(3)桐谷さんの「NISA運用術」 〜株価の下がりにくい銘柄とは?
NISAも株主優待を狙え 「いい優待のある銘柄は、株価がなかなか下がらない」
普通は株で儲けると2割が税金として取られてしまいますが、NISAならゼロ円。配当も税金なしなのがうれしいですね。もちろん私も口座を作りました。これから開設する人は、証券会社によって「手数料が恒久無料」「口座開設で数千円キャッシュバック」など特典や扱っている商品が違うので、口座開設前に自分にとっての優先項目を決めておくとよいでしょう。
――どんな風に活用するのがいいでしょう?
NISAの口座を開設したら、投資信託を買うという選択肢もありますが、私はやはり優待のある株をおすすめします。“優待そのものが得である”というのもおすすめする理由のひとつですが、いい優待のある銘柄はなかなか株価が下がらないんです。
バブルの頃は株価がどんどん上がっていたし、買う方の目的も値上がりでの儲けでしたから、企業としても配当や優待に力を入れる必要があまりなかった。でも、長いあいだ日本経済が低迷し、「株を買うと損をするから」と思う人が増えたので、優待という付加価値をつけて投資家にアピールしているんです。私もそうですが、優待を目的として買っていると、売らない人も多い。つまり、株価が下がりにくいのです。
――なるほど。やっぱり株主優待が充実した銘柄が狙い目なんですね。
持ち続けているだけで優待が定期的にもらえるので、株価が上がらなくてもへっちゃらですから。配当がなかったり、配当が安い株は、持っていても値上がりしなければあまり利益になりませんから、私としては、初心者は避けたほうがいいと思います。
オススメは「高配当&優待付きの銘柄」
やはり、なるべく高配当で優待のある銘柄ですね。まず倒産しないと思われるほど規模が大きく、配当が3〜4%の企業を狙いましょう。
具体例としては、私が注目しているのは「NTTドコモ」や「武田薬品工業」ですね。それぞれ約4%の配当があります。このような企業の株を100万円の範囲で買えば、5年間持っていても配当に税金がかからないので、お得だと思います。
また、NISAが始まるのをきっかけに株に興味を持った人は、実際に株をやっている人のブログを読んでみるといいでしょう。「こんな優待がある」「この会社に優待が新設された」など、優待を活用している人のいきいきした情報が手に入りますよ。実は私も参考にしています。
・口座は自分に合った金融機関で開設しよう
・持ち続けているだけで優待がもらえる銘柄を運用しよう
・株をしている人のブログをチェックして情報収集しよう
・倒産の心配が少ないと思われる大企業の銘柄
・株主優待がある銘柄
・高配当、3〜4%の配当がある銘柄
美人にはこりごり? 「優待は取られても現金は取られない」
かつて、儲けようと思って信用取引をやって、結果的に大損しちゃいましたので……。いまは、株で儲けるより、残りの人生を楽しく生きたいと思ったほうがいいと気がついたんです。今ある株で、配当と優待を受けて、その優待を使って楽しく人生が過ごせればいいなと思っています。
―― では、これまでの優待生活で“ひやっ”とした経験は?
以前、お付き合いしていた女性が、私の部屋に来ると何でも優待品を持って帰ってしまう人でした。ある日、僕が『田崎真珠』の優待でもらった、総額5万円ほどの真珠のピアスとイヤリングが入った袋を、彼女は勝手に開けてチェックして、必要な分だけ持ち帰っていた(笑)。また別の日には、新宿で食事をしていると、彼女が「優待券を入れている財布を見せてくれ」と言うんです。カバンから財布を取り出して渡したら、中を確かめて『かっぱ寿司』の券を全部抜いてしまって……。「少しでも返してくれ」と言ったんですか、ダメでしたね。それが彼女との最後の思い出です。
― 手痛い経験ですね。
えぇ。「優待券はとられても、現金は大丈夫」という、貴重な経験でした。だから美人には懲りたんです(笑)。今は、優待の範囲内で暮らしてくれる質素な人がいたら結婚したいな。
1949年生まれ。広島県出身。七段元プロ棋士で、2007年に引退。その後は、所有する優待銘柄をやりくりして生活費をまかなうという“異色のライフスタイル”と、明るい人柄がテレビなどで取り上げられ話題に。近著に『桐谷さんの株主優待生活』(KADOKAWA角川書店)。
※2画像出典:『桐谷さんの株主優待生活』(KADOKAWA角川書店)/撮影:吉澤広哉