犬の痙攣(けいれん)はなぜ起こる?原因や対処法を解説

犬の痙攣(けいれん)はなぜ起こる?原因や対処法を解説

 愛犬が痙攣したら、飼い主は慌ててしまいますが、そんなときこそ落ち着いて対処することが必要です。もしものことが起きたときに冷静に行動できるよう、原因や対処法を知っておきましょう。

 この記事では、犬が痙攣する原因や対処法などについて解説します。
ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。2019年7月、ガイア動物病院開設、院長となる。

※監修は医療情報についてのみであり、ペット保険への加入を推奨するものではありません。

mokuji目次

  1. 犬の痙攣とは意志と関係ない筋肉のこわばり
  2. 犬が痙攣を起こす原因や考えられる病気
    1. てんかん
    2. 脳の疾患や外傷
    3. 脳以外の疾患
    4. 中毒
    5. 低血糖
    6. 感染症
    7. 筋肉疲労
  3. 犬の痙攣が起きたときの飼い主の対処
    1. 周囲の安全確保
    2. 時間と犬の様子を確認
    3. 動物病院に相談
  4. 犬の痙攣は慌てず冷静に対処しよう

犬の痙攣とは意志と関係ない筋肉のこわばり

 犬の痙攣とは、犬の意思と関係なく筋肉がこわばって勝手に動くことです。寒さや恐怖、加齢、痛みなどで犬が震えることがありますが、震えの場合は意識があり、体は犬の意思で動かせます。痙攣の場合、犬の意思で体を動かすことはできません。

 犬の痙攣は数秒〜数分で落ち着くことが多いですが、泡を吹いたり失禁したりすることもあり、普段とは違う様子に飼い主はパニックになってしまうかもしれません。

 しかし、痙攣には重大な病気が隠れていることもありますので、慌てず冷静に犬の様子を観察し、対処法を考えることが必要です。

犬が痙攣を起こす原因や考えられる病気

犬が痙攣を起こす原因や考えられる病気

 犬が痙攣するときは脳の病気が疑われますが、それ以外にも痙攣の原因はさまざまです。ここでは、犬の痙攣の原因や、考えられる病気をご紹介します

てんかん

 犬の痙攣の原因で最も多いとされるのが「てんかん」です。てんかんは、脳の神経細胞が異常な信号を発することで、全身や一部の機能に症状を引き起こします。その症状のひとつが痙攣です。2回以上連続して痙攣が起きる場合は、てんかんを疑ったほうがいいかもしれません

 症状としては全身の痙攣がありますが、ほかにも大量のよだれや落ち着きのなさ、歯を食いしばるなどの症状も、てんかんの前兆、または発作の一部とされています。

 また、てんかんには、脳に炎症や腫瘍などの異常がない「特発性てんかん」と、脳の外傷や疾患などといった異常があって引き起こされる「症候性(構造的)てんかん」があります。「特発性てんかん」は遺伝的な要因が疑われており、下記のような犬種が発症しやすいとされています。

●関連リンク:
犬のよだれが多いときの原因は?よだれを伴う犬の病気を紹介
特発性てんかんを発症しやすいとされる主な犬種>
・イタリアングレーハウンド
・キャバリアキングチャールズスパニエル
・ゴールデンレトリバー
・シェットランドシープドッグ
・シベリアンハスキー
・ダックスフンド
・ボーダーコリー
・ビーグル
・プードル
・ラブラドールレトリバー
 なお、特発性てんかんは生後6ヵ月〜6歳くらいの若年齢での発症が多いとされていますが、症候性てんかんは脳に原因があれば何歳でも発症しますので、てんかんはどの年齢でも発症する可能性があると思った方がいいでしょう

脳の疾患や外傷

 脳腫瘍や脳炎、脳梗塞などの脳疾患や、脳の外傷を原因として痙攣が起きることがあります。なお、これらを原因とした場合は、ふらついてうまく歩けなかったり、目が見えにくくなって家具にぶつかったりといった痙攣以外の症状が見られることもあります。さらに、これらを原因として、症候性てんかんを発症することもあります。

 また、脳疾患の1つであり、脳内に過剰な水が溜まって脳を圧迫することで、痙攣をはじめとするさまざまな症状を起こす水頭症は、先天的な発症が多いとされています。外傷などで発症することもありますが、特に下記のような小型で短頭の犬種は先天的な要因での発症が起こりやすいとされているため、飼い主は普段から犬の様子に注意しましょう。
<先天的に水頭症を発症しやすいとされる主な犬種>
・シーズー
・チワワ
・トイプードル
・パグ
・ポメラニアン
・ペキニーズ
・マルチーズ
・ヨークシャーテリア

脳以外の疾患

 犬の痙攣は、腎臓や肝臓などの病気を原因とした、代謝や排泄の異常によって起きることがあります。正常に毒素が排出されないと、体内に蓄積して痙攣などの神経症状が起きるのです。この場合、腎臓や肝臓の病気がかなり進行して起きている可能性があります。

中毒

 コーヒーやチョコレート、キシリトールなどの中毒で、犬が痙攣症状を起こすことがあります。人間には問題なくとも、犬にとっては有害なものはたくさんあり、間違って犬が口にすることがないよう注意しなければなりません。

 殺虫剤や除草剤、保冷剤などにも中毒成分が含まれるため、気を付けてください。誤って食べてしまった場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

低血糖

 低血糖が原因で痙攣を起こすこともあります低血糖は、何らかの原因で血液中の糖分が減少し、それによって不調が起きることで、特に子犬に多く見られます。

 成犬の場合は体内に糖分の蓄えがありますが、子犬は体が小さいため一度にとれる食事量では十分に蓄えられまません。そのため、長時間食事をとれないと低血糖を起こすことがあります。また、活動量が多くエネルギー消費が多いことや、寄生虫感染しやすいことなども、子犬が低血糖を起こしやすい理由です。

 成犬の場合でも、膵臓の腫瘍や糖尿病など、何らかの疾患の合併症で低血糖を起こすことがあります。

感染症

 感染症が原因で犬の痙攣が起こることがあります。中でも「犬ジステンパーウイルス」は、感染すると鼻水や咳、下痢といった症状があり、重症化すると神経症状から痙攣が見られることもあります。

 犬ジステンパーウイルスはワクチン接種で予防できますが、予防接種の完了していない子犬は注意が必要です。

●関連リンク:
犬の鼻水の原因とは?考えられる病気を紹介
犬の咳が止まらない!原因と注意すべき病気について
愛犬が下痢をしたらどうする?原因や対処法を解説

筋肉疲労

 激しい運動の後に、犬の手足がピクピク動くといった痙攣が起こることがありますが、それは特に問題ありません。筋肉疲労が原因の生理現象のため、ゆっくり休ませましょう。

 ただし、意識を失っているような場合はそのほかの原因が考えられるため、よく観察してください。

犬の痙攣が起きたときの飼い主の対処

犬の痙攣が起きたときの飼い主の対処

 犬が痙攣しているとき、飼い主には冷静な対処が求められます。愛犬が痙攣を起こしてしまったときに慌てないよう、対処法を知っておきましょう。

周囲の安全確保

 犬が痙攣したとき、第一にすべきことは周囲の安全確保です。ぶつかったら危険な物があれば遠ざけて、犬の周囲にスペースを確保してください。このとき、犬の体にふれるのはできるだけ避けましょう。特に犬に意識がないときは、噛まれて飼い主がケガをするおそれがあります。

 ソファや椅子の上などにいるときに犬が痙攣した場合は、落ちてケガをしないように、クッションや毛布などを下に敷いておくことをおすすめします。散歩中など野外の場合は、犬のお尻側を支えて安全な位置に移動させます。

 犬が痙攣すると、パニックになって大声で呼びかけたり、体を揺すったりしてしまいがちですが、まずは落ち着くことが大切です。

時間と犬の様子を確認

 犬の痙攣は、多くの場合は2〜3分程度で止まります。長く続くようなら重篤な発作の可能性があるため、痙攣が始まったら何分間続いたか時間を計りましょう。痙攣が5分以上止まらなかったり、連続して痙攣を起こしたりする場合は、すぐに病院で対処する必要があります。

 痙攣が治まった後、犬がボーっとしていたり落ち着かなかったりする場合も、何らかの異常が起きている可能性があり、動物病院での相談が望ましいです。

 できる限り、犬が痙攣している様子を動画撮影すると、獣医師が診断しやすくなり、時間を測ることもできます

動物病院に相談

 犬がドッグランで走り回った後に手足がピクピク痙攣する、寝ているときにバタバタ動いているなどは、生理的な痙攣なので心配ありません。しかし、その他の痙攣には何らかの異常が隠れている可能性が高いため、治まった後に犬が元気でも動物病院の受診をおすすめします。

 特に、痙攣が2分以上続いた場合や、1回目から24時間以内にまた痙攣するような場合は、受診が望ましいです。

犬の痙攣は慌てず冷静に対処しよう

 犬が痙攣すると、いつもとは違う様子に驚き、心配になります。しかし、そういうときこそ、飼い主は冷静に対処しなければなりません。重大な病気が隠れている可能性があり、場合によってはすぐに治療が必要になるかもしれませんので、普段から犬の様子を観察し、変わった様子があればすぐに気づけるようにするとともに、中毒などを起こさないよう、犬の環境に気を配りましょう。

 どのような検査や治療が必要になるか、実際に動物病院に行ってみないとわかりません。診療費が不安な場合は、ペット保険の加入を検討することをおすすめします。

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ガイア動物病院 院長 松田唯

監修者 ガイア動物病院 院長 松田唯

埼玉県生まれ。北里大学獣医畜産学部卒業後、千葉県内と東京都内の動物病院で勤務。
2019年7月、ガイア動物病院(東京都杉並区)開設、院長となる。大学時代は医療の専門用語が苦手だったこともあり、治療法や薬について分かりやすく説明し、治療法のメリット・デメリットを理解して飼い主さまが選択できる診療を心掛けるようにしています。
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