2017年04月12日 09時40分

企業年金制度は転換期を迎えている? 「確定拠出年金」が会社員に必要な理由

確定拠出年金が会社員に必要な理由とは? マネーライターが解説する [拡大する]

確定拠出年金が会社員に必要な理由とは? マネーライターが解説する

 会社員の年金制度の一部に「企業年金」があるが、これがあれば、定年後も余裕を持って生活ができると思い込んでいないだろうか。今、企業年金は転換期を迎えている。かつて、社員の手厚い保護をうたっていた制度は、経済を取り巻く状況の変化でゆがみが生じ始めているからだ。企業年金を過信せず、自分自身で定年後の備えをするが必要がある。

■従来型の企業年金に潜む危うさ

 今までの企業年金制度は、退職後の年金給付が約束されている「確定給付型」が主流だった。確定給付型は、企業が社員のために積立をして、勤務年数によって支払う年金額を最初から約束する制度になっている点が特徴だ。

 詳しい仕組みとしては、企業年金基金が、公的年金である老齢厚生年金の一部を国に代わって支給、さらに企業年金を上乗せする制度で、従業員の手厚い老後資産形成を目的として設立されたもの。しかし、運用難から採算割れする基金が相次ぎ、解散で基金数は激減し、現在は新設が禁止となっているほどだ。資金不足で解散した場合、厚生年金部分は保証されるが、厚生年金に上乗せされるはずだった基金独自の年金は支給されない。

 上乗せされる企業年金部分は、確定給付型となっており、あらかじめ決められた予定利率で企業が積立・運用する。予定利率が高いほど企業が積み立てるお金は少なくて済む。しかし、好景気下で設定された高い予定利率が実情に伴わず、利率が大きく下回る企業が続出した。積み立ての不足分は企業が補填しなくてはならず、経営を逼迫する事態となったのだ。2010年に起きたJALの年金問題が代表的だ。経営再建がうまくいかず、企業年金債務が膨れ上がり、現役社員で5割、OBで3割の企業年金が減額された。この一件は確定給付型企業年金が抱える問題点を浮き彫りにした。

■退職金や確定給付年金は受け取るまで会社のお金

 年金の減額には社員の権利を守るための法律があり、労働組合などの合意と厚生労働省の認可が必要と定められている。しかし、先述のJALの一件では、約束されているはずだった年金受取額が覆されるということが実際に起こってしまった。

 なぜこんなことが起こり得るのかというと、「確定給付型」の企業年金は、受け取るまでは会社のお金だからだ。もし勤め先が倒産してしまったら、一切受け取りできなくなることだってあり得る。退職後の収入源を企業に頼りきりにして何も対策を講じないで老後を迎えるのは、あまりにもリスキーな選択ということがわかるだろう。

■企業型確定拠出年金を導入する企業が増加中

 「確定給付型」の企業年金と相対するのが、「確定拠出型」の企業年金だ。“企業型”の確定拠出年金は「401k」や「企業型DC」とも呼ばれる。ちなみに、最近普及が広がっている「iDeCo」は“個人型”の確定拠出年金で、掛金を拠出するのが企業または個人かという点において違いがある。

 今、確定給付型に代わり確定拠出型にシフトチェンジする企業が増えている。確定拠出年金は従来の確定給付型の問題点をカバーした制度だからだ。企業にとっての具体的なメリットを挙げてみよう。

【企業側のメリット】
・従業員が運用商品を選ぶので、会社が運用責任を負わずに済む
・将来債務が発生しない
・掛金は損金計上でき、税負担が軽減される
・社会保障料の算定対象外となり、保険料が圧縮できる……など

 一方、従業員にとっても以下のようなメリットがある。

【従業員側のメリット】
・転職時も持ち運びができ、加入期間が合算できる
・自分で運用することで、受取額や運用状況を把握できる 
・拠出されたときから従業員の財産になる……など

 従業員のメリットで特筆すべきは、企業型拠出年金では掛金が拠出された瞬間から従業員のお金になる点だ。投資信託などで運用する場合は元本割れのリスクはあるものの、受け取るときまで自分の手でお金を管理・運用し成長させることができる。元本を確保したいのなら、定期預金などの元本確保型商品を選べば資産が減ることも防げる。従来の確定給付型企業年金の問題だった、会社の都合で給付額が左右されるというリスクから切り離される。

■勤め先の年金制度を把握しよう

 会社員なら、勤め先がどのような年金制度を用意してくれているのか、今一度確かめてみよう。企業型確定拠出年金を導入していたとしても、制度のことを理解できずにほったらかしにしている人もいるかもしれない。確定拠出年金は自己管理が大切なのだという意識を持って取り組んでみよう。

 一部の企業では、従業員の意思で拠出額を上乗せできるマッチング拠出や、加入するかどうかを選べる選択制を採用しているところもある。いずれの制度も、加入すれば従業員にも節税効果があるのでメリットを受けられる場合が多い。また、勤め先に確定拠出年金の制度がなくても、普及がどんどん進んでいるので今後導入される可能性は十分あるだろう。その際に制度を十分活用するために、勤め先の企業年金の動向はぜひともチェックしておきたい。

(マネーライター・永井志樹子)

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