公開日：2024-07-22

愛猫の口臭が気になるときの原因とは？対処法を解説

　猫に顔を近づけたとき、口のにおいが気になる方もいるのではないでしょうか。猫の口臭は、重大な病気が原因で起こっていることもあるので、注意が必要です。

　今回は、猫の口臭の原因とさまざまな病気との関係、猫の口臭の対処法などについて解説します。

監修者ガイア動物病院院長松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

【監修者プロフィール】

猫の口臭の原因
口臭を伴う猫の病気
1. 歯周病
2. 口内炎
3. 腫瘍
4. 糖尿病
5. 腸閉塞
6. 便秘
7. 腎機能不全
8. 肝機能不全
猫の口臭はどう対策する？
動物病院を上手に活用して、愛猫の健康管理を

猫の口臭の原因

　猫だけでなく、どんな動物にも多かれ少なかれ口臭はあるものです。ただし、強い口臭は病気の前触れや、何らかの病気が原因という可能性もあります。まずは、猫の口臭が強くなる原因について見ていきましょう。

口腔内の環境の悪化

　猫の口臭の原因として多いのが、病気などによる口腔内の環境の悪化です。例えば、歯周病で口内に細菌が増殖すると腐敗臭のようなにおいがします。

　また、口内炎などではがれた細胞や、歯垢のたんぱく質などを口腔内細菌が分解するとき、腐った卵のようなにおいのガスを発します。

口内の乾燥

　猫の口内が乾いてしまっているときも、口臭を発することがあります。

　猫は砂漠地域にルーツを持ち、少量の水があれば活動できることから、あまり積極的に水分を摂取しようとしない動物です。そのため、口の中が乾燥する「ドライマウス」になりやすい傾向があります。

　唾液には細菌の活動を抑える作用があるため、唾液が少なくなって口内が乾燥すると、細菌が繁殖してにおいの原因となるのです。

キャットフード

　猫が食べている物によって、口臭の強さが変わることもあります。独特なにおいを持つ素材を使ったフードは、口臭を発しやすいものです。これは病的な口臭ではないので、心配はいりません。

　なお、やわらかいウェットフードや缶詰タイプのフードは、歯垢や歯石がつきやすいため、口腔内の環境が悪化しないよう、毎日歯磨きをしてあげましょう。

内臓の病気

　猫が、内臓に病気を抱えているときも、口臭が強くなる場合があります。消化器系の病気のときは、胃酸や便などのにおいがしますし、腎臓や肝臓が機能不全に陥ったときは、アンモニア臭がします。

　また内臓に病気がある場合、口臭以外に食欲不振や下痢、ひどい嘔吐などの症状が見られることもあります。

口臭を伴う猫の病気

　猫の口臭がいつもより強い、普段とは違うにおいがするというときは、何らかの病気が隠れているのかもしれません。ここでは、症状として口臭を伴う猫の病気の中でも、代表的なものをご紹介します。

歯周病

　歯周病は、細菌感染により歯肉が炎症を起こしたり（歯肉炎）、歯を支える骨が溶けてしまったり（歯周炎）する病気です。

　歯についた食べかすを放置すると、そこに口内細菌が増殖してネバネバとした歯垢となり、やがて石のように硬い歯石となって、簡単には取れなくなります。歯石は細菌の塊で、周囲の歯肉に炎症を起こしたり、歯と歯肉のあいだから菌が侵入して、歯を支える骨を溶かしたりします。

　歯周病が進行すると、歯が抜けたり、歯根から膿が出たりして、口臭もかなり強くなります。また、細菌が血流にのって全身に回ることで、肺や心臓の病気にも関係するとされているので、早めの対応が重要です。

口内炎

　口内炎は、歯肉や舌、頬の内側など口腔内の粘膜が炎症を起こす病気です。口内がただれて潰瘍ができることもあり、よだれが増えたり口臭が強くなったりします。

　また、痛みのため食欲低下や体重減少が起こるほか、症状が悪化してしまうと水を飲むことが困難になるケースもあります。

腫瘍

　口腔内にできた腫瘍が口臭の原因となることもあります。腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、特に悪性腫瘍（がん）は進行のスピードが速く、腐敗臭のようなにおいとともに、強い痛みを引き起こす場合があります。

糖尿病

　糖尿病は、血液中の糖分の濃度（血糖値）が高くなる病気です。血液中の糖分を体に取り込むインスリンが十分に作られなかったり、働きが悪くなったりすることで血糖値が下がらなくなります。

　また、口臭がするほか、喉が渇くために大量の水を飲むようになるのが特徴。不適切な食事や肥満のほか、膵炎などが発症の原因とされています。

腸閉塞

　腸閉塞とは、腸がふさがってしまったり、食べた物が通過しにくくなったりする病気です。腸が詰まってしまい排泄できないため、口から便のにおいがします。

　また、口臭だけでなく、食事がとれなくなり、水を飲んでも吐いてしまうことがあります。

便秘

　猫は便秘になりやすいといわれますが、自力で排便できないほど重度の便秘になると、口臭が強くなることがあります。普段の排便量を把握しておくことが大切です。

　●関連リンク：
　猫の便秘の特徴や原因は？飼い主ができる対処法を紹介

腎機能不全

　腎臓の働きが悪くなることでも、口臭が発生します。腎臓は、血液を濾過して、取り除いた老廃物や余分な塩分を、尿として排出する役割を持つ器官です。

　腎臓が機能不全を起こすと、老廃物が体内に残り続けて尿毒症を引き起こし、アンモニア臭のような強い口臭を発します。

肝機能不全

　肝臓は、有害な物質を毒性の低い物質に作り変えたり、栄養分を分解・合成したりといった、さまざまな化学処理を行う臓器です。

　肝臓が機能不全を起こすと、毒素が体内に溜まってしまい、強い口臭を発することがあります。また、口臭のほかにも食欲不振や体重の減少、下痢や嘔吐などの症状が見られます。

猫の口臭はどう対策する？

　猫の口臭の原因が、口腔内の環境悪化や乾燥、食べ物によるものの場合、家庭でのケアで予防・対策が可能です。また、内臓の病気が原因の場合も、早めに動物病院を受診することで、重症化を防げる可能性が高まります。

　ここでは、猫の口臭予防・対策に効果的な方法をご紹介します。

口腔内をケアする

　猫の口臭の原因の多くは、口腔内のケアが不十分であることです。まずは口の中を観察して、歯石の溜まり具合や歯肉の腫れ、出血などをチェックしてください。

　歯に黄色や茶色の硬い物がついている場合は歯石です。猫は口腔内がアルカリ性のため歯垢が歯石になりやすく、歯についた歯垢は、わずか一週間程度で歯石になってしまいます。できてしまった歯石は、家庭で除去することは難しいため、動物病院で処置をしてもらいましょう。

　また、歯石ができないように、普段から少しずつ歯磨きに慣れさせて、歯のケアを習慣化することが大切です。

水分補給をしっかり行う

　口の中が乾燥すると、細菌が繁殖して悪臭の原因となります。

　猫は水分をあまりとらない動物ですから、家の中に複数の水飲み場を作ったり、噴水型の給水機を使うなど、水を飲みたくなるような工夫をしましょう。また、常に清潔な水が飲めるよう、水替えを忘れずに行ってください。

　なかなか水を飲んでくれない猫の場合は、水分量の多いウェットフードに替えるのも、ひとつの方法です。ただし、ウェットフードは歯につきやすいので、毎日の歯磨きを忘れずに行います。

定期的な動物病院の受診

　定期的に動物病院を受診して、猫の体調に問題はないかチェックしてもらうことも重要です。

　猫は、本能的に体の不調を隠そうとする動物なので、体調不良に飼い主が気付けないこともあります。かかりつけの獣医さんに見てもらうことで、些細な不調もいち早く見つけてもらえるでしょう。

　また、猫の口腔内に異常を発見したときや、いつもと違う強い口臭を感じたときは、すぐに動物病院を受診してください。

動物病院を上手に活用して、愛猫の健康管理を

　猫の口臭は、口腔環境の悪化によるものが多いのですが、何らかの病気が原因というケースもあります。

　猫の口の中に異常を見つけたときや、強い口臭が気になるときは動物病院に相談してみましょう。猫の健康診断はもちろん、普段の家庭でできる口腔ケアの方法といったアドバイスも受けることができます。また、万が一、大きな病気が見つかったときに備えて、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。　

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監修者ガイア動物病院院長松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院（東京都杉並区）開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
　●ガイア動物病院

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。