猫の便秘の特徴や原因は?飼い主ができる対処法を紹介

猫の便秘の特徴や原因は?飼い主ができる対処法を紹介

 猫の便秘はさまざまな原因で起こります。あまり心配する必要がない場合もあれば、深刻な病気が潜んでいる場合もあります。

 猫の便秘はどのような原因で起こるのか、そのとき飼い主はどのように対処すべきなのか、詳しく解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 猫の便秘の特徴と見分け方
    1. 便の硬さと排便頻度の変化
    2. 排便時のいきみや痛みの兆候
    3. 食欲不振や活動量の低下
  2. 猫の便秘の原因
    1. 食事の問題
    2. ストレスや環境の変化
    3. 加齢や運動不足
    4. 内臓疾患
    5. 基礎疾患
    6. 異物や毛玉の飲み込み
  3. 猫の便秘に対する飼い主ができる対処法
    1. 食事内容の見直し
    2. ストレス軽減のための環境改善
    3. 獣医師への相談
  4. 猫の便秘が続くようなら、ためらわずに動物病院へ

猫の便秘の特徴と見分け方

 猫の健康状態を測る上で、食欲や便の状態はとても重要です。しかし、猫が便秘かどうかを見分けるのは、簡単ではありません。排便の頻度が少ないといっても個体差があり、年齢や生活環境、食事の内容や運動量などによって、大きく変わります。単純に「排便は1日何回が標準的」と決めることはできません。

 まずは、猫が便秘かどうか判断する目安となる基準をご紹介します。

便の硬さと排便頻度の変化

 猫が便秘かどうかの判断は、便の硬さと排便頻度から確認できる場合があります。便秘になったときの特徴のひとつは、腸内で水分がより多く吸収されることから、便が硬くなることです。また、大腸に便が長くとどまるため、小さなコロコロとした便が出ます。

 頻度については、健康な状態での猫の排便リズムを把握しておき、それを基準としてみてください。例えば、「うちの子は1日2回が標準」なのであれば、丸一日排便がなければ便秘を疑ってみましょう。

排便時のいきみや痛みの兆候

 排便時にいきんでいるのに、なかなか排便できない場合、腸に大量の便が溜まり、一度に排出できない状態になっている可能性があります。排便時に鳴き声を上げていたら、便が詰まって痛みを感じているからかもしれません。

 こうした状態になると、トイレからなかなか出てこなかったり、痛みを恐れてトイレに行きたがらなかったりするようになります。

食欲不振や活動量の低下

 猫も人間と同じで、頑固な便秘に悩まされているときは、体が重くなって動きが鈍くなったりします。また、嘔吐や食欲不振が見られることもあるでしょう。

 これらの症状は便秘にのみ見られるわけではありませんが、何らかの病気を抱えている可能性は高いため、動物病院を受診することをお勧めします。

猫の便秘の原因

猫の便秘の原因

 猫が便秘を起こす原因は、生活習慣に関わるものから病的なものまでいくつもあります。あまり心配しなくても大丈夫なものもあれば、重篤な病気の前兆である場合もあります。

 いずれも、猫の生活環境を整えるとともに、気になるようなら動物病院を受診し、必要に応じた治療を受けることが肝心です。

食事の問題

 猫は元々、砂漠地域が原産で、少ない水分量でも生きていける体質といわれます。ですが、現在の猫は、そうはいきません。適度な水分をとらないと便が硬くなり、大腸が詰まりやすくなります

 また、食事の繊維質が不足すると腸の運動が弱まり、便を排出しにくくなって便秘が起こりやすくなります

ストレスや環境の変化

 猫が暮らしている環境の変化や、それによるストレスも便秘の原因になります

 特に、猫はトイレに関してかなり神経質で、トイレ環境によって便秘になることがあります。猫によっては、排便の後にトイレ砂の汚れた部分のみ片付けることでは満足しなかったり、洗浄に使う洗剤の香りが気になってトイレを使わなかったりする場合も。猫のトイレについては、大きさや形、設置場所、数、トイレ砂の種類など、あらゆることに気を配ってください。

 また、引越しやほかのペットとの不仲、騒音や振動などといったストレスによって自律神経のバランスが崩れると、腸の働きが弱まって便秘になることがあります。

加齢や運動不足

 猫は高齢になると、だんだん動きが鈍くなり、慢性的な運動不足になります。筋力も衰えてくるため、便秘しやすい体質になっていきます。

 ですが、適度な運動は健康の基本です。激しい運動は無理だとしても、日常のコミュニケーションの中で、体を動かす機会を作ってあげましょう。

内臓疾患

 猫は消化器系の内臓疾患によって、便秘を起こすことがあります。例えば、大腸や直腸に腫瘍やポリープができていると、スムーズな排便がしにくくなり、便秘が起きるのです。

 また、排便に痛みを感じるとトイレに行きたがらなくなり、ますます便秘を助長してしまうケースがあります。

基礎疾患

 甲状腺機能亢進症慢性腎臓病など、脱水を起こしやすい基礎疾患があると便の水分が少なくなり、便が硬くなって便秘しやすくなります。そのほかに、骨盤や四肢の骨折脊髄疾患椎間板疾患によって、排便時に痛みを感じ、便意を我慢して便秘になることもあるようです。

 また、正確な因果関係はわかっていませんが、肥満も便秘の原因のひとつとされています。

異物や毛玉の飲み込み

 おもちゃで遊んでいるうちに小さな部品が外れ、飲み込んでしまうことで便が詰まることがあります。若く元気な猫では起こりやすいトラブルですから、おもちゃが壊れかけていないか、日頃からチェックしておきましょう。

 また、毛繕いをして飲み込んだ体毛がおなかの中で毛玉になり、便秘を起こすこともあります。最悪の場合、腸閉塞になることもありますから、毛足の長い猫は特に注意が必要です。

猫の便秘に対する飼い主ができる対処法

猫の便秘に対する飼い主ができる対処法

 さまざまな原因で起こる猫の便秘。ここでは、飼い主にできる予防法と、猫が便秘になってしまったときにどう対処すればいいのかご紹介します。

食事内容の見直し

 便秘の予防と対処には、まず食事です。水分をたっぷりとれるように、常にきれいな飲み水を用意しておきます。それでも改善しない場合は、ドライフードにウェットフードを混ぜたり、スープを加えたりして食事の水分量を増やします。

 ただ、猫は食事の好みが激しく、気に入らないと食べないことも多いもの。いきなり切り換えるのではなく、様子を見ながら少しずつ変えていくようにしてください。

 食物繊維が多く含まれるフードに換える方法もありますが、便秘の原因によっては逆効果になる場合もあります。心配な場合は獣医師に相談してから変更したほうがいいでしょう。

ストレス軽減のための環境改善

 便秘改善には、ストレスを軽減することが役に立ちます。適度な運動ができるよう、キャットタワーを作ったり、猫が安心して休める場所を用意したりして、環境改善に努めましょう。

 また、スキンシップを好む猫なら、飼い主がおなかを優しくマッサージすることで、ストレス解消・リラックス効果に加えて、腸の動きを促すこともできます。

獣医師への相談

 何日も便秘が続いていたり、排便時に痛そうにしている場合は、重篤な病気が隠れている可能性があります。その場合は速やかに動物病院を受診してください

 飼い主が肛門を刺激したり浣腸を使ったりするのは、猫を傷つけることにもなりかねませんから、獣医師の手に委ねましょう。

 受診の際には、それまでの経過をメモにまとめておけば、獣医師の診断・治療にも役立ちます。

猫の便秘が続くようなら、ためらわずに動物病院へ

 便秘は比較的ありふれたものですから、それだけで心配する飼い主は多くないかもしれません。ですが、何らかの病気が原因になっている場合も少なくありませんし、放置しておくと猫の慢性的なストレスにもつながります。

 日頃の観察を欠かさず、便秘が続いていると感じたら、早めに動物病院を受診してください。もし、大きな病気が発覚した場合、入院や手術が必要になることもあります。経済的な負担を軽減し、より安心して愛猫と暮らすためには、ペット保険へ加入するのもおすすめです。

 ただし、多くのペット保険では、病気の診断を受けた後の加入を制限しています。保険会社が提供するプランにはさまざまものがありますので、愛猫が若くて健康的であっても、まだ早いと思わずに比較検討してみるといいかもしれません。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
 ●ガイア動物病院(外部リンク)

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