免責証書とは?記載項目と作成時の注意点を解説
本記事では、免責証書と示談書の違いや記載項目について解説します。いざというときに慌てないために、どのような書類かを知っておきましょう。
・森川 弘太郎 弁護士(第二東京弁護士会)
・坂本 玲央 弁護士(第二東京弁護士会)
※詳細ページ下部に記載
目次
免責証書は、交通事故の解決内容を記した書類
車で他人の家の塀に突っ込んで破壊してしまった場合や、お店のものを誤って破損してしまった場合など、被害者に一切過失のないトラブルが生じた際に、免責証書を作成することが多いです。
なお、双方に過失があるトラブルが発生した際には、免責証書ではなく示談書を作成することが多いです。
示談書には、双方の過失割合や相手への支払金額が明記されており、当事者双方が署名、捺印します。
一方の免責証書には、被害者が受け取る金額のみが記載されており、署名、捺印するのも被害者のみです。
ただし、免責証書は「加害者が被害者に対して◯◯円支払う」ことを証明する書類ではありません。
あくまでも、被害者が加害者に対して「加害者が◯◯円を支払えば、その後の損害賠償請求をしない」ことを証明する書類です。
そのため、基本的に免責証書は、加害者側が自動車保険に加入している場合にのみ作成します。
加害者側が保険に入っていれば、保険から賠償金を支払われるため、不払いになるリスクがありません。
一方、任意保険に加入していない場合は、被害者側の署名、捺印しかない免責証書ではなく、加害者側の責任を明記した示談書を作成するのがおすすめです。
免責証書の記載項目
しかし、実際の免責証書は、一般的に加害者である甲の加入している保険会社が作成します。
そのため、免責証書を加害者または被害者自身が作成することは通常ありません。
とはいえ、免責証書にどのようなことが書いてあるのかを知っておくことは大切です。
ここでは、免責証書の一般的な記載項目と、実際の記載例についてご紹介します。
なお、免責証書の書式に決まりはなく、保険会社などによって異なりますので、あくまで参考としてください。
日付
事故発生日ではありませんので、注意してください。
当事者甲の氏名・運転者
免責証書は責任割合がすべて加害者にあるときに作成されるものですから、当事者は、加害者と被害者ということになります。
加害をして、賠償金を支払う側が「甲」です。
なお、当事者甲と「運転者」が異なる場合は、その名前を運転者の欄に記載してください。
免責証書は、甲に対して、乙が「◯◯という条件により、今後の請求を行わない」ことを示す書類です。
乙から甲に対して発行する書類ということになりますから、宛先として、当事者甲の氏名が記載されています。
当事者乙の住所、署名、捺印
受領金額
なお、免責証書は「被害者が該当の賠償金を受領することによって、それ以外の請求を行わない」ということを証明する書類ですから、賠償金の額とあわせてその旨が記載されます。
すでに支払われている金額がある場合は、「既受領額」などとして、受領済の金額を記します。
事故発生日時
正しく記載されているか確認してください。
事故発生場所
交通事故証明書がある場合は、それにもとづいて記載します。
事故当事者氏名、車両登録番号
また、事故を起こした車の車両登録番号も記載が必要です。
振込先の情報
銀行名、支店名、支店番号、口座種別、口座番号、口座名義を記入してください。特に、普通や当座といった口座種別は忘れやすいので注意が必要です。
■免責証書の記載例
交通事故における免責証書を作成する際の注意点
主に、下記の2点に注意して作成してください。
原則として変更・取り消しができない
一度署名、捺印して返送してしまうと、記載内容に合意したとみなされます。
そのため、免責証書に記載された賠償額については、適正な金額であるかどうかを十分検討する必要があります。
免責証書は加害者側の保険会社が作成するため、被害者側の視点に立って作られるわけではありません。
賠償金額が実際の損害額と見合っているかどうかなどを、しっかり確認しましょう。
記載に誤りがあると無効になる
保険会社が作成したものだからと過信せず、署名、捺印する前にチェックすることが大切です。
自動車保険に加入すれば、免責証書は保険会社が作成する
自動車保険に加入していれば、免責証書は保険会社が作成してくれるため安心です。
交通事故というと、自分が被害者になるケースを想定しがちですが、加害者になってしまう可能性もあります。
万が一加害者となってしまったとき、自動車保険に加入していれば、保険会社があいだに立って交渉をしてくれますし、免責証書の作成も任せられるため、負担を大幅に軽減できるでしょう。
万が一の事態に備え、免責証書の記載内容や注意点を覚えておこう
被害者に過失がない場合に作成し、「加害者が○○円を支払えば、その後の損害賠償請求をしない」ことを証明します。
交通事故は、いつ誰が当事者になるとも限らないものです。万が一の事態に備え、免責証書の記載内容や作成時の注意点を覚えておきましょう。
自動車保険に加入すれば、免責証書は保険会社が作成してくれるため、ぜひ自動車保険に加入することをおすすめします。
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監修者 森川 弘太郎 弁護士(第二東京弁護士会)
東京弁護士法人 代表弁護士
IT法務、エンターテインメント法務、フランチャイズに特化した企業法務専門の法律事務所にて勤務した後、東京都内3拠点の法律事務所(新宿東口法律事務所、立川法律事務所、八王子法律事務所)を構える東京弁護士法人を設立。東京弁護士法人は弱点のない総合型法律事務所を目指し、各弁護士が個人向け業務・法人向け業務、民事事件・刑事事件問わず横断的に案件を扱いながら総合力を高めつつ、弁護士によって異なる得意分野を持つことで専門性もあわせ持つ法律事務所となっている。
監修者 坂本 玲央 弁護士(第二東京弁護士会)
東京都立川市に拠点を構える立川法律事務所(東京弁護士法人本部)にて、刑事事件・離婚・相続・交通事故等の個人向け業務から企業法務等の法人向け業務まで幅広い業務を取り扱っている。学生時代に長く野球に携わってきた経験から、その持ち前の体力を武器に、決して諦めず、お客様に誠心誠意真正面から向き合う姿勢を持ち続けることをモットーとしている。