猫の咳の原因は?考えられる病気や対処法を解説

猫の咳の原因は?考えられる病気や対処法を解説

 猫が咳をする原因は多岐にわたり、飼い主にとってはしばしば判断が難しい症状です。一見すると吐きそうな動きと似ていて、咳と気付かないこともありますが、大きな病気が潜んでいる可能性もあるので、早急に対処することが重要になります。

 この記事では、猫の咳の特徴や、考えられる病気について詳しく解説します。猫風邪から猫喘息、さらには悪性腫瘍といった重大な疾患まで、咳を伴う猫の病気は原因も対処法もさまざまです。猫の咳に関する正しい知識を身につけ、愛猫の健康を守りましょう。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 猫の咳はわかりにくい
  2. 猫の咳の原因
    1. 猫喘息
    2. 猫風邪
    3. 肺炎
    4. 気管支瘻(ブロンコレア)
    5. 腫瘍
  3. 猫が咳をしているときの対処法
  4. 猫の咳で少しでも不安に感じたら動物病院へ

猫の咳はわかりにくい

 猫はほかのペットと比べて、咳をする様子が非常にわかりにくい動物です。人間や犬のようにはっきりとした咳の音がすることは少なく、むしろ吐く動作と似ているため、飼い主がその違いを見分けるのは一苦労です。

 これは呼吸器の構造によるもので、猫の呼吸が苦しそうで、何かを吐き出そうとしているように見えたら、咳の可能性を疑ってみる必要があります。
 
 咳かどうか判断がつかない場合は、その様子をビデオ撮影して獣医師に見せることが有効です。獣医師は動画であっても、その動作が咳によるものか、それともほかの健康問題によるものかを、ある程度判断することができます。

 また、インターネット上で公開されている、ほかの猫が咳をしている動画と見比べることも、猫の咳の特徴を理解する上で有効です。

猫の咳の原因

 猫が咳をするセンサーは、人間や犬とは違い、気道の奥(肺内気管支)にはありません。口から肺へと続く気道の中では、特に咽頭部への刺激に敏感で、喉に食べ物が詰まったり、異物を飲み込んだりした場合に咳が出るケースが多いようです。

 また、グルーミングの際に飲み込んでしまった毛が胃の中で固まり、毛球症と呼ばれる状態になると、吐くような仕草とともに咳をすることがあります。ほかにも、衣服用の洗剤や柔軟剤に使われている化学物質が原因のこともあるようです。

 ここでは特に、咳を伴う猫の病気のうち、代表的なものについて解説します。さらに動物病院での具体的な診察内容や、大まかな診療費についても紹介しますので、参考にしてください。

猫喘息

 猫喘息は、何らかの原因で気管支が炎症を起こすことで発症する病気です。発症すると、炎症により気道が狭まり、頻繁に咳をするようになります。喘息の発作中は、猫の呼吸が浅くなり、場合によっては重度の呼吸困難を引き起こすこともある、危険な病気です。

 猫喘息の原因としては、アレルギー物質が関与しているとされています。家庭内で使用される芳香剤やたばこの煙、ハウスダストなど、アレルゲンとなるものは多種多様ですが、それらの物質からできるだけ遠ざけてあげることも大切です。

 治療については、残念ながら完治を望むことは難しく、多くの場合、長期的に付き合っていく病気になります。主な治療法としては、ステロイドによる炎症の抑制や気管支拡張剤の投与が挙げられます。

 内科的な治療が中心になるので、1回あたりの診察費は数千円程度ですが、健康を維持するためには継続して通院することが重要です。

猫風邪

 猫風邪(猫ウイルス性上部気道感染症)は咳やくしゃみ、鼻水などを伴う病気です。猫ヘルペスウイルスや猫カリシウイルス、猫クラミジアといったウイルスや細菌に感染することで発症します。

 すでに発症している猫の分泌物(鼻水や唾液など)を介して感染することがほとんどで、特に家で飼われていない地域猫との接触には注意が必要です。免疫力の低い子猫や高齢猫をはじめ、猫エイズなどほかの病気にかかっている猫の場合には、重症化のリスクもあります。

 症状は人間の風邪とよく似ていますが、人間の風邪薬を飲ませると中毒を起こす危険があるため、絶対に与えてはいけません。きちんと動物病院で処方してもらった抗菌薬や抗ウイルス剤を飲ませて、十分に保温・保湿されたストレスのない環境を保ってあげましょう。

 また、ワクチン接種である程度予防することが可能なので、子猫の時期からしっかり対策しておくことが重要です。ペット保険も、ワクチンを打っていないと保険適用外になる会社もあります。治療費は1回の診察あたり数千円〜1万円程度ですが、重症化している場合はより高額になる可能性もあるようです。

肺炎

 猫風邪や感染症が悪化し肺にまで炎症が広がった場合、肺炎を発症します。この状態になると、酸素と二酸化炭素を交換する肺の機能が著しく低下し、呼吸が早くなり、普段の活動でさえすぐに疲れてしまうようになります。

 肺炎のもうひとつの大きな原因に誤嚥によるものがあります。これは、食べ物、液体、または異物が誤って肺に入り込むことで発症します。特に老齢の猫や、免疫力が低下している猫がかかりやすいです。

 治療については、抗菌薬の投与が一般的です。これは、感染を引き起こしている細菌を排除し、炎症を抑える効果があります。

 さらに、緊急性が高い場合や肺の状態次第では、酸素吸入が必要です。肺炎によって弱った猫の呼吸機能をサポートし、酸素を効率良く取り込む助けをしてくれますが、重症の場合は入院となり、継続した処置を行います。

 治療費に関しては、症状の重さと治療期間によって異なりますが、診察、X線撮影、血液検査、そして薬物療法を含めると数万円〜十数万円になることもあります。肺炎の治療は長期間にわたることが多く、回復には時間と費用がかかるため、早期発見と早期治療が重要です。

気管支瘻(ブロンコレア)

 気管支瘻(ブロンコレア)は、気道にさらさらした分泌物が発生するのが特徴の慢性的な肺疾患の一種です。はっきりとした原因は不明ですが、肺に関わるいくつかの疾患が複合して発生するといわれています。 

 品種としてはロシアンブルーとアメリカンショートヘアに多く見られ、特に前者は6歳頃から、後者は10歳頃から発症しやすくなる傾向があります。

 明確な治療法はまだ確立されておらず、ステロイドや気管支拡張剤を用いた対症療法が一般的です。肺炎と同様、酸素吸入を用いることもあるようです。治療費については、内科療法の場合数千円〜1万円程度ですが、高度な検査や入院が必要になった場合はさらに高額になることもあります。

腫瘍

 気管や肺にできた腫瘍が気道を圧迫し、咳を引き起こすことがあります。いわゆる肺がんです。肺がんによる腫瘍は、「原発性肺腫瘍」と「転移性肺腫瘍」に大きく分けられます。

 原発性肺腫瘍は肺自体から発生したもので、一方の転移性肺腫瘍は体のほかの部位から肺へと転移した悪性腫瘍です。猫の場合、原発性肺腫瘍の発生はまれで、ほかの内臓や甲状腺、血管肉腫などからの転移によって肺がんを併発するケースが多いといわれています。

 腫瘍は、特に高齢の猫に多く見られる病気です。発症すると、元気がなくなる、食欲不振、急激な体重減少などの症状を引き起こすことがあります。

 治療法は腫瘍の種類、大きさ、位置、そして猫の健康状態に依存しますが、一般的には手術による腫瘍の切除が最も有効です。しかし、肺全体に転移が進んでしまっている場合や、手術が困難な場所にある腫瘍に対しては、化学療法や放射線治療が併用されることもあります。

 治療費は、外科手術を行った場合は数十万円、化学療法や放射線治療を含む場合は、さらに高額の治療費がかかることも少なくありません。初期段階での診断と治療が、猫の生存率と生活の質を保つためには重要です。

猫が咳をしているときの対処法

猫が咳をしているときの対処法

 猫の咳が一時的で、ほかに目立った症状がない場合は、しばらく様子を見てもいいでしょう。元気で食欲もあり、活発に動いているようなら、大きな心配は不要です。

 しかし、咳が数日以上続く場合や食欲不振、早くて浅い呼吸、たん、鼻水といったほかの症状がある場合は、獣医師の診察が必要です。これらの症状は、咳の原因が何らかの病気によるものである可能性を示しており、早急な治療が必要なケースもあります。

 獣医師の診察を受ける際には、猫を一番近くで見ている飼い主の正確な情報提供が求められます。具体的には、「咳がいつから始まったか」、「どのくらいの頻度で咳をしているか」、「咳が出るタイミングは興奮時か安静時か」、「朝方や夜間といった限られた時間なのか、一日中か」といった情報です。また、咳以外にも異常が見られた場合は、それらの症状も獣医師に伝えましょう。

 飼い主が自宅でできるケアとしては、においの強い香水やたばこの煙を避け、換気を良くすることが挙げられます。また、首や胸部圧迫の原因となる首輪や衣服を外し、呼吸しやすい状態を作ってあげることも有効です。咳をすることで炎症がより悪化し、心臓に負担がかかることも考えられますので、そもそも咳をさせないように気をつけることが重要になります。

猫の咳で少しでも不安に感じたら動物病院へ

 猫の咳はわかりづらく、普段は見過ごしてしまうことも多いと思いますが、重大な病気のサインである可能性もあります。猫の様子を日頃から観察し、咳だけでなく、普段と違う行動が見られる場合には、早めに動物病院を受診してください。

 もし大きな病気が発覚した場合、入院や手術が必要になることもあります。経済的な負担を軽減し、より安心して愛猫と暮らすためには、ペット保険へ加入するのもおすすめです。

 ただし、多くのペット保険では、病気の診断を受けた後の加入を制限しています。保険会社が提供するプランにはさまざまものがありますので、愛猫が若くて健康的であっても、まだ早いと思わずに比較検討してみるといいかもしれません。

 オリコンでは、日本最大級の規模で調査を行い、毎年「ペット保険 オリコン顧客満足度ランキング」を発表しています。保険料はもちろん、ペットの種類別や精算方法別など、さまざまな視点でのランキングをご確認いただけますので、ぜひ保険会社選びの参考にしてください。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
ガイア動物病院公式サイト(外部リンク)

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