知識ゼロでもわかる【経済用語】 読んでトクする「為替」ニュースの真実(前編)

今回は「外国為替市場」「外国為替相場」「気配値」の3用語を簡単解説! [拡大する]

今回は「外国為替市場」「外国為替相場」「気配値」の3用語を簡単解説!

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡めて3つ解説する。

 GW直前に広がった急激な円高は、株価の急落を引き起こし、日本経済の懸念材料となっている。メディアでも頻繁に伝えられる外国為替市場の動向だが、「円高なのに、なぜ数字が小さくなるの?」といった素朴な疑問に、明確に答えることができる人は意外に少ない。

 そこで今回は、「外国為替市場」や「外国為替相場」「気配値」について、今さら聞けない基本的な知識を解説しいこう。

■外国為替市場は24時間営業の「両替所」

 外国為替市場は巨大な「両替所」だ。日本の自動車メーカーがアメリカから受け取ったドル建ての輸出代金を円に替える、石油会社が原油の購入代金を支払うために円からドルに替える、といった輸出輸入の取引やアメリカの株式を購入するので、円からドルに替える資本取引、さらには旅行者の両替なども集約されて、銀行を中心とした金融機関の為替トレーダーたちによって取引されている。取引単位はドルと円の場合100万ドル(これをディーラーたちは“1dollar”、日本人は“1本”と呼ぶ)で、1000万ドルが取引の標準となっている。

 両替所が世界中にあるように、外国為替市場も世界の金融拠点に存在し、国境を越えて相互に取引が行われている。東京市場のトレーダーたちが深夜にニューヨーク市場で取引をしたり、東京市場にニューヨークやロンドンから売買注文が入ったりと、「24時間営業の両替所」となっているのが外国為替市場なのだ。

 両替所では米ドル・現金の両替レートが、「買取レート=106円」、「売却レート=112円」などと表示されているが、外国為替市場でも同じだ。

 円高を伝えるニュースを見てみよう。「5月3日の海外の外国為替市場で、円相場は1ドル=105円台半ばまで円高が進んだ。ニューヨーク外為市場の3日の円相場は午前11時半現在、1ドル=106円20〜30銭で推移している」。

 ここで登場する「1ドル=106円20〜30銭」が、外国為替市場におけるドル・円取引の気配値で、106円20銭が買取レート、106円30銭が売却レートとなる。為替トレーダーたちが出している注文の中で、最も高い買取レートと最も安い売却レートを選んだもので、両替所の表示と同じものなのである。

 両替所とは異なり、外国為替市場における買取レートと売却レートは目まぐるしく動いている。1ドル=106円20〜30銭の気配値の際に、トレーダーが「もう少し安くてもいいからドルを売りたい」と考えた場合、例えば売却レートを5銭下げて106円25銭にすることになる。この場合、気配値は106円20〜25銭となるが、これを見たトレーダーが「もっとドル安になるかもしれないな…」と判断して、買取レートを10銭下げると、気配値は106円10〜25銭となる。

 ここで106円10銭の買い注文が成立すると、次の買取レート(例えば106円05銭)が出され、気配値は106円05〜25銭となる。すると今度は「106円25銭では売れそうにない」と、売り注文を出していた為替トレーダーが、売却レートを106円15銭へと切り下げたとすると、新しい気配値は106円05〜15銭と、さらに円高・ドル安になって行く。テレビの画面などで表示される外国為替市場の表示は、こうしたトレーダーたちの活発な売買の結果を反映して、目まぐるしく変動しているのである。

■外国為替相場の「主語」は何か?

 さて、先ほどの外国為替相場の動向を伝える「5月3日の海外の外国為替市場で、円相場は1ドル=105円台半ばまで円高が進んだ」というニュースだが、この文章には「ごまかし」がある。「円相場は…」としておきながら「1ドル=105円台半ば……」と、主語がすり替えられているのだ。

 外国為替相場は、「円とドル」、「ドルとユーロ」など、2つの通貨の交換比率だ。したがって「円相場」という単体のものは存在せず、「円の対ドル相場」、「円の対ユーロ相場」などと、必ず相手通貨が存在する。

 表示方法はドルを主語にした「1ドル=105円」でも、円を主語にした「1円=0.0095ドル」でもよいが、ドルと円の取引はドルが主語になっている。したがって、先ほどのニュースは、「外国為替市場で、ドル相場は対円で1ドル=105円台半ばまでドル安が進んだ…」とするべきなのだが、これではわかりにくい。そこでメディアは「円相場」とした上で、「1ドル=105円……」など強引に主語を入れ替えているのだ。だが、これがしばしば混乱を引き起こす。

 メディアで伝えられているのは円相場ではなくドル相場であり、110円から105円になれば「ドル安」なので数字が小さくなり、115円になれば「ドル高」なので数字が大きくなるのは当然だ。

 だが、「円相場」を主語にしたような表現をすることから、「円高なのに数字が小さくなる」という、違和感を与えてしまっているわけだ。

 また、為替トレーダーたちの頭の中もドルが主語になっていることから、彼らが「上がる」といえば「ドルが上がる」(円が下がる)ことであり、「下がる」と言えば「ドルが下がる」(円が上がる)ことを意味している。このため、円高が進んだことについて、為替トレーダーにインタビューすると「まだまだ下がりそうです」などと発言するため、混乱を招いてしまうのだ。為替トレーダーはドルを主語にして「まだまだ下がりそうです」と言っているのであって、この点でも正しい認識を持っておく必要があるのだ。

■外国為替相場を決める「綱引き」

 外国為替相場を決めているのは、通貨に対する需要と供給だ。これをイメージするには、運動会などでお馴染みの「綱引き」をイメージするとよい。ドルを必要としている「ドル・チーム」と円を必要としている「円・チーム」が一本の綱を引き合う。

 綱の中央に付けられた目印が外国為替相場で、105円、106円などと外国為替相場の目盛りの上を動いていて、「ドル・チーム」の力が強ければ、綱はじりじりとドルの側に引き寄せされ、目印となっている外国為替相場も「ドル高・円安」となる。反対に「円・チーム」の力がより強くなれば、綱は円の側に引き寄せられて「円高・ドル安」になるというわけだ。

 その綱を引いているのは、外国為替市場の参加者。「円・チーム」の代表選手が輸出業者で、輸出が増えれば「ドル安・円高」となる。一方の「ドル・チーム」の中核を担うのは輸入業者で、原油などの輸入が増えれば「ドル・チーム」の力が高まって「ドル高・円安」になるのだ。

 とはいえ、綱を引いている外国為替市場の参加者は、ほかにも大勢いる。「投機筋」と呼ばれる屈強な面々やより安全な場所を求めて綱引きに参加してくる投資家もいる。これらがしばしば、綱引きの状況を大きく変化させ、一気に「円・チーム」の力が急に強くなり、雪崩を打つように「ドル・チーム」引きずられて極端な円高・ドル安になったり、反対に「ドル・チーム」の力が増強されて、綱が大きくドル側に引き込まれて「ドル高・円安」になったりしている。

 GW直前の大幅な円高・ドル安は、ある理由によって「円・チーム」の綱を引く力が一気に強くなった結果だった。いったい何が起こったのか? 誰が「参戦」した結果、「円・チーム」の力が増強されたのか? 次回はこうした点について、さらに詳しく解説していこう。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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