交通事故で自動車保険の保険金が支払われるまでの流れを解説
ここでは、自動車事故発生から自動車保険の保険金が支払われるまでの一連の流れについて、事故発生時に現場で行うべきことと、保険会社に事故の報告をしてからの流れに分けて解説します。
目次
車での事故発生時に現場で行うべき対応
車での事故発生時に現場では、下記のような手順で対応を行う必要があります。
1. 負傷者を救護する
負傷者の救護は法律上の義務となり、必ず行わなければならないものです。道路交通法72条では、車などによる事故があったとき、事故にかかわる車両の運転者や同乗者は、すぐに運転を停止して負傷者を救護し、道路における危険を防止するなどの必要な措置をとらなければならないとされています。
もし、負傷者の救護をしないまま現場から立ち去ると、救護義務違反(ひき逃げ)となって、免許取り消しおよび10年以下の懲役または100万円以下の罰金を科される可能性があります。どんな状況でも、必ず最初に負傷者救護を行いましょう。
2. 道路における危険を防止する措置をとる
車の損傷が激しくて移動できない場合は、ハザードランプをつける、三角表示板を置く、発煙筒を設置するなどして、後続車に事故を知らせなければなりません。
なお、車を移動させる前に事故現場の写真を撮っておくなどして、どこで事故が起こったかわかるようにしておきましょう。
3. 警察に連絡する
連絡を怠ると報告義務違反として、3ヵ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
警察に報告する内容は「事故が発生した日時と場所」「死傷者の数と負傷の程度」「損壊した物と損壊の程度」「事故にかかわる車などの積載物」「事故について、すでにとった措置」の5つです。
110番に電話すると、まず「事件ですか、事故ですか」と聞かれ、「事故です」と答えると、警察官から5つの内容について質問されます。スムーズに答えられるよう、あらかじめ情報をまとめておきましょう。
4. 相手の情報を確認する
相手が自動車保険に加入している場合は、保険会社の名称と証券番号、契約者氏名、連絡先も確認します。
5. 目撃者の確認をする
目撃者がいない場合でも、ドライブレコーダーの映像は事故の状況を示す証拠になります。ドライブレコーダーを搭載しているなら、事故前後の映像が上書きされないように保存しておくことが大切です。
6. 事故状況と車などの損傷状況を確認する
写真の撮影や音声の録音も活用して、下記のような事柄について記録しておくと、のちに双方の過失割合を判定する際に役立ちます。
<事故の際に記録しておきたい主な内容>
- 現場の道路の状況
- 事故当時の信号の色
- 衝突位置
- 路面のタイヤ痕やスリップ痕
- 破片の散乱状況
- 事故当時の自分と相手の走行速度
- 車の損傷状況
- ガードレールや塀などの損傷状況
7. 実況見分に立ち会う
実況見分では、事故現場の状況(路面状況や見通し、信号の色、標識の有無など)、事故の発生状況(事故発生時の車のスピードや相手を認識した地点など)、事故車の状態(タイヤの状態や損傷の具合など)といった情報を整理し、「実況見分調書」が作成されます。実況見分調書は、のちに当事者双方の過失割合を決める際の判断材料となる大切な書類です。
実況見分自体は、数十分〜2時間程度で終わることが多いですが、その後、警察署に移動して双方の当事者からの聞き取りが行われるのが一般的です。ある程度の時間がかかることは認識しておきましょう。
保険会社に事故の報告をしてから保険金が支払われるまでの流れ
1. 保険会社へ事故を報告する
多くの保険会社では、電話やインターネットから24時間、事故の報告が可能です。その際、保険会社に伝える必要がある情報は、下記のとおりです。
<保険会社への事故報告の際に必要となる情報>
- 自動車保険の証券番号
- 事故発生の日時、場所、道路状況
- 事故発生時の状況
- 運転者の氏名、生年月日、電話番号、免許証番号、保険契約者との関係、ケガの有無
- 運転した車のナンバープレート番号
- 事故相手の氏名、住所、連絡先、同乗者を含めたケガの有無
- 事故相手の車のナンバープレート番号
- 事故相手の車の損傷状況
- 目撃者の氏名や連絡先
同様に事故の相手が、その人が加入する保険会社に事故の報告を行い、相手にも過失があると思われるケースでは、通常、遅くとも事故から数日で相手の加入する保険会社から連絡が来ます。
2. 医療機関で受診する
治療費は、自身が被害者の場合は加害者側の負担になり、自身が加害者の場合は加入している自動車保険によって補償されます。一時立て替え払いをしても後から請求できるので、領収書や診断明細書は保管しておくようにします。
3. 保険会社から保険金請求に必要な書類の案内が届く
<保険金請求に必要となる書類>
・交通事故証明書
交通事故証明書とは、交通事故が起きた事実を証明する書類です。事故の発生日時や場所、当事者の氏名などが記載されています。事故を警察に報告しているなら、各都道府県の自動車安全運転センターに申請すると発行されますが、保険会社の担当者が代理で用意してくれることもあります。
・事故発生状況報告書
事故発生状況報告書とは、交通事故の発生状況を説明するための書類です。保険会社から用紙が送られてくるので、自身で事故の起きた日時や現場の状況、当事者それぞれの車の速度などを書き込んで作成します。
・診断書
診断書は、ケガをした事実やケガの程度を証明する書類で、ケガの治療費などを請求する際に必要です。医師または病院の担当窓口に発行を依頼します。
・診療明細書
診療明細書は、ケガの治療にかかった費用を証明するものです。ケガの治療費などを請求する際に必要になります。
4. 保険会社による損害調査が行われる
これは、保険の支払い対象となるかどうかや、発生した損害額、損害賠償の範囲などを調べるもので、結果については保険会社から説明があります。不明な部分については質問し、明らかにしておきましょう。
5. 相手方と示談交渉を行う
示談交渉は、加害者側の保険会社による損害調査が終わって損害額が確定したとき、保険会社から条件が提示されることで始まることが多いです。事故によってケガをした場合、治療中だと損害額が確定しないので、ケガの治療が終了してから示談交渉が行われます。
基本的に示談交渉は、当事者同士で行うものですが、自身も相手方も任意自動車保険に加入しているなら、双方の保険会社が示談を代行するのが一般的です。事前に保険会社から、示談代行サービスの利用意向を確認されます。利用する場合はその旨を伝えましょう。
ただし、停車車両への追突事故のように、過失割合が0:100になる「もらい事故」では、被害者側(過失割合0の側)の当事者は、保険会社に示談代行を依頼することはできません。
そのため、被害者の過失割合が0の場合は、被害者が自分で示談交渉を行うか、弁護士に依頼することになります。保険会社相手に自身で交渉するのが不安な場合は、弁護士に依頼することも検討してください。自動車保険に「弁護士費用等補償特約」をつけている場合は、活用しましょう。
6. 保険金支払額が決まる
それぞれが請求可能な損害賠償額は、「過失相殺」という考え方にもとづいて決まられます。これは、事故の被害者にも責任がある場合は、過失割合に応じて損害賠償額が減額されるというものです。
例えば、車同士の事故で、示談交渉の結果、過失割合は被害者側が30%、加害者側が70%と決まったとします。双方の損害額は被害者側が300万円、加害者側が200万円だとすれば、それぞれの相手に請求可能な損害賠償額は、下記のとおりです。
■相手に請求可能な損害賠償額の算定例
被害者 | 加害者 | |
過失割合 | 30% | 70% |
損害額 | 300万円 | 200万円 |
請求可能な損害賠償額 | 300万円×70%=210万円 | 200万円×30%=60万円 |
この場合は、加害者側の保険会社から被害者に対して、保険金として差額の150万円が支払われることになります。
7. 保険金が支払われる
慰謝料や休業損害、治療費を立て替えた分などは本人に直接支払われますが、車両の修理費やケガの治療費などは、工場や病院に直接支払われる場合もあります。
車での事故の際は、決まった流れに沿ってやるべきことを行おう
保険会社に連絡した後は、必要書類の提出後、ケガの治療が終了したタイミングで示談交渉を開始。示談交渉がまとまれば、過失割合に応じて保険金が計算され、支払いがなされるという流れになります。
また、不測の事故に備えて、自動車保険の補償内容やサポート体制を見直しすることも大切です。「自動車保険 オリコン顧客満足度ランキング」では、事故対応やロードサービスの充実さ、保険料などの点からも各社の評判を確認できます。保険会社選びの参考にお役立てください。