【示談書】ひな形と書き方アドバイス(1)物損事故の場合
今回は保険会社を通さず、当事者間で示談を行って示談書を作成するケースについて、弁護士のアドバイスを交えて説明していきます。
そこで被害者と加害者が損害賠償請求の金額について話し合い、示談が成立したとしても、口約束だけでは後々「言った言わない」のトラブルになりかねません。こうした事態を防ぐためにも、示談結果は書面にしてきちんと残す必要があります。“示談”は、示談書に記して初めて合意内容が明確になるものであり、示談書は示談の終着点といえるでしょう。
まず、示談書には決まった形式がありません。書式やフォーマットは自由なので、書面に示談内容を記載したうえで、双方の署名と捺印があれば、示談書として成立します。
ただし、当事者間及び保険会社が介入して作成した私製の示談書には、強制執行ができる効力(執行力)はないため、示談金の支払いが滞る、また全く支払いがないといった場合に、強制的に加害者の財産を差し押さえるなどの強硬手段に出ることはできません。相手の支払約束に不安がある場合は、示談書を「公正証書」にし、「強制執行認諾文言」を入れる必要があります。
次に、「示談内容」です。損害額、過失割合、損害額と過失割合に基づく負担額、支払条件など、話し合いによって決定した項目を埋めていきましょう。
では例として、自動車と自動車の衝突事故時の示談書のひな形を、弁護士のアドバイスと併せて見ていきましょう。
当事者の「甲」と「乙」の区別については、争いがなければ事故証明書の区分に沿って記入すればOKです。ちなみに事故証明書では、過失割合の多い方が「甲」となっています。また、当事者が多い事故であれば、丙・丁・戊・己……と枠を増やす必要があります。
<アドバイス2>
当サンプルは「2×3」と「1×4」の負担額を比べて、金額が多い方がその差額を支払う場合のものです。そのほかに「負担額を確定の上で、それぞれが相手の修理工場などに直接支払う形にする」などの方法もあります。最終的に支払う当事者と金額を特定し、“どの当事者が誰にいくら支払うのか”という支払義務の認識を合わせましょう。
<アドバイス3>
示談金の支払期限を設定することが大切です。もし、期限までに支払いがない場合は督促を。それでも支払われなければ、弁護士などの専門家に相談するか、裁判所の利用も検討しましょう。
<アドバイス4>
示談金の振込手数料は、基本的には示談金を支払う方が負担します。
当事者による示談交渉が決裂した場合や、示談では解決が難しい事故などの場合は、日本弁護士連合会の交通事故相談センターや裁判所を利用することになります。裁判になると長期化するケースもあるため、示談で解決できる事故では示談書を記入して支払いの確約をとり、当事者同士しっかり保管しておきましょう。
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