犬の白内障は治らない?原因や症状、治療の方法について

犬の白内障は治らない?原因や症状、治療の方法について

 白内障は、人だけでなく犬でも見られる病気です。愛犬に「最近よく家具にぶつかる」、「目が白っぽく見える」などの様子が見られたら、白内障の始まりのサインかもしれません。白内障は進行性の病気のため、早期に発見して治療を開始することが重要です。

 今回は犬の白内障の原因や症状、治療法などについて解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の白内障はどの犬にでもリスクがある
  2. 犬の白内障の症状
  3. 犬の白内障の原因
  4. 犬の白内障の治療法
    1. 内科的治療
    2. 外科的治療
  5. 犬が白内障になってしまったら
  6. 犬の白内障は早期に発見して対処しよう

犬の白内障はどの犬にでもリスクがある

 犬の白内障は、目の中でレンズのような働きをしている水晶体が、何らかの原因で濁る病気です。初期は目が多少濁ったように見え、視力が低下していきますが、進行すると目が真っ白になり、最終的には失明してしまいます(必ず失明に至るわけではない)。一度水晶体が濁ったら、元に戻ることはありません。
 
 基本的にはどのような犬でも発症する可能性があるため、注意したい病気のひとつです。

犬の白内障の症状

 犬の白内障の症状は、目が白く見える、瞳孔が常に開いている、などがあり、見えにくいため物にぶつかったりつまずいたりしがちになることもあります。初期は夜だけ視覚障害が現れる場合がありますが、住み慣れた家では物の配置を覚えていて、特に問題なく生活できることもあるでしょう。中には、見えにくい不安から攻撃的になる犬もいます。

 犬の白内障には、水晶体の濁り度合いによって4つのステージがあります。

<犬の白内障のステージ>
ステージ1 初発白内障:水晶体の10〜15%が濁る、視覚への影響はほぼない
ステージ2 未熟白内障:水晶体の15%以上が濁る、視界のぼやけやかすみが現れる
ステージ3 成熟白内障:水晶体の全体が濁っている、視力が顕著に低下する
ステージ4 過熟白内障:水晶体の濁りが強まっている、失明の一歩手前
 白内障はステージ1や2の場合は点眼薬や内服薬などで進行を遅らせられるとされていますが、ステージ3や4まで進行すると、緑内障やぶどう膜炎、網膜剥離などの合併症を引き起こすこともあります。

 早期に発見して対処するため、愛犬の目や様子に異常を感じたら早めに動物病院に相談するとともに、定期検診なども検討してください。

犬の白内障の原因

 犬の白内障の原因は、多くが加齢や遺伝によるものとされています。また、水晶体脱臼などの目の病気や糖尿病などの合併症のほか、紫外線の浴びすぎや外傷、薬物なども白内障の原因です。

 加齢による白内障はだいたい6歳以降に発症するとされますが、遺伝の場合は、若年性で生後数ヵ月からでも発症することがあります。加齢が原因の白内障は数年かけて進行しますが、若年性の場合は発症から数週間〜数ヵ月で進行してしまうことも。愛犬の目に異常を感じたら、すぐに動物病院で検査を受けることをおすすめします。

犬の白内障の治療法

犬の白内障の治療法

 犬が白内障になった場合、糖尿病や外傷など、白内障の原因がわかっている場合は、まずその治療を行います。それに加えて、白内障の治療には「内科的治療」と「外科的治療」があります。内科的治療はステージ1や2の初期に、外科的治療は進行したステージ3や4で行われることが多いです。

内科的治療

 白内障で濁った水晶体を元に戻す方法はなく、内科的治療では点眼薬や内服薬、サプリメントなどで進行を遅らせたり、症状を緩和させたりすることになります。

 進行するほど緑内障などの合併症が起こり、外科的治療も難しくなってくるため、できるだけ初期に治療を開始し、進行を遅らせることが重要です。

外科的治療

 外科的治療では、濁った水晶体を手術で取り除いて、犬用の人工レンズを挿入することが一般的です。

 ただし、検査や手術を行うには全身麻酔が必要なため、特に体力のない子犬や高齢犬にはリスクがあります。犬の目の検査や手術には特殊な器械や装置が必要となり、どの病院でもできるとは限らない点も考慮が必要です。

 また、手術が適応になるかどうかは、犬の性格として目の検査に協力的であること、点眼をおとなしく受けられることなども考慮されます。

犬が白内障になってしまったら

 犬の白内障は、遺伝的・先天的な原因の場合は難しいですが、原因となるような目の病気や外傷、糖尿病などを予防したり、早期に治療したりすることが可能です。ただし、白内障はどのような犬でもなる可能性があるため、愛犬が白内障になってしまったらどうするかを考えておくことも重要です。

 リスクや進行度合いで内科的治療か外科的治療か選ぶ必要があるとともに、どのように付き合っていくかも考えなければなりません。

 初期のうちから、散歩の際はつまずきやすい段差のある場所などを避け、床に物を置かない、慣れ親しんだレイアウトは変えないなど、生活環境に配慮してください。犬は元々、あまり視覚が発達しておらず、嗅覚や聴覚を頼りにする部分が多いため、飼い主が心配するよりも問題なく暮らしていける可能性もあります。

 痛みや合併症には注意する必要がありますが、悲観するよりも愛犬が快適に暮らせるよう工夫してみてください。

犬の白内障は早期に発見して対処しよう

 白内障はどのような犬でもリスクがあり、一度発症すれば元に戻ることはありません。進行すれば痛みや合併症のおそれがあり、放置すれば失明することもありますから、早期に発見して治療し、できるだけ進行を遅らせることが重要です。

 また、外科的治療をしない限りは長く付き合っていく病気のため、費用負担を考えても犬が若いうちにペット保険に加入しておくのもよいでしょう。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
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