もらい事故とは?被害者になった場合の対応の流れや損しないポイントを解説

もらい事故とは?被害者になった場合の対応の流れや損しないポイントを解説

突然巻き込まれる「もらい事故」は、誰にでも起こり得るトラブルです。

自分に過失がない場合でも、対応次第で思わぬ不利益を被る可能性があります。

適切な手順を踏むことで被害を最小限に抑え、損をしないための知識を持つことが重要です。

本記事では、もらい事故の基本的な概要から、発生直後の具体的な対応手順、利用できる自動車保険の種類や示談金について詳しく解説します。

また、被害者が損をしないためのポイントや弁護士特約の活用方法、保険会社選びの重要性についても触れています。

もらい事故に備えたい方や、現在対応に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

mokuji目次

  1. もらい事故とは?
  2. もらい事故で被害者が損するリスクがある理由
  3. もらい事故発生直後の対応手順
    1. 1.事故直後の安全確保
    2. 2.負傷者の確認と救護
    3. 3.警察への通報
    4. 4.事故状況の記録
    5. 5.加害者情報の確認
    6. 6.自分の加入している保険会社への連絡
    7. 7.病院の受診・診断書発行
    8. 8.加害者との示談交渉
    9. 9.加害者からの賠償金の支払い
  4. もらい事故で利用できる自動車保険
    1. 人身傷害保険
    2. 車両保険
    3. 車両保険無過失事故特約
  5. もらい事故における示談金の種類
  6. もらい事故で損をしないためのポイント
    1. 加害者側の提案に安易に同意しない
    2. 弁護士など法律の専門家に相談する
    3. 弁護士費用特約を活用する
  7. もらい事故に備えて保険会社を検討しよう

もらい事故とは?

もらい事故とは?

もらい事故とは、被害者側にまったく過失がない交通事故です。

事故の当事者間における過失割合が加害者側100:被害者側0となるため、加害者が保険会社を通じて損害賠償を負担します。

具体的には、以下がもらい事故としてあげられます。

もらい事故の具体的なケース

  • 停車中の車両に後方から追突された
  • 対向車がセンターラインを越えて正面衝突してきた
  • 青信号で交差点を進んでいた車に、赤信号で進入してきた車が衝突した
  • 駐車場で適切に停車していた車に他の車がぶつかってきた
  • 青信号で横断歩道を渡っていた歩行者に、赤信号無視の車が衝突した
通常、交通事故が起きた場合、内容に応じた違反点数が加算されますが、もらい事故では被害者の運転免許証の点数には一切影響がありません。

もらい事故で被害者が損するリスクがある理由

もらい事故で被害者が損するリスクがある理由

通常の交通事故では、被害者は自身が加入する保険会社に示談交渉を依頼できますが、もらい事故ではそれができません。

これは弁護士法による規制が理由です。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
引用:e-GOV法令検索|弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)
もらい事故では被害者の過失が0%であるため、被害者側の保険会社が損害賠償金を支払うことはありません。

そのため、保険会社が示談交渉を代行することは、弁護士法で禁止されている「非弁行為」に該当してしまうのです。

このような状況では、被害者は加害者側の保険会社と直接交渉をすることを余儀なくされます。

しかし、被害者は一般的に示談交渉の経験が乏しく、保険会社の担当者との交渉で不利な立場に置かれがちです。

とくに、加害者側の保険担当者が専門用語を多用したり、高圧的な態度をとったりすることで、被害者は適切な主張ができなくなる可能性があります。

さらに、もらい事故の場合、加害者側は通常以上に厳しい態度で交渉に臨む傾向があります。

被害者側の過失が0%であるため過失相殺による減額ができない分、保険会社は別の方法で支払額を抑えようとするためです。

その結果、被害者は本来受け取れるはずの損害賠償金を十分に得られないリスクが生じます。

もらい事故発生直後の対応手順

もらい事故発生直後の対応手順

もらい事故の被害に遭った場合、適切な対応を順序立てておこなうことが重要です。

事故直後は混乱しがちですが、以下の手順に沿って冷静に対応することで、示談交渉を有利に進められます。
  1. 事故直後の安全確保
  2. 負傷者の確認と救護
  3. 警察への通報
  4. 事故状況の記録
  5. 加害者情報の確認
  6. 自分の加入している保険会社への連絡
  7. 病院の受診・診断書発行
  8. 加害者との示談交渉
  9. 加害者からの賠償金の支払い
各段階の具体的な対応方法を解説します。

1.事故直後の安全確保

二次被害を防ぐため、事故車両を路肩や路側帯など安全な場所に移動させることが最優先です。

車両が動かせない場合は、ハザードランプを点灯し、三角停止表示板や発炎筒を設置して後続車に事故車両の存在を知らせましょう。

とくに高速道路では「何らかの形で車が停止していることを表示しなければならない」と法律で義務付けられています。

※参考:道路交通法 | e-Gov 法令検索 第七十五条の十一(故障等の場合の措置)

2.負傷者の確認と救護

交通事故の当事者には、負傷者の救護が法律で定められた義務として課せられています。※

事故に関係するすべての車両の運転者と搭乗者の状態を確認し、負傷者がいる場合は救急車を要請しましょう。

必要に応じて止血や人工呼吸、心臓マッサージなどの応急処置をおこないます。

※参考:道路交通法 | e-Gov 法令検索 第七十二条(交通事故の場合の措置)

3.警察への通報

車の移動や負傷者の救護をしたら警察に事故の発生を通報します。

警察への通報は法律で定められた義務であり、人身事故・物損事故を問わず必要です。
通報時に伝える情報
・事故発生の日時と場所
・負傷者の人数と負傷の程度
・損壊したものの状態と程度
・事故車両の積載物の状況
・これまでにおこなった対応
たとえ被害者であっても、警察への通報を怠ると懲役3ヶ月以下または5万円以下※の罰金が科せられるおそれがあります。

※参考:道路交通法 | e-Gov 法令検索 第百十九条

4.事故状況の記録

警察が到着するまでの間に、スマートフォンや携帯電話などで現場の写真や動画を撮影します。また、ドライブレコーダーの映像がある場合は保存しておきましょう。
記録すべき情報
・事故車両の位置関係
・車両の損傷状態
・路面の痕跡や道路状況
・信号機や道路標識の配置
・目撃者の証言内容(録音推奨)
事故の記録は、もらい事故であることの証拠になります。自分を守るためにもかならず撮影しておきましょう。

5.加害者情報の確認

加害者の情報は、名刺や運転免許証、車検証などの提示を求めて正確に確認します。これらの情報は、示談交渉や損害賠償請求を進める際に必要です。
確認すべき加害者の情報
・氏名、住所、電話番号
・車両のナンバー
・自賠責保険・任意保険の会社名と証券番号
・勤務先の名称、住所、連絡先
可能であれば現場で写真や動画を撮影するときに、加害者の車両やナンバープレート、保険証明書も記録しておくとよいでしょう。

6.自分の加入している保険会社への連絡

事故発生後できるだけ早く、自身が加入する保険会社に連絡します。

加害者側の任意保険会社からの補償が受けられない場合に備えて、自身の保険で利用可能な補償内容(弁護士費用特約、車両保険無過失事故特約など)を確認しておきましょう。

なお、事故の連絡をしただけでは等級は下がりませんが、実際に保険金請求をした場合に等級が影響を受けるケースがあります。

7.病院の受診・診断書発行

外傷がなく痛みを感じない場合でも、必ず医師の診察を受けましょう。

むち打ちや内臓損傷など、一部の症状は時間が経過してから出現することがあります。また、医師から発行される診断書は、事故との因果関係を立証する重要な証拠です。

適切な補償を受けるためにも、かならず受診と診断書の取得をおこなってください。

8.加害者との示談交渉

示談交渉の開始時期は、事故の内容によって異なります。

事故の種類

示談交渉の開始時期の目安

物損事故

修理費の見積もりが出た後

人身事故
(後遺障害無し)

ケガが完治した後

人身事故
(後遺障害有り)

後遺障害等級の認定後

死亡事故

四十九日などの法要が終わった後

物損事故と人身事故の示談交渉は別で進めることも可能です。

また、加害者が被害者に対する謝罪の気持ちを示すために、任意で見舞金が支払われることがあります。

受け取りそのものは基本的に問題ありませんが、見舞金が高額である場合は示談金の額が減る可能性もあるため、判断は慎重におこないましょう。

9.加害者からの賠償金の支払い

示談が成立すると、合意された金額が加害者または加害者側の保険会社から支払われます。

この際、支払い方法(振込、一括または分割など)や期限などを記載した示談書を作成し、内容を慎重に確認してください。

双方が合意した示談書は法的効力があるため、不備なく作成することが重要です。

もらい事故で利用できる自動車保険

もらい事故で利用できる自動車保険

もらい事故では、加害者側の過失が100%であるため、基本的には加害者側の保険から補償を受けます。

しかし、加害者が任意保険未加入の場合や、損害賠償の支払い能力が低い場合、被害者自身の以下の保険も活用できます。

もらい事故で利用できる自動車保険

ただし、利用する自動車保険の種類によって翌年の等級が下がり、保険料が上昇する可能性もあります。

それぞれの特徴を見ていきましょう。

人身傷害保険

人身傷害保険は、事故での負傷に関する補償を受けられる保険です。

治療費をはじめ、休業による収入減少分、精神的な損害に対する補償まで幅広くカバーされます。

示談交渉を待たずに自身の保険会社から保険金を受け取れるため、加害者側の支払能力が低い場合でも早期に補償を得ることが可能です。

支払われた保険金はあとから保険会社が加害者側に請求するため、被害者は安心して治療に専念できます。

人身傷害保険のみを使用した場合、翌年度の等級は下がりません。そのため、積極的な活用を検討してよいでしょう。

車両保険

車両保険は、事故による車両の損傷を補償する保険です。

加害者側から修理費用などが支払われるまでに時間がかかる場合や、加害者が任意保険未加入の場合に役立ちます。

ただし、車両保険を使用すると通常は「3等級ダウン」の扱いとなり、翌年度以降の保険料が高くなります。

そのため、車両保険の利用を検討する際は、修理費用と保険料増加分の比較検討が必要です。

保険会社に相談すれば、どちらが経済的に有利かシミュレーションしてもらえます。

車両保険無過失事故特約

車両保険無過失事故特約は、もらい事故で車両保険を使用しても等級が下がらないようにする特約です。

この特約は車両保険加入時に自動的にセットされることが多いです。

車両保険無過失事故特約があれば、加害者側からの支払いを待つことなく、速やかに車両の修理に着手できます。

そのため、修理費用の支払いに不安がある場合は、この特約の有無を確認し、積極的な活用を検討しましょう。

もらい事故における示談金の種類

もらい事故における示談金の種類

事故の種類によって請求できる損害賠償の内容は異なります。

とくに人身事故の場合は、物損事故にはない慰謝料や逸失利益(いっしつりえき)といった項目が加わるため、より複雑な計算が必要です。

逸失利益とは、事故がなければ得られたはずの将来の収入のことです。

交通事故などで負傷したり、最悪の場合に亡くなったりすることで、被害者やその家族が失う将来の収入を金銭的に算定したものを指します。

請求できる損害賠償の具体的な項目は以下のとおりです。
物損被害の損害賠償項目

賠償項目

内容

修理費用

車両の修理にかかる費用

評価損

事故による車両価値の下落分

代車料

修理期間中の代替車両費用

休車損害

営業車が修理で使用できない間の損失

レッカー代

事故車両の移動・運搬費用

積載物損害

車内の私物や積載物の損害

人身被害の損害賠償項目

賠償項目

内容

治療関係費

治療費、通院交通費、付添費など

入通院慰謝料

治療期間中の精神的苦痛の補償

後遺障害慰謝料

後遺障害による精神的苦痛の補償

死亡慰謝料

死亡による精神的苦痛への補償

休業損害

休業による収入減少の補償

後遺障害逸失利益

後遺障害による将来の収入減少分

死亡逸失利益

死亡による将来の収入喪失分

物損事故の場合、修理費用は原則として事故時の車両価格が上限です。

ただし、修理費が車両価格を上回る場合や、物理的に修理が不可能な場合には、代替車両の購入費用を請求できることがあります。

事故により車両の資産価値が下がった分については、評価損として修理費用の30%程度を請求可能です。

一方、人身事故では治療費などの実費に加えて、精神的な損害に対する慰謝料を請求できます。

入通院慰謝料は治療期間に応じて算定され、後遺障害が残った場合は後遺障害慰謝料も加算されます。

また、休業損害は専業主婦や学生、無職者でも一定の条件下で請求が認められますが、個別計算が必要です。

参考:交通事故相談所(詳細編)/千葉県

もらい事故で損をしないためのポイント

もらい事故で損をしないためのポイント

もらい事故では、示談交渉を保険会社に依頼できないため、被害者が不利な立場に置かれがちです。

しかし、適切な対応を取れば、本来受け取るべき賠償金を確保できます。

以下では、もらい事故で損をしない重要なポイントを解説します。

加害者側の提案に安易に同意しない

加害者側の保険会社は、支払額を抑えるために低額な示談金を提示しようとすることがあります。

とくにもらい事故の場合、過失相殺による減額ができないため、厳しい態度で交渉してくることが予想されます。

保険会社の担当者が専門用語を多用したり、高圧的な態度をとったりしても、冷静に対応することが大切です。

賠償金の相場を事前に把握し、提示された金額が適切かどうかを見極めましょう。

弁護士など法律の専門家に相談する

もらい事故の示談交渉では法律知識や交渉経験が求められるため、弁護士への相談が有効です。

弁護士は加害者側の保険会社と対等に交渉し、被害者の正当な権利を主張できます。裁判になる可能性があっても適切なアドバイスやサポートを受けられるでしょう。

また、弁護士は示談金の相場を熟知しているため、適切な増額交渉が可能です。

保険会社との煩雑なやり取りや手続きを一任できるため、被害者の精神的な負担も軽減されます。

弁護士費用特約を活用する

弁護士費用特約は自動車保険に付帯されるオプションであり、弁護士費用は300万円、法律相談料は10万円までが補償されます。

弁護士費用特約を利用すれば経済的負担なく専門家のサポートを受けられるため、不利な状況でも適切な賠償金が獲得できるでしょう。

自身の保険に「弁護士費用特約」がついているか確かめることをおすすめします。

もらい事故に備えて保険会社を検討しよう

もらい事故は、被害者側にまったく過失がない交通事故であるため、理論上は加害者側が全額賠償するべき事案です。

しかし、もらい事故の場合は保険会社の示談代行サービスが使えず、被害者が不利な立場に置かれることも少なくありません。

また、加害者が任意保険未加入のケースでは、十分な補償を受けられない可能性もあります。

このようなリスクに備えるためには、人身傷害保険や車両保険、弁護士費用特約などの補償が充実した自動車保険への加入が重要です。

保険選びでは、補償内容はもちろん、事故対応やロードサービスの充実度なども重要なポイントとなります。

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