原油安で「株安」になるのはなぜ? 理由がわかる「3つの背景」

【図表】NY原油と日経平均株価の推移  月足終値(期間:2013年1月〜2016年2月) [拡大する]

【図表】NY原油と日経平均株価の推移  月足終値(期間:2013年1月〜2016年2月)

 ここ数ヶ月、原油安を材料に株安となる展開が続いている。原油安は、燃料や製品などの原材料費下落となるため、株高になりそうなものだ。図表を見てもわかるように、実際に2014年の年初は、原油安を材料に日米の株価は上昇している。

 では、今回原油安が株安の要因とされるのはなぜか?その背景には、大きく下記の3つがある。

【1】シェール企業の経営破綻

 シェールとは、従来の油田より深い地層のことを指す。2000年以降の原油価格上昇に加え、新技術発明によるシェールガス・オイル開発を背景に、2014年末における世界最大の原油生産国は米国になった(※注1)。
※注1:英石油大手BP( BP Statistical Review of World Energy June)統計 2015

 シェール企業の損益分岐点は、40〜80ドル/バレル(※注2)。原油価格の国際指標であるNY原油価格は、2015年12月以降、40ドルを割り込み、2016年に入ってからは30ドル前後で推移している。つまり、コスト割れの状態だ。
※注2:1バレル=約159リットル

 ただし、シェール企業は、価格下落に備え、先物市場などを使ったヘッジ取引(将来の価格下落に備え、市場で原油を売っておく)を行っている。つまり、原油安でも利益を確保できる仕組みを構築しているのだ。

 2014年におけるシェール企業48社のヘッジ価格は平均95ドル、生産量に対するカバー率は平均51%だった(※注3)。だが、最近の原油安により、2015年第2四半期末時点における2016年分のヘッジ価格は平均77ドル、カバー率は平均18%となり、ヘッジ取引による利益確保が難しくなってきている。2015年以降は、経営破綻するシェール企業も出始めた。2016年2月初旬には、シェール企業大手チェサピーク・エナジーの経営破綻の噂が流れ、同社株が急落している。
※注3:数値は、東京商品取引所「石油取引の基礎知識」

【2】高利回り債のデフォルト懸念

 また、シェール企業の多くは、その資金調達を社債に頼っている。シェール企業は低格付け企業が多いため、その社債は高利回り債(ハイ・イールド債)となる。昨年暮れには、原油安により、これら高利回り債の価格が下落し、流動性が低下。高利回り債を組み込んだ米英ファンドの精算が相次いだ。

 この状況は、マーケット関係者には既視感がある。2008年のリーマン・ショックを引き起こしたサブプライム・住宅ローンだ。背景には、比較的信用力の低い顧客向けの住宅ローンを複雑に証券化した高利回り証券化商品の存在がある。このサブプライム・ショックを連想させることが、マーケットのリスク回避姿勢をより強めている。

【3】産油国政府系ファンドによる資金引き揚げ

 原油安が株安を招く背景には、SWF(Sovereign Wealth Funds:政府系ファンド)の動きもある。SWF は、各国の政府・中央銀行が運営・管理するファンドで、7兆ドル(約800兆円)の運用規模を持つとされる。産油国SWFには、アブダビ投資庁、サウジアラビア通貨庁などがある。産油国SWFの運用原資は、石油やガスの収入だ。原油安は産油国の経済を圧迫し、SWFを通じて投資したオイルマネーを株式市場から引き揚げさせることにつながる。

 原油輸入国である日本にとって、本来、原油安は歓迎される事象である。企業には、原油安が損失に直結する企業と恩恵となる企業の2種類がある。前者の代表は石油元売りだ。我が国では、民間備蓄として内需の70日分の備蓄が義務付けられている。原油安により、元売り会社は在庫評価損が生じる。一方、上場企業のほとんどは後者といえる。たとえば、紙おむつを扱う企業。紙おむつの材料である高吸水性ポリマーは、原油から精製されるナフサが原料だ。

 ネット証券で株を売買する際は、原油価格の動きが株式市場全体に与える影響はもちろん、個別企業にどのような影響を与えるのか、理解した上で投資することが大切だ。

<記事/三次理加(マイアドバイザー登録FP)>
(株)りか代表取締役。ラジオNIKKEI第一「ファイナンシャルBOX」等に出演後、独立。2012年、経産省・産業構造審議会商品先物取引分科会委員。著書「商品先物市場のしくみ」(PHPビジネス新書)ほか。

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