交通事故の過失割合の決め方は?自動車同士や歩行者との接触など事例別に解説

交通事故の過失割合の決め方は?自動車同士や歩行者との接触など事例別に解説

自動車事故が起きた場合、事故過失割合によって当事者の賠償額が決まります。過失割合は警察が決めるわけではなく、基本の過失割合をもとに話し合いによって決めるものです。

この記事では過失割合の決め方と、事故の状況別の基本の過失割合、事故後の交渉などについて解説します。万が一自動車事故が起きてしまったときの参考にしてください。

mokuji目次

  1. 事故過失割合とは?
    1. 過失割合は誰がいつ決めるか
    2. 過失割合の決め方
  2. 【状況別】交通事故の過失割合の考え方
    1. 自動車同士の事故
    2. 自動車と二輪車の事故
    3. 自動車と歩行者の事故
    4. 自動車と自転車の事故
  3. 交通事故後の対応と過失割合への影響
    1. 事故発生時の対応|警察への連絡・証拠の保全
    2. 保険会社とのやり取り|過失割合の交渉
    3. 納得いかない場合の対処法|異議申し立て・弁護士への相談
  4. 交通事故の過失割合を理解して適切な行動を心がけよう

事故過失割合とは?

事故過失割合とは?

事故過失割合は、交通事故における当事者それぞれの責任(不注意・過失)の度合いを数値で表したものです。例えば、「7対3」「2対8」といった形で示されます。

過失割合は損害賠償額の算定に直接影響を与える重要な要素です。

過失割合は誰がいつ決めるか

交通事故の過失割合は、原則として事故当事者間で決定します。多くの場合、当事者に代わって保険会社が交渉し、過去の判例や事故状況をもとに過失割合を判断します。警察は事故の事実確認はしますが、過失割合の決定には関与しません。また、交通事故証明書にも過失割合は記載されません。

過失割合の決定の流れは、以下のとおりです。
  1. 事故状況の確認
  2. 基本過失割合の算出
  3. 修正要素の反映
  4. 双方の合意が得られれば、過失割合を決定
なお、当事者間で合意に至らない場合は、以下の手段で解決を図ります。
  • 交通事故紛争処理センターでの調停
  • 裁判所での民事調停
  • 民事裁判による解決

過失割合の決め方

過失割合は、民法第722条2項に定められた過失相殺の考え方に基づいて決定されます。事故における双方の責任を公平に分担するため、基本の過失割合と修正要素を総合的に判断します。

判断の基準となる要素は、以下のとおりです。

【基本の過失割合】

  • 道路交通法上の優先関係
  • 運転者の注意義務の履行状況
  • 事故発生時の状況や環境要因

【修正要素】

  • 信号や一時停止などの交通規制の遵守状況
  • 前方不注意や速度超過の有無
  • 天候や路面状況などの環境要因
  • 事故回避の可能性
過失割合の決定には、「別冊判例タイムズ38号」のような過去の裁判例も重要な判断基準として用いられます。最終的な過失割合はこれらの要素を総合的に考慮して、当事者間の合意により確定されます。

【状況別】交通事故の過失割合の考え方

【状況別】交通事故の過失割合の考え方

交通事故の過失割合は、事故のタイプ別の基本の過失割合をもとに決まります。ここでは、事故の状況別の過失割合を紹介します。

自動車同士の事故

最初に自動車同士の事故における過失割合の考え方を紹介します。

交差点内における直進車同士の事故

交差点内での直進車同士の事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

道幅が同じ場合

左方車40%:右方車60%
道路交通法の左方優先の原則により、左側から来る車両の進行を妨げてはならないため、右方車の過失が大きくなります。

一方が優先道路の場合

優先道路10%:非優先道路90%
優先道路を通行する車両は徐行義務がなく優先度が高いため、非優先道路側の過失が大きくなります。

一方に一時停止規制がある場合

規制なし20%:規制あり80%
一時停止規制がある車両は停止線で一時停止し、交差道路の車両の進行を妨げてはならない義務があるため、規制がある側の過失が大きくなります。

交差点内におけるその他の事故

交差点内での直進車同士以外の事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

青色信号同士での対向車の事故(直進車と右折車)

直進車20%:右折車80%
右折車は直進車の進行を妨げてはならない義務があるため、右折車の過失が大きくなります。

右折車と左折者の事故

左折車30%:右折車70%
左折車優先の原則により、右折車は左折車の進行を妨げてはならないため、右折車の過失が重くなります。

右折で優先道路に進入する際の事故

優先道路直進車10%:右折車90%
優先道路を通行する車両の進行を妨害してはならないため、右折車に大きな過失が認められます。

赤信号で進入してきた緊急車両との事故

一般車両80%:緊急車両20%
サイレンを鳴らしている緊急車両には特例が認められており、一般車両は進行を妨げない義務があります。

車線変更の際の事故

車線変更事故の基本的な過失割合は、車線変更車70%:直進車30%となります。道路交通法で「みだりに進路変更してはならない」と定められているためです。

高速道路における事故

高速道路における自動車同士の事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

合流地点での事故

本線車30%:合流車70%
合流車は本線車両の進行を妨げない義務がありますが、本線車にも合流車の進入を予測して減速等の措置をとる義務があります。

進路変更での事故

直進車20%:進路変更車80%
高速道路では一般道より高速での走行が前提となるため、進路変更車の過失が一般道より10%重く評価されます。

後続車の追突事故

前方車40%:追突車60%
高速道路では駐停車が原則禁止のため、前方車に落ち度がある場合は前方車にも過失が認められます。

Uターンの際の事故

Uターン事故の基本的な過失割合は直進車20%:Uターン車80%です。これはUターンが交通の流れと大きく異なる危険な動作であり、道路交通法で「他の車の正常な交通を妨害するおそれがあるとき」は禁止されているためです。

駐車場などの出入りの際の事故

駐車場などの出入りで発生する事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

一方が左折で道路に入る際の事故

直進車20%:左折車80%
道路外から出入りする車両は他の車両の正常な交通を妨害してはならない義務があるため、左折車の過失が大きくなります。

直進車と対向右折車の事故

直進車10%:右折車90%
右折車は直進車の進行を妨害してはならない原則があり、道路外への出入り時も同様の考え方が適用されます。

駐車場内における事故

駐車場内の事故は道路交通法の適用を受けませんが、基本的な過失割合の考え方があります。通路走行車と駐車区画から出庫する車の事故は30:70となります。

自動車と二輪車の事故

次に、自動車と二輪車の事故の過失割合を紹介します。

交差点内における事故

自動車と二輪車の交差点内で発生する事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

道幅が同じ道路の出会い頭の事故(二輪車が左方の場合)

二輪車30%:自動車70%
道路交通法の左方優先の原則があり、かつ二輪車は自動車より被害が大きくなる可能性が高いため、自動車側の過失が大きくなります。

青信号の直進車と対向右折車の事故

直進二輪車15%:右折自動車85%
直進車優先の原則があり、右折車は直進車の進行を妨害してはならない義務があるため、右折車の過失が大きくなります。

左折巻き込みの事故

二輪車20%:自動車80%
左折車は直進車の進行を妨害してはならず、二輪車が交通弱者として扱われるため、自動車側の過失が大きくなります。

渋滞車両の間での事故

二輪車30%:自動車70%
渋滞車両の間から進入する自動車は、死角から直進してくる二輪車の存在を予測して安全確認する義務があるため、自動車側の過失が大きくなります。

その他の事故

自動車と二輪車の交差点内以外で発生する事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

自動車のドアを開けた際の事故

二輪車10%:自動車90%
ドアを開ける際は周囲の安全確認が必要であり、自動車側の過失が大きくなりますが、二輪車にも前方不注視の過失が認められます。

Uターンの際の事故(自動車がUターン)

二輪車10%:自動車90%
Uターンは交通の流れと大きく異なる危険な動作であり、他の車両の正常な交通を妨害してはならない義務があるため、自動車側の過失が大きくなります。

自動車と歩行者の事故

続いて、自動車と歩行者の事故の過失割合を紹介します。

横断歩道上における事故

自動車と歩行者の横断歩道上で発生する事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

歩行者の赤信号無視による事故

歩行者70%:自動車30%
歩行者の信号無視は重大な違反ですが、交通弱者保護の観点から自動車側にも一定の過失が認められます。

信号がない横断歩道上の事故

歩行者0%:自動車100%
道路交通法により横断歩道は歩行者優先とされており、車両は横断歩道の直前で一時停止し、歩行者の通行を妨げてはならない義務があります。

駐車場内における事故

駐車場の通路上での自動車と歩行者の事故の基本過失割合は、歩行者10%:自動車90%となります。これは通路が主に自動車の走行に使用される場所であっても、歩行者の往来が日常的に予想されることから、自動車側に高度な注意義務が課されているためです。

高速道路における事故

高速道路上の駐停車車両周辺での歩行者事故の基本過失割合は、歩行者40%:自動車60%となります。これは駐停車車両があれば周囲に人がいることが予測できるためです。

その他の道路での事故

自動車と歩行者のその他の道路で発生する事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

横断歩道以外で道路を渡る歩行者との事故

歩行者30%:自動車70%
歩行者は横断歩道を利用すべき義務があるものの、車両は常に歩行者の動きに注意を払う必要があるため、車側により大きな過失が認められます。

歩行者の左側端通行による事故

歩行者5%:自動車95%
歩行者には右側通行の義務があり、左側通行は違反となりますが、車両には歩行者への安全確保義務があるため、歩行者の過失は比較的小さくなります。

歩行者の左側端通行による事故
道路に横たわる歩行者との事故(夜間)

歩行者50%:自動車50%
歩行者が道路上に横たわることは重大な過失であるものの、車両には前方注視義務があります。特に夜間は発見が困難なため、歩行者の過失割合が増加します。

自動車と自転車の事故

最後に、自動車と自転車の事故の過失割合を紹介します。

交差点内における事故

自動車と自転車の交差点内で発生する事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

自転車の赤信号無視の場合の事故

自転車80%:自動車20%
信号無視は重大な交通違反であり、自転車側の過失が大きくなりますが、自動車にも安全確認義務があるため、一定の過失が認められます。

自転車に一時停止規制がある交差点内における出会い頭事故

自転車40%:自動車60%
一時停止規制違反は重大な過失となりますが、自動車側にも交差点における注意義務があるため、この割合となります。

道幅が同じ道路における出会い頭事故(自転車が左方の場合)

自転車20%:自動車80%
左方優先の原則に加え、自転車が交通弱者として扱われることから、自動車側の過失が大きくなります。

優先道路を走行している自転車との事故

自転車10%:自動車90%
優先道路との交差点に進入する際は徐行義務があり、優先道路を通行する自転車の進行を妨げてはならないため、自動車側の過失が大きくなります。

右折で優先道路に進入してきた自転車との事故

自転車50%:自動車50%
優先道路を走行する自動車の進行を妨害する形での右折は重大な違反です。ただし、自転車は自動車に比べて交通弱者となるため、自動車側にも前方の注意責任が問われます。

駐車場などの出入りの際の事故

自動車と自転車の駐車場などの出入りの際に発生する事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

自動車が右折で道路に出た際の事故

自転車10%:自動車90%
道路外から出入りする車両は他の車両の正常な交通を妨害してはならない義務があり、特に右折での進入は危険性が高いため、自動車側の過失が大きくなります。

左折で道路に出た自転車との事故

自転車40%:自動車60%
道路外から出る際は十分な安全確認が必要です。しかし、自動車側にも前方注視義務があり、自転車が交通弱者として扱われることから、自動車側により大きな過失が認められます。

その他の事故

自動車と自転車のその他の事故のケース別の過失割合は、以下のとおりです。

ケース

過失割合の考え方

道路上で対向車とすれ違う際の事故

自転車20%:自動車80%
自転車が道路の右側を走行していた場合でも、自動車側に高い過失が認められます。これは自動車側も自転車の確認が容易で衝突を回避できることと、自転車が交通弱者として扱われるためです。

道路上における自転車による障害物回避のための進路変更の際の事故

自転車10%:自動車90%
前方に障害物があるとき、自転車が進路変更する可能性を自動車側でも想定できるため、自動車側により高い注意義務が課されます。

交通事故後の対応と過失割合への影響

交通事故後の対応と過失割合への影響

交通事故発生直後の適切な対応は、その後の過失割合の判断や補償に大きく影響します。

事故発生時の対応|警察への連絡・証拠の保全

自動車を運転していて事故にあったら、まずは落ち着いて行動することが大切です。

事故発生直後は速やかに警察へ連絡し、状況を正確に伝えましょう。警察への届け出は、事故証明書を取得するために必要です。事故証明書は保険会社に事故を報告する際や、その後の示談交渉において重要な書類となります。

また、事故現場の状況の記録も重要です。具体的には、以下のような方法で証拠を保全しましょう。
  • 事故状況の写真撮影:スマートフォンなどで事故現場全体や車両の損傷状況、道路状況を撮影する
  • 目撃者の確保:近くに目撃者がいる場合は、氏名や連絡先を聞いておく
  • ドライブレコーダーの映像の保存:ドライブレコーダーを搭載している場合は、忘れずに映像を保存する
これらの証拠は、過失割合の判断や示談交渉をスムーズに進めるために役立ちます。

保険会社とのやり取り|過失割合の交渉

事故後の保険会社との交渉では、まず事故状況の正確な報告が重要です。過失割合の提示を受けた際はすぐに同意せず、内容を慎重に確認しましょう

保険会社との話し合いでは、以下の3点に特に注意が必要です。
  • 感情的にならず、冷静に対応する
  • 話し合いの内容は必ず記録に残す
  • 納得できない場合は、示談を急がない
過失割合は当事者間の合意で決まるものであり、保険会社には一方的な決定権はありません。必要に応じて専門家への相談も検討しましょう。

納得いかない場合の対処法|異議申し立て・弁護士への相談

過失割合に不服がある場合は、まず保険会社に対して具体的な根拠を示して再検討を求めます。その際はドライブレコーダーの映像や事故現場の写真、目撃者の証言など、客観的な証拠を提示します。交渉が難航する場合は、弁護士への相談を検討しましょう。

弁護士への相談は、示談成立前であればいつでも可能です。特に以下の場合は早めに相談したほうが良いでしょう。
  • 提示された過失割合に大きな不満がある
  • 保険会社との交渉が平行線をたどっている
  • 事故状況が複雑で判断が難しい
なお、示談が成立してしまうと過失割合の変更はできないため、納得できない場合は安易に示談に応じないようにしましょう

交通事故の過失割合を理解して適切な行動を心がけよう

交通事故の過失割合は、事故当事者間の話し合いによって決まります。納得できる過失割合にするためには、事故発生時に警察への通報、事故の状況を記録するといった冷静な対応が重要です。

過失割合の交渉では保険会社と慎重に話し合い、納得できない場合は専門家への相談も検討します。示談の成立後は過失割合の変更ができない点を事前に理解して、適切に判断しましょう。

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