猫のよだれが多いときの原因は?飼い主ができる対処法を解説

猫のよだれが多いときの原因は?飼い主ができる対処法を解説

 猫は、あまりよだれを出さない動物です。犬のようによだれを垂らすことはほとんどありません。ですから、猫がよだれを出しているときは、何らかの病気を疑ったほうがいいかもしれません。

 今回は、猫がよだれを出す原因と、その対処法について解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 猫がよだれを出す原因
  2. よだれを伴う猫の病気
    1. 口腔内の疾患
    2. てんかん
    3. 腎機能不全
    4. 中毒
    5. 熱中症
  3. 猫のよだれで病院に行くべきかを判断するポイント
    1. 出血や口臭、嘔吐がある
    2. 泡状のよだれを出している
    3. 何度も嘔吐し、食欲が低下している
  4. 猫がよだれを垂らしているときは注意深く観察を

猫がよだれを出す原因

 猫は犬と違って、よだれを垂らすことはほとんどありません。たまに、「仲の良い猫とふれ合っているとき」や、「飼い主になでられているとき」、「空腹で食事を前にしたとき」、「刺激物を口にしたとき」などによだれを垂らすことがありますが、こうしたケースのよだれは心配しなくても大丈夫です。

 ですが、猫のよだれは、時として何らかの病気のサインであることがあります。この場合は、よだれ以外の症状がないかどうか、チェックすることが大切です。

よだれを伴う猫の病気

 症状としてよだれを伴う猫の病気には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。猫がよだれを垂らしているとき、あてはまるものがないかご確認ください。

 病気が原因のよだれの場合は、獣医師による治療が必要です。猫の様子がいつもと違うと感じたときは、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

口腔内の疾患

 猫がよだれを出す原因として最初に考えられるのが、口腔内の病気です。
 
 口腔内の炎症の痛みや違和感でよだれが出てしまうほか、口臭や食欲低下といった症状が現れることもあります。よだれの原因となる口腔内の疾患としては、下記のようなものがあります。
歯周病(歯肉炎・歯周炎)
歯周病とは、細菌感染により歯肉が炎症を起こしたり、歯を支える骨が溶けてしまったりする病気です。

歯についた食べかすを放置していると、それをエサに細菌が繁殖してネバネバとした歯垢になり、やがて硬い歯石となって簡単には取れなくなります。歯石にはたくさんの細菌が潜んでいて、周囲の歯肉に炎症を起こしたり、歯と歯肉のあいだから菌が侵入して、歯を支える骨を溶かしたりするのです。

こうした、歯肉に起こる炎症を歯肉炎、細菌が歯肉の奥の靱帯や歯を支える骨にまで達した状態を歯周炎といい、これらを総称して歯周病と呼びます。歯周病になると、よだれのほか、口臭がきつくなる症状が見られるので、要注意です。

なお、歯周病の治療などで全ての歯を抜いたときも、よだれが垂れるようになることがあります。すべての歯を抜くことで、多くの場合、口腔内環境は改善しますが、口の締まりが悪くなり常によだれを垂らしてしまうようになるのです。

口内炎
口内炎は、歯肉や舌、口の中の粘膜などに炎症を起こす病気です。ウイルスや細菌、免疫低下などが原因で発症することが多いとされています。

腫れや潰瘍、出血といった症状による強い痛みからよだれを出すほか、口臭が強くなったり、食欲不振になったりすることがあります。

口腔内腫瘍
口の中にできるポリープや腫瘍が、よだれの原因となることもあります口腔内腫瘍ができると、よだれのほか、口臭や出血などの症状が現れます。

なお、腫瘍には良性のものと悪性のもの(がん)があり、動物病院で検査をしないと判断はできません。

てんかん

 てんかんとは、突然脳の電気信号が乱れて、けいれんや失神といった「てんかん発作」を起こす病気です。

 猫は、てんかん発作を起こす前に、気持ち悪さなどで口をクチャクチャとさせて、よだれを出すことがあります。また、てんかん発作を起こすと、全身がこわばったように硬直する、四肢をバタバタさせて暴れる、顎をきつく噛みしめる、といった症状が現れます。そのほか、あくびを繰り返す、発作中に排便・排尿をする、大きな声で鳴くといった症状が現れることも。

 なお、てんかん発作でよだれを垂らす場合、唾液腺や自律神経が刺激されてよだれが出るというよりも、意識がなくなって口の筋肉がゆるみ、よだれが垂れてしまうケースが多いと考えられます。

腎機能不全

 腎臓が十分に機能していない猫も、よだれを垂らすことがあります

 腎臓は、体内の老廃物や余分な塩分を尿に変える役割を持つ器官です。腎臓の機能が働かないと、尿として排泄されなかった毒素(体にとって不要な物質)が体内に溜まっていき、倦怠感や吐き気を引き起こす尿毒症という病気になります。

 腎機能不全には、急性のものと慢性のものがあります。

 急性腎機能不全は、よだれのほかに嘔吐や意識の低下、突然ぐったりする、尿がほとんど出なくなるといった症状も見られるのが特徴です。慢性腎機能不全の場合、初期のうちは多飲多尿、食欲低下、体重減少といった症状が見られ、進行すると活動的でなくなったり、嘔吐したり、尿がほとんど出なくなったりします。

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中毒

 猫が体に害のあるものを口にしてしまい、中毒症状を起こしたときも、よだれを垂らすことがあります。摂取したものにより症状は異なりますが、よだれのほか、ふらつき、下痢・嘔吐、けいれん、呼吸困難などを起こすことがあります。さらに、腎臓や肝臓の機能障害につながるケースもあるので注意が必要です。

 また、人間に害はないのに、猫は中毒症状を起こすものもあります。身近なものとしては、洗剤や医薬品のほか、タマネギ、ニンニク、アルコール、コーヒー、チョコレート、レーズンといった食べ物なども、猫にとって危険です。猫が誤って口にしないよう、保管場所に気をつけてください。

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熱中症

 熱中症になった猫も、よだれを垂らすことがあります

 熱中症は、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもってしまう状態です。熱中症になると、元気がなくぐったりする、口で息をしてよだれを垂らす、嘔吐や下痢をする、足元がふらつくといった症状が見られることがあります。

 猫は暑さに強い動物ですが、近年の日本の夏は例年のように酷暑が続いているため、熱中症のリスクは高まっています。猫に熱中症の症状が現れていた場合は、応急処置として、水で絞ったタオルを体にあてて体温を下げ、水を飲ませてあげてください。また、すみやかに動物病院を受診しましょう。

猫のよだれで病院に行くべきかを判断するポイント

猫のよだれで病院に行くべきかを判断するポイント

 猫がよだれを出しているとき、精神的・生理的なものなのか、病気によるものなのか判断がつかない場合は、「よだれ以外の症状はないか」、「よだれ自体に異常はないか」を観察してみましょう。

 下記のような異常がある場合は、なるべく早く動物病院を受診してください。

出血や口臭、嘔吐がある

 猫がよだれを垂らしているときは、出血や口臭、嘔吐があるかを確認してください。口の中の粘膜や歯肉の腫れ、出血がある場合は、口腔内の疾患が疑われます。

 また、口臭は口腔内の疾患や内臓の病気のときに発生します。口からいつもと違う変なにおいがするという場合は、早めに動物病院を受診しましょう。よだれのほかに嘔吐もある場合は、内臓の病気のほか、中毒や異物の誤飲などの可能性も考えられます。こちらも、早急に獣医師に相談してください。

泡状のよだれを出している

 猫のよだれに泡が混じっていたり、泡のようなよだれを出していたりする場合は、中毒やてんかん発作の予兆の可能性があります。中毒の場合、誤飲したものの種類や量によっては命に関わる危険があるので、獣医師による早急な処置が必要です。

 なお、軽度のてんかん発作であれば数分で落ち着きますが、たとえ短時間の発作であっても、動物病院を受診してください。てんかん発作の時間の長さでは、重症度を測定できません。また、てんかんの原因が緊急を要するものであるケースも多く見られます。

何度も嘔吐し、食欲が低下している

 猫が高齢で、よだれのほか嘔吐を何度も繰り返し、食欲も低下している場合は、腎機能不全の可能性があります。

 腎機能不全を放置すると、進行して命に関わる事態になることもあるので、できるだけ早く動物病院を受診してください。

猫がよだれを垂らしているときは注意深く観察を

 猫がよだれを垂らしているときは、何らかの病気のサインである可能性があります。よだれ以外の症状はないか、普段と違う様子はないかなど、注意深く観察してみてください。

 元々、猫は自分のケガや体調不良を隠そうとする習性があるため、飼い主でさえその変化に気づきにくいものです。わずかな兆候を見逃さず、病気の可能性があるときは、積極的に動物病院を受診してください。早めの対処が、病気の進行を防ぐことにつながります。また、万が一、大きな病気が見つかったときに備えて、ペット保険に加入しておくと安心です。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
 ●ガイア動物病院(外部リンク)

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