自動車保険はなぜ必要? 自賠責保険だけでは足りない理由
そもそも自動車保険とは何か
自動車保険には自賠責保険と任意保険があり、それぞれ補償の目的が違う。次に、それらの違いについて詳しく見ていこう。
■自賠責保険
自賠責保険は、原動機付自転車を含むすべての自動車が加入しなければならない。そもそも自賠責保険に加入していなければ運転をすることができないのだ。補償の内容や保険料については、取扱いしているどの保険会社でも変わりはない。
ちなみに、自賠責保険に加入せずに運転するなどの違反の場合、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金となる。また、運転時に自賠責保険の証明書を所持していないと30万円以下の罰金にもなる。さらに、罰金とともに交通違反キップも切られるので、くれぐれも保険の期限切れや付帯忘れには注意したい。
自賠責保険の保険料は、自家用自動車では12ヶ月契約で1万5520円(沖縄県、離島などの一部地域を除く)だ。ちなみに24ヶ月は2万5830円、36ヶ月は3万5950円で契約月数が増えれば保険料は割引かれる。
■任意保険
任意保険は、民間の保険会社が開発・販売する自動車保険だ。その保険には、様々なタイプのものが用意されている。代表的な保険には「対人賠償保険」「対物賠償保険」「人身傷害保険」「搭乗者傷害保険」「無保険車傷害保険」「自損事故保険」「車両保険」があり、保険会社はこれらの保険を組み合わせて販売する。販売チャンネルは、代理店型と通販型がある。
「自賠責保険」に加えて「任意保険」にも入る理由
■自賠責保険の対象は「他人を死傷させた場合のみ」
自賠責保険で対象となるのは、交通事故で他人を死傷させた場合のみだ。つまり、被害者が他人でない場合は補償されず、自分や家族は対象外だ。また、電柱にみずから衝突したような自損事故で死傷しても、自身はもちろん自分の車に対しても補償されない。自賠責保険は起こりうるすべての事故には対応できないのだ。
また、自身が加害者ではなく被害者になってしまうケースにも注意が必要だ。たとえば、交差点で赤信号を守り正常に停車している車に、自身のわき見や居眠り運転が原因で衝突して死傷するような事故だ。
さらに、車の運行中ではない損害も補償されない。たとえば、スケートボードで遊んでいた子どもが駐車場内の車にぶつかって死傷する事故は、勝手にぶつけられたにも関わらず補償の対象外となる。
そして、法令により自賠責保険で支払われる保険金額には限度が定められている。被害者1名あたり、死亡による損害の場合は3000万円、ケガによる損害の場合は120万円が限度額だ。他人が亡くなった、または他人に後遺障害を負わせた場合には、慰謝料や逸失利益などが支払われる。他人にケガをさせた場合には、治療関係費や休業損害、慰謝料などが支払われる。
■任意保険は「自賠責保険をカバーする保険」
任意保険は、自賠責保険では補償されないものも含む様々な損害を補償する保険だ。対象となる自動車事故による損害と対応できる保険は下記のとおりだ。
【1】他人への賠償
・他人の損害や財物に対する補償の保険(対人賠償保険・対物賠償保険)
特に対人賠償保険は自賠責保険から支払われる保険金では足りない額を補うことができる保険で、「自賠責保険の上積み保険」としての機能を果たしていると言える。自賠責保険で保険金には限度額があるが、任意保険の対人賠償保険では、限度額を設けない「無制限」とする契約が一般的だ。
【2】自身への補償
・運転者に対する補償の対する補償の保険(人身傷害保険・搭乗者傷害保険・自損事故保険)
・同乗者に対する補償の保険(人身傷害保険・無保険車傷害保険)
・自分の車に対する補償の保険(車両保険)
人身傷害保険は、自賠責保険では補償されない自身や家族、搭乗者の損害を補償するものだ。また、車両保険では自損による損害が補償されるため、電柱に衝突して車が破損した場合にも保険金が支払われる。
このように、任意保険は自賠責保険ではカバーしきれない部分も幅広く補償する保険であり、他人のためだけではなく自身や家族のための保険でもあるのだ。
保険料を支払い続けるのは無駄なのか
交通事故を起こすと、加害者は被害者の損害や物損に対して賠償を負うことになる。これまでの人身事故の高額判決例では5億円を超える損害額のほかに、4億円を超える判例がいくつも報告されている。また、物損事故の高額判決例は、2億円超をはじめ、1億円を超える損害事故も複数起こっている。
これだけの高額になれば一生涯支払い続けても、とても払いきれる額ではない。また、人身事故による死亡や後遺障害は、自賠責保険だけではとても補てんできない可能性がある。
つまり、自賠責保険では死亡による損害は3000万円までが補償の限度となるため、人身事故の損害賠償額が高額になれば自賠責保険だけでは十分ではないと言える。そこで、自賠責保険とプラスして賠償できるだけの経済的な備えをする必要性があるわけだ。
ちなみに、損害保険料率算出機構の『2017年度 自動車保険の概況』によると、自家用車(普通)の対人賠償責任保険に無制限で加入している割合(新契約台数)は99.8%、対物賠償責任保険に無制限で加入している割合は97.3%と、ほぼ100%の加入に近い。
交通事故はいつどこでどんな事故が起こるかはわからない。だからこそ、保険料を払い続けるとしても、もしもの事態のために支払い続けることは決して無駄ではないと言えるだろう。