猫の手術費用はどのくらい?手術の理由や費用について解説

猫の手術費用はどのくらい?手術の理由や費用について解説

愛猫にはいつまでも健康でいてほしいですが、突然ケガや病気に見舞われて、入院や手術が必要になる場合もあります。猫は人間と違って公的な健康保険がないため、手術にかかる費用は全額飼い主の負担ですが、実際どのくらいの費用が必要になるのか不安に思う人も多いのではないでしょうか。

この記事では、猫がケガや病気をした際の手術費用の目安や高額負担に備える方法について解説します。猫を飼い始めたばかりの人やペット保険の加入を考えている人は、参考にしてください。

猫の手術費用は高額傾向に

動物病院は自由診療のため、同じ治療を行った場合でも病院ごとに治療費が異なるほか、猫の治療費はケガや病気の内容によって大きく異なり、特に入院や手術を伴う場合は高額になります。

猫の手術費用の目安(平均値)は、アニコム ホールディングス株式会社「家庭どうぶつ白書2023」によると、高額なものでは20万円前後です。

なお、術前検査の多くは血液検査ですが、レントゲンやエコー検査が必要な場合はさらに費用がかさむほか、初診料や再診料、入院費、薬代なども必要になるため、猫の手術は高額な費用がかかります。

猫の治療費が高額になる理由

猫の治療費は、どうして高額になるのでしょうか。猫の習性やかかりやすい病気など、治療費が高額になる理由について見ていきましょう。

病気に気づきにくい

猫は、周囲に病気を悟られないようにする習性があります。そのため、ケガや病気の症状が初期の場合、異変を感じ取るのは難しく、明らかに様子がおかしいときには病状がかなり進んでいることが多いようです。

なお、病気の初期であれば内科的処置で済んだはずが、病状が進んだことで手術などの外科的処置が必要となり、治療費が高額になるケースがあります。

好奇心が強く、誤飲をしやすい

猫は好奇心の強い生き物で、目の前にあるひもやビニール、薬などの危険なものも手に取って遊ぶため、誤飲してしまうことがあります。

また、誤飲した異物が内臓を傷つけると大量の出血を起こすこともあり、治療に必要な麻酔、内視鏡、外科手術などの高額な費用が発生します。

慢性的な病気にかかりやすい

猫がかかりやすい病気のひとつに慢性腎臓病があります。特に高齢の猫に多く見られ、死因の上位に入っています。
なお、慢性腎臓病にかかると、元の健康な状態に戻すことが難しく、長く付き合っていく必要があり、通院などの医療費が必要です。

医療技術の向上により、治療費も高額に

近年、獣医師の技術向上や最新の診療機器の導入により、以前ではできなかった治療や手術を行うことが可能です。一方で、高度な医療技術や設備はコストがかかるため、医療費も高額になる傾向があります。

猫の手術理由として多いものは「歯周病/歯肉炎」

猫の手術理由として多いものは「歯周病/歯肉炎」

猫のケガや病気による手術理由にはさまざまなものがあります。「家庭どうぶつ白書2023」で公表している猫の手術理由トップ10は下記のとおりです。
<猫の手術理由トップ10>
1位 歯周病/歯肉炎(乳歯遺残に起因するもの含む)
2位 消化管内異物/誤飲
3位 そのほかの皮膚の腫瘍
4位 膀胱結石
5位 全身性の腫瘍
6位 そのほかの全身性疾患/症状
7位 嘔吐/下痢/血便(原因未定)
8位 そのほかの泌尿器疾患
9位 外傷(挫傷/擦過傷/打撲)
10位 尿道閉塞
上記の疾患と手術費(1回あたりの診療費)について、「家庭どうぶつ白書2023」のデータを参考に詳しく見ていきましょう。

歯周病/歯肉炎

猫は歯周病や歯肉炎を発症しやすいといわれています。歯周病や歯肉炎は治療が難しく、一度発症するとなかなか治りません。なお、治療方法は病状によりますが、内服薬の投与や歯石除去、抜歯などです。

また、歯周病が進行すると歯が抜けることもあり、重症化した場合は手術が必要になります。1回あたりの診療費は中央値で5万6,265円平均値で6万7,408円です。

消化管内異物/誤飲

猫は好奇心が旺盛で、誤飲を起こしやすく、特に子猫は注意が必要です。元気だった猫が急にぐったりしたり嘔吐を繰り返したりする場合は誤飲が疑われます。
なお、下記のものを誤飲した場合は特に危険なため、必ず動物病院を受診するようにしてください。
<誤飲すると危険なもの>
・犬や子供のおもちゃ
・骨や竹串、つまようじ
・乾燥剤
・保冷剤
・ボタン電池
・洗剤
・殺虫剤
・人間の薬
・たばこ
誤飲をした場合、動物病院ではX線や内視鏡などで検査を行った後に嘔吐を促しますが、吐き出せなかった場合は内視鏡手術や消化管の切開手術などで取り出すこともあります。

1回あたりの診療費は中央値で12万5,163円平均値で14万2,745円です。

そのほかの皮膚の腫瘍

猫の皮膚の腫瘍には良性と悪性があり、悪性の腫瘍には、リンパ腫、肥満細胞腫、乳腺腫瘍、扁平上皮がんがあります。特に、皮膚がん(メラノーマ)は猫の皮膚の腫瘍の中でも進行が速く、悪性度が高いとされています。
急にしこりやイボが大きくなったり出血が見られたりするほか、悪臭がしたりするなどの症状が見られた場合は注意が必要です。

なお、治療方法としては外科的切除が一般的で、1回あたりの診療費は中央値で7万3,480円平均値で8万7,433円です。

膀胱結石

膀胱結石は、膀胱に結石や結晶が形成される病気で、膀胱や尿道を傷つけたり、尿道に詰まったりすることがあります。主な原因は、食事が偏ったり水分摂取量が少なかったりすることです。
症状としては「トイレに行く回数が増える」「頻繁にトイレに行くのに尿が少量しか出ない」「排尿時に痛がる」「血尿が出る」などが挙げられます。

なお、結石や結晶が大きく自然に尿道から排出できない場合は手術で取り除きます。1回あたりの診療費は中央値で15万6,112円平均値で18万5,467円です。

全身性の腫瘍

猫の全身性の腫瘍は、体のあらゆる部分に発生する可能性があり、平均寿命が延びるにつれて悪性腫瘍の発生件数も増えています。
なお、悪性腫瘍とは、何らかの理由で生じた異常な細胞(腫瘍)が、体本来の制御から離れて自律的に増殖し続けて生じる腫瘤や病変のことです。良性腫瘍と比べると進行の速度が非常に速く、再発して別の臓器に転移することで、発生した臓器だけでなく全身を重篤な状態に陥れることがあります。

猫の悪性腫瘍の中でも特に悪性度の高い疾患は、乳腺がん、肥満細胞腫、悪性黒色腫、血管肉腫、骨肉腫などです。また、多くの場合、手術で腫瘍を取り除くほか、抗がん剤治療や放射線治療などを行います。1回あたりの診療費は中央値で7万8,364円平均値で9万4,992円です。

そのほかの全身性疾患/症状

猫のそのほかの全身性疾患は、下記のとおりです。

エリテマトーデス
エリテマトーデスは、自己免疫性疾患のことで、自分の免疫反応により主に皮膚に炎症を引き起こす疾患です。全身性エリテマトーデスでは、皮膚だけでなく腎障害や貧血、関節炎など複数の部位が次々と異常を起こします。

慢性腎疾患
慢性腎疾患は、猫の腎臓が長期間にわたって損傷を受け、その機能が低下する疾患です。

糖尿病
糖尿病は、猫の体がインスリンを十分に生産しなかったり、正常にインスリンを使用しなかったりすることで血糖値が上昇する疾患です。

甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は、甲状腺が過剰にホルモンを分泌する疾患です。

炎症性腸疾患
炎症性腸疾患は、猫の消化管に慢性的な炎症が見られる疾患です。

なお、そのほかの全身性疾患の診療費は、疾患の種類や治療方法によって大きく異なりますが、1回あたりの診療費は、中央値で8万1,439円平均値で10万3,726円です。

嘔吐/下痢/血便

猫の嘔吐、下痢、血便は、食事内容の変更やストレス、感染症、腸の炎症、腫瘍、異物の誤飲などさまざまな原因が考えられます。

なお、異物を誤飲した場合、異物が腸内を傷つけて出血し、血便につながることがあるため、開腹手術で異物を取り除くことが必要になるケースもあります。1回あたりの診療費は中央値で10万2,548円平均値で12万5,218円です。

そのほかの泌尿器疾患

猫の祖先は砂漠で生活していたことから、乾燥した環境でも水分を無駄なく利用して、濃縮された尿をするように進化してきました。そのため、猫は腎臓に負担がかかりやすく、泌尿器疾患にかかりやすい性質を持っています。猫の泌尿器疾患には、猫下部尿路疾患や尿路結石症(尿石症)、細菌性膀胱炎、腎臓や膀胱の腫瘍、尿道炎、尿毒症などがあります。

1回あたりの診療費は中央値で32万2,498円平均値で38万5,484円です。

外傷(挫傷/擦過傷/打撲)

猫の外傷はさまざまな原因で起こりますが、完全に屋内で飼育されている猫よりも屋外でも飼育されている猫のほうがケガをしやすくなります。これは、猫が外に出ると猫同士でケンカをしたり交通事故に遭ったりするほか、高い所から転落したりするといったトラブルに見舞われやすくなるからです。

なお、外傷の治療方法は傷の深さや広がり、感染症の有無などにより異なります。軽度であれば、適切な応急処置を行えば治りますが、深い傷や感染が広がっている場合や骨折している場合は、手術が必要となることがあります。1回あたりの診療費は、中央値で5万5,385円平均値で8万4,634円です。

尿道閉塞

尿道閉塞とは、尿道が何らかの原因で塞がり、尿が出にくくなったり全く出なくなったりする状態を指します。猫の尿道閉塞の原因は、結石(尿路結石)が尿道に詰まっていたり、腫瘍が尿道を圧迫していたりなど、さまざまですが、外傷による血のかたまりが尿道に詰まることもあります。特にオス猫は尿道が細く、S字状に湾曲しており、詰まりやすい構造をしているため、メス猫よりも詰まりやすくなっています。

尿道閉塞が起こると猫はしきりに排尿姿勢を取りますが、尿がぽたぽた垂れる、あるいは全く出ない状態は非常に危険であるため、早急に受診しましょう。

治療方法としては、尿道にカテーテルを入れて、尿道を開通させ、溜まっている尿を排泄させます。その後、結石などが詰まっているときはそれを取り除いて尿を出し、膀胱の中をきれいに洗浄して、結石を溶かす治療を行います。

1回あたりの診療費は、中央値で19万5,620円平均値で22万4,694円です。

猫の去勢や避妊手術の費用はどのくらいかかる?

望まない妊娠やトラブル、生殖器関連の病気を防ぐためにも、オスの猫は去勢手術、メスの猫は避妊手術を受けることをおすすめします。それぞれどのくらいの手術費用がかかるのか見ていきましょう。

去勢手術の費用

オスの猫は生殖器関連の病気や生活上のトラブルを防ぐために、去勢手術を受けることが推奨されています。特に、生後6〜10ヵ月で性成熟を迎えると、立ったままの姿勢であちこちに尿をする「スプレー行動」をするようになるため、獣医師と相談して早めに去勢手術を行うことをおすすめします。

公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の飼育者意識調査(平成27年度)」によると、具体的な去勢手術費用は、1万2,652円です(中央値)。

避妊手術の費用

メスの猫は、発情期のストレス軽減や生殖器系の病気の予防、予定しない妊娠の回避のためにも避妊手術を受けることが推奨されています。特に、避妊手術をしていない猫は子宮蓄膿症にかかりやすく、避妊手術を行うことで乳腺腫瘍のリスクも下がるため、獣医師と相談して適切な時期に避妊手術を行いましょう。

公益社団法人日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の飼育者意識調査(平成27年度)」によると、避妊・去勢手術にかかる具体的な避妊手術費用は、卵巣切除による避妊手術が1万9,833円卵巣子宮切除による避妊手術は2万986円です(いずれも中央値)。

猫のケガや病気による高額な手術費用に備えてペット保険への加入がおすすめ

猫のケガや病気による高額な手術費用に備えてペット保険への加入がおすすめ

万が一、猫がケガや病気に見舞われたとき、入院や手術費用の面で大きな助けとなるのがペット保険です。ペット保険は、飼っている猫がケガや病気で治療を受けた場合にかかった費用を補償し、通院・入院・手術の3つが主な補償対象です。

なお、健康診断や予防接種などの病気の予防に関わる行為や、避妊・去勢手術は補償対象外になりますが、幅広いケガや病気の治療費を補償してくれます。補償割合は通常、50%か70%のいずれかに設定されており、この割合が高くなるほど、保険料も高額になります。

猫の治療費は全額飼い主の自己負担となり、手術が必要になった場合は手術費用だけでなく入院費や退院後の通院費も必要です。その場合、数十万円かかる場合もあるため、あらかじめペット保険に加入しておくことをおすすめします。ペット保険は保険会社や商品によって、補償内容や保険料が大きく変わるため、比較検討するといいでしょう。

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