知識ゼロでもわかる【経済用語】 “家計”に例えて「日本財政」の絶望的状況を解説!

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増税先送りをテーマに、3つの経済用語を“家計”に絡めて解説する

 日々、新聞やニュースで目にする経済用語。社会人として当然知っているべきものだが、ちゃんと理解している人は意外に少ないのではないだろうか。そんな「いまさら聞けない」という経済用語を時事ネタに絡めて3つ解説する。

 今回は、安倍晋三首相が消費税の増税先送りを決断したことに関連して、「プライマリーバランス」「建設国債」「赤字国債」を家計に絡めて解説する。

■日本の家計は赤字家計
 まず、日本の財政状況を確認しておこう。2016年度予算で見ると、歳出96.7兆円に対して、租税などの歳入は57.6兆円と3分の2ほどにすぎず、残りの3分の1程度を借金である国債の発行で補っている。この結果、借金の総額(国債残高)は866兆円(2016年度末の見込み)に達すると予想されている。

現在の財政状況を年間の支出が967万円のサラリーマン家計に置き換えると、毎月の給与が52万円なのに対して支出は81万円で、不足分の29万円をサラ金から借金し、これまでのローン残高が8664万円に達していることになる。このような絶望的な状況が日本の財政事情なのだ。
 
 こうした状況を改善するためには、歳出の削減と歳入の増加の両方が必要だ。だが、社会保障費の増大などから歳出を抑えるのは容易ではないため、安倍政権は歳入を増やすための消費税の増税で、財政健全化を目指していた。

現在掲げられている財政健全化の目標は、基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の2020年度に黒字化するというもの。プライマリーバランスは歳出と歳入の差額であり、これを黒字にするということは、現在の96.7兆円の歳出を歳入の57.6兆円以下にまで削減するか、歳入を96.7兆円まで増やすことが必要となる。

 サラリーマン家計に置き換えるなら、毎月52万円の給料を81万円にまで増やすか、支出を81万円から52万円に減らすということになる。プライマリーバランスの黒字化は、「給料の範囲内で暮らす」という極めて当たり前のことなのだが、その達成が容易ではないことは明らかだ。

 しかも、プライマリーバランスの黒字化は、財政健全化の第一歩であり、借金の増加を食い止めることに過ぎない。毎月の給料から1万円、2万円とプライマリーバランスの黒字を搾り出して、8664万円の借金を返済して行くことが必要となる。その道のりは極めて困難だが、日本の財政事情はその出発点であるプライマリーバランスの黒字化すらたどり着けずにいるのである。

■国債は親子二世代ローン
 絶望的な日本の財政事情だが、国債発行による借金は、世代間格差という別の問題を引き起している。国債は政府が発行する借用書であり、償還期限は10年が最も多く、最長では40年のものもある。つまり、借金の返済をするのは、「現在の国民」ではなく「将来の国民」であり、これは「親子二世代ローン」と考えることができるのだ。

 家計が苦しいので両親が借金をし、返済するのは子供となれば、「親の作った借金返済で、生活が圧迫される!」と、子供が反発するのは当然のこと。こうした世代間格差を生じさせないために、国債の発行は法律で禁止されていたのだが、「例外的措置」が次々に打ち出されて、膨大な額が発行されるに至っている。

「例外的措置」として最初に発行されたのが建設国債だった。建設国債は資金使途を公共事業に限定したもので、道路や学校といった形のある社会資本を整備するというもの。親子二世代ローンで家を建てるというのが建設国債であり、子供はいずれその家に住むことができるため、納得してもらえるのではないか…との考えから発行が許されたのだ。

 だが、財政事情がさらに悪化すると建設国債だけでは不十分となり、使途を公共事業に限定しない国債を発行せざるを得なくなる。これが赤字国債であり、特例法を作って発行を可能とした。建設国債と異なり、赤字国債は生活費を補うために親が借金するもので、子供のメリットはほとんどない。家が残されるならまだしも、親が飲み食いしたり、旅行したりして作った借金を子供が支払うのは許されないはずだ。

 とはいえ、現実問題として、赤字国債なしでは生活が成り立たないことから、特例が恒常となっている。そしてその発行額は建設国債60兆円に対して赤字国債284兆円にまで膨れ上がっているのである。

 消費税の増税が先送りされたことで、プライマリーバランスの黒字化は遠のき、赤字国債の発行がさらに拡大する可能性が高まっている。日本の財政事情の改善は絶望的であり、このままで行けば、親子二世代ローンどころか、親子孫三世代ローン、親子孫ひ孫四世代ローンになる恐れもあるといえるだろう。

■まずは日本経済の体力回復を!
 それでも、安倍首相は消費税を増税することは、景気を再失速させると判断して見送りを決断した。

 80年代には、ありあまる元気でバブル経済を謳歌した日本経済だったが、その崩壊でデフレという厄介な病気にかかり、思うように働けずに収入が激減してしまった。日銀はお金という「栄養」を大量に投入する量的・質的金融緩和策によって、デフレの治療を行っているのだが、なかなか効果が出せずにいる。

 こうした中で消費税を増税することは、日本経済にさらなる負担をかけるものであり、回復しかけた体調が再び悪化し、結果的に収入が減る恐れがある。こうしたことを避けるために、今はまずデフレから完全に抜け出すことが最優先であり、プライマリーバランスの黒字化も、国債発行の減額も、今しばらくは猶予を与えるべきだと判断したわけなのである。

 ただ、こうしたことを未来永劫続けることは不可能であり、日本はギリシャのような財政破綻に陥る恐れが強まっているのである。今回の消費税の増税見送りは、日本経済に与えられた最後の猶予だ。これを最大限に生かし、デフレという病を克服し、バリバリ働いて税収という収入をアップさることが、何より求められているのである。

記事/玉手 義朗
1958年生まれ。外資系金融機関での外為ディーラーを経て、現在はテレビ局勤務。著書に『円相場の内幕』(集英社)、『経済入門』(ダイヤモンド社)がある。

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