知識ゼロでもわかる【経済用語】 読んでトクする「為替」ニュースの真実(後編)

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読んでトクする“為替”の真実を、3つの経済用語に絡めて解説!

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡めて3つ解説する。

 GW直前に広がった急激な円高は、株価の急落を引き起こし、日本経済の懸念材料となった。日本政府による市場介入の可能性も取り沙汰されるなか、一時は105円台まで円高・ドル安が進んだ。だが、その後は落ち着きを取り戻し、5月20日には110円台に戻った。

 では、外国為替相場はどのような要因で決められ、市場介入はどのように行われるのか? 今回は、前編に引き続き、「為替ニュースの真実」に触れながら、外国為替市場の基本的な仕組みについて、「市場介入」「ファンダメンタルズ」「投機筋」の用語を交えて説明する。 

■ファンダメンタルズは外国為替相場を決めるのか?
 外国為替相場を決めているのは、通貨に対する需要であり、運動会などでお馴染みの「綱引き」をイメージすると理解しやすい。ドルを必要としている「ドル・チーム」と、円を必要としている「円・チーム」が綱を引き合う。「ドル・チーム」の力が強ければ、綱はドルの側に引き寄せされ、綱の中央に付けられている「目印」である外国為替相場も「ドル高・円安」となる。反対に「円・チーム」の力がより強くなれば、綱は円の側に引き寄せられて「円高・ドル安」になるという単純な仕組みだ。

 外国為替市場で綱引きをしている2つのチームの力を示すとされているのが「ファンダメンタルズ」だ。ファンダメンタルズは経済成長率や物価指数、経常収支や財政赤字、さらには失業率などの「経済の基礎的条件」のこと。アメリカの経済成長率が高まれば、「ドル・チーム」の力が強くなって「ドル高・円安」となり、日本の失業率が改善すれば「ドル安・円高」となる。また、アメリカの経常収支の赤字が増えたり、失業率が悪化したりすれば、「ドル・チーム」の力が低下して「ドル安・円高」になり、日本の財政赤字が拡大すれば「ドル高・円安」になるというわけだ。

 ファンダメンタルズの相対的な変化が、綱引きの戦況を左右し、外国為替相場を動かして行くと考えられているのだが、実際にはこの通りにならないことも少なくない。

 その典型が東日本大震災の際の外国為替相場の動きだろう。未曽有の大災害で日本のファンダメンタルズは大きく悪化したにもかかわらず、円相場は急上昇して史上最高値の85円台を付けた。阪神・淡路大震災の際にも円高が進むなど、ファンダメンタルズに反する動きがみられる一方で、アメリカの同時多発テロの際にはドル相場が急落するなど、ファンダメンタルズに即した動きをすることもあるのだ。

 実はファンダメンタルズは外国為替相場を決める重要な要素であっても、唯一の要素ではない。外国為替相場に大きな影響を与えているのが「投機筋」だ。彼らはファンダメンタルズなどお構いなしに、巨額の取引を行って外国為替相場を大きく動かしているのである。

■投機筋はブルドーザー
 投機筋は外国為替市場での取引を通じて、利益を上げようとしている。その行動原理は、「高値で売って、安値で買い戻す」、「安値で買って、高値で売り抜ける」という単純なもので、輸出や輸入などの実態のあるビジネスを伴わないことから、自由に売買ができる。

 一口に投機筋と言ってもその実態は様々だ。ヘッジファンドを始めとした海外の資産運用会社が代表的な存在だが、日本の銀行や証券会社も投機的な取引をしているし、FXをしている個人も投機筋に含まれる。投機筋に対して、輸出や輸入など実際のビジネスの裏付けを持った取引は「実需筋」と呼ばれ、こちらがファンダメンタルズに従う動きをしている。

 外国為替市場で行われている綱引きでは、投機筋と実需筋が混じっているのだが、投機筋の腕力は桁外れに強い。少額の資金で巨額の取引を可能とするレバレッジ(てこの原理)を効かせたデリバティブなどの強力な道具を持っていいて、その力はブルドーザー並み。彼らはファンアメンタルズに従っている実需筋の動きをねじ伏せて、外国為替相場を思いのままに動かしているのだ。

 GW直前に、105円台までドル安・円高の動きが加速したのは、投機筋が巨額のドル売り・円買いを仕掛けたためだった。「日銀が追加の金融緩和をしなかった」というのがその理由とされているが、ファンダメンタルズから見れば、上昇基調にあるアメリカ経済に対して、日本経済の回復力は弱いなど「ドル・チーム」の方が「円・チーム」より優位にあることは明らかで、むしろ「ドル高・円安」になるはずだった。だが、ファンダメンタルズなど無視する投機筋は、「円・チーム」に飛び入り参加して綱を引き始め、その圧倒的な腕力で外国為替相場を大きく「円高・ドル安」に動かしてしまったのである。

■市場介入は審判の「参戦」
 投機筋の行動で、ファンダメンタルズを無視したドル安・円高になったことを苛立ちの目で見ているのが、外国為替市場の動向を監視している通貨当局だった。通貨当局は外国為替市場を監視している「審判」で、日本の場合は財務省がその責務を担っている。外国為替相場は経済活動に大きな影響を与える重要な要素であり、ファンダメンタルズに反した動きが見られる場合には、通貨当局はこれを是正しようとする。その中で最も直接的な手法が市場介入だ。

 投機筋が「円・チーム」に加わったことで、ファンダメンタルズを無視した円高・ドル安が進んだ場合、通貨当局は自らドル買い・円売りの取引を行う。銀行のディーリングルームなどに「105円で1億ドル買え!」と言った注文を入れるのだ。ドル・売りが優勢となり、劣勢に立たされている「ドル・チーム」を応援するために、通貨当局が自ら綱を引いて引き戻そうとする。これこそが市場介入なのである。

 105円台まで進んだ円高を受けて麻生太郎財務相は、「明らかに一方に偏った投機的な動きで、極めて憂慮している」、「当然、為替介入の用意がある」など繰り返し述べた。審判である財務省が腕まくりをして、「やるぞ…」と脅しをかけることで、投機筋をけん制するもので、「口先介入」と呼ばれている。

 今回の円高局面では、実際に市場介入が行われることはなかった。それでも円高が終息したのは、投機筋が当面の目標を達成して綱引きから手を引いてしまったからだ。110円近辺からドル売り・円買いを仕掛けていた投機筋は、5円近くも為替差益を稼いたと考えられ、「もう十分稼いだ…」と、綱から手を放して「円・チーム」から離れてしまったのだ。ブルドーザーのような投機筋がいなくなったことで「円・チーム」の戦力は低下、「ドル・チーム」が勢力を挽回して円安・ドル高に戻ったというわけだ。

 もし、投機筋と市場介入が正面からぶつかった場合、どうなるのか…。通貨当局の腕力もかなり強いが、投機筋を抑えきれないことが多い。「市場介入するぞ!」と脅しても、投機筋は「返り討ちにしてやる」とひるむ事はなく、外国為替相場は彼らの思いのままに操られているのが現実なのだ。

 実需筋と投機筋が入り乱れ、日々激しい取引が行われている外国為替市場。通貨の綱引き、通貨当局という審判の動きと相まって、その動向予測するのは極めて難しいのである。

■経済用語
記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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