愛犬が血尿をしたらどうする?原因と対処法を解説
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血尿は膀胱炎や尿路結石などの病気のほか、腫瘍や感染症といった深刻な疾患のサインである場合もあります。また、発情期出血など血尿と間違えやすい症状もあり、正しく見極めることが大切です。
本記事では、犬の血尿の原因や考えられる病気、間違えやすい症状、自宅での対処法や治療・予防について解説します。愛犬の健康を守るための参考にしてください。
監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。
目次
犬の血尿とは? 色や量でわかる危険度のサイン
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健康な犬の尿は薄い黄色ですが、腎臓から尿管、膀胱、尿道へと続く泌尿器のいずれかの場所で出血が起こると、その血液が尿と一緒に排出され血尿となります。
一般的に、尿道口に近い部分(尿道や膀胱)からの出血は鮮やかな赤色になりやすく、腎臓など尿道口から離れた部位からの出血は、時間の経過とともに酸化して赤黒い色になる傾向があります。
また、血の塊が混じっていたり、ポタポタと血が垂れるような状態が見られることもあります。
「ちょっとピンク色っぽいだけだから」とか、「いつも通り元気だから大丈夫」など安易に判断することは避け、血尿を確認したら速やかに獣医師の診察を受けることが大切です。
犬の血尿を引き起こす原因 〜考えられる病気やストレスの可能性〜その治療法も
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また、ストレスが膀胱炎の発症に関与することもありますが、血尿が見られた場合は基本的に何らかの病気を疑い、早めに動物病院を受診することが重要です。
以下、それぞれの病気について詳しく見ていきましょう。
膀胱炎
膀胱は尿を一時的に貯めておく器官ですが、主に尿道口から侵入した細菌が膀胱内で増殖すると、膀胱の粘膜に炎症が起きて膀胱炎を発症します。
■膀胱炎の症状
膀胱炎になると、炎症を起こした膀胱粘膜から出血が生じ、血尿として現れます。
その他では、頻繁にトイレに行く(頻尿)、排尿時に痛みで鳴く、排尿の姿勢をとるものの少量しか尿が出ない(残尿感)などの症状が見られることが多いです。ただし、軽度の場合は頻尿などの症状が出ないまま、突然血尿だけが現れるケースもあります。
■膀胱炎に罹りやすいのは
メスは尿道が太く短いうえ、尿道口が肛門に近い位置にあるため、オス犬に比べて細菌が侵入しやすく、膀胱炎にかかりやすい傾向があります。
また、水をあまり飲まない犬や、日常的に排尿を我慢してしまう犬は、尿が膀胱に長時間とどまることで細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎のリスクが高まります。
■膀胱炎の治療
膀胱炎の治療は、原因となっている細菌に効果のある抗生物質を2〜3週間程度投与することが一般的です。
適切な治療を行えば多くの場合は完治しますが、放置すると慢性化したり、腎臓にまで感染が広がる可能性があるため、早期の治療開始が大切です。
尿石症(尿路結石)
■尿石症の原因
犬の尿石症の原因として最も多いのは、ストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石とシュウ酸カルシウム結石で、この2つで全体の8割以上を占めるといわれています。
ストルバイト結石は、細菌感染などにより尿がアルカリ性に傾くことで形成されやすくなり、顕微鏡でしか見えない小さな結晶から直径数センチの大きな結石にまで成長することがあります。
一方、シュウ酸カルシウム結石は尿が酸性に傾くことで形成され、ストルバイトほど大きくはならないものの、硬くて溶けにくいという特徴があります。
■尿石症の症状
尿石症の症状は初期では膀胱炎と似ており、血尿や頻尿、排尿時の痛みなどが見られます。
しかし、結石が尿道に詰まってしまうと尿が出なくなる尿道閉塞を起こし、急性腎不全など命に関わる状態に陥る危険性があるため、注意が必要です。
■尿石症の治療方法
治療方法は結石の種類によって異なり、食事療法で結石を溶かせる場合もあれば、外科手術で取り除く必要がある場合もあります。
ミニチュア・シュナウザーやシー・ズーなど、遺伝的に結石ができやすい犬種もいるため、これらの犬種を飼っている場合は特に注意深く観察することが大切です。
腫瘍
犬の膀胱や尿道にできる腫瘍の多くは「移行上皮癌」という悪性腫瘍で、高齢のメスに多く見られる傾向があります。
腫瘍細胞は正常な組織の機能や秩序を無視して増殖するため、周囲の血管を破壊して出血を引き起こします。
■初期症状では発見が遅れるケースも
初期の症状は、血尿、頻尿、排尿困難など膀胱炎とよく似ているため、膀胱炎の治療を行うと一時的に症状が改善することもあり、発見が遅れてしまうケースが少なくありません。
しかし、腫瘍は進行すると肺やリンパ節、骨などに転移したり、腫瘍によって尿路が塞がれて急性腎不全を引き起こしたりする可能性があります。
そのため、膀胱炎の治療を続けても改善しない場合や、高齢犬で血尿が見られる場合は、腫瘍の可能性も考慮して精密検査を受けることが重要です。
■治療方法
治療は抗がん剤の投与や放射線治療、手術による膀胱摘出などが選択されますが、早期発見・早期治療が何より大切です。
レプトスピラ症
■レプトスピラ症の症状
レプトスピラに感染すると、肝臓や腎臓に障害が起き、血尿のほかに黄疸(白目や歯茎が黄色くなる)、腎炎、元気消失、食欲不振、嘔吐などの症状が現れます。重症化すると死に至ることもある危険な病気です。
■レプトスピラ症の感染経路
感染経路は主に、レプトスピラに汚染された湿った土壌や、感染動物(主にネズミ)の尿に接触することです。
散歩中に穴を掘ったり、水たまりの水を飲んだり、過度ににおいを嗅いだりする習慣のある犬は感染リスクが高くなります。また、キャンプや川遊びなどアウトドアレジャーに犬を連れて行く際も注意が必要でしょう。
■レプトスピラ症の治療
レプトスピラ症にはワクチンがあり、感染リスクの高い地域や生活環境にある犬には接種がおすすめです。
また、感染が疑われる場合は抗生物質による治療が有効なため、早めに動物病院を受診することが大切です。
オス特有の生殖器系の病気
前立腺は膀胱の後ろで尿道を取り囲むように位置する器官で、精液の一部を作る働きをしています。
■前立腺肥大
前立腺肥大は、加齢により男性ホルモンのバランスが崩れることで前立腺が大きくなる病気です。
肥大した前立腺が尿道を圧迫し、血尿や排尿困難、便秘などの症状を引き起こします。去勢手術をしていない中高齢のオス犬によく見られ、重症化すると尿道が完全に塞がって尿が出なくなることもあります。
■前立腺炎
前立腺炎は、細菌感染により前立腺に炎症が起きる病気で、血尿のほかに白っぽい膿が混じった尿が出ることがあります。
発熱や元気消失、食欲不振などの全身症状を伴うこともあるでしょう。
■前立腺腫瘍
前立腺腫瘍はそれほど多くはありませんが、高齢犬に発生することがあり、そのほとんどが悪性です。
血尿のほかに排尿困難や便秘、後肢のふらつきなどが見られることがあります。
■予防法
これらの前立腺疾患の多くは、去勢手術によって予防できます。特に前立腺肥大は去勢手術により前立腺が縮小するため、治療としても有効です。
愛犬の将来的な健康を考えると、繁殖の予定がない場合は若いうちに去勢手術を検討することをおすすめします。
メス特有の生殖器系の病気
■膣炎
膣炎は、膣に細菌感染などによる炎症が起きる病気で、陰部からの分泌物が尿に混じって血尿のように見えることがあります。陰部をしきりに舐める、陰部の腫れなどの症状も見られるでしょう。
■子宮蓄膿症
子宮蓄膿症は、子宮内に膿が溜まる病気で、避妊手術をしていない中高齢のメスによく見られます。
血の混じった膿が陰部から排出され、これが尿と混ざって血尿と見間違えられることがあります。多飲多尿、嘔吐、元気消失、食欲不振などの症状も現れ、放置すると子宮が破裂して腹膜炎を起こし、命に関わる危険な病気です。
■子宮内膜炎
子宮内膜炎は、子宮の内膜に炎症が起きる病気で、発情期後に発症しやすい傾向があります。血尿のような症状のほか、発熱や食欲不振などが見られることもあります。
■予防法
これらの生殖器系の病気の多くは、避妊手術によって予防できます。
特に子宮蓄膿症は命に関わる病気で、治療も緊急手術が必要なため、繁殖の予定がない場合は早めの避妊手術を検討することが愛犬の健康を守ることにつながります。
犬の血尿と間違えられやすい症状|生理や血色素尿との違い
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ただし、飼い主による自己判断は危険であり、見分けに迷う場合は必ず獣医師に相談しましょう。
発情期出血
発情期出血の特徴として、陰部の腫れ、オス犬を引き寄せる行動、落ち着きがなくなるなどの行動の変化が同時に見られることが多いでしょう。
出血は通常7〜10日程度続きますが、個体差があり、2〜3週間続く場合もあります。
発情期出血自体は正常な生理現象であり、治療の必要はありません。
しかし、発情期以外での出血や、出血が長期間続く場合、異常に多量の出血がある場合は、子宮や膣の病気の可能性もあるため、獣医師の診察を受けることが大切です。
また、発情期かどうかの判断が難しい場合や、前回の発情期から期間が短すぎる、あるいは長すぎる場合も、ホルモン異常や生殖器の病気の可能性があるため、動物病院で相談することをおすすめします。
血色素尿
血尿とは異なっていて、尿の中に血球そのものは含まれていません。
■代表的な原因
血色素尿を引き起こす代表的な原因として、タマネギ中毒があります。
犬がタマネギ、ネギ、ニラ、ニンニクなどのネギ類を誤食すると、これらに含まれる成分が赤血球を破壊し、血色素尿が現れます。そのほかにも、バベシア症などの寄生虫感染症や、特定の薬物による中毒でも血色素尿が見られることがあります。
■特徴
血色素尿と血尿を見た目で区別することは困難ですが、血色素尿の場合は尿の色が均一で、赤ワインのような色をしていることが多いという特徴があります。
また、溶血が起きている場合は、貧血による粘膜の蒼白、黄疸、元気消失、食欲不振などの症状が見られることもあります。ただし、溶血の程度によっては無症状のこともあり、これらすべてが必ずしも同時に発現するわけではありません。
いずれにしても、尿が赤い場合は何らかの異常があることは間違いないため、自己判断せずに速やかに動物病院を受診することが重要です。
犬の血尿に気づいた時の対処法|元気でも様子見は危険?
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血尿は何らかの病気のサインであることが多く、早期に適切な治療を開始することが、愛犬の健康を守るために重要だからです。
動物病院を受診する際は、獣医師により正確な情報を伝えることで、適切な診断と治療につながります。以下の情報を事前にメモしておくとよいでしょう。
■いつから血尿が始まったか(気づいた日時)
■血尿の色(真っ赤、ピンク、オレンジ、茶褐色など)
■尿全体が赤いのか、一部に血が混じっているのか
■1日の排尿回数と普段との違い
■1回の排尿量(いつもより多い、少ない、ほとんど出ないなど)
■排尿時の様子(痛がる、時間がかかる、何度もトイレに行くなど)
■その他の症状(元気、食欲、嘔吐、下痢、発熱など)
■最近の環境の変化やストレス要因
■現在服用している薬やサプリメント
清潔な容器に入れ、採取後はなるべく早く(理想的には2時間以内に)持参しましょう。尿の採取が難しい場合は、トイレシートの血尿の部分や、排尿の様子をスマートフォンで撮影して記録しておくと、診断の参考になります。
受診を迷っている間に症状が悪化する可能性もあるため、血尿を確認したら、その日のうちに動物病院に連絡を取ることが大切です。
特に、尿がほとんど出ない、ぐったりしている、嘔吐を繰り返すなどの症状がある場合は、緊急性が高いため、すぐに受診しましょう。
犬の血尿の治療方法
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■治療方法
膀胱炎の場合は、原因となる細菌に効果的な抗生物質を2〜3週間投与します。同時に止血剤や消炎鎮痛剤が処方されることもあるでしょう。
尿石症では、結石の種類に応じた療法食による食事管理が中心となりますが、大きな結石や尿道閉塞の危険がある場合は外科手術が必要になることもあります。
腫瘍の場合は、抗がん剤治療、放射線治療、外科手術などが選択され、前立腺疾患では去勢手術やホルモン治療が行われます。
■治療期間
治療期間は、原因や重症度によって異なりますが、軽度の膀胱炎であれば1週間程度で改善することが多い一方、慢性化した膀胱炎では2週間以上の治療が必要になることもあります。
外科手術を行った場合は、数日間の入院と、抜糸までの10日〜2週間程度の通院が必要になるでしょう。
■治療費
治療費は、検査や治療内容により幅がありますが、一般的な膀胱炎の場合で1万円〜3万円程度、外科手術が必要な場合は10万円以上、膀胱腫瘍で尿路の移設が必要な場合は30万円以上かかることもあります。
犬の血尿の日常生活での予防法
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予防法を以下に紹介していきます。
十分な水分の接種、その環境づくり
常に新鮮な水を用意し、複数の場所に水飲み場を設置するなど、いつでも水が飲める状態にしておきましょう。あまり水を飲まない犬の場合は、水の温度を変えてみる、飲みやすい器に変える、ウェットフードを取り入れるなどの工夫が効果的です。
散歩でしか排泄しない犬の場合は、散歩の回数が十分かどうか見直す必要があります。尿を我慢すると膀胱内で細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎のリスクが高まるためです。
適切な食事管理
尿石症の既往歴がある犬には、獣医師の指導のもと療法食を継続することが再発予防につながります。
定期的な健康診断、去勢・避妊手術
尿検査は比較的簡単に行える検査であり、目に見えない血尿(潜血)や結晶の有無なども確認できるため、定期的にチェックすることが大切です。
繁殖の予定がない場合、将来の病気のリスクを減らすためにも、若いうちに手術を検討することをおすすめします。
血尿による犬の異常は早期発見・早期治療が重要
こうした場合の診療費が不安な場合は、ペット保険に加入しておくことも一つの選択肢です。血尿の原因となる病気の中には、長期的な治療や高額な手術が必要になるものもあるため、経済的な備えをしておくことで、必要な時に躊躇なく治療を受けさせることができるでしょう。
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監修者まさの森・動物病院 院長 安田賢
日本獣医生命科学大学卒業。
幼少期より動物に興味を持ち、さまざまな動物の飼育経験を持つ。
2012年11月、石川県金沢市にまさの森・動物病院を開業。
・獣医がん学会
・日本エキゾチックペット学会
・鳥類臨床研究会(鳥類臨床研究会認定医)
・爬虫類・両生類の臨床と病理のための研究会
●まさの森・動物病院
※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。