2015年10月16日 08時00分

知識ゼロでもわかる【経済用語】 「日銀短観」で何がわかる?

経済指標の一つである「日銀短観」は“自分の会社の景気”を知る調査? [拡大する]

経済指標の一つである「日銀短観」は“自分の会社の景気”を知る調査?

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡め、わかりやすい例えを交えて3つ解説する。

 今回は「日銀短観」を取り上げる。10月1日に発表された日銀短観(9月調査)は、大企業製造業の業況判断指数がプラス12となり、前回6月の調査結果(プラス15)から低下し、プラス13程度とされていた市場予想をわずかに下回ることになった。

 この日銀短観は最も重要な経済指標の一つで、株式市場や外国為替市場を大きく動かすことから、外国人投資家も“TANKAN”と呼んで注目している。だが、日銀短観の中身自体はとてもシンプルで、「あなたの会社の景気はどうですか?」というアンケート調査なのだ。

 正式名称は「全国企業短期経済観測調査」で、年4回(3月・6月・9月・12月)行われ、その翌月初旬(12月のみ同月の中旬)に公表される。調査方法の中心が業況(景気)調査で、「良い」「さほど良くない」「悪い」のどれか一つを選んでもらうというもの。居酒屋で飲んでいるビジネスマンに、「お宅の会社は景気いい?」と質問をして、「ウチはかなりいいよ!」とか、「わが社はダメだなぁ」といった答えを集めているようなものだ。

 とはいえ、日銀短観はスケールが違う。9月の調査で対象となったのは、1万1017社(製造業4479社、非製造業6538社)と極めて大規模な上に、回答率は98.5%と驚異的な高さを誇る。さらに、回答者は居酒屋で飲んでいる一般社員ではなく経営者。日銀短観は世界に類を見ない、大規模かつ信頼性の高い景気調査なのだ。

 集められた回答結果は、「業況判断指数(DI:Diffusion Index)」で示されるが、これも単純な方法で算出される。業況が「よい」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いただけ。業況判断指数がプラスなら好景気、マイナスなら不景気で、数字の大きさがその程度を示しているのだ。

 業況判断指数は「製造業」と「非製造業」、さらには規模別に「大企業」「中堅企業」「中小企業」にわけられて公表される。最も注目されるのが日本経済の中核を担う「大企業・製造業」についての業況判断指数で、9月の日銀短観ではプラス12だった。プラス15だった前回(6月)の調査から3ポイント低下、景気は良いものの、幾分勢いが鈍っていることを示すものとなったのだ。これに対して、「大企業・非製造業」の業況判断指数は、2ポイント上昇してプラス25で、製造業とは対照的に景気がなお拡大していることを示している。

 日銀短観は好数字なら株価が上昇するといった大きな影響を与えるが、まるで逆の反応を示すこともある。業況判断指数については、多くのシンクタンクが事前に予測値を公表、これによって「市場予想」が形成されている。たとえば、市場予想がプラス30だった場合、「景気は良くなる」と株価が上昇しそうに思われる。だが、実際の数字がプラス25と市場予想を下回った場合、本来は好景気を示すものであっても、「期待するほど良くなかった」と投資家の失望売りを招いて、株価が下落することがある。9月の調査結果は市場予想との間に大きな差はなかったが、大きくずれていれば、株式市場などが予想外の動きをした可能性もあるのだ。

 日銀短観は業況判断指数だけではなく、企業の設備投資見通しや想定している為替相場など、様々なデータが集められており、政府や日本銀行が政策判断を下す際にも重要な材料となっている。今後、業況判断指数がさらに低下するようであれば、株価もさらに下落し、政府も日銀も新たな景気対策を迫られることになるだろう。

 景気が「良い?」「悪い?」といいった単純なアンケートだが、日銀短観は日本経済の状況を探り、様々な投資判断に役立てることができる情報の宝庫。日銀のホームページ(http://www.boj.or.jp/statistics/tk/)で簡単に入手できるので、チェックしてみる価値は十分にある。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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