飲酒運転による事故 自動車保険の補償範囲

  • 【イラスト】飲酒運転

 お酒を飲む機会があるドライバーには、飲酒運転の誘惑があるもの。一滴でも飲んだなら、「ちょっとそこまで」などとハンドルを握ることは絶対にNGだが、実際のところ飲酒運転事故は根絶には至っていない。もしも飲酒運転事故に遭ってしまったら…加害者と被害者それぞれの自動車保険の補償範囲や、処罰はどうなるのか。
 本来、自らの飲酒運転は100%防げるもの。お酒を飲むドライバーは、事故を起こす可能性はもちろん、自身が受ける罰から家族に及ぶ影響まで意識するようにしよう。また、車を運転する予定のドライバーにお酒を勧めたり、ドライバーが酒気帯びと知りながら同乗することなども道路交通法違反であるため、注意が必要だ。

 ちなみに、運転者に対する罰則は、酒酔い運転(アルコールの影響により車両等の正常な運転ができない状態)で5年以下の懲役または100万円以下の罰金、酒気帯び運転(呼気中アルコール濃度0.15mg/リットル以上)で3年以下の懲役または50万円以下の罰金。お酒を飲んでいるドライバーに車を貸した場合も同様だ。

 また、ドライバーに酒類を提供したり、飲酒運転と知りながらその車両に同乗すると、酒酔い運転の場合で3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒気帯び運転では2年以下の懲役または30万円以下の罰金となる。

以下のような事例が挙げられる。

・車で来店しているのを知りながら、店内において客に日本酒、ビール等を提供した飲食店経営者が、2年間の運転免許取消し
・知人が酒を飲んでいることを知りながら、二次会の場所まで送るよう依頼して車の助手席に乗り込み、2年間の運転免許取消し
 万一加害側になった場合、飲酒運転は、任意自動車保険の免責事由に当てはまるため、運転者本人やその車の損害には保険金は支払われない。運転者自身のケガや死亡を補償する保険としては「人身傷害保険」「搭乗者傷害保険」「自損事故保険」などがあるが、これらに加入していても飲酒運転による事故では保険金を受け取ることはできないというわけだ。また、自動車事故によって契約車が損害を受けた場合に保険金が支払われる「車両保険」も飲酒運転は補償対象外となる。

 ただし、同乗者については「人身傷害保険」や「搭乗者傷害保険」で補償される。

一方、危険運転による事故で被害者としてケガなどを負ったら、加害側に対して損害賠償請求をすることが可能。加害側の「自賠責保険」や「対人賠償保険」から保険金が支払われる。なかには加害側に支払い能力がないケースもあるだろう。そういった場合に被害者が金銭的な補償を受けられなくなることを防ぐため、飲酒運転による事故であっても自動車保険金は支払われる仕組みになっている。“被害者の救済”という観点からで、飲酒が原因の事故でも免責事由にはあたらない。ちなみに、車や家が壊されてしまった場合は「対物賠償保険」から保険金が支払われる。

 もし、自身が任意自動車保険の「人身傷害補償保険」「無保険車傷害保険」に加入していれば、それらを使うことも可能。人身傷害補償保険とは、保険金額の範囲内でケガなどの損害額が支払われるもので、示談交渉の結果を待たずにお金を受け取ることができる。

 無保険車傷害保険は、相手が保険に加入していなかったり、当て逃げをされた場合に、受け取るべき損害賠償額の不足分を補償してくれる保険。任意保険に加入すると自動的に付帯されるケースが多い。
 飲酒運転の取り締まりが強化されたのは、1999年11月。東名高速道路用賀料金所付近で、飲酒運転の大型トラックが、渋滞のため減速していた乗用車に追突・炎上し、3歳と1歳の幼い姉妹が死亡するという凄惨な事故が発生し、当時は各メディアが大々的に報じた。の事故などを契機に「飲酒運転を厳罰化しよう」という声が高まり、道路交通法が改正された。

 以後、最高懲役15年とする“危険運転致死傷罪”も設けられ、その結果、1999年に2万1602件(死亡事故は1257件)だった飲酒運転の事故は、2013年になると4335件(死亡事故は238件)まで減少と、大きな効果を生んでいるが、未だ飲酒運転の事故根絶には至っていない。

 ちなみに、前述の追突した大型トラックのドライバー及び勤務先には、合計約2億5000万円の支払が命じられた(2003年7月24日東京地裁判決)。

 飲酒しているドライバーに対してどんなに気をつけていても、遭遇する可能性はゼロではない。自動車保険を見直すときは、人身傷害補償保険や無保険車傷害保険への加入を検討し、自分自身で備えを万全にしておくことも大切だ。
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