犬の子宮蓄膿症の症状は?病気のサインや原因・治療法・予防法を解説

犬の子宮蓄膿症の症状は?病気のサインや原因・治療法・予防法を解説

犬の子宮蓄膿症は、特に高齢の未避妊犬に多く見られる命に関わる病気です。

この病気は、子宮内に膿が溜まり感染が進行することで、さまざまな症状を引き起こします。適切に治療しないと、愛犬の健康に深刻な影響を与える可能性があります。

しかし、早期の発見と治療、そして適切な予防策を講じることで、リスクを大幅に減らすことができます。

この記事では、犬の子宮蓄膿症について、主な症状や原因診断方法治療法、そして予防法まで詳しく解説します。愛犬の健康を守るために必要な知識を身につけ、早期対応を心がけましょう。
まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の子宮蓄膿症とは?
  2. 犬の子宮蓄膿症の症状
    1. 開放性子宮蓄膿症の症状
    2. 閉鎖性子宮蓄膿症
    3. 症状が進行、重症化した場合
  3. 犬の子宮蓄膿症の原因
  4. 犬の子宮蓄膿症の診断方法
  5. 犬の子宮蓄膿症の治療法
    1. 外科手術|子宮・卵巣の摘出
    2. 内科治療|抗生物質の投与
  6. 犬の子宮蓄膿症の予防法
  7. 子宮蓄膿症を予防して愛犬の健康を守ろう

犬の子宮蓄膿症とは?

犬の子宮蓄膿症とは?

子宮蓄膿症は、子宮内で細菌感染が起こり、膿が蓄積する深刻な病気です。細菌の増殖により放出された毒素は全身に影響を及ぼし、適切な治療を受けなければ命に関わる危険性もある緊急性の高い疾患です。

この病気には次の2つのタイプがあります。

開放性子宮蓄膿症
閉鎖性子宮蓄膿症

開放性の場合は、子宮に溜まった膿が陰部から排出される状態となり、症状に気付きやすい特徴があります。

一方、閉鎖性では膿が子宮内に閉じ込められたままとなり、子宮が膨張して破裂するリスクが高まります。また、膿が外に出ないため発見が遅れやすく、より深刻な状態に陥る可能性が高くなります。

特に避妊手術を受けていない中高齢の犬に多く見られ、子どもを産んだことがない、もしくは最後の出産から長期間経過している場合に発症するリスクが高まります。

発情から1〜2ヶ月後に症状が現れることが多く、この時期は特に注意が必要です。
早期発見と適切な治療が重要な理由は、放置すると敗血症やショック症状を引き起こす可能性があるためです。

子宮内で増殖した細菌から放出される毒素は、血液を介して全身に広がり、さまざまな臓器に障害を引き起こす危険性があります。

犬の子宮蓄膿症の症状

犬の子宮蓄膿症の症状

子宮蓄膿症の症状は、初期から重症化までの段階によってさまざまな形で現れます。

以下の症状が見られた場合は、子宮蓄膿症の可能性を疑う必要があります。

●元気がない
●食欲が低下する
●水をたくさん飲む
●排尿量が増える
●嘔吐が見られる
●おなかが膨らむ
●陰部から膿や血液が排出される(開放性の場合)

開放性子宮蓄膿症の症状

開放性子宮蓄膿症では、陰部からカスタード状の膿や血液を含んだ分泌物が排出されます。この状態では愛犬が陰部を頻繁になめたり、陰部周辺や後ろ足の毛が汚れたりする様子が見られます。

また、正常な発情周期とは異なり、前回の発情出血から2ヶ月程度しか経過していないのに出血が確認される場合は注意が必要です。

閉鎖性子宮蓄膿症

一方、閉鎖性子宮蓄膿症は膿が外に出ないため、腹部膨満が見られることがあります。外見上は妊娠や肥満と見間違えることもありますが、食欲が低下しているにもかかわらず体重が増加するという特徴的な状態が見られます。

閉鎖性は、膿が蓄積し続けることで子宮破裂のリスクが高まるため、より深刻な状態となりやすいのが特徴です。

症状が進行、重症化した場合

初期段階では目立った症状が現れないこともありますが、病状が進行すると多飲多尿食欲不振といった症状が現れてきます。さらに重症化すると、細菌の毒素により血栓が形成されたり、腎不全を引き起こしたりする可能性があります。

犬の子宮蓄膿症の原因

犬の子宮蓄膿症の原因

子宮蓄膿症の発症には、女性ホルモンの一つである黄体ホルモン(プロゲステロン)が深く関わっています。このホルモンは、愛犬の発情周期において重要な役割を果たしており、特に発情後の約2ヶ月間(発情休止期)に多く分泌されます。

プロゲステロンには、妊娠を維持するために子宮内膜を厚くし、体液の分泌を促進する作用があります。しかし、この作用により子宮内の環境が変化し、細菌感染を起こしやすい状態となってしまいます。

感染の主な原因となる細菌は大腸菌で、肛門と外陰部が近接している解剖学的な特徴から、完全な細菌との接触を防ぐことは困難です。
発情周期との関連性も重要な要素です。

愛犬は通常6〜12ヶ月齢で性成熟を迎え、その後年に1〜2回の発情を繰り返します。発情周期は「発情前期」、「発情期」、「発情休止期」、「無発情期」の4つの段階に分かれており、特に発情休止期にプロゲステロンの分泌が優位となるため、この時期に子宮蓄膿症を発症するリスクが高まります。
年齢出産歴も発症に影響を与える要因となっています。6歳以上の中高齢犬で、特に出産経験がない、または最後の出産から長期間が経過している場合にリスクが上昇します。

これは、子宮内膜の状態や免疫機能の変化が関係していると考えられています。避妊手術を受けていない犬は、これらのホルモンバランスの変動や細菌感染のリスクに常にさらされている状態にあります。

犬の子宮蓄膿症の診断方法

犬の子宮蓄膿症の診断方法

獣医師は飼い主からの問診により、症状の出現時期や最後の発情時期などを詳しく確認します。そのうえで、さまざまな検査を組み合わせて総合的に診断を行います。

<主な検査>
●レントゲン検査
●超音波検査
●血液検査
●細菌培養検査
など

レントゲン検査超音波検査は、子宮の状態を詳しく観察するために実施されます。特に超音波検査では、子宮内の膿の貯留状況や、炎症による子宮壁の腫れを詳細に確認することができます。これらの画像検査により、子宮の拡張具合や妊娠との鑑別も可能となります。

血液検査では、全身の健康状態を確認します。白血球数の増加や炎症マーカーであるCRPの上昇など、体内で炎症が起きていることを示す指標を調べます。

また、血液検査の結果や、発熱、脈拍数、呼吸数などから、全身性炎症反応症候群の有無も判断します。全身性炎症反応症候群とは、感染による炎症反応が血液を介して全身に広がり、さまざまな臓器に障害を引き起こしている状態を指します。

必要に応じて子宮内の膿を採取し細菌培養検査を行うこともあります。この検査により、原因となっている細菌を特定し、効果的な抗生物質の選択が可能となります。

さらに、播種性血管内凝固(DIC)の有無も重要な診断項目となります。DICは血液凝固機能に異常をきたす深刻な合併症で、この状態が確認された場合は、治療の優先順位を変更する必要が出てくることもあります。

犬の子宮蓄膿症の治療法

犬の子宮蓄膿症の治療法

子宮蓄膿症の治療には主に「外科手術」と「内科治療」の2つの方法があります。

通常は外科手術が第一選択となりますが、愛犬の状態やさまざまな要因により、適切な治療法が選択されます。

早急な治療が必要な緊急性の高い疾患のため、獣医師と相談しながら最適な治療方針を決定することが重要です。

外科手術|子宮・卵巣の摘出

外科手術では、全身麻酔下で卵巣と子宮を摘出します。

一般的な避妊手術と同じ術式ですが、膿が蓄積した子宮は非常に脆く、破裂のリスクが高いため、より慎重な処置が必要となります。

手術前には、全身状態の安定化を図るため、点滴などの処置が行われることがあります。術後は、感染の拡大を防ぐため抗生物質が投与され、状態に応じて数日間の入院が必要となります。

避妊手術と比べて入院期間が長くなる傾向にあり、必要な投薬や処置も増えるため、治療費は10万円以上になることが一般的です。

手術後は敗血症やDIC(播種性血管内凝固)などの合併症に注意が必要です。術後の回復状況によっては、定期的な血液検査で経過観察を行うこともあります。

内科治療|抗生物質の投与

重度の心疾患により全身麻酔のリスクが高い場合や、飼い主の希望により外科手術を選択できない場合には、内科治療が検討されます。子宮内の膿を排出させる薬剤と抗生物質を投与し、体調の改善を図ります。

閉鎖性の子宮蓄膿症の場合、プロゲステロン受容体拮抗薬であれば100%の奏効率が報告されています。ただし、内科治療のみでは再発のリスクが高く、完治は難しいとされています。

また、重症例では応急処置として内科治療を行いながら、全身状態が安定するのを待って手術を実施することもあります。

犬の子宮蓄膿症の予防法

犬の子宮蓄膿症の予防法

子宮蓄膿症は、適切な予防措置を取ることで発症リスクを大幅に低減することができます。最も効果的な予防法は、若い時期での避妊手術です。

避妊手術は生後6ヶ月から1歳までの間に実施することが推奨されます。この時期に手術を行うことで、子宮蓄膿症の予防だけでなく、乳腺腫瘍の発生リスクも大幅に減少させることができます。

避妊手術には卵巣と子宮を摘出する方法と、卵巣のみを摘出する方法があります。それぞれにメリット・デメリットがありますので、担当の獣医師とよく相談して最適な方法を選択しましょう。

健康な時期に実施する避妊手術は、子宮蓄膿症を発症してからの手術と比べて手術時間が短く術後の回復も早いです。

また、入院期間も短く済むため、愛犬への負担も少なく、治療費も抑えることができます

避妊手術を選択しない場合は、発情周期を正確に記録することが重要です。発情出血の開始日や終了日を記録し、発情後約2ヶ月間は特に注意深く愛犬の様子を観察しましょう。

飲水量や食欲の変化、お腹の膨らみ、元気の有無など、普段と異なる様子が見られた場合は、早めに獣医師に相談することをおすすめします。

子宮蓄膿症を予防して愛犬の健康を守ろう

子宮蓄膿症は、早期発見適切な治療、そして何よりも予防が重要な疾患です。避妊手術を若いうちに実施することで、発症リスクを大幅に減らすことができます。

また、手術を選択しない場合は、発情周期を記録し、体調の変化に敏感に気付けるよう日々の観察を欠かさないことが大切です。

子宮蓄膿症の治療には高額な医療費がかかることがあります。手術や入院が必要となれば、10万円以上の費用が発生する可能性もあります。こうした予期せぬ医療費に備え、ペット保険への加入を検討することをおすすめします。

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まさの森・動物病院 院長 安田賢

監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢

日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
 ●まさの森・動物病院(外部リンク)

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

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