愛犬が血便をしたらどうする?原因と対処法を解説

愛犬が血便をしたらどうする?原因と対処法を解説

 愛犬が突然、血便をした…。飼い主としては心配になってしまいますが、血便には必ず原因があります。冷静に状況を判断し、対処しなければなりません。

 この記事では、犬が血便をした場合に考えられる原因とその対処法、さらに血便を予防する方法についてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ガイア動物病院 院長 松田 唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田 唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の血便の原因
    1. 食べ物が原因
    2. ストレスが原因
    3. 病気が原因
  2. 血便を伴う犬の病気
    1. パルボウイルス感染症
    2. 胃腸炎
    3. 血液凝固異常
    4. ポリープや腫瘍
  3. 犬の血便への対処法
    1. まずは様子を見る
    2. 食事内容を見直す
    3. 獣医師に相談する
  4. 犬の血便の予防法
    1. 食事内容に気を付け、余計なストレスを与えない
    2. 定期的な健康チェックを行う
  5. 愛犬の発するサインである血便を見逃さず、適切な対処を

犬の血便の原因

 犬の血便は、どこからの出血なのかを考えることが重要です。エコー検査やレントゲン検査、血液検査などを行いながら原因を探しますが、便から得られる情報をもとに考えていくこともできます。

 血便の多くは、消化器系に何らかの異常があることを指しており、一般的に血液は消化管を通過するうちに黒色に変化していくため、鮮やかな赤い色の場合は肛門から近い直腸や結腸、あるいは肛門の傷が疑われます。黒い色の場合は肛門から遠い食道や胃、十二指腸に問題がある、あるいは口腔内の出血によって黒い血便となって現れることも考えられます。

 また、下痢の原因部位と同じであることも多く、下痢の原因を突き止めていくとはっきりすることがあります。

 まずは原因を突き止め、それに合わせて対処することが大切です。犬が血便をした場合に考えられる原因をご紹介します。

食べ物が原因

 特定の食べ物によって犬がアレルギーを起こし、血便が見られることがあります。またフードを変えたときや、犬が食べすぎたり、刺激の強い物を食べたりしたときなどにも、消化不良や胃腸の炎症を起こして血便になることがあります。

 また、食べ物以外に誤飲誤食にも注意が必要です。固い物や尖った物を飲み込んで胃や腸を傷つけたり、犬にとって中毒性のある物などを食べたりして、血便につながることもあります。

ストレスが原因

 犬がストレスを感じることで胃腸の炎症を起こし、血便をすることがあります。環境の変化に弱い犬の場合は、引越しやお出掛け、家族の不在などでも、ストレスに感じて下痢や血便を起こすこともあります。

 思いあたることがあれば、できるだけストレス源を取り除いてあげましょう。

病気が原因

 何らかの病気が原因で、血便が出ることがあります。多くは消化器官が炎症を起こし、出血することで起こりますが、消化器官に関係のなさそうな熱中症などでも、血便の症状が出る場合があります

 飼い主が血便から病気を特定するのは難しいので、この場合は動物病院を受診することが望ましいでしょう。

 病気を原因とする血便は、ほかにも症状が見られることがほとんどです。嘔吐や下痢、食欲不振など、血便のほかにも症状があれば脱水や貧血につながることもあり、命に関わる可能性もあるため、すぐに獣医師に相談してください。特に、長期間にわたる血便は腫瘍の可能性もあり、様子を見続けることはおすすめできません。

血便を伴う犬の病気

血便を伴う犬の病気

 血便を症状とする犬の病気はいくつかあります。ここでは、そのうちの代表的なものをご紹介しましょう。

パルボウイルス感染症

 パルボウイルス感染症とは、パルボウイルスに感染することで起こる病気です。感染すると元気がなくなり、食欲不振や激しい嘔吐、トマトジュースのような下痢を伴う血便が見られるようになります。

 パルボウイルスは感染しても発病する確率は低めですが、発病した後の死亡率は高いです。有効な治療法が確立されておらず、発症してしまえば対症療法や補助療法を行うしかありません。

 予防のためのワクチンがあり、すべての犬に接種が推奨されています。特に子犬や高齢犬でリスクが高い疾患のため、獣医師と相談のうえ、早めに接種しておくと安心でしょう。

胃腸炎

 食物アレルギーや細菌感染、膵炎などを要因として胃腸炎を起こし、その症状として犬が血便や下痢をすることもあります。軽度の場合は消化に良い食事などで回復することもありますが、出血性胃腸炎免疫異常によるIBD(炎症性腸疾患)などであれば、早めの対処が必要です。

 前述のパルボウイルスを含め、ウイルスや細菌などが原因の場合は、感染が広がらないようにすることが重要です。犬の血便はすみやかに片付け、掃除や消毒を行ってください。特に、ほかにもペットを飼っている場合は要注意です。

血液凝固異常

 血液凝固異常は、血液を固める働きが弱まり出血が止まりにくくなる病気です。何らかの原因で消化器官の粘膜が傷ついても出血が止まらず、それが血便となって現れることがあります。

 血液凝固異常は先天性の場合もありますが、ほかの病気や抗凝固剤を使用した殺虫剤の中毒で引き起こされることもあります。
 
 血液凝固異常では、血便のほか体の表面に点状や斑状の内出血が見られることも。放置すると重度の貧血を起こし、命に関わることもありますから、すぐに動物病院を受診するようにしてください。

ポリープや腫瘍

 毎回ではなく、時間をおいて断続的に血便が出るという場合は、ポリープ腫瘍によって慢性的に出血しているかもしれません。

 特に炎症性ポリープは中高齢のミニチュアダックスフントによくあるとされますが、原因はまだ特定されていません。

 ポリープや腫瘍には、良性で特に処置が必要ないものもありますが、悪性の場合は放置すると重大な病気につながることもあるため、早めに動物病院を受診することが望ましいです。

 ポリープや腫瘍が邪魔して便が出にくくなり、排便姿勢をとるのに便が少ししか出ない、またはまったく出ない、下痢をするなどの症状も見られます。

犬の血便への対処法

犬の血便への対処法

 愛犬が血便をしていたら、飼い主はどう対処すべきでしょうか。感染性の血便などの場合は、すみやかに対処することが求められるため、冷静な判断が必要です。

 ここでは、犬が血便をした場合の飼い主の対処について解説します。

まずは様子を見る

 便に少量の血がついている程度で、嘔吐や下痢などの異常が特に見られず犬が元気な場合は、一時的な血便かもしれませんので様子を見てもいい可能性があります。血便が続かないか、ほかに症状はないか犬の様子を観察してください。

 ただし、その後に悪化することも考えられますから、できれば血便は捨てずに保管することが望ましいです。血便の色や形状などから、獣医師が診察の助けとしたり、検査を行ったりすることもあります。感染の可能性を考え、密封できる容器などに入れましょう。難しい場合はスマートフォンなどで撮影し、犬がどういった様子かもメモしておくことをおすすめします。

食事内容を見直す

 犬が元気だったとしても、血便は消化器官の何らかの異常で起きることが多いものなので、食事を見直してみてください。フードを変えたばかりで血便が出た場合は、消化不良やアレルギーの可能性もあるため、一度これまで食べていたフードに戻したほうがいいかもしれません。 

 食事の量を減らす、ドライフードはお湯でふやかして与える、消化の悪いおやつは避けるといった対処で、血便が改善される場合もあります。フードを変える場合は、これまでのフードに新しいフードを混ぜ、少しずつ割合を増やして、犬の様子を見ながら変えましょう。

獣医師に相談する

 血便が何日も続く、1日に何度も血便をする、出血が多いなどの場合は獣医師に相談してください。血便をしてすぐは犬が元気でも、時間が経って悪化することも考えられます。出血自体、健康なときはあまり起こることではありませんから、病気のサインである可能性は見過ごせません。特に黒い血便の場合はすぐに獣医師へ相談しましょう。

 血便以外にも、嘔吐や食欲不振、下痢、元気がないなどの症状がある場合も、動物病院の受診が望ましいです。 

犬の血便の予防法

 犬の血便の原因は多岐にわたり、完全に予防することはできません。しかし、血便の多くは、消化器官の異常によって起こるものです。消化器官に負担をかけない生活環境を整えることで、血便を防ぐことはできるかもしれません。ここからは予防法について解説します。

食事内容に気を付け、余計なストレスを与えない

 消化しやすく栄養バランスのとれた食事は、犬の健康的な体の基本です。犬の年令によって必要な栄養は変わりますから、子犬用・成犬用・高齢犬用と、それぞれのライフステージに合ったフードを選ぶようにしましょう。もちろん、タマネギやチョコレートなど犬に中毒性のある食べ物は与えず、犬が誤って食べてしまうこともないよう注意が必要です。

 また、いらぬストレスを与えないように、適度な運動と休息、飼い主との十分なコミュニケーションも大切です。 

定期的な健康チェックを行う

 定期的に健康チェックを行うことで、もし犬が病気になったとしても、早期発見・早期治療が可能です。定期的に動物病院で便検査など健康診断を受けるほか、日常生活の中で愛犬の状態を観察することをおすすめします。

 犬の健康状態は、全身の状態のほか、目、耳、鼻、口、お尻、陰部周辺などにも現れます。汚れやにおいがないか、さわると嫌がるところはないか、スキンシップをとりながらチェックしてください。普段からチェックしておくと、いつもと違う場合にすぐ気づくことが可能になり、獣医師に相談ができます。

愛犬の発するサインである血便を見逃さず、適切な対処を

 犬は不調を感じても言葉で伝えることができませんから、飼い主が注意深く様子を観察し、体調を読み取ることが大切です。

 中でも便の状態は、愛犬の健康状態を推し量る重要な要素です。血便は何らかの異常がある証拠ですから、犬が元気でも注意深く様子を見守りましょう。もし血便以外にも症状があれば、早めに動物病院を受診することをおすすめします。

 どのような検査や治療が必要かは、実際に動物病院に行ってみないとわかりません。診療費が不安な場合は、ペット保険に加入しておくことをおすすめします。

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ガイア動物病院 院長 松田 唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田 唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
 ●ガイア動物病院 (外部リンク)

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