄与度」だ。第1エンジンの消費は+0.5%で、これがGDP全体を0.3%押し上げた。これが寄与度であり、第3エンジンの輸出入も外国人による「爆買い」などが貢献して寄与度は+0.1%、2つ合わせてGDPを0.4%押し上げることとなった。

 ところが、第2エンジンの設備投資は、中国経済の先行き不透明感などにより企業が慎重な姿勢を取ったことから1.3%の減少となり、寄与度は-0.2%に。サブエンジンである在庫投資は、さらに不振で寄与度は-0.5%、住宅投資の寄与度は+0.1%だったものの、第2エンジン全体の寄与度は-0.6%となった。この結果、第1と第3エンジンの寄与度が+0.2%と頑張ったものの、第2エンジンが不調で-0.6%となったことから、最終的にはGDPが0.2%減少して、旅客機の高度が下がってしまったわけだ。
 
 2期連続のマイナス成長に、コックピットは慌ただしくなっている。日本経済という旅客機のコックピットには、「機長」に相当する“政府”と「副操縦士」に相当する“日本銀行”が座っている。機体を上昇させるためには、エンジンの出力アップを図ればよい。最も手っ取り早いのは財政支出の増加で、補正予算を組んで追加の公共事業を実施することで、第4エンジンの出力を上げるというわけだ。これ以外にも消費を拡大させたり、設備投資を増やしたりするための減税なども考えられるが、財源を確保するのは容易ではない。

 日本銀行は旅客機の燃料であるマネーの供給量を増やす金融緩和が期待されるが、ゼロ金利政策と量的緩和策がすでに実行されていて、操縦かんを思い切り引っ張った状況が続いているだけに、追加の操作には限界がある。

 ようやく上昇基調に乗ったと期待された日本経済だが、再び下降し始めてしまった。中国経済に急ブレーキがかかるなど、突然の気流の乱れが発生した場合には、さらに機体が降下する危険性もある。この危機を切り抜けて、再び機体を上昇させることができるのか? 

 株価や外国為替相場、さらには消費税引き上げなどにも大きな影響を与えるだけに、GDPの動きはしっかりと把握しておきたい。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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