2015年09月14日 08時20分

知識ゼロでもわかる「経済用語」 『中国市場の暴落』から役立つ3ワード解説!

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「中国株の大暴落」をテーマに3つの経済用語を解説

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を最近の時事ネタに絡めて3つ解説する。

 今回は「中国の株式市場の暴落とは?」をテーマに、「キャピタル・ゲイン/ロス」、「インカム・ゲイン」、「リスク・オン/オフ」の3つの言葉を解説する。

 中国の株式市場の下落は、中国経済の先行き不安が広がったことから、投資家が株式を売却して資金を引き揚げたことが主な原因だ。そもそも株式投資とは「お金の出稼ぎ」と考えることができる。お金を銀行預金などの安全な場所で遊ばせておくのではなく、リスクはあるが大きな利益も期待できる株式市場へと、働きに出すのが株式投資なのだ。

 株式投資では「キャピタル・ゲイン」と「インカム・ゲイン」という2つの利益が期待できる。「キャピタル・ゲイン」は、購入した株式が値上がりして得られる利益。出稼ぎに行ったお金が「立身出世」するというわけだが、株価が値下がりして損失が出ることもある。この場合が「キャピタル・ロス」で、出稼ぎ先での仕事が上手く行かずに、お金がやせ細ってしまうことにほかならない。最悪の場合には、投資先が破たんするなどの「事故」に巻き込まれて、命を奪われてしまうことも起こり得るのだ。

 もう一つの利益である「インカム・ゲイン」が「配当」だ。株式を購入すると、企業の利益に応じて配当が支払われる。これは出稼ぎ先からの「仕送り」であり、配当のほかに、「株主優待」の形で、投資した企業の製品などが「お歳暮」のように送られてくる場合もある。配当は投資先の業績によって決まってくるが、最悪の場合でも配当ゼロ(無配)であるため、損失である「インカム・ロス」は存在しない。

 「キャピタル・ゲイン」と「インカム・ゲイン」を目指して、お金を株式市場に出稼ぎに行かせる株式投資だが、株価動向によっては「キャピタル・ロス」が生じることになるため、それなりの覚悟が必要となる。

 リスクを覚悟で株式投資をすることを「リスク・オン」、反対にリスクを嫌って、お金を安全な場所に戻すことを「リスク・オフ」と呼んでいる。「リスク・オフ」は、株価が値上がりしていて「キャピタル・ゲイン」が得られる場合のみならず、「キャピタル・ロス」のさらなる拡大を止めるための「損切り」をするためにも行われている。

 さて、中国の株式市場だ。急速な経済発展を成し遂げた中国では、大きなお金を手にした人たちが次々に「リスク・オン」を決断し、大量のお金が株式市場へ出稼ぎを始めた。これによって株価は急上昇し大きな「キャピタル・ゲイン」が生まれたことから、「私のお金も立身出世させるぞ」と、後に続く人が続出する。中国の経済発展と足並みをそろえる形で、株式市場も活況を見せてきたわけだが、ここへきて状況に変化が出てきた。

 中国経済に陰りが見え始めたことから、お金の出稼ぎ先としての株式市場の先行きにも不透明感が広がり、「リスク・オフ」の決断をする投資家が増えてきたのだ。出稼ぎを打ち切って、お金を故郷に戻そうとする動きが加速した結果、株価も大きく値を崩し、これがさらなる「リスク・オフ」を招くという負の連鎖を招いた。大人気の出稼ぎ先だった中国の株式市場の状況は一変し、株式を売ってお金を帰郷させようという動きが広がったことが、株価急落の要因だったのだったのである。

 こうした不安心理は中国以外の株式市場にも波及し、欧米や日本でも「リスク・オフ」の動きが拡大させた。世界第2位の経済大国である中国の景気減速は、多くの企業の業績を悪化させ、世界経済全体の景気にもマイナスに作用するに違いない。こうした思惑から、「リスク・オフ」の決断を下す投資家が急増、株式市場で出稼ぎしていたお金たちが、リスクの低い国債や銀行預金などへ「避難」を始めた。これが世界同時株安の原因となったのだ。

 中国の株式市場はバブルであり、その崩壊は始まったばかりだとの見方も広がっている。日本のバブル崩壊では、多くのお金が株式市場という出稼ぎ先から戻れなくなり、悲惨な末路をたどったことは記憶に新しい。アベノミクスのおかげで活況を見せてきた日本だが、「かつての悪夢は二度と見たくない」という「リスク・オフ」の動きから、お金が大慌てで帰郷し始めているのである。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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